訪問看護師が発熱を見たら – 原因と対応のポイント

在宅療養を支える訪問看護師にとって、利用者の発熱はよく出会う症状です。高齢者は免疫力の低下や脱水・低栄養などの影響で微熱でも深刻な感染症のサインになることがあり、体温以外のバイタルサインや意識状態の評価が欠かせません。また日本の感染症法では37.5 ℃以上を発熱、38 ℃以上を高熱と定義しており、身体のどこかで炎症や感染が起きている可能性を示しています。本稿では「発熱とは何か」をわかりやすく解説したうえで、ふくろう訪問看護ステーションでの発熱患者への対応手順を整理します。

目次

発熱とは何か

正常な体温と発熱の定義

人の体温は一日の中でも変動し、口腔温では早朝で約36.6 ℃、夕方には約37.0 ℃まで上昇します。感染や炎症が起こると、体内のサイトカインや外因性の発熱物質(発熱性サイトカイン)が視床下部の体温調節中枢を刺激し、体温の設定値を上昇させることで発熱が生じます。

世界的に共通した発熱の厳密なカットオフはありませんが、医学書やガイドラインでは朝の口腔温で37.2 ℃、夕方の口腔温で37.7–37.8 ℃を超える場合に発熱と捉えることが多いとされています。日本の感染症法では体温37.5 ℃以上を「発熱」、38 ℃以上を「高熱」と定義しており、高齢者では微熱でも重篤な感染症の可能性があることから注意が必要です。

発熱の分類と原因

発熱は程度によって以下のように分類されます。

分類体温の目安主な状態
微熱(低度の発熱)37.3〜38 ℃風邪や軽い感染症、炎症反応が原因になることが多く、高齢者ではこれだけでも重篤な感染症の兆候となることがある
中等度の発熱38.1〜39 ℃インフルエンザや肺炎などの感染症、尿路感染症など
高熱(高体温)39.1〜41 ℃細菌性髄膜炎や重症感染症、薬剤熱などが考えられ、早急な医療介入が必要

発熱は感染症に対する生体防御反応で、抗菌薬や抗ウイルス薬が必要な病態もあれば、発熱自体によって免疫反応が高まり病原体が排除されるケースもあります。体温を下げること自体が治療の目的ではなく、強い頭痛や関節痛、悪寒など発熱に伴う不快症状の軽減や、発熱により心肺への負荷が高い場合に解熱鎮痛薬(アセトアミノフェンなど)を使用します。解熱剤の使用可否や抗菌薬の開始時期は必ず医師の指示に従う必要があります。

発熱時の観察ポイントと重症度の見極め

バイタルサインの計測と意識状態

発熱患者への最初の対応は、「見る・聞く・感じる」ことです。高齢者では高熱でも重症でない場合がある一方で、微熱であっても肺炎や尿路感染症など重篤な疾患が隠れていることがあります。また高熱がせん妄の原因になったり、脱水や低栄養が感染リスクを高めたりすることもあります。次のような項目を確認し、普段の状態との変化を把握します。

  • 体温測定:腋窩または口腔で正確に測ります。手のひらや額を触るだけでは判定できません。
  • 血圧・脈拍・呼吸数:血圧が低下している、脈拍が著しく速い、呼吸が浅く速い(呼吸数が22回/分以上)などは重症感染症や脱水の兆候です。呼吸数は忘れがちですが、重症度評価に重要です。
  • 意識状態:眠気や意識混濁、傾眠、せん妄の有無を観察します。食欲不振や会話のトーンの変化なども含め、介護者が気づいた小さな変化も重要です。
  • 日常生活動作(ADL):普段できる動作ができない、歩行が不安定になるなどの変化を確認します。

重症な感染症のリスクを簡易的に評価するために用いられる指標としてqSOFA(quick Sequential Organ Failure Assessment)があります。収縮期血圧100 mmHg以下・呼吸数22回/分以上・意識レベル低下の3項目のうち2項目以上を満たす場合、敗血症の可能性が高く迅速な医療介入が必要とされています。ただし2021年の国際ガイドラインではqSOFAを単独のスクリーニングツールとすることに慎重で、NEWSやMEWSなど他のスコアも参照しながら包括的に評価することが推奨されています。呼吸数や意識変容などのバイタルサインの変化は早期に主治医へ報告し、指示を仰ぎます。

発熱の背景を探るアセスメント

発熱の原因は感染症(肺炎、尿路感染症、胆嚢炎、膀胱炎、皮膚の感染など)だけでなく、血栓症、薬剤反応、脱水など様々です。以下のような視点で「熱源」を探します。

  • 感染部位をチェック:咽頭炎や肺炎が疑われる場合は咳・痰の有無、尿路感染症が疑われる場合は尿混濁や排尿痛、褥瘡や創部が感染していないかなど身体全体を観察します。
  • 悪寒や戦慄の有無:悪寒を伴う発熱は菌血症や重症感染症のサインであることが多く、早急な対応が必要です。
  • 既往症や服薬状況:糖尿病や腎疾患、免疫抑制剤を使用している患者は感染症が重症化しやすいため注意が必要です。では高齢者では薬剤の副作用による意識障害があることも示されています。

当事業所での発熱患者への対応手順

ふくろう訪問看護ステーションでは、医療法人が監修するマニュアルに基づき、安全かつ迅速な対応を行っています。以下は当事業所での標準的な手順です。

  1. 状態の確認と医師への報告
    • 体温・血圧・脈拍・呼吸数・SpO₂を測定し、意識状態やADLの変化をチェックします。
    • 発熱に伴う脱水や低栄養が疑われる場合は飲水状況や食事摂取量も確認します。
    • qSOFAや悪寒の有無など重症度の評価を行い、得られた情報を主治医に報告します。
  2. 熱源を探す
    • 全身を観察し、赤みや腫れ、痛みなど炎症を示す部位を確認します。
    • 喉や胸の痛み、腹痛、排尿時痛など患者の訴えをよく聞き、感染源を推定します。
  3. 原因が不明な場合の検査
    • 感染症が疑われるが熱源が特定できない場合は、医師の指示でCOVID‑19やインフルエンザの迅速検査を行います。
    • 尿路感染症が疑われる場合は試験紙による尿検査を行い、白血球や亜硝酸塩の有無を確認します。
  4. 医師の指示に基づく投薬とケア
    • 強い悪寒や疼痛があり心身の負担が大きい場合、アセトアミノフェン(一般名)による解熱鎮痛を行います。解熱剤は不快症状を軽減するために使用し、必要な量・間隔は必ず医師の指示に従います。
    • 細菌感染症が疑われる場合は主治医が処方した抗菌薬を、ウイルス感染症が疑われる場合は抗ウイルス薬を適切なタイミングで投与します。抗菌薬や抗ウイルス薬は自己判断での中止や再開をしないよう指導します。
    • 脱水を防ぐために水分や電解質を補給し、栄養状態を観察します。必要時は点滴や経腸栄養の指示を受けます。
  5. 経過観察とフォローアップ
    • バイタルサインと症状を定期的にモニタリングし、変化があれば速やかに医師へ報告します。
    • 発熱のピークが過ぎても体力が低下していることが多いため、脱水や二次感染の予防、リハビリテーション計画の見直しなど継続的な支援を行います。
    • 家族や介護者にも体温の測り方や症状の見方を伝え、異変があれば早めに連絡してもらうよう周知します。

医療法人監修による安心の支援体制

当ステーションは医療法人が監修しており、訪問看護師が医学的判断に迷った際はいつでも医師や薬剤師に相談できる体制を整えています。主治医との連携はもちろんのこと、発熱時の迅速な検査や治療開始が可能となるよう地域の医療機関や薬局とも協力しています。医療法人のバックアップにより、緊急時でも訪問看護師が安心して業務に専念でき、利用者やご家族に対して安心・安全なケアを提供します。

まとめ

発熱は単なる体温上昇ではなく、身体が感染や炎症と戦っているサインです。口腔温で37.8 ℃以上が一般的に発熱とされ、日本の法律では37.5 ℃以上を発熱、38 ℃以上を高熱と定義しています。高齢者では微熱でも重症な感染症が隠れていることがあり、バイタルサインや意識状態、日常生活動作の変化を総合的に評価することが重要です。特に呼吸数や血圧低下、意識変容は敗血症の可能性を示すため、qSOFAや他の重症度スコアを参考にしながら主治医へ迅速に報告します。

ふくろう訪問看護ステーションでは、医療法人監修のもと、発熱患者に対して系統的なアセスメントと迅速な対応を実践しています。状態の確認・熱源の探索・必要な検査・医師の指示による投薬・継続的な経過観察という手順を守りながら、利用者の安心と安全を最優先に支援していきます。

参考文献

  1. Merck Manual. Fever. Biology of infectious disease;
  2. Cox N et al. Defining Fever. Open Forum Infectious Diseases 2021;8(3):ofab030.
  3. StatPearls. Physiology, Fever. StatPearls Publishing; 2023. 。
  4. Kobe City Medical Center West Citizen’s Hospital. 感染症法における発熱の定義.
  5. Tokyo Medical Association. 状態の観察と緊急時の対応.
  6. Surviving Sepsis Campaign. International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021.
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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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