訪問看護師のための痛み止め10種類

このコラムでは、ふくろう訪問看護ステーションの看護師が在宅患者のケアでよく出会う痛み止めを10種類取り上げ、それぞれの特徴と家庭で使う際の利点と注意点を整理します。一般名と商品名で薬剤を紹介し、看護師が把握しておきたいメリットとデメリットをまとめました。

目次

アセトアミノフェン(カロナール)

特徴・利点

  • 中枢性に作用する解熱鎮痛薬で、胃腸障害や腎障害が少なく高齢者や胃潰瘍既往のある患者にも使用しやすい
  • 非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)と併用することで疼痛コントロールを強化できる。

デメリット・注意点

  • 高用量投与では悪心や下痢などの消化器症状が現れやすいため、適宜モニタリングが必要。
  • 長期・大量投与による肝障害の報告があり、定期的に肝機能をチェックする。
  • ショックやアナフィラキシー、皮膚障害(スティーブンス・ジョンソン症候群など)が極めてまれに起こる。

ロキソプロフェン(ロキソニン)

特徴・利点

  • NSAIDの一種で、炎症と痛みに対して即効性があり、急性の筋骨格痛に広く用いられる。
  • 一般的な鎮痛剤として薬局でも入手しやすいが、医療機関では効果と安全性を見ながら処方量を調整する。

デメリット・注意点

  • 重大な副作用としてショック、アナフィラキシー、無顆粒球症や腎不全、心不全、胃潰瘍・消化管出血/穿孔、肝不全などが報告されている。
  • シクロオキシゲナーゼを非選択的に阻害するため腎血流低下や胃粘膜障害のリスクがあり、高齢者や腎機能低下患者には注意が必要。
  • 気管支喘息患者ではアスピリン喘息の誘発に注意し、既往のある患者には禁忌とされている。

ノイロトロピン(ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液含有製剤)

特徴・利点

  • ウサギの皮膚から抽出したペプチドを有効成分とする非オピオイド系鎮痛薬で、慢性疼痛や神経痛、掻痒を抑える。
  • 神経障害性疼痛に一定の有効率が示されており、鎮痛作用を他の薬剤と併用することで相乗効果が期待できる。
  • オピオイドと異なり依存性がないため長期的に使用しやすい。

デメリット・注意点

  • 重大な副作用としてショックやアナフィラキシーがあり、脈拍異常や呼吸困難、血圧低下が現れた場合は直ちに投与を中止する。
  • 肝機能障害や黄疸が報告されているため定期的な肝機能検査が望ましい。
  • 他の副作用には発疹や喘息発作、血圧変動、悪心、眠気、めまい、痙攣などがある。
  • 妊婦・授乳婦・高齢者には慎重に投与し、効果がなければ漫然と継続しない

ジクロフェナク(ボルタレン)

特徴・利点

  • 強力な抗炎症作用と鎮痛作用を持つNSAIDで、関節リウマチや変形性関節症、術後痛などに用いられる。
  • 座薬や貼付剤など複数の剤形があり、疼痛の種類や患者の状態に合わせて選択できる。

デメリット・注意点

  • 抗炎症作用が強い反面、非選択的なCOX阻害により胃・十二指腸潰瘍や出血、腎障害のリスクが高く、高齢者には慎重投与が必要。
  • 心血管系への影響が報告され、長期使用では心筋梗塞や脳卒中リスクが増加するという海外安全性情報がある。
  • 最近のPMDA調査では消化管狭窄や閉塞が追加の重大な副作用として報告され、胃腸症状が強い場合は早期に中止する。
  • アスピリン喘息の患者は禁忌であり、同系統薬のロキソプロフェン以上にリスクが高い

セレコキシブ(セレコックス)

特徴・利点

  • COX‑2選択的阻害薬で、胃粘膜のプロスタグランジン合成を抑制しにくい。従来のNSAIDに比べ胃・十二指腸潰瘍のリスクが低い。
  • 骨転移など持続性疼痛にも有効で、プロトンポンプ阻害薬(PPI)を併用することで胃腸障害の予防が可能

デメリット・注意点

  • COX‑2選択性により心血管イベント(心筋梗塞や脳卒中)のリスクが指摘されており、心疾患既往のある患者への投与には慎重を要する。
  • 腎血流低下を起こすことがあり、腎機能障害や利尿薬使用中の患者では脱水や電解質異常を招くため注意する。
  • 抗癌剤ペメトレキセドとの併用は禁忌とされている。

トラマドール(トラマール)

特徴・利点

  • μオピオイド受容体刺激とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害作用を併せ持つ非麻薬性オピオイド鎮痛薬。中等度から強度の慢性痛や神経障害性疼痛に適する。
  • 一般的なオピオイドよりも呼吸抑制作用が弱く、便秘や依存のリスクも低いとされる。
  • 腎機能障害患者でも用量調整により使用可能で、NSAIDが使えない患者にとって有益な選択肢となる。

デメリット・注意点

  • 主な副作用は悪心、嘔吐、便秘、眠気、めまいで、特に開始初期に注意が必要
  • けいれんのリスクがあり、てんかん患者やセロトニン症候群を起こす薬剤との併用は禁忌。高用量や過量投与で呼吸抑制や意識障害が起こり得る。
  • 依存性は弱いが長期連用時には退薬症状が発現することがあり、減量は数日かけて行う。

トラマドール+アセトアミノフェン配合剤(トラムセット)

特徴・利点

  • トラマドールの鎮痛効果とアセトアミノフェンの解熱鎮痛作用を組み合わせた定量配合剤。非がん性慢性痛や歯科抜歯後の疼痛などに用いられる。
  • 1錠で異なる作用機序が得られ、NSAIDが禁忌の患者や高齢者にも比較的安全に使用しやすい

デメリット・注意点

  • アセトアミノフェン総量が1日1500 mgを超えないように調整し、他のアセトアミノフェン製剤との重複投与を避ける。。
  • 12歳未満やアルコール中毒、睡眠薬やオピオイド薬の急性中毒、MAO阻害薬投与中、制御不良のてんかん、重篤な肝機能障害は禁忌である。
  • 通常、1日4回4時間以上間隔を空けて服用し、1日最大8錠を超えない。急な中止は禁忌で、減量を段階的に行う必要がある。
  • 眠気、便秘、吐き気などトラマドール由来の副作用に加え、アセトアミノフェンの肝障害リスクがあるため、長期使用時は肝機能と精神状態を観察する。

プレガバリン(リリカ)

特徴・利点

  • カルシウムチャネルα2δサブユニットに結合して神経伝達物質放出を抑制する抗てんかん薬・神経障害性疼痛治療薬。帯状疱疹後神経痛や糖尿病性神経障害などで疼痛を緩和する。
  • 睡眠障害や不安症状にも改善効果が報告され、神経性疼痛を抱える在宅患者のQOL向上に寄与する。

デメリット・注意点

  • めまい(20%以上)、眠気(20%以上)による転倒や骨折の報告があり、高齢者や歩行困難な患者では慎重に使用する。
  • 重篤な副作用として心不全、肺水腫、横紋筋融解症、腎不全、血管浮腫、低血糖、間質性肺炎、ショックやアナフィラキシー、スティーブンス・ジョンソン症候群、肝不全などが報告されている。
  • 体重増加や末梢浮腫、便秘などの副作用も多く、腎機能に応じた投与量調節と体重・浮腫の観察が必要

ロキソプロフェンパップ剤(ロキソニンテープ)

特徴・利点

  • 外用NSAIDで、局所の炎症部位に直接作用し全身性副作用を軽減できる。1日1回貼付で効果が持続し、服薬が困難な在宅患者に適する。
  • 服用薬との併用でより強い鎮痛が期待でき、体動困難な患者の関節痛や筋肉痛の軽減に役立つ。

デメリット・注意点

  • 成分に過敏症のある患者やアスピリン喘息の既往がある患者では禁忌。
  • 妊娠後期は胎児動脈管収縮や腎障害の恐れがあり原則禁忌。高齢者では皮膚反応の発生率が高いため、貼付部位の発赤や水疱を観察し必要に応じて中止する。
  • 重大な副作用としてショックやアナフィラキシーがまれに報告されている。
  • 症状を一時的に和らげる治療であり基礎疾患の治療ではないことを患者に説明する。

エスフルルビプロフェンパップ剤(ロコアテープ)

特徴・利点

  • エスフルルビプロフェンに清涼成分l‐メントールを配合した貼付薬で、変形性関節症など慢性痛に用いられる。
  • 一般的な経口NSAIDに比べ胃腸障害や腎障害のリスクが低く、局所的な鎮痛効果が期待できる
  • 1日1回貼付し、症状に応じて2枚まで使用できる。服用が難しい患者や薬剤数を減らしたい場合に有用。

デメリット・注意点

  • 消化性潰瘍、重篤な血液障害、重篤な肝・腎・心機能障害、高血圧症、薬剤過敏症、アスピリン喘息の患者には禁忌。
  • フルオロキノロン系抗菌薬との併用は痙攣誘発リスクがあるため避ける。
  • 全身性NSAIDとの併用は血中濃度上昇の恐れがあり、1日2枚を超えないよう注意する
  • 長期使用では定期的に腎機能・肝機能・血液検査を実施し、皮膚症状や全身症状が出た場合は中止する。高熱や虚弱高齢者では過度の体温低下や転倒が報告されている。

訪問看護師が知っておきたいポイント

  1. 薬剤選択は患者の全身状態と疼痛の種類に応じて行う。
    • NSAIDは炎症性疼痛に有効だが腎機能や消化管出血リスクに注意し、腎不全や高齢者では慎重投与する
    • 神経障害性疼痛にはプレガバリンやノイロトロピン、オピオイド系(トラマドール)が有効。眠気やめまいによる転倒リスクがあるため環境整備を行う。
  2. 在宅での服薬管理とモニタリングが重要。
    • 長期連用が必要な薬剤(ノイロトロピン、プレガバリン、オピオイド系)は効果がない場合は早期に評価し、漫然と継続しない。
    • 貼付薬は皮膚トラブルや過量使用に注意し、貼付部位を定期的に観察する。発赤や痒み、発疹があれば医師に報告
    • アセトアミノフェンやトラマドール配合剤は総量管理が必要で、重複投与や飲み忘れによる過量投与を防ぐ。
  3. 医療法人監修による安心感。
    • ふくろう訪問看護は医療法人のバックアップのもと、薬剤師や医師と密に連携しています。訪問看護師は患者の症状や副作用を適切に評価し、必要時には医師へ迅速に報告できる体制を整えています。
    • 薬剤ごとの利点・リスクを理解し、患者の生活環境に合わせた痛み止めを提案することで、在宅生活の質の向上に貢献します。

参考文献

  • パリタティブケア診療の手引き(聖隷三方原病院在宅医療支援チーム)
  • アセトアミノフェン〈Calonal〉インタビューフォーム
  • ロキソプロフェンナトリウム〈Loxonin〉インタビューフォーム
  • ノイロトロピン添付文書(日本臓器製薬)
  • Diclofenac sodium: Summary of investigation results (PMDA)
  • トラマドール・アセトアミノフェン配合錠インタビューフォーム
  • プレガバリン〈Lyrica〉添付文書
  • ロキソプロフェンパップ剤〈Loxonin Tape〉添付文書
  • エスフルルビプロフェンパップ剤〈LocoA Tape〉添付文書
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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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