訪問看護師のための褥瘡

高齢化や在宅医療の増加に伴い、褥瘡への対応は訪問看護師にとって重要な課題です。褥瘡(床ずれ)は単なる皮膚の損傷にとどまらず、感染や疼痛によって患者さんの生活の質を低下させ、入院や介護費用の増大にもつながります。ここでは褥瘡の基礎と対応を整理します。

目次

褥瘡とは

褥瘡は骨突出部位の皮膚が長時間圧迫されて血流が悪くなり、皮膚が赤くなったりただれたりする傷です。自力で体位変換ができない方や寝たきりの方に起きやすく、摩擦やずれの刺激が加わると皮膚の損傷が進行します。長期間寝たきりで栄養状態が悪い、皮膚が弱くなっている(高齢者や浮腫、失禁など)場合は特に注意が必要です。

発生しやすい部位

骨が突出して体圧が集中しやすい仙骨部、坐骨部、踵、肘、肩甲骨などでよく発生します。車椅子生活では坐骨部や足の裏に圧がかかりやすく、硬い椅子や窮屈な靴も原因となります。仰臥位では仙骨部に体重の約40%がかかり、長時間圧迫されると褥瘡が起きやすいと報告されています。

褥瘡発生の仕組み

外力による阻血と組織損傷

褥瘡の主な原因は圧迫です。約200 mmHgの圧力が2時間以上持続すると皮膚が壊死することが示されており、2時間ごとの体位変換が推奨される根拠になっています。圧迫以外にずれ力や摩擦も重要で、これらの外力により以下の障害が複合的に起こります。

  • 阻血性障害:血管が圧迫されて血流が低下・停止し、酸素や栄養が供給されなくなる。
  • 再灌流障害:血流回復時に活性酸素や炎症性サイトカインが発生し、組織障害が広がる。
  • リンパ系機能障害:リンパ流が滞ることで老廃物や分解酵素が蓄積し炎症を助長する。
  • 機械的変形:外力で細胞や細胞外マトリックスが変形し、アポトーシスや壊死が起こる。

全身状態や環境の影響

栄養障害、貧血、浮腫、低酸素状態、失禁による湿潤や皮膚の乾燥なども組織耐性を低下させ褥瘡リスクを高めます。日常的な観察と早期介入が重要です。

褥瘡の評価方法

ステージ分類(深さによる分類)

厚生労働省や国際的な指標では褥瘡を深さにより四つのステージに分類します。

  1. ステージI:持続する発赤があるが皮膚欠損はない。
  2. ステージII:表皮〜真皮の部分欠損(浅い潰瘍)。
  3. ステージIII:皮下脂肪までの完全な組織欠損。
  4. ステージIV:筋肉・腱・骨まで露出する深い潰瘍。

DESIGN‑Rスケール

日本褥瘡学会が開発した褥瘡状態判定スケールDESIGN‑Rでは、創面の状態を包括的に評価します。以下の要素を採点し重症度や治療効果を判定します。

評価要素内容
深さ (Depth)d0:皮膚損傷なし〜D5:関節腔・体腔に至る損傷
滲出液 (Exudate)e0:滲出液なし〜E6:1日2回以上交換が必要
大きさ (Size)創の長径と短径から面積を算出し数値化
炎症・感染 (Inflammation/Infection)i0:炎症なし〜I9:全身症状を伴う感染
肉芽組織 (Granulation)g0:評価不能〜G6:良性肉芽が全くない
壊死組織 (Necrotic tissue)n0:壊死なし〜N6:硬く密着した壊死
ポケット (Pocket)創下にトンネル状の空間があるかどうかを評価

DESIGN‑Rにより褥瘡の進行や治療効果を定量的に追跡できます。訪問看護師は評価結果を記録し、医師や褥瘡チームと共有することが大切です。

治療方法

褥瘡治療の基本は「圧迫の除去」「局所創傷管理」「栄養管理」「全身管理・感染対策」の4本柱です。以下に主要なポイントを整理します。

1. 圧迫の除去と体位変換

  • 2時間ごとの体位変換が推奨されます。仙骨などの骨突出部位の圧力を分散するため、30度側臥位を用いたり、クッションで支えると効果的です。車椅子上でも15分ごとに体を傾けて除圧し、座面には体圧分散クッションを使用します。
  • ベッドの背上げ時には足側を先に上げるなど、ずれを減らす工夫をします。踵部はクッションで浮かせ、長時間の圧迫を防ぎます。

2. 局所創傷管理(wound bed preparation)

褥瘡治療では創面環境を整える「TIMEコンセプト」(Tissue・Infection/Inflammation・Moisture・Edge)が用いられます。以下に主な処置を示します。

  • 清潔と洗浄:38度程度の微温湯と石鹸で創部を洗い、清潔なタオルで優しく押さえます。
  • 創面保護と適度な湿潤:滲出が少ない浅い褥瘡ではポリウレタンフィルムが選択肢となり、摩擦やずれから創面を保護し湿潤環境を保ちます。滲出液が中等量以上であればハイドロコロイド・フォーム・アルギン酸などの被覆材を用い、外力や乾燥から保護します。
  • 壊死組織の除去(デブリードマン):深い褥瘡では、外科的デブリードマンを行う際に全身状態や出血傾向を確認し、感染を伴う場合は適応となります。外科的処置が困難な場合はカデキソマー・ヨウ素やブロメラインによる化学的デブリードマンが選択されます。
  • 感染対策:局所の炎症徴候が改善しない場合や発熱・高CRPなど全身症状を伴う場合は抗菌薬の全身投与を考慮します。創部の細菌培養を行い、適切な抗菌薬を選択します。

3. 栄養管理

低栄養は褥瘡発生や治癒遅延の重要なリスク因子です。食事は1日3回、主食・主菜・副菜をそろえたバランスの良い食事を摂りましょう。褥瘡治癒にはエネルギーとタンパク質が特に重要で、肉・魚・卵などのタンパク質を十分に摂取し、低栄養を防ぎます。鉄、亜鉛、ビタミンC、カルシウムなども皮膚再生に関与し、必要に応じてサプリメントを利用します。患者さんが食事をとれない場合は経腸栄養や栄養補助食品の利用を検討し、医師や栄養士に相談します。

4. 全身管理・感染対策

褥瘡は全身状態の影響を受けるため、貧血、心不全、糖尿病などの基礎疾患を適切に治療します。疼痛管理、血糖コントロール、浮腫や低酸素の改善も重要です。感染徴候がある場合は創部洗浄と局所のデブリードマンに加え、適切な抗菌薬を投与します。長期臥床による肺炎や深部静脈血栓症の予防も忘れずに行います。

軟膏の選び方

褥瘡の局所処置では創の状態に合わせて外用剤を選択します。以下に代表的な軟膏の分類と特徴をまとめます。

種類・一般名特徴と適応
ワセリン(プロペト・白色ワセリン)添加物が少なく低刺激で、皮膚保護や保湿に用いる。滲出がほとんどない浅い褥瘡の保護に適す。
酸化亜鉛軟膏(亜鉛華軟膏)軽い収れん作用と抗炎症作用があり、滲出液をやや吸収するが落としにくい。
ジメチルイソプロピルアズレン軟膏軽い抗炎症作用を持ち、皮膚保護を目的とする。
カデキソマー・ヨウ素軟膏(カデックス)ヨウ素により感染制御に優れ、ポリマー粒子が滲出液を多量に吸収する。粘稠な壊死組織や多量の滲出液がある場合に用いるが、残留粒子は感染源になり得るため注意する。
精製白糖・ポビドンヨード配合軟膏(ユーパスタ)ヨウ素による抗菌作用と高い吸収力を持ち、滲出液が多い創に適する。
スルファジアジン銀クリーム(銀スルファジアジンクリーム)抗菌作用と水分保持作用があり、壊死組織の軟化や融解を促す。滲出液が少量〜中等量の創に用いる。
ブロメライン軟膏タンパク分解酵素により壊死組織を溶解するが、周囲皮膚への刺激性があり浅い創に適応。

軟膏選択は創の色調・滲出量・感染の有無などを総合的に評価して決定し、訪問看護師が単独で判断するのではなく主治医と連携して選択します。

環境調整と再発防止

褥瘡は発症後の環境調整と再発予防が重要です。以下の点に留意しましょう。

  1. 皮膚の観察と早期発見:着替えや入浴時に皮膚をこまめに観察し、赤みや水疱があれば圧迫を解除します。赤みが30分後も消えない場合は褥瘡の始まりと考え、体位変換やガーゼ保護を行います。
  2. 除圧用具とマットレス:エアマットやウレタンマット、体圧分散クッションを使用し、骨突出部位の圧力を分散します。車椅子ではクッションを用い、60分以上座る場合は15分ごとに座り直します。
  3. スキンケアと湿潤管理:皮膚を湿ったまま汚れたままにせず、排泄物や汗はすぐに処理します。保湿クリームで乾燥を防ぎ、湿潤部位はムレを防ぎます。皮膚が乾燥している場合は保湿剤を塗り、湿っている場合は通気性の良いオムツやパッドを選びます。
  4. 栄養・水分補給:前述の栄養管理を徹底し、体力と皮膚再生力を維持します。水分補給も重要です。
  5. 生活環境の改善:ベッド周囲の清潔保持、適切な室温・湿度管理、衣類や寝具の皺をなくすことも摩擦・ずれの予防になります。座位・立位移乗の際には介助者が支え、急激な移動で皮膚を擦らないよう配慮します。

褥瘡患者対応の整理(訪問看護師の視点)

訪問看護師は、褥瘡の予防から治療まで一貫してサポートします。

  1. リスクアセスメント:初回訪問時に、寝たきり度、栄養状態、既往症、皮膚の状態を評価し、リスクが高い場合は予防策を指導します。
  2. 観察と評価:毎回の訪問で皮膚状態を観察し、DESIGN‑Rスケールなどを用いて褥瘡の状態を記録します。
  3. 除圧とポジショニング指導:患者さんと家族に2時間ごとの体位変換やクッションの使い方を指導し、実際に体位変換を手伝います。
  4. 局所ケアと医師への連絡:創傷の洗浄・外用薬の塗布・被覆材の交換を行い、変化があればすぐに主治医へ報告します。滲出液や感染徴候を確認し、必要に応じて処方を調整します。
  5. 栄養・環境アドバイス:食事内容のチェックやサプリメントの提案、ベッドや車椅子周辺の環境整備を行います。患者さんが自主的にケアできるように家族へも指導します。
  6. 再発防止教育:治癒後も皮膚の脆弱性は続くため、引き続き除圧、栄養管理、皮膚ケアを継続するよう啓発します。体重変化や生活環境の変化があれば早めに相談してもらいます。

ふくろう訪問看護が選ばれる理由

ふくろう訪問看護は医療法人が監修しており、褥瘡ケアにおいて医師と密接に連携しています。創傷ケア専門看護師への相談体制も整っているため、難治性褥瘡や糖尿病など基礎疾患を有する患者さんでも安心してご利用いただけます。医療法人と連携することで、内服薬の調整や栄養管理、必要時の医療的処置が迅速に行われる点が大きな強みです。

おわりに

褥瘡は予防が最善の治療であり、訪問看護師の役割が非常に重要です。正しい知識と技術に基づいて、患者さんとご家族が安心して在宅療養を続けられるよう支援していきましょう。ふくろう訪問看護では医療法人監修の安心感と実践的なケアを提供し、褥瘡のない在宅生活を目指します。

参考文献

  1. 日本褥瘡学会:褥瘡について。
  2. 津山中央病院 褥瘡治療資料。
  3. 国立がん研究センター中央病院 看護部:褥瘡(床ずれ)の予防について。
  4. 別府重度障害者センター 在宅生活ハンドブックNo.4:自宅での褥瘡予防と発症時の対処法。
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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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