訪問看護師が浮腫を見たら?

訪問看護 実務コラム

訪問看護師が浮腫を見たら?——体重の推移で「水の収支」を読み、原因を分ける

足のむくみは、訪問看護で最も出会う所見のひとつです。けれど「むくんでいますね」で終わらせると、心不全の増悪や深部静脈血栓症(DVT)のような、時間が勝負の病気を見逃します。このコラムでは、浮腫を見たときの最初の分かれ道、鑑別疾患の地図、そして家で最も早く異常を数字にできる「体重の推移」の使い方を、学会ガイドラインと2026年6月施行の診療報酬改定の情報を出典つきで整理します。

先に結論——3行で

1
浮腫は「足の症状」ではなく「体の水の収支」の結果です最初に見るのは、片側か両側か、急に出たか(数日以内)ゆっくりか。片側で急なら血栓や感染、両側なら心臓・腎臓・肝臓・栄養・薬を疑います。
2
両側の浮腫は、見た目より先に体重が動きます同じ条件で毎日測り、数字で追う。心不全では「3日で2kg以上の増加」が主治医に連絡する目安として学会の患者向け教材や欧州ガイドラインに示されています。
3
片側で急な腫れに、赤み・熱感・痛みが伴えば、その日のうちに報告します深部静脈血栓症と蜂窩織炎は、訪問看護が最初に気づけて、最初に止められる病気です。
目次

SECTION 01 浮腫はなぜ起きる?——4つの力で読む

浮腫とは、血管の外(間質)に水がたまりすぎた状態です。血管の中と外の水のやり取りは、大きく4つの力で決まります。どの力が崩れたかを考えると、原因の候補が自然に絞れます。

図1 浮腫を起こす4つの力と、代表的な原因 ① 静水圧が上がる 血管から水が押し出される 心不全・腎不全・静脈うっ滞(慢性静脈不全、DVT) Ca拮抗薬などの血管拡張薬、長時間の座位(依存性浮腫) ② 膠質浸透圧が下がる 水を血管に留められない 低アルブミン血症:肝硬変、ネフローゼ症候群、低栄養 がんの進行期、たんぱく漏出性胃腸症 ③ 血管透過性が上がる 血管の壁が漏れやすい 炎症・感染:蜂窩織炎、外傷、熱傷、アレルギー 敗血症などの全身の炎症(急に全身がむくむ) ④ リンパが流れない 間質の水を回収できない がん手術後のリンパ節郭清、放射線治療後、原発性リンパ浮腫 腫瘍によるリンパ管の圧迫(がん進行期)

図1 4つの力のどれが崩れたかで、原因の候補が変わります。高齢者では複数が重なることが珍しくありません(例:軽い心不全+低栄養+Ca拮抗薬)。

高齢者の浮腫がいかに「ありふれた所見」かは数字でも示されています。米国の51歳以上の全国代表サンプル(約2万人)では、足首や足の持続的な腫れを訴える人が2000〜2016年を通じて19〜20%を占め、高齢・女性・肥満・糖尿病・高血圧・活動量の低さと関連していました(Besharat 2021)。日本の在宅療養者は、この集団よりさらに高齢で複数の病気を持つ人が多く、浮腫のある利用者は「例外」ではなく「日常」です。だからこそ、日常の中から「いつもと違う浮腫」を拾う型が要ります。

SECTION 02 最初の分かれ道——片側か両側か、急か慢性か

鑑別を細かく覚えるより先に、玄関で靴を脱いだ瞬間に決められる2つの分かれ道があります。「片側か両側か」と「急に出たか、ゆっくりか」です。家庭医学の総説(Ely 2006)でも、この2軸が最初の分岐として置かれています。

図2 浮腫を見たときの最初の分かれ道(2つの質問で4つの箱へ) 質問1:片側? 両側?  質問2:数日以内に急に? 数週間以上かけてゆっくり? 片側 + 急 数日以内 深部静脈血栓症(DVT)/蜂窩織炎/外傷・肉離れ・ベーカー嚢腫破裂 → 赤み・熱感・痛み・発熱を確認し、その日のうちに主治医へ報告 下腿周囲径の左右差3cm以上(脛骨粗面の10cm下で計測)はDVTを疑う所見(Wells) 片側 + ゆっくり 数週間以上 慢性静脈不全(静脈瘤、血栓後症候群)/リンパ浮腫(がん術後、放射線後) → 皮膚の色・硬さ・足の甲の腫れ(Stemmer徴候)を記録し、次回受診時に相談 骨盤内の腫瘍がリンパや静脈を圧迫している場合もある(がんの既往を確認) 両側 + 急 数日以内 心不全の増悪/急性腎障害・ネフローゼ/薬の開始・増量(Ca拮抗薬など) → 体重・尿量・息切れ・夜間の症状を確認し、増悪の赤旗があれば当日報告 薬が変わった直後の浮腫は「薬剤性」を最初に疑う(開始日と浮腫の出現日を並べる) 両側 + ゆっくり 数週間以上 慢性心不全/慢性腎臓病/肝硬変/低栄養/甲状腺機能低下/依存性浮腫 → 体重の推移をつけ始め、食事量・活動量・座位時間・薬の一覧を主治医と共有 50歳以上の両側の慢性浮腫で最も多いのは慢性静脈不全(Ely 2006)

図2 「片側+急」だけが当日対応の箱です。残りの3つは「何を記録して、いつ相談するか」が違います。

出典メモ 深部静脈血栓症の検査前確率を推定するWellsスコアでは、「下腿周囲径の左右差3cm以上(脛骨粗面の10cm下で計測)」「圧痕性浮腫が症状側のみ」「表在静脈の拡張」などが項目です(Wells 1997)。日本循環器学会の「2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン」でも、検査前臨床的確率の推定にWellsスコア等を用い、D-ダイマーと超音波で診断を進める流れが示されています。訪問看護がスコアをつける必要はありませんが、「どこを何cmで測ったか」を報告に書くと、主治医の判断が速くなります。

SECTION 03 鑑別疾患の地図——家で拾える手がかりと、報告の目安

表1は、在宅で出会う頻度の高い原因を「見た目」「家で拾える手がかり」「報告の目安」で並べたものです。診断は主治医の仕事ですが、どの手がかりを持ち帰るかで診断の速さが変わります。

原因見た目・場所の特徴家で拾える手がかり報告の目安
心不全両側・圧痕性。寝ている人では仙骨部や背中に体重の増加、尿量の減少、夜間の息苦しさ・起座呼吸、頸静脈の張り、SpO2低下、食欲低下当日3日で2kg以上の増加、安静時の息切れ、SpO2の低下
腎臓(ネフローゼ症候群・慢性腎臓病)両側。朝のまぶたのむくみ(眼瞼浮腫)が特徴的尿の泡立ち、尿量減少、血圧上昇、糖尿病や腎臓病の既往、NSAIDsの使用数日内尿量減少や急な体重増加は当日
肝硬変両側の下腿浮腫+腹水(お腹の張り)腹囲の増加、黄疸、皮膚のかゆみ、飲酒歴・肝炎の既往、体重は増えるのに手足は細い数日内意識の変化(肝性脳症)や吐血は当日
低栄養・低アルブミン血症両側・やわらかい圧痕性。全身がむくむこともある食事量の低下、体重減少の経過、がんの進行、下痢の持続、筋肉の減少次回受診食事量と体重の推移を添えて報告
薬剤性両側・足首から下腿。薬の開始・増量から数日〜数週間Ca拮抗薬、NSAIDs、ピオグリタゾン、ステロイド、プレガバリン、甘草を含む漢方薬(表2)次回受診開始日と出現日を並べて報告。自己判断で中止しない
深部静脈血栓症(DVT)片側・急。ふくらはぎ〜大腿の腫れと張り左右差(周囲径)、痛み、表在静脈の拡張、長期臥床、がん、骨折・手術の既往当日息切れ・胸痛が加われば肺塞栓を疑い救急要請
蜂窩織炎片側・急。赤み・熱感・痛み、境界が不明瞭発熱、悪寒、白癬や傷(侵入門戸)、糖尿病、リンパ浮腫の既往当日発熱・全身状態の悪化があれば急ぐ
慢性静脈不全片側または両側・ゆっくり。夕方に悪化し朝は軽い静脈瘤、皮膚の色素沈着・硬化、足首周囲の湿疹や潰瘍、立ち仕事の経歴次回受診潰瘍化や感染の兆しがあれば早めに
リンパ浮腫片側が多い・ゆっくり。足の甲や指まで腫れる。進行すると押しても凹みにくいがんの手術(リンパ節郭清)・放射線の既往、足の指のつけ根の皮膚がつまめない(Stemmer徴候)次回受診赤み・熱感が出れば蜂窩織炎として当日
甲状腺機能低下症両側・押しても凹まない(非圧痕性)。顔もむくむ寒がり、体重増加、便秘、皮膚の乾燥、脈が遅い、声のかすれ、活気の低下次回受診血液検査(TSH)の提案
依存性(廃用性)浮腫両側・下腿。長時間座っている人、麻痺側に強い日中ずっと車いすや椅子、足を下ろしたまま、活動量の低下記録して観察下肢挙上・足関節運動・弾性着衣を検討。他の原因がないことが前提

表1 主な鑑別と、訪問看護が持ち帰る手がかり。報告の目安は当ステーションの考え方で、最終判断は主治医の指示に従います。出典:Ely 2006、Trayes 2013、日本循環器学会 2025年改訂版ガイドライン(心不全/肺血栓塞栓症・DVT)。

薬でむくむ——「薬が変わった日」と「むくみ始めた日」を並べる

薬剤性の浮腫は、在宅で最も見落とされやすく、最も直しやすい原因です。2021年の系統的な総説(Largeau 2021)は、薬剤性浮腫を「血管拡張」「ナトリウム貯留」「透過性亢進」「リンパ障害」の4つのしくみに整理しています。図1の4つの力と同じ構図です。

薬の系統(例)しくみ在宅でのメモ
Ca拮抗薬(アムロジピン、ニフェジピン等)細動脈の拡張で毛細血管圧が上がる(血管拡張)用量依存性。無作為化試験のメタ解析では末梢浮腫が約10%に見られ、高用量で増加(Makani 2011)。利尿薬を足しても効きにくく、減量・変更が本筋
NSAIDs(ロキソプロフェン、ジクロフェナク等)腎でのナトリウム・水の貯留市販薬や湿布の大量使用も含めて確認。腎機能低下や心不全がある人ではとくに注意
ピオグリタゾン(糖尿病薬)ナトリウム貯留・体液増加添付文書上、心不全のある人・既往のある人には禁忌。浮腫や急な体重増加は主治医へ
副腎皮質ステロイドナトリウム貯留長期投与や増量後。緩和ケアで使う場面も多い
プレガバリン・ガバペンチン血管拡張が主と考えられている神経痛で処方が増えている。開始後数週間で下腿がむくむ
甘草を含む漢方薬(芍薬甘草湯など)偽アルドステロン症:ナトリウム貯留・カリウム低下むくみ+血圧上昇+脱力・こむら返り。複数の漢方の重複に注意
女性ホルモン・一部の降圧薬(α遮断薬)・ミノキシジル体液貯留・血管拡張頻度は高くないが、薬歴を見るときに思い出す

表2 在宅で出会いやすい薬剤性浮腫。出典:Largeau 2021、Makani 2011、各薬剤の添付文書(PMDA)。中止・変更は必ず処方医の判断で。

ここが落とし穴 Ca拮抗薬の浮腫に利尿薬を足すと、脱水・腎機能悪化・転倒を招くことがあります。「むくみ→利尿薬」ではなく「むくみ→原因の薬を疑う→処方医に相談」の順番です。訪問看護は薬を変えられませんが、薬歴と浮腫の時系列を1枚にして渡すことはできます。

SECTION 04 体重は「むくみの量」をいちばん早く数字にする

両側の浮腫、とくに心不全・腎臓・肝臓・栄養が関わる浮腫では、体にたまった水は足に見える前に体重に出ます。水1リットルは約1kg。教科書的には、圧痕性浮腫として目で見えるようになるのは数リットル単位で体液が増えてからとされ、それより前の段階を捉えられるのが毎日の体重です。

だから訪問看護の「浮腫を見たら」の次の一手は、「体重を、同じ条件で、毎日」です。心不全では、日本心不全学会の患者向け教材『心不全手帳』や欧州心臓病学会(ESC)2021年ガイドラインのセルフケア項目で、3日間で2kg以上の急な体重増加が、医療者に連絡する目安として示されています。日本循環器学会・日本心不全学会の「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」も、体重測定を含むセルフケア教育と多職種による疾病管理を推奨しています。

図3 体重推移の例——足に見える前に、数字が動く 51kg 52kg 53kg 54kg 55kg 1日目 4日目 7日目 8日目 11日目 14日目 8→11日目:3日で+2.1kg この時点で主治医へ連絡 日々の±0.2kg程度の揺れは正常範囲 12日目以降:利尿薬の調整で下降に転じた例 同じ体重計・同じ時刻(朝・排尿後・朝食前)・同じ服装で測った値

図3 架空の例。8日目まで52kg前後で安定していた体重が、9日目から連日増え、11日目に「3日で2kg以上」に達した時点が連絡の目安です。足のむくみが本人や家族の目に明らかになるのは、多くの場合この後です。

測り方を「そろえる」——5つのルール

体重の数字が役に立つかどうかは、測り方をそろえられるかで決まります。体重計が違えば1kgずれ、服が違えば0.5kgずれ、時刻が違えば1kgずれる。「3日で2kg」の判断は、ずれを消して初めて成り立ちます。

図4 体重測定の5つのルール(そろえないと「2kg」が読めない) 1 同じ体重計で デイサービスの体重計と家の体重計は別物。混ぜない。どちらの値かを必ず記録する 2 同じ時刻で——朝、排尿のあと、朝食の前 訪問が午後しかできない人は「訪問時」で統一し、朝の値と比べないことをチームで共有する 3 同じ服装で——下着+薄着、靴は脱ぐ 冬の重ね着で1kg近く変わる。おむつは新しいものに替えてから測る 4 1つの表に、日付と数字だけを書く 心不全手帳や自作の表でよい。「増えた・減った」の言葉ではなく、数字を並べる(図3の形にする) 5 「いつ・誰に・何kgで連絡するか」を先に決めておく 主治医と決めた目安(例:3日で2kg)を手帳の表紙に書き、家族・ヘルパー・ケアマネにも渡す

図4 ルール5は「体重を測る目的」そのものです。目安の数字は病状や体格で変わるため、主治医と個別に決めます。

体重が測れない人はどうする?

立てない、車いす用の体重計がない、認知症で協力が得られない——在宅ではよくあります。体重計は介護保険の福祉用具貸与の種目に入っておらず、購入か、通所先で測った値を共有してもらうかになります。測れないときは、次の指標を「同じ場所・同じ方法」で追います。

指標測り方読み方・注意
下腿周囲径脛骨粗面(膝のお皿の下の骨の出っぱり)から10cm下で、メジャーの位置をペンで印をつけて毎回同じ位置で左右差3cm以上は片側の血栓を疑う所見。両側が同じように増えるなら全身性の浮腫の進行
腹囲臍の高さで、呼気の終わりに肝硬変や心不全の腹水、がん性腹膜炎。急な増加は当日報告
尿量・排尿回数おむつの重さ(使用前後の差)や排尿回数を家族に記録してもらう尿量減少+体重増加は心不全・腎不全のサイン。逆に利尿薬で出すぎていないかも見る
呼吸数・SpO2・脈拍安静時に毎回同じ体位で呼吸数が20回/分を超えて増える、SpO2がいつもより2〜3%低い、脈が速い——浮腫の進行と同時に起きたら当日報告
夜の様子「横になると苦しくないか」「枕を高くしていないか」「夜中に起きて座っていないか」を家族に聞く起座呼吸・夜間発作性呼吸困難は心不全増悪の赤旗
圧痕の深さと戻り脛骨の前で親指を5秒押し、凹みの深さ(mm)と戻る時間(秒)を記録数値化しにくいが、同じ看護師が同じ場所で追えば変化がわかる。戻りが遅い深い圧痕は低アルブミン血症で多い

表3 体重が測れないときの代替指標。単独では弱いので、複数を組み合わせて「同じ方向に動いているか」を見ます。

体重が増えないのに悪化することもある るい痩が進む高齢者やがんの進行期では、筋肉や脂肪が減る分と体液が増える分が相殺され、体重が「変わらない」まま浮腫だけ進むことがあります。逆に、食事量が落ちて体重が減っているのに足がむくむ人は、低栄養による浮腫を疑います。体重は最強の指標ですが、症状と組み合わせて読むのが原則です。

SECTION 05 心不全を疑うとき——赤旗と、報告の型

日本の心不全患者は2020年時点で約120万人と推定され、高齢化に伴い2030年には130万人を超える推計があります(Okura 2008、国立循環器病研究センター)。心不全は「一度よくなっても増悪をくり返す病気」であり、増悪の多くは急な出来事ではなく、数日〜数週間かけた「じわじわ」で始まります。その「じわじわ」を家で最初に見る人が訪問看護師です。

赤旗何を意味するか訪問看護の動き
3日で2kg以上の体重増加体液の貯留が始まっている当日数字を添えて主治医へ。利尿薬の頓用指示があれば指示どおりに
横になると苦しい/夜中に座って過ごす肺うっ血(起座呼吸・夜間発作性呼吸困難)当日SpO2・呼吸数・体位を記録して報告。安静時の呼吸困難は救急要請も検討
尿量の減少、日中より夜の尿が多い腎血流の低下、夜間の体液の再分布数日内尿量・体重・血圧をセットで報告
食欲低下・腹部膨満・吐き気消化管や肝臓のうっ血。見落とされやすい増悪サイン数日内「食べられない」を胃腸の問題と決めつけない
頸静脈の張り、肝臓の腫れ、仙骨部の浮腫右心系のうっ血数日内寝たきりの人は足ではなく背中・仙骨部を見る
安静時の脈拍が速い、血圧の低下、手足の冷え心拍出量の低下(低灌流)——最も危険なパターン当日意識の変化や冷汗があれば救急要請
薬の飲み忘れ、塩分の多い食事、感染、貧血増悪の引き金。増悪の背景には理由がある記録引き金を報告に書くと、再発予防につながる

表4 心不全増悪の赤旗。出典:日本循環器学会/日本心不全学会「2025年改訂版 心不全診療ガイドライン」、ESC 2021ガイドライン、日本心不全学会『心不全手帳』。

報告は「数字と時系列」で——SBARの型

報告例(架空)

S(状況):〇〇さん、両下腿の圧痕性浮腫が先週より増えています。
B(背景):慢性心不全(HFpEF)で通院中。体重は9月8日まで52.0〜52.4kgで安定、9日53.0kg、10日53.6kg、本日11日54.5kg(朝・排尿後・同じ体重計)。9日から夜間に2回起きて座っているとご家族。尿量は「少なくなった気がする」。SpO2 94%(普段96〜97%)、呼吸数22回/分、血圧128/76、脈拍96。薬の変更なし。先週末に外食が2回。
A(評価):3日で2.1kgの増加と夜間の症状から、心不全の増悪を疑います。
R(提案):本日中の診察または利尿薬の調整の指示をお願いできますか。次回訪問を明日に前倒しし、体重・尿量・SpO2を再評価します。

ポイントは、「むくみが増えた」ではなく「何kgが何日で何kgになった」「普段の値は何か」を書くことです。主治医が電話口で判断できる材料は、数字と時系列だけです。

SECTION 06 制度の今——2026年の改定と、浮腫にかかわる公的しくみ

浮腫の観察と体重管理は、看護の基本であると同時に、制度の側からも後押しが強まっています。2026年6月1日に施行された令和8年度診療報酬改定と、以前からある療養費のしくみを整理します。

図5 浮腫・体重管理にかかわる制度メモ(2026年9月時点) 新設 2026年6月1日施行(医科) 心不全再入院予防継続管理料(B001-10) 急性心不全で入院した患者に、入院中(1:1,000点)と退院後の外来(2・3:月1回、1年を限度)で 多職種がガイドラインに沿った評価・療養指導を続けることを評価。算定は病院・診療所だが、 在宅で拾った体重・症状・服薬の情報が「継続管理」の材料になる。退院直後の1年は特に密に共有する 療養費 2008年〜/2020年4月拡大 弾性着衣(ストッキング・スリーブ)等の療養費支給 対象:がんのリンパ節郭清術後の四肢のリンパ浮腫、原発性の四肢のリンパ浮腫(2020年4月〜)、 慢性静脈不全による難治性潰瘍(2020年4月〜)。医師の「装着指示書」+領収書で保険者に申請 心不全や薬剤性の浮腫は対象外。購入前に主治医と保険者へ確認する 訪問看護 2026年6月1日〜 訪問看護の記録——時刻と「評価」を書き、2年保存 令和8年度改定で、記録書に訪問の開始・終了時刻と看護の評価を書くことが明確化され、 記録の保存期間は2年。浮腫の観察は「所見+数値+評価+報告先」まで書いて初めて記録になる 体重計は介護保険の福祉用具貸与の種目にない。車いす用体重計は購入か、通所先の測定値の共有で対応する

図5 出典:厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 個別改定項目」Ⅲ-1-⑭、同「訪問看護ステーション向け 令和8年度診療報酬改定について」(令和8年3月10日版)、同「四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給における留意事項について」(令和2年3月27日 保医発0327第7号)。

制度メモ:心不全再入院予防継続管理料とは 急性心不全(慢性心不全の急性増悪を含む)で入院した患者に対し、関係学会のガイドラインに基づいて心機能評価・原因精査・リスク評価を行い、薬物治療に加えて療養指導・食事指導・運動指導を個別に実施した場合の評価として、令和8年度改定で新設されました。入院中の「1」は1,000点(入院中1回)、退院後の外来の「2」は6回目まで700点・7回目以降225点、「3」は6回目まで400点・7回目以降225点で、いずれも初回算定月から1年を限度に月1回です。訪問看護ステーションが算定する点数ではありませんが、「退院後1年は病院・診療所が月1回、体重・症状・薬を評価し続ける」枠組みができたということです。在宅の体重表と症状記録は、その評価に直結する材料になります。

SECTION 07 訪問看護の動き方——見る・測る・聞く・伝える・つなぐ

ここまでを、訪問1回の中でできる5つの動きにまとめます。

図6 浮腫を見たときの訪問看護の5ステップ 1 見る 片側か両側か、圧痕性か、皮膚の色・熱感・傷・静脈瘤、寝たきりなら仙骨部・背中 「急に出たか」は本人・家族に必ず聞く。前回訪問時の記録と見比べる 2 測る 体重(同じ条件)、下腿周囲径、腹囲、SpO2、呼吸数、脈拍、血圧、体温 周囲径は脛骨粗面の10cm下。測れないものは代替指標(表3)を決めて、次回も同じ方法で 3 聞く 息切れ・夜の様子・尿量、食事と塩分、飲み忘れ、新しい薬・市販薬・湿布・漢方 座位時間も聞く。お薬手帳と残薬を実際に見る。「変わっていない」と言われても目で確認する 4 伝える SBARで数字と時系列で伝える。緊急度(当日/数日内/次回受診)を決めてから連絡 記録書には、所見・数値・評価・報告先と時刻を残す(2026年6月〜の記録要件) 5 つなぐ 家族・ヘルパー・ケアマネに「何kgで連絡するか」を渡し、体重表を1冊にまとめる 退院後1年は病院の継続管理(図5)と足並みをそろえ、体重表を受診時に持参してもらう

図6 5つの動きは訪問1回に収まります。とくに「4 伝える」で緊急度を自分で決めてから連絡する習慣が、チーム全体の動きを速くします。

むくみは「足の問題」ではなく、「体の水の収支」の問題です

院長・上松正和(放射線治療専門医)から、この記事でいちばん伝えたいこと

1
片側で急なら、その日のうちに血栓と感染は、訪問看護が最初に見つけて最初に止められる病気です。「様子を見ましょう」がいちばん危ない言葉になる場面です。
2
両側なら、体重を数字で追う足に見える前に体重は動きます。同じ体重計・同じ時刻・同じ服装で測り、目安の数字を主治医と決めて、家族にも渡してください。
3
薬が変わった日を、むくみ始めた日の横に並べる薬剤性の浮腫は、在宅で最も見落とされ、最も簡単に直る原因です。利尿薬を足す前に、原因の薬を疑ってください。
4
報告は「むくんでいます」ではなく「52.4kgが3日で54.5kg」主治医が電話で判断できる材料は数字と時系列だけです。数字にした瞬間、浮腫は「印象」から「所見」に変わります。

SECTION 08 訪問前後のチェックリスト(12項目)

  • 片側か両側か、急か慢性かを記録した
  • 片側+急の場合、赤み・熱感・痛み・発熱・左右差(周囲径)を確認し、当日報告した
  • 圧痕性か非圧痕性か、どの高さまでか(足首・下腿・大腿・仙骨部)を書いた
  • 体重を「同じ体重計・同じ時刻・同じ服装」で測り、日付と数字を表に書いた
  • 体重が測れない人は、代替指標(周囲径・腹囲・尿量・SpO2・呼吸数)を決めて同じ方法で測った
  • 夜の息苦しさ・起座呼吸・尿量減少・食欲低下を本人と家族に聞いた
  • お薬手帳と残薬を実物で確認し、新しい薬・市販薬・湿布・漢方の開始日を書いた
  • 食事と塩分、飲み忘れ、感染の有無など「増悪の引き金」を聞いた
  • 「当日・数日内・次回受診」のどれかを自分で決めてから連絡した
  • 報告はSBARで、普段の値と今回の値、変化の期間を数字で伝えた
  • 記録書に、所見・数値・評価・報告先と時刻を残した
  • 家族・ヘルパー・ケアマネに「何kgで、誰に連絡するか」を渡した

SECTION 09 よくある質問(Q&A)

Q1「3日で2kg」は誰にでも当てはまりますか?
A目安であって、絶対の基準ではありません。小柄な人や腎機能の悪い人ではもっと小さな変化で受診が必要なこともありますし、主治医が「1週間で3kg」「1日で1kg」など別の目安を示すこともあります。大事なのは、その人の目安を主治医と決めて、関係者全員が同じ数字を持つことです。
Q2デイサービスで測った体重と家の体重、どちらを使えばいいですか?
A混ぜないことが原則です。体重計と時刻が違えば1kg以上ずれます。両方あるなら、どちらか一方を「判断用」と決め、もう一方は参考値として別の列に書きます。同じ体重計の値の中で「3日で2kg」を見ます。
Q3むくみがあるのに体重が減っています。大丈夫ですか?
A大丈夫とは限りません。食事量が落ちて筋肉や脂肪が減り、そのうえで低栄養による浮腫が出ているパターンがあります。がんの進行期にも多い経過です。食事量・アルブミン値・体重の推移を添えて主治医に相談してください。
Q4足を高くしたり、マッサージをしたりしてよいですか?
A片側で急な腫れ(血栓の疑い)にはマッサージはしません。血栓を飛ばすおそれがあるためです。両側の慢性の浮腫や依存性浮腫では、下肢挙上や足関節の運動は有効です。リンパ浮腫の複合的治療(用手的リンパドレナージ等)は専門的な研修を受けた人が行うもので、自己流のマッサージは避けます。
Q5弾性ストッキングは誰にでも使えますか?
Aいいえ。動脈の血流が悪い人(閉塞性動脈疾患)や、コントロールされていない心不全、皮膚に感染や潰瘍がある人では避けるか慎重に使います。適応と圧の強さは主治医の判断で、療養費の対象になるのはリンパ浮腫と慢性静脈不全の難治性潰瘍に限られます(図5)。
Q6塩分や水分を制限すればよいですか?
A心不全では減塩が基本ですが、高齢者に厳しい制限をかけると食事量が落ちて低栄養になり、かえって浮腫や体力低下を招くことがあります。水分制限も一律ではなく、重症度や腎機能で主治医が決めます。訪問看護は「何をどれだけ食べているか」を具体的に持ち帰る役です。
Q7浮腫を見つけたら、訪問回数を増やせますか?
A状態の変化があれば、主治医に相談して指示書や訪問計画を見直します。医療保険では主治医の判断で特別訪問看護指示書(原則14日間・月1回)が出れば週4日以上の訪問が可能になり、介護保険ではケアマネジャーと相談してケアプランを変更します。まず主治医への報告が先です。
Q8本人や家族が体重を測ってくれません。どうすれば?
A「なぜ測るのか」を数字で伝えるのが近道です。「3日で2kg増えたら入院になる前に薬を調整できる」と、測ることの見返りを具体的に示します。それでも難しければ、訪問時のみの測定や表3の代替指標で追い、無理のない範囲で続けることを優先します。

SECTION 10 ご利用・採用のご案内

ふくろう訪問クリニック

福岡市早良区|訪問診療

  • 通院が難しい方への訪問診療
  • 緩和ケア・難病・精神科・認知症の在宅療養
  • 同一法人の訪問看護・リハビリと連携

むくみや体重の変化、薬の見直しについてもご相談ください。

https://fukurou.fukuoka.jp/

ふくろう訪問看護リハビリステーション

福岡市早良区|訪問看護・訪問リハビリ

  • 医療保険・介護保険による訪問看護
  • 理学療法士・作業療法士による訪問リハビリ
  • 体重や浮腫の観察、主治医への報告と連携

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入職祝い金 20万円直接応募限定

募集職種:看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(常勤・非常勤)

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※入職祝い金は、人材紹介会社を通さない直接応募の方が対象です。紹介手数料がかからない分を、応募者ご本人に還元しています。

SECTION 11 参考資料(一次資料・学会ガイドライン・査読論文)

  1. 日本循環器学会/日本心不全学会.2025年改訂版 心不全診療ガイドライン(2025年3月28日公開).https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Kato.pdf
  2. McDonagh TA, Metra M, Adamo M, et al. 2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure. Eur Heart J. 2021;42(36):3599-3726. doi:10.1093/eurheartj/ehab368
  3. 日本心不全学会.心不全手帳(第3版、2022年10月).https://www.jhfs.or.jp/topics/shinhuzentecho.html
  4. 日本循環器学会/日本肺高血圧・肺循環学会.2025年改訂版 肺血栓塞栓症・深部静脈血栓症および肺高血圧症に関するガイドライン(2025年3月).https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Tamura.pdf
  5. Wells PS, Anderson DR, Bormanis J, et al. Value of assessment of pretest probability of deep-vein thrombosis in clinical management. Lancet. 1997;350(9094):1795-1798. doi:10.1016/S0140-6736(97)08140-3
  6. Ely JW, Osheroff JA, Chambliss ML, Ebell MH. Approach to leg edema of unclear etiology. J Am Board Fam Med. 2006;19(2):148-160. doi:10.3122/jabfm.19.2.148 PMID:16513903
  7. Trayes KP, Studdiford JS, Pickle S, Tully AS. Edema: diagnosis and management. Am Fam Physician. 2013;88(2):102-110. PMID:23939641
  8. Largeau B, Cracowski JL, Lengellé C, Sautenet B, Jonville-Béra AP. Drug-induced peripheral oedema: an aetiology-based review. Br J Clin Pharmacol. 2021;87(8):3043-3055. doi:10.1111/bcp.14752 PMID:33506982
  9. Makani H, Bangalore S, Romero J, et al. Peripheral edema associated with calcium channel blockers: incidence and withdrawal rate—a meta-analysis of randomized trials. J Hypertens. 2011;29(7):1270-1280. doi:10.1097/HJH.0b013e3283472643 PMID:21558959
  10. Besharat S, Grol-Prokopczyk H, Gao S, Feng C, Akwaa F, Gewandter JS. Peripheral edema: a common and persistent health problem for older Americans. PLoS One. 2021;16(12):e0260742. doi:10.1371/journal.pone.0260742 PMID:34914717
  11. Okura Y, Ramadan MM, Ohno Y, et al. Impending epidemic: future projection of heart failure in Japan to the year 2055. Circ J. 2008;72(3):489-491. doi:10.1253/circj.72.489 PMID:18296852
  12. 国立循環器病研究センター.心不全と虚血性心疾患の疫学(2021年12月).https://www.ncvc.go.jp/coronary2/column/20211209_05.html
  13. 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定について(告示・通知・説明資料).https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  14. 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定 個別改定項目について(中央社会保険医療協議会 総会 令和8年2月13日答申)Ⅲ-1-⑭ 慢性心不全の再入院予防の評価の新設.https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655176.pdf
  15. 厚生労働省保険局医療課.令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】(令和8年3月10日版).https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
  16. 厚生労働省.「四肢のリンパ浮腫治療のための弾性着衣等に係る療養費の支給における留意事項について」の一部改正について(令和2年3月27日 保医発0327第7号).https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken13/dl/200327_02.pdf(一覧:治療用装具に係る療養費について
  17. 厚生労働省.循環器病対策推進基本計画(第2期、令和5年3月).https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_31654.html
  18. 医薬品医療機器総合機構(PMDA).医療用医薬品 添付文書等情報(アムロジピン、ピオグリタゾン等).https://www.pmda.go.jp/PmdaSearch/iyakuSearch/

本コラムは2026年9月15日時点の学会ガイドライン・公的資料・査読論文をもとに、訪問看護の実務向けに一般的な情報として作成したものです。個々の利用者の診断・治療・訪問の判断は、主治医の指示と各保険者の取扱いに従ってください。診療報酬・療養費の要件は改定や疑義解釈で変わることがあります。最新の一次資料をご確認ください。

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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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