別表7は「脊髄損傷」or「頸髄損傷」どっち?

「脊髄損傷の方なので、別表7で医療保険ですよね」——この一言が、返戻や保険者からの照会につながることがあります。別表第七に載っているのは「脊髄損傷」ではなく「頸髄損傷」。一文字の違いで、使う保険も、週に何日行けるかも変わります。この記事では、なぜその違いがあるのかを医学の側から説明し、指示書とレセプトのどこにどう書くかまでを、最新の告示・通知を出典つきで整理します。

この記事の結論(3行)

  1. 1別表第七にあるのは「頸髄損傷」だけ。胸髄・腰髄の損傷は載っていないので、65歳以上で要介護認定があれば訪問看護は介護保険になる。
  2. 2「頸」だけが特別扱いなのは、頸髄損傷が四肢麻痺に加えて呼吸・血圧・体温の調節を同時に失いやすく、継続的な医療処置と急変の見守りが要るから。告示は完全・不全や年数の条件をつけていない。
  3. 3まぎらわしいのは、在総管の重症患者リスト(別表第八の二)には「脊髄損傷」と書かれているから。指示書の傷病名に「脊髄損傷」としかなければ、損傷の高さを主治医に確認してから保険を決める。
SECTION 01

別表第七に載っているのは、どっちか

訪問看護の「厚生労働大臣が定める疾病等」——いわゆる別表第七は、医療保険の告示(特掲診療料の施設基準等 別表第七)と、介護保険の告示(厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等 第四号)の両方に同じ並びで書かれています。20項目のうち19番目が「頸髄損傷」、20番目が「人工呼吸器を使用している状態」です。介護保険側の告示の原文には「頚(けい)髄損傷及び人工呼吸器を使用している状態」と、読み仮名つきで書かれています。

告示の原文(介護保険側:平成27年厚生労働省告示第94号 第四号)

多発性硬化症、重症筋無力症、スモン、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症、ハンチントン病、進行性筋ジストロフィー症、パーキンソン病関連疾患(……)、多系統萎縮症(……)、プリオン病、亜急性硬化性全脳炎、ライソゾーム病、副腎白質ジストロフィー、脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症、慢性炎症性脱髄性多発神経炎、後天性免疫不全症候群、頚(けい)髄損傷及び人工呼吸器を使用している状態

医療保険側の別表第七は、これに「末期の悪性腫瘍」を加えた20項目です。

ここで注意したいのは、同じ「損傷」でも、別のリストでは別の言葉が使われていることです。訪問看護の現場でよく目にする3つのリストを並べると、次のようになります。

図1 同じ「損傷」でも、リストごとに書かれている言葉と範囲が違うどのリストか書かれている言葉範囲と、効く場面別表第七訪問看護の「厚生労働大臣が定める疾病等」★訪問看護で見るのはこれ頸髄損傷重症度・完全/不全・受傷からの年数の限定なし効く場面=訪問看護の保険(医療保険になる)と週4日以上などの枠別表第八の二在宅時医学総合管理料の「重症患者」脊髄損傷損傷の高さの限定なし(頸・胸・腰すべて)効く場面=医師の在総管・施設総管の区分。訪問看護の保険は決めない別表第五の三療養病棟入院基本料の医療区分2脊髄損傷(頸椎損傷を原因とする麻痺が四肢すべてに認められる場合に限る)効く場面=入院料の区分。四肢麻痺に限定する条件つき字面が似ていても、別のリストの言葉です。訪問看護の保険を決めるのは別表第七の「頸髄損傷」だけで、胸髄・腰髄の損傷は別表第七には載っていません。

図1 訪問看護の保険を決めるのは別表第七だけ。別表第八の二(在総管)と医療区分2は「脊髄損傷」と書かれ、範囲も条件も違う。

見るところ頸髄損傷(C1〜C8)胸髄・腰髄・仙髄の損傷
別表第七該当「頸髄損傷」として明記非該当人工呼吸器を使っていれば「人工呼吸器を使用している状態」で該当
介護保険の16特定疾病非該当非該当40〜64歳は介護保険を使えない
指定難病(医療費助成)非該当非該当別表第七に載っていても難病ではない
65歳以上・要介護認定あり医療保険で訪問看護介護保険で訪問看護(特別指示期間中を除く)
週4日以上・1日複数回・2か所原則不可特別訪問看護指示書の14日間は可
別表第八(特別管理加算)損傷の高さとは無関係。留置カテーテル・自己導尿・気管切開・人工呼吸・真皮を越える褥瘡などの「状態」で決まる

表1 頸髄損傷と、それ以外の脊髄損傷で違うところ・同じところ。

SECTION 02

なぜ取り違えるのか——4つの原因

  1. 1言葉が一文字しか違わない「頸髄」も「脊髄」も「髄」で終わり、口頭では「けいずい」「せきずい」と聞き分けにくい。「脊損(せきそん)」という略し方が定着していて、頸髄損傷も「脊損さん」と呼ばれる。
  2. 2在総管のリストには「脊髄損傷」と書いてある在宅時医学総合管理料の「重症患者」(別表第八の二)は、末期の悪性腫瘍・スモン・指定難病・後天性免疫不全症候群・脊髄損傷・真皮を越える褥瘡、という並びです。医師側の書類でこの並びを見慣れていると、訪問看護の別表第七も同じだと思い込みやすい。
  3. 3指示書の傷病名が「脊髄損傷」としか書かれていない退院サマリや指示書の傷病名欄に「脊髄損傷」「脊髄損傷後遺症」とだけあって、損傷の高さが読み取れないことがあります。高さが分からないまま「別表7」と判断するのが、いちばん多い間違いです。
  4. 4「歩けているから頸髄損傷ではないだろう」という思い込み日本の頸髄損傷の半数近くは歩行できる不全麻痺です(SECTION 04)。歩けていても診断名が頸髄損傷なら別表第七に該当します。逆に、車いすで全介助でも胸髄損傷なら該当しません。重さではなく高さで決まります。
SECTION 03

医学の視点——なぜ「頸」だけが特別なのか

脊髄は、上から頸髄(C1〜C8)・胸髄(T1〜T12)・腰髄(L1〜L5)・仙髄(S1〜S5)に分かれ、損傷した高さより下の運動・感覚・自律神経の働きが失われます。高さが上であるほど失われる範囲は広くなりますが、頸髄損傷が他と決定的に違うのは、「四肢が動かない」ことに加えて、生命維持に直結する3つの調節が同時に不安定になる点です。

図2 損傷の高さで、麻痺の範囲と「看護で問題になること」が変わる損傷の高さ麻痺の範囲頸髄損傷で特に問題になることC1〜C4頸髄四肢麻痺。横隔膜を動かす神経(C3〜C5)にかかるため、呼吸そのものが弱くなる人工呼吸器や気管切開が必要になりうる。痰の吸引、排痰の介助が毎日の医療になるC5〜C8頸髄四肢麻痺。横隔膜は動くが、肋間筋・腹筋が使えず咳が弱い咳で痰を出せず、肺炎・無気肺を起こしやすい。手の機能は高さで大きく違うT1〜T6胸髄対麻痺(両下肢+体幹の一部)自律神経過反射はT6以上の損傷で起こる。つまり頸髄損傷は全員がこの危険を持つT7〜T12胸髄対麻痺(両下肢)。体幹の安定は保たれやすい血圧の乱れは軽い。排尿・排便・褥瘡の問題は高さを問わず共通L1〜S5腰髄・仙髄下肢の一部の麻痺、膀胱・直腸の障害歩ける人も多いが、排尿・排便障害と褥瘡は残る頸髄損傷だけが、呼吸・血圧・体温の3つを同時に失いやすいこれが、別表第七が「脊髄損傷」ではなく「頸髄損傷」と書き分けている医学的な背景です(告示自体は理由を書いていません)。

図2 損傷の高さと看護の課題。横隔膜の神経(C3〜C5)は頸髄の中にあり、自律神経過反射の境界(T6)は頸髄より下にあるため、頸髄損傷は呼吸・血圧・体温の3つを同時に失いやすい。

1. 呼吸——横隔膜の神経はC3〜C5から出る

横隔膜を動かす横隔神経はC3〜C5の頸髄から出ています。C1〜C3の高位損傷では横隔膜が動かず、人工呼吸器や横隔神経ペーシングの対象になります。C4〜C5では横隔膜の力が弱く、C5より下の損傷でも、肋間筋と腹筋が使えないため肺活量が減り、咳の力が弱くなります。呼吸器合併症の危険は損傷の高さに直接比例し、高位頸髄損傷ほど肺炎や無気肺を起こしやすいことが総説で整理されています(Berlowitz 2016)。痰を出せない人に対する排痰介助・吸引・呼吸状態の観察は、退院後も毎日続く「医療」です。

2. 血圧——自律神経過反射はT6以上の損傷で起こる

膀胱の充満・便秘・褥瘡・爪の食い込みなど、損傷より下の刺激をきっかけに血圧が急上昇し、頭痛・発汗・徐脈を伴う自律神経過反射(autonomic dysreflexia)は、T6以上の損傷で起こる合併症です。米国の臨床実践ガイドライン(Consortium for Spinal Cord Medicine, 2020年第2版)は、T6以上の損傷者では起立性低血圧(収縮期20mmHg以上の低下)も起こりうるとして、高すぎる血圧と低すぎる血圧の両方への備えを求めています。頸髄損傷は全員がT6より上ですから、例外なくこの危険を持ちます。血圧測定と「原因の除去(導尿・摘便・体位)」が、看護の初動になります。

3. 体温——汗をかけず、震えられない

損傷より下の皮膚では発汗と血管の収縮・拡張が効かなくなるため、頸髄損傷では体温が環境温に引きずられます。夏の熱中症、冬の低体温、感染時に熱が出にくいことが重なり、「平熱が何度か」を知らないと発熱の判断ができません。

4. 高さを問わず共通する問題——排尿・排便・褥瘡

神経因性膀胱による自己導尿や留置カテーテル、排便コントロール、感覚のない部位の褥瘡は、胸髄・腰髄損傷でも同じように起こります。これらは別表第七ではなく別表第八(特別管理加算・長時間訪問看護加算の対象となる「状態」)で評価される項目です。つまり、制度は「高さで保険を決め(別表第七)、状態で管理を評価する(別表第八)」という二段構えになっています。

別表第七の他の19項目との共通点

別表第七に並ぶのは、ALS・多系統萎縮症・筋ジストロフィーなど、進行性で全身に及び、呼吸や嚥下の管理を含む継続的な医療処置が要る疾患です。頸髄損傷は進行性ではありませんが、「呼吸・自律神経・四肢」の障害を同時に抱え、急変の見守りが要る点で、この並びに置かれていると読めます。ただし告示は理由を書いていないので、これはあくまで医学的な読み解きです。

SECTION 04

日本の頸髄損傷は「高齢者の転倒・不全麻痺」が主役

2018年に全国の救急・急性期病院3,771施設を対象に行われた調査(回答2,804施設)では、外傷性脊髄損傷の年間発生率は人口100万人あたり49人、年齢の中央値は70歳で、70代が最多でした。損傷の高さは頸髄が88.1%を占め、そのうち骨折や脱臼を伴わない頸髄損傷が全体の62.3%。重症度はFrankel D(歩行できる不全麻痺)が46.3%で最も多く、原因の1位は平地での転倒(38.6%)でした(Miyakoshi 2021)。

図3 日本の外傷性脊髄損傷は「高齢者・頸髄・不全麻痺・転倒」が主役(2018年 全国調査)年間発生率 人口100万人あたり49人/年齢の中央値 70歳/男女比 3:1(回答2,804施設・4,603人)頸髄損傷の割合88.1%うち、骨折・脱臼のない頸髄損傷(全体に対する割合)62.3%Frankel D(歩行できる不全麻痺)46.3%Frankel C(歩けない不全麻痺)33.0%原因1位:平地での転倒38.6%原因2位:交通事故20.1%現場で出会う「頸髄損傷」は、若い人の完全四肢麻痺よりも、高齢者が転んで起きた不全麻痺のほうが多い、ということです。歩けている人でも診断名が頸髄損傷なら別表第七の対象になります。出典:Miyakoshi N, et al. Spinal Cord. 2021;59(6):626-634(Frankel Eを除く)

図3 全国調査(2018年)の主な数値。Frankel EはFrankelの分類で「神経症状なし」にあたり、この調査では除外されている。

この数字が示すのは、訪問看護で出会う「頸髄損傷」の多くが、若い頃の事故による完全四肢麻痺ではなく、加齢で狭くなった脊柱管を持つ高齢者が転倒して起きた不全麻痺だということです。歩行器で歩ける、手のしびれと巧緻性の低下が主な症状、という方も少なくありません。

ここが判断の分かれ目

別表第七の「頸髄損傷」には、完全・不全、四肢麻痺の有無、受傷からの年数といった条件がついていません。同じ告示の中でパーキンソン病には「ヤールⅢ以上かつ生活機能障害度Ⅱ以上」という条件がついていることと比べると、頸髄損傷の書き方が無条件であることが分かります。療養病棟の医療区分2が「頸椎損傷を原因とする麻痺が四肢すべてに認められる場合に限る」と限定しているのとも対照的です。

したがって、主治医が指示書の傷病名を「頸髄損傷」と診断していれば、歩けていても別表第七の対象です。逆に言えば、該当するかどうかを決めるのは訪問看護師の見立てではなく、主治医の診断名です。

SECTION 05

保険はどう決まるか——上から順に見る

訪問看護の保険は「年齢 → 要介護認定」の順で決まり、別表第七・特別訪問看護指示書・精神科訪問看護指示書の3つが例外として先に効きます。頸髄損傷と、それ以外の脊髄損傷を同じフローに載せると、分かれ道は1行目です。

図4 訪問看護の保険はどう決まるか(上から順に見る)順番に確かめること結果1指示書の傷病名が「頸髄損傷」(完全・不全、年数を問わない)→ 医療保険年齢・要介護認定を問わずいいえ ↓2人工呼吸器を使っている(睡眠時無呼吸のCPAPは含まない)胸髄損傷でもここで該当する→ 医療保険別表第七「人工呼吸器を使用している状態」いいえ ↓3特別訪問看護指示書の期間中(急性増悪・退院直後など)→ 医療保険指示書の日から14日間だけいいえ ↓440歳未満→ 医療保険介護保険の対象外いいえ ↓540〜64歳で、16特定疾病がない脊髄損傷は16特定疾病に含まれない→ 医療保険脊髄損傷単独なら介護保険は使えないいいえ ↓665歳以上(または特定疾病あり)で要介護・要支援の認定がある胸髄・腰髄損傷の高齢者はここに来る→ 介護保険認定がなければ医療保険「脊髄損傷(胸髄・腰髄)」は1行目で「いいえ」になり、下へ降りていきます。65歳以上で要介護認定があれば介護保険です。

図4 頸髄損傷は1行目で医療保険が確定する。胸髄・腰髄損傷は下へ降りて、65歳以上で要介護認定があれば介護保険になる。

40〜64歳の脊髄損傷の方が介護保険を使えないのは、脊髄損傷が16特定疾病に含まれていないからです。この年齢層の胸髄損傷では、要介護認定がないので訪問看護は医療保険(週3日まで)になり、必要なら特別訪問看護指示書で一時的に広げる形になります。一方、同じ年齢の頸髄損傷は別表第七で最初から医療保険・週4日以上が可能です。

SECTION 06

別表第七に該当すると何が変わり、何は変わらないか

図5 別表第七は「保険と回数」を変え、別表第八は「管理と加算」を変える別表第七に該当すると(頸髄損傷はそのまま該当)保険介護保険の認定があっても、訪問看護は医療保険で行う週の回数週3日までの原則が外れ、週4日以上の訪問ができる1日の回数必要に応じて1日2回・3回以上(難病等複数回訪問加算)事業所の数2か所のステーションから訪問できる。週7日の計画なら3か所複数名2人で訪問する複数名訪問看護加算の対象(同意が要件)別表第八に該当すると(頸髄損傷の人に多い「状態」)留置カテーテル膀胱留置カテーテル・胃ろうなど在宅自己導尿在宅自己導尿指導管理を受けている気管切開・人工呼吸気管カニューレ、在宅人工呼吸指導管理褥瘡真皮を越える褥瘡(NPUAP Ⅲ・Ⅳ度)人工肛門・人工膀胱設置している状態→ 特別管理加算(医療は届出が要件)・90分を超える長時間訪問看護加算の対象。別表第七だけでは算定できない

図5 別表第七は「保険と回数」、別表第八は「管理と加算」を変える。頸髄損傷では両方に該当することが多い。

項目別表第七だけ別表第八も頸髄損傷でのポイント
医療保険での訪問看護要介護認定があっても医療保険。ケアマネジャーにはケアプラン上の扱いを共有
週4日以上「該当=週4日」ではない。回数は状態と計画で決める(令和8年度改定で一律設定の禁止を明記)
1日2〜3回(難病等複数回訪問加算)朝の導尿・排痰、夕の体位変換など時間帯を分けた計画が立てられる
2か所(週7日計画なら3か所)他ステーションと分担するときは指示書の「他の訪問看護ステーション」欄と明細書の「他①」
複数名訪問看護加算体格が大きい・移乗が1人では危険な場合。利用者・家族の同意が要件
特別管理加算×留置カテーテル・自己導尿・気管カニューレ・在宅人工呼吸・真皮を越える褥瘡などの「状態」が要件。医療保険は届出が必要
長時間訪問看護加算(90分超)×別表第七だけでは算定できない。入浴+排便コントロールで90分を超える日は別表第八該当が前提

表2 別表第七で広がる枠と、別表第八で広がる枠は別物。

「別表7だから毎日入れる」ではない

令和8年度診療報酬改定(2026年6月1日施行)では、指定訪問看護は「利用者の心身の状況等に応じて妥当適切に行い、漫然かつ画一的なものとならない」こと、利用者の状況を踏まえずに一律に日数・回数・実施時間・人数を定めることは認められないことが明文化されました。別表第七は「週3日の上限を外す」制度であって、「週4日以上を約束する」制度ではありません。頸髄損傷の方の訪問回数は、排痰・導尿・排便・褥瘡・介護者の状況から計画書に理由を書いて決めます。

SECTION 07

指示書とレセプトのどこに、どう書くか

図6 「頸髄損傷」を、書類の3か所に同じ言葉で落とす1訪問看護指示書主たる傷病名「頸髄損傷」と書かれているか。損傷の高さ(C5など)と完全/不全が併記されていると看護計画に使える2訪問看護療養費明細書心身の状態「基準告示第2の1に規定する疾病等の有無」で「1 別表7」を選び、「該当する疾病等」にコード19(頸髄損傷)3訪問看護療養費明細書特記事項要介護・要支援の認定がある人を医療保険で算定するときは「5 介」。2か所目のステーションがあれば「1 他①」3か所の言葉が食い違うと、返戻や指導の指摘につながります。指示書に「脊髄損傷」としか書かれていないときは、レセプトを書く前に主治医へ確認します。

図6 傷病名・心身の状態・特記事項の3か所に、同じ「頸髄損傷」が通っているかを見る。

指示書の傷病名欄がこう書かれていたら別表第七対応
頸髄損傷(C5、不全)該当そのまま医療保険。レセプトの「該当する疾病等」にコード19
頸髄損傷後遺症・陳旧性頸髄損傷該当告示に受傷からの年数の条件はない。主治医が現在の傷病名として記載していれば該当
脊髄損傷(高さの記載なし)要確認損傷の高さを主治医に確認し、頸髄なら「頸髄損傷」と書き直してもらう。確認できるまで「別表7」にしない
頸椎損傷・頸椎骨折要確認骨・靭帯の損傷を指す言葉で、脊髄の損傷を含むとは限らない。麻痺があるなら主治医に「頸髄損傷」の診断の有無を確認
頸椎症性脊髄症・後縦靭帯骨化症別の病名変性・圧迫による脊髄症で、別表第七の文言とは異なる。転倒で頸髄損傷を合併したかどうかは主治医の判断
胸髄損傷+在宅人工呼吸該当「人工呼吸器を使用している状態」(コード20)で別表第七。同時に別表第八(在宅人工呼吸指導管理)にも該当

表3 傷病名の書かれ方と、そのときの動き。どのケースでも該当の判断は主治医の診断名に基づく。

明細書「心身の状態」欄の記載要領(抜粋)

「訪問看護療養費に係る訪問看護ステーションの基準等」(平成18年厚生労働省告示第103号)第2の1に規定する疾病等の有無について、「1 別表7」、「2 別表8」又は「3 無」の該当する数字を○で囲むこと。……その利用者が該当する全ての疾病等について次の表に掲げる該当するコードを、「該当する疾病等」の欄に記載すること。

コード表では19が「頸髄損傷」、20が「人工呼吸器を使用している状態の者」。別表第八に該当する状態があれば、そのコード(41〜57)も併記します。

介護保険で訪問看護を受けていた方が、転倒して頸髄損傷になり退院してきた場合は、退院日から訪問看護は医療保険に切り替わります。介護保険の他サービス(ヘルパー・福祉用具など)はそのまま介護保険で続くので、ケアマネジャーには「訪問看護だけが医療保険になる」ことと、その根拠(別表第七・頸髄損傷)を文書で伝えておくと、給付管理の混乱を防げます。

SECTION 08

現場でつまずきやすい6つの場面

  1. 1「脊損」の一言で別表7と決めてしまった退院前カンファレンスで「脊損の方です」と聞いた段階では、高さは分かりません。指示書が届いてから傷病名で確認します。
  2. 2歩けている方を「頸髄損傷ではない」と判断した高齢者の頸髄損傷は不全麻痺が多く、杖歩行の方もいます。該当の根拠は診断名で、看護師の重症度の見立てではありません。
  3. 365歳以上の胸髄損傷を医療保険で請求した胸髄損傷は別表第七に載っていないので、要介護認定があれば介護保険。医療保険で請求すると返戻になります。
  4. 4別表第七だけで特別管理加算・長時間訪問看護加算を算定したどちらも別表第八の「状態」が要件です。自己導尿・留置カテーテル・褥瘡などが指示書に書かれているかを確認します。
  5. 5要介護者を医療保険で算定したのに特記事項「5 介」を落とした介護保険の認定がある方を医療保険で算定するときは、明細書の特記事項「5 介」を選びます。
  6. 6交通事故が原因の頸髄損傷で特記事項を落とした第三者の不法行為(交通事故など)による傷病では、明細書の特記事項に「10 第三」を記載します。保険者の第三者行為届の扱いも確認します。
当ステーションの視点

一文字の違いが、週3日と毎日を分ける

制度の言葉を正確に読む理由は、請求を間違えないためだけではありません。頸髄損傷の方が本来使えるはずの「週4日以上・1日複数回」の枠を見落とすと、排痰や導尿の時間帯を家族だけで埋めることになり、肺炎や自律神経過反射の発見が遅れます。逆に、胸髄損傷の方を医療保険と思い込むと、介護保険での計画が組めないまま時間が過ぎます。

  1. 1指示書に「脊髄損傷」としかなければ、高さを確認してから保険を決める電話一本で済む確認を後回しにしない。「頸髄」と分かれば指示書の傷病名を書き直してもらい、3か所の言葉を揃える。
  2. 2「別表7該当」は回数を約束しない。回数は状態から逆算する排痰の回数、導尿の時刻、排便コントロールの日、介護者が眠れる時間。これらを計画書に書いて、週4日以上や1日複数回の理由にする。
  3. 3頸髄損傷の観察は「呼吸・血圧・体温・膀胱・皮膚」の5つを、その人の平常値で読む血圧は上がりすぎも下がりすぎも起こる。発熱は出にくい。基準値ではなく、その人の普段との差で判断する。
  4. 4胸髄・腰髄損傷で介護保険でも、使える枠は残っている特別訪問看護指示書の14日間、別表第八該当なら介護保険でも特別管理加算。「別表7ではないから何もできない」ではない。
SECTION 09

受け入れ前のチェックリスト

  • 指示書の傷病名は「頸髄損傷」か「脊髄損傷」か、字面をそのまま読んだ
  • 「脊髄損傷」としか書かれていないなら、損傷の高さを主治医に確認した
  • 完全・不全、歩行の可否で該当を判断していない(判断の根拠は診断名)
  • 人工呼吸器の使用があれば、高さに関係なく別表第七(コード20)とした
  • 65歳以上・要介護認定ありの胸髄・腰髄損傷は介護保険にした
  • 40〜64歳の脊髄損傷は特定疾病でないので医療保険にした
  • 別表第八の状態(自己導尿・留置カテーテル・気管切開・褥瘡など)を指示書で確認した
  • 特別管理加算・長時間訪問看護加算は別表第八該当を根拠にしている
  • 明細書の心身の状態は「1 別表7」+コード、要介護者なら特記事項「5 介」
  • 週4日以上・複数回の理由を計画書に書いた(一律設定にしていない)
  • 2か所目のステーションがあれば、指示書の欄と明細書の「他①」を揃えた
  • ケアマネジャーに「訪問看護だけ医療保険」の根拠を文書で伝えた
SECTION 10

よくある質問

Q1歩ける不全麻痺の頸髄損傷も別表第七に入りますか?
A入ります。告示の「頸髄損傷」には重症度や完全・不全の条件がなく、療養病棟の医療区分2のような「四肢すべてに麻痺」という限定もありません。主治医が傷病名を頸髄損傷としていれば該当します。保険者によって照会が来ることはあるので、指示書の傷病名を根拠として示せるようにしておきます。
Q2受傷から10年以上たった頸髄損傷(陳旧性)でも該当しますか?
A告示に受傷からの期間の条件はありません。主治医が現在の傷病名として「頸髄損傷(後遺症)」を指示書に記載していれば該当します。
Q3「頸椎損傷」「頸椎症性脊髄症」と書かれている場合は?
A頸椎損傷は骨や靭帯の損傷を指し、脊髄の損傷を含むとは限りません。頸椎症性脊髄症や後縦靭帯骨化症は変性・圧迫による脊髄症で、別表第七の文言とは別の病名です。麻痺があるなら、主治医に「頸髄損傷」の診断があるかを確認し、あれば傷病名を書き直してもらいます。
Q4胸髄損傷で人工呼吸器を使っている方は?
A別表第七の「人工呼吸器を使用している状態」で該当します(睡眠時無呼吸症候群のCPAPは含みません)。同時に別表第八の「在宅人工呼吸指導管理を受けている状態」にも該当するので、特別管理加算の対象にもなります。
Q565歳以上の胸髄損傷の方で、週4日以上入りたいときは?
A要介護認定があれば介護保険なので、まず介護保険の訪問看護で回数を組みます(介護保険には週の上限はありません)。急性増悪・退院直後などで医療の頻回訪問が要るときは、特別訪問看護指示書(14日間)で医療保険に切り替えられます。
Q6頸髄損傷は難病医療費助成の対象ですか?
A対象ではありません。別表第七は「訪問看護の枠を広げる疾病等」のリストで、指定難病のリストとは別のものです。医療費の助成は、重度障がい者医療費助成や高額療養費など別の制度で考えます。
Q7医師の在総管では「脊髄損傷」が重症患者に入っているのに、訪問看護では違うのはなぜ?
Aリストの目的が違うからです。別表第八の二は医師の管理料の区分を決めるリストで、損傷の高さを問わず「脊髄損傷」としています。訪問看護の別表第七は訪問回数と保険を変えるリストで、呼吸・自律神経の管理が要る「頸髄損傷」に限っています。同じ人でも、医師側は別表第八の二、訪問看護側は別表第七と、見るリストが違います。
Q8理学療法士による訪問も医療保険になりますか?
Aなります。別表第七に該当する方の訪問看護は、看護師の訪問もリハビリ職(理学療法士・作業療法士・言語聴覚士)の訪問も同じ医療保険(訪問看護基本療養費)で行います。介護保険の訪問リハビリと混同しないよう、ケアマネジャーと共有します。
SECTION 11

ご利用・採用のご案内

ふくろう訪問クリニック

福岡市早良区|訪問診療

  • 緩和ケア・難病・精神科・認知症の訪問診療
  • 頸髄損傷・脊髄損傷の在宅療養(呼吸・排尿・褥瘡の管理、訪問看護指示書の作成)についてもご相談ください

同一法人に訪問看護リハビリステーションがあり、指示書の傷病名や別表第七の該当について、医師と看護師の間で確認しやすい体制です。

https://fukurou.fukuoka.jp/

ふくろう訪問看護リハビリステーション

福岡市早良区|訪問看護・訪問リハビリ

  • 看護師・理学療法士・作業療法士による訪問
  • 神経難病・末期がん・精神科の訪問看護に対応
  • 医療保険・介護保険どちらの訪問看護もご相談ください

「別表第七に入るのか分からない」という段階のご相談もお受けしています。

https://nurse-fukurou.jp/
採用のご案内

いっしょに働く仲間を募集しています

人材紹介会社を通さない直接応募は、日程が早く決まり、条件を決める人と直接相談できます。紹介手数料がかからないぶんを、入職祝い金として求職者の方に還元しています。

ふくろう訪問看護リハビリステーション

入職祝い金 20万円直接応募限定
看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(常勤・非常勤)
電話 092-834-8581(平日9:00〜18:00)
メール nurse@fukurou.fukuoka.jp
求人情報 https://nurse-fukurou.jp/recruit/

ふくろう訪問クリニック

入職祝い金 20万円直接応募限定
医師(常勤・非常勤)・看護師・医療事務
電話 092-407-7337
メール clinic@fukurou.fukuoka.jp
採用情報 https://fukurou.fukuoka.jp/recruitment/
SECTION 12

参考資料

  1. 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等」(平成27年3月23日厚生労働省告示第94号)第四号(訪問看護費の注1の厚生労働大臣が定める疾病等)、第六号・第七号(特別管理加算)、第八号(特別訪問看護指示書)。https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82ab4583&dataType=0&pageNo=1
  2. 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」(令和8年3月10日版)。指定訪問看護の日数等を一律に定めることは認められない旨の記載。https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
  3. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定 8.質の高い在宅医療の推進」。在宅時医学総合管理料の重症度の高い患者(別表第八の二)=末期の悪性腫瘍、スモン、指定難病、後天性免疫不全症候群、脊髄損傷、真皮を越える褥瘡ほか。https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686053.pdf
  4. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(告示・通知の掲載ページ。特掲診療料の施設基準等 別表第七・別表第八、訪問看護療養費の留意事項通知)。https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  5. 厚生労働省「訪問看護療養費請求書等の記載要領について」(平成18年3月30日保医発第0330008号、平成30年改定後の別添3抜粋)。「心身の状態」欄のコード表(19 頸髄損傷、20 人工呼吸器を使用している状態の者)、特記事項「5 介」「10 第三」。https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000205740.pdf
  6. 厚生労働省「療養病棟入院基本料 医療区分2(別表第五の三)の項目の定義・留意点」。「脊髄損傷(頸椎損傷を原因とする麻痺が四肢すべてに認められる場合に限る。)」。https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken15/dl/h24_02-07-43.pdf
  7. 厚生労働省「訪問看護のしくみ(訪問看護制度の概要)」。医療保険の対象者と別表第七の扱い。https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000123638.pdf
  8. 近畿厚生局「訪問看護療養費の取扱いの理解のために」(令和3年度)。基準告示第2の1に規定する疾病等の利用者の取扱い。https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/gyomu/gyomu/hoken_kikan/kango/3nenndohoumonnkangorikainotameni.pdf
  9. 全国訪問看護事業協会「訪問看護療養費明細書に関する重要なお知らせ」(2018年5月15日)。https://www.zenhokan.or.jp/new/new659/
  10. 日本訪問看護財団「厚生労働大臣が定める疾病等」について(医療保険・介護保険の告示の対照)。https://jvnf.or.jp/shippei100420.pdf
  11. Miyakoshi N, Suda K, Kudo D, et al. A nationwide survey on the incidence and characteristics of traumatic spinal cord injury in Japan in 2018. Spinal Cord. 2021;59(6):626-634. doi:10.1038/s41393-020-00533-0. PMID 32782342. https://www.nature.com/articles/s41393-020-00533-0
  12. Berlowitz DJ, Wadsworth B, Ross J. Respiratory problems and management in people with spinal cord injury. Breathe (Sheff). 2016;12(4):328-340. doi:10.1183/20734735.012616. https://publications.ersnet.org/content/breathe/12/4/328
  13. Consortium for Spinal Cord Medicine. Evaluation and Management of Autonomic Dysreflexia and Other Autonomic Dysfunctions: Preventing the Highs and Lows. 2nd ed. Washington, DC: Paralyzed Veterans of America; 2020. https://pva.org/wp-content/uploads/2023/01/Autonomic-Dysreflexia-CPG-COMBINED_v2.pdf
  14. Krassioukov A, Warburton DE, Teasell R, Eng JJ. A systematic review of the management of autonomic dysreflexia after spinal cord injury. Arch Phys Med Rehabil. 2009;90(4):682-695. doi:10.1016/j.apmr.2008.10.017.
  15. 関連コラム:訪問看護の医療保険・介護保険・公費の見分け方 https://nurse-fukurou.jp/786//訪問看護指示書の読み方・注意点 https://nurse-fukurou.jp/820/

本記事は2026年9月7日時点で公表されている告示・通知・論文に基づいて作成しています。別表第七への該当は主治医の診断名に基づき、保険者・審査支払機関の判断が分かれる場合は個別に確認してください。診療報酬・介護報酬の内容は改定により変わることがあります。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

目次