訪問看護指示書の読み方・注意点

訪問看護指示書の読み方・注意点
――1枚の紙が「訪問できる範囲」を決めている
訪問看護指示書は、事務手続きの書類ではありません。その利用者にどの保険で、週何日、誰が、何をしに行けるのかを決めている法的な根拠です。指示書がなければ訪問看護は提供できず、記載が実態と食い違っていれば、算定できるはずの加算が取れなくなったり、逆に返戻・過誤の対象になったりします。
ここでは、様式(別紙様式16)の欄をひとつずつ上から追いながら、「どこを見れば何が決まるのか」「主治医に確認すべきなのはどんなときか」を整理しました。あわせて、令和8年度診療報酬改定(2026年6月1日施行)で指示書まわりに入った変更点もまとめています。
この記事の要点
- 指示期間は最長6か月。期間の記載がないものは「交付日から1か月」の指示として扱われる。
- 指示書を出せるのは主治医ひとり。複数の医師から受け取った指示書を並行して使うことはできない。
- 主たる傷病名・褥瘡の深さ・装着医療機器の3欄で、医療保険か介護保険か、週3日か週4日以上か、特別管理加算が取れるかが決まる。
- リハビリ職が訪問するなら、「1日あたり◯分を週◯回」の記載が必須。空欄なら訪問の根拠がない。
- 令和8年度改定で、指示書の様式から押印欄が削除され、指示書は「記録の整備」の対象として2年間の保存が義務になった。
01まず全体像──指示書は5種類ある
「指示書」と一言で呼んでいますが、実務で扱う書類は5種類あります。有効期間と、それによって開く「訪問の枠」がそれぞれ違います。手元の1枚がどれなのかを取り違えると、訪問計画そのものが崩れます。
図1:指示書の種類と有効期間。様式16は「訪問看護指示書」と「在宅患者訪問点滴注射指示書」が1枚に同居しているため、どちらの指示なのかを○で囲んで示すことになっている(右上の注記)。両方に印がなければ、まず確認が必要。
02受け取ったら最初に見る3か所
細かい記載を読む前に、「使える指示書かどうか」を決める3点を先に確認します。ここが崩れていると、以下をいくら丁寧に読んでも意味がありません。
① 誰が書いたか(医師氏名・医療機関名)
指示書を交付できるのは、その利用者の主治医であって、保険医療機関の保険医に限られます。介護老人保健施設・介護医療院の医師も交付できますが、退所時に限られます。
そして重要なのが、複数の医師から交付された指示書に基づいて訪問看護を行うことはできないという点です。複数の疾患で複数の医療機関にかかっている利用者では、原則として「訪問看護が必要となっている主傷病の診療を担う主治医」の指示書1枚で動きます。例外は、同一の医療機関の同一診療科で複数の医師が共同で主治医を務めている場合だけです。
② いつからいつまでか(訪問看護指示期間)
指示期間は6か月以内で、主治医が設定します。1か月の指示を行う場合には有効期間の記載を要しないとされているため、期間欄が空欄の指示書は「交付日から1か月」の指示として扱われます。実務上は、月末で切れるように設定するか、翌月1日から起算するかで請求の切れ目が変わるので、ステーション側から希望を伝えておくとトラブルが減ります。
なお、交付後でも主治医の判断で期間を変更できます。状態が落ち着いて訪問頻度を下げる、逆に延長する、といった変更は指示書の出し直しではなく期間変更で対応できる場面があります。
③ 宛先(事業所名)
最下段の「事業所 殿」が自ステーション名になっているかを確認します。複数のステーションが入る利用者では、それぞれのステーション宛の指示書が必要です。さらに、別表第七・別表第八に該当する利用者などで2か所が入る場合、それぞれの指示書に「他のステーションにも指示書を交付している旨とその名称」を記載することとされています。指示書の下から2番目にある「他の訪問看護ステーションへの指示」欄がそれにあたります。
03欄ごとの読み方(様式16を上から順に)
ここからは実際の様式に沿って、上から順に見ていきます。色のついた欄ほど、算定と直結します。
用紙の最上部に2段あります。点滴注射指示期間は7日以内で、訪問看護指示期間とは別物です。点滴の指示を受けたら、その7日間のうち3日以上、患家を訪問して点滴注射を実施する必要があります。実施できなかった場合や終了した場合は、速やかに主治医へ連絡します(電話等で差し支えありません)。
また、点滴注射を実施した利用者は別表第八の「在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者」に該当するため、週4日以上の訪問や特別管理加算の対象になります。記録書には点滴注射指示書を添付し、実施内容を記録します。
この記事でいちばん重要な欄です。ここに書かれた病名で、医療保険か介護保険か、週3日までか週4日以上かが決まります。
- 別表第七に該当する疾患(末期の悪性腫瘍、ALS、パーキンソン病関連疾患〈ヤール3以上かつ生活機能障害度Ⅱ度・Ⅲ度〉、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、人工呼吸器を使用している状態など)なら、要介護認定があっても医療保険の訪問看護になり、週4日以上・1日複数回・2か所併用の枠が開きます。
- 病名が略称・あいまいで別表第七に当たるか判断できないときは、推測で処理せず主治医に確認します。とくにパーキンソン病は重症度の記載がないと判定できません。
- 傷病名コードは、原則として主たる傷病名について記載することとされています。医療機関の独自様式を使っている場合、コード欄が無いことがあるので注意してください。
「病状・治療状態」欄も併せて読みます。たとえば超重症児・準超重症児かどうかは、この欄などに明記されている必要があります(ステーション側が判定基準に基づいて評価し、報告書で主治医に報告・確認する形でも差し支えないとされています)。
訪問時の観察項目そのものです。麻薬、抗凝固薬、インスリン、抗パーキンソン病薬など、時刻が効果を左右する薬があるかをここで把握します。
要介護認定の状況は、介護保険と医療保険のどちらで訪問するかの入口です。要支援・要介護の認定があれば原則は介護保険、認定がなければ医療保険。ただし別表第七や特別訪問看護指示書があれば医療保険が優先されます(次章の図2を参照)。
寝たきり度・認知症の状況は、褥瘡リスクの評価や、他職種と共有する状態像の基準になります。訪問看護管理療養費の「安全な提供体制の整備」でも、日常生活の自立度が低い利用者について褥瘡の危険因子の評価を行うことが求められています。
チェックが付いているかどうかで、次の3つが変わります。
- 別表第八(真皮を越える褥瘡の状態)に該当 → 週4日以上の訪問、2か所のステーションの併用が可能に
- 特別管理加算(月2,500円)の対象に
- 特別訪問看護指示書を月2回交付できる対象に(気管カニューレ使用者と、真皮を越える褥瘡の状態にある者のみ)
「真皮を越える褥瘡」の判定基準は、NPUAP分類Ⅲ度またはⅣ度/DESIGN-R2020分類のD3・D4・D5です。特別管理加算を算定する場合は、週1回以上、褥瘡の状態の観察・アセスメント・評価(深さ、滲出液、大きさ、炎症・感染、肉芽組織、壊死組織、ポケット)を行い、発生部位と実施したケアを記録書に記録する必要があります。
ここにチェックが入っているかどうかは、ほぼそのまま算定に直結します。人工呼吸器や在宅酸素、中心静脈栄養、経管栄養、留置カテーテル、気管カニューレ、人工肛門・人工膀胱などは、指導管理の実施と併せて別表第八の判定材料になります。
- 別表第八に該当 → 週4日以上の訪問看護、特別管理加算 月2,500円
- そのうち別表第八の第1号(在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法注射指導管理、在宅強心剤持続投与指導管理、在宅気管切開患者指導管理を受けている状態/気管カニューレ・留置カテーテルを使用している状態)に該当 → 特別管理加算 月5,000円
- 経管栄養や留置カテーテルの「サイズ」「◯日に1回交換」欄が空欄だと、交換の指示が成立しません。訪問時に困る欄なので、空欄はその場で確認を。
Ⅰ 療養生活指導上の留意事項:血圧や体重の管理目標、food/水分制限、活動制限、感染対策など、日々の看護の指針になる部分です。ここが「特になし」だけの指示書は、実際には計画を立てにくくなります。
Ⅱ-1 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が行う訪問看護:「1日あたり( )分を週( )回」の記載がなければ、リハビリ職は訪問できません。ここが空欄のまま訪問して算定するのは、根拠のない訪問になります。
Ⅱ-2 褥瘡の処置等/Ⅱ-3 装着・使用医療機器等の操作援助・管理:処置の具体的な内容(洗浄・被覆材・軟膏の種類と頻度)が書かれていない場合は、そのつど確認が必要になります。ステーション側から処置内容を提案し、指示書に反映してもらうほうが現場は動きやすくなります。
投与薬剤、投与量、投与方法(点滴速度、ルートの種類)が具体的に書かれているかを確認します。薬剤料は、在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定する保険医療機関側で算定され、必要な回路等の費用も当該管理指導料に含まれています。ステーション側で薬剤を用意する運用にはなりません。
通知上、緊急時の連絡先として、診療を行った保険医療機関の電話番号等を必ず記載したうえで交付することとされています。空欄で届いた場合は、様式の不備として確認して差し支えありません。夜間・休日にどこへつなぐのか、主治医不在時は誰が代診するのかが書かれていないと、24時間対応体制が実質的に機能しません。
薬の相互作用・副作用、薬物アレルギーの既往、定期巡回・随時対応型訪問介護看護や複合型サービス利用時の留意事項を書く欄ですが、実務上はここが「加算の根拠」になることがあります。
- 複数名精神科訪問看護加算は、医師が複数名訪問の必要性を認め、精神科訪問看護指示書にその旨の記載がある場合に算定できます。
- 精神科訪問看護基本療養費の30分未満の区分は、短時間訪問の必要性を医師が認め、精神科訪問看護指示書に明記されている場合にのみ算定できます。
「筋緊張が強く1名では体位変換が困難なため複数名で対応してください」といった具体的な記載を、主治医に依頼しておく価値があります。
複数ステーションが関わる場合の記載欄です。2か所が入れるのは、①別表第七・別表第八に該当する利用者、②特別訪問看護指示書の交付対象で週4日以上の訪問が計画されている期間、のいずれか。3か所が入れるのは、別表第七・別表第八に該当し、かつ週7日の訪問が計画されている期間に限られます。
下段の「たんの吸引等実施のための訪問介護事業所への指示」は、看護・介護職員連携強化加算を算定する場面と重なります。介護職員が喀痰吸引や経管栄養を実施する体制があるかを確認しておきます。
あわせて、訪問看護計画書・報告書(精神科を含む)についても、書面の場合に署名・押印を求めないこととされ、様式例から押印欄が削除されています。
交付日は、その指示が「診療に基づいて」出されたことを示す日付です。特別訪問看護指示書では、この日が14日間の起算日になります。
04指示書から保険と訪問回数を決めるまで
欄の読み方が分かったら、実際の判定に落とし込みます。順番を間違えないことがポイントです。
図2:保険の判定順。介護保険の認定があっても、①〜③に当たれば医療保険が優先します。40〜64歳で16特定疾病により要介護認定を受けている場合も、末期がんなどで別表第七に該当すれば医療保険です。
図3:訪問の枠が広がる3つの条件。特別訪問看護指示書の交付日を含む週と14日目を含む週は、特別指示期間中に算定した日を除いて週3日が限度になります。週の途中でまたぐときの数え方に注意してください。
05令和8年度改定で指示書まわりはこう変わった
| 項目 | 改定前 | 令和8年6月1日以降 |
|---|---|---|
| 指示書の押印 | 「医師氏名 印」 | 押印欄を削除し「医師署名(又は記名押印)」に。特別・精神科・精神科特別の各指示書も同様。従前様式も使用可 |
| 計画書・報告書 | 署名・押印欄あり | 書面の場合に署名・押印を求めないこととし、様式例から押印欄を削除 |
| 指示書の保存 | 記録の整備の対象が限定的 | 訪問看護記録書・訪問看護指示書・計画書・報告書等を整備し、完結の日から2年間保存することを明記 |
| 別表第八 | 10の指導管理 | 在宅難治性皮膚疾患処置指導管理を追加 |
| 訪問の中身 | ― | 漫然かつ画一的な訪問の禁止を明記。一律に日数・回数・実施時間・人数を定めることは認められない |
| 実施時間 | ― | 訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅱ)は30分〜1時間30分程度が標準。記録書に実際の開始・終了時刻を記載 |
| 服薬状況 | 心身の状況等の把握 | 服薬状況(残薬を含む)の把握を追加。主治医へ情報提供、薬局への提供も望ましい |
| オンライン診療 | ― | 訪問看護遠隔診療補助料(2,650円・月1回)を新設。有効な訪問看護指示書の交付を受けている利用者のみ算定可 |
※表は横にスクロールできます
06指示書を受け取ったときのチェックリスト
返送・確認が必要かを判断する12項目
- 宛先の事業所名は自ステーションになっているか
- 訪問看護指示書と点滴注射指示書のどちらなのかが○で示されているか
- 指示期間の開始日・終了日が入っているか(6か月以内。空欄は交付日から1か月)
- 前回の指示期間と切れ目・重複がないか
- 主たる傷病名が具体的に書かれ、傷病名コードがあるか
- 別表第七に該当し得る病名なら、重症度(ヤール分類・生活機能障害度など)まで書かれているか
- 装着・使用医療機器等のサイズ・交換頻度が埋まっているか
- 褥瘡がある場合、DESIGN-R/NPUAPの深さにチェックがあるか
- リハビリ職が訪問するなら、「1日あたり◯分を週◯回」が記載されているか
- 緊急時の連絡先(医療機関の電話番号等)と不在時の対応法が記載されているか
- 複数名訪問・短時間訪問が必要なら、その旨が記載されているか
- 医師の署名または記名押印があるか(押印欄のない令和8年度様式でも可)
07現場でよく出る疑問
指示書を取りに行ったり、郵送してもらったりする費用は、どちらが負担するのですか。
郵送代が発生した場合は、訪問看護指示書を交付する保険医療機関が負担することとされています。
整形外科と内科の両方にかかっている利用者です。どちらの指示書で訪問しますか。
原則として、訪問看護が必要となる主傷病の診療を担う主治医が交付した指示書に基づいて訪問し、訪問看護療養費を算定します。両方から指示書をもらって併用することはできません。
精神疾患のある利用者が、内科にもかかっています。精神科訪問看護指示書で訪問できますか。
できます。精神疾患の診療を行う主治医(精神科標榜医療機関の精神科担当医)が、他科の医師から提供された診療情報を踏まえて精神科訪問看護の必要性を医学的に判断し、精神科訪問看護指示書を交付した場合に可能です。この場合の訪問は精神科訪問看護として扱われ、精神科訪問看護基本療養費の算定対象になります(認知症は精神科訪問看護の対象から除かれます)。
退院日に訪問して退院支援指導加算を算定したいのですが、指示書は間に合いますか。
退院支援指導加算は、利用者の退院時に訪問看護指示書の交付を受けている場合に算定できます。退院前カンファレンスの段階で指示書の交付を依頼しておくのが確実です。
指示期間の途中で訪問回数を増やしたい/減らしたいときは、指示書を出し直すのですか。
主治医は、指示書の交付後であっても、利用者の病状等に応じてその期間を変更できるとされています。一時的に頻回の訪問が必要になった場合は、期間の変更ではなく特別訪問看護指示書の交付を受けるのが本筋です。緊急訪問を行った後は、速やかに主治医へ病状を報告し、必要な場合は特別訪問看護指示書の交付を受けて計画を見直します。
医療機関独自の様式で届きました。有効ですか。
通知では「別紙様式16を参考に作成した訪問看護指示書」とされており、独自様式でも内容が備わっていれば差し支えありません。ただし、傷病名コード欄や褥瘡の深さの分類など、改定で追加された項目が抜けていないかは確認が必要です。
参考にした行政資料(2026年7月28日確認)
- 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(告示・通知一覧。診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について〈令和8年3月5日保医発0305第6号〉別添1のC007訪問看護指示料、訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について〈令和8年3月5日保発0305第19号〉等を含む)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html - 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」(令和8年3月10日版。指示書の押印欄削除、別表第八への在宅難治性皮膚疾患処置指導管理の追加、記録の整備、適正な訪問看護の推進、訪問看護遠隔診療補助料)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf - 近畿厚生局「よくある質問(訪問看護療養費の算定について)※令和8年6月1日〜適用分」(指示書を交付できる医師、複数医師からの指示、点滴注射指示書、別表第七・第八、複数ステーション、特別管理加算、退院支援指導加算、訪問看護遠隔診療補助料 ほか)
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/000486114.pdf - 九州厚生局「訪問看護ステーションの基準に関する届出について(令和8年度診療報酬改定)」
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/gyomu/gyomu/hoken_kikan/kango/todokede_r8.html - 公益財団法人日本訪問看護財団「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護に関する説明資料等】」(疑義解釈資料その1〜5へのリンクを掲載)
https://www.jvnf.or.jp/news/r8housyu-kaitei/
本記事は令和8年度診療報酬改定(令和8年6月1日施行)時点の告示・通知に基づいて作成しています。個別の算定可否や解釈は、利用者の状態、保険の種類、地方厚生(支)局の判断によって異なる場合があります。判断に迷う事例は、管轄の地方厚生(支)局または審査支払機関にご確認ください。制度は改正されることがあるため、最新の情報は厚生労働省および地方厚生(支)局のウェブサイトでご確認ください。

