医療保険・介護保険・公費はどう使える?

ふくろう訪問看護リハビリステーション|スタッフ・ケアマネジャー向け制度解説コラム(2026年7月・令和8年度診療報酬改定対応)

「この方の訪問看護、医療保険? 介護保険? 公費はどう使う?」——初回訪問の前に必ず突き当たる問いです。判定を誤ると、レセプト返戻だけでなく、利用者さんへの自己負担のご案内まで間違えてしまいます。本コラムでは、訪問看護師・リハビリ職が保険証・受給者証を見た瞬間に「使える保険」と「患者負担」を判断できるよう、フローチャートと早見表で整理しました。

目次

まず全体像:訪問看護のお金は「3つの制度」で動く

訪問看護・訪問リハビリの費用は、次の3つの制度の組み合わせで決まります。当ステーションのコラムでは、以下の色分けで統一して解説します。

🔵 医療保険

健康保険・国民健康保険・後期高齢者医療など。訪問看護療養費として請求。原則週3日まで(例外あり)。負担は年齢・所得で1〜3割

🟢 介護保険

要介護・要支援認定を受けた方が対象。ケアプランに位置づけて利用。負担は負担割合証に記載の1〜3割。区分支給限度基準額の枠内で管理。

🟠 公費負担医療

指定難病・自立支援医療・生活保護など。単独ではなく、原則「保険優先」で自己負担分に上乗せ適用。負担がさらに軽くなる、またはゼロになる。

最重要の大原則

要介護・要支援認定を受けている方の訪問看護は介護保険が優先です(介護保険法の給付優先原則)。ただし後述の3つの例外に該当すると、認定を受けていても医療保険に切り替わります。公費は「3つ目の保険」ではなく、医療または介護で計算した自己負担分を軽減する仕組み、と理解すると整理しやすくなります。

30秒で判定:医療保険か、介護保険か(フローチャート)

▶ 右に抜けたら 医療保険 ▼ 最後まで下に進んだら 介護保険
Q1要介護・要支援認定を受けている?
(介護保険被保険者証を確認)
いいえ ▶
医療保険40歳未満/認定を受けていない40〜64歳/未申請の高齢者 など
はい ▼
Q2別表7の疾病に該当?
(厚生労働大臣が定める疾病等)
はい ▶
医療保険末期がん・ALS・パーキンソン病〔ヤールⅢ以上かつ生活機能障害度Ⅱ・Ⅲ〕など20疾病等
いいえ ▼
Q3特別訪問看護指示書の交付期間中?
はい ▶
医療保険急性増悪等。交付日から最長14日間
いいえ ▼
Q4精神科訪問看護指示書による訪問?
(認知症を除く精神疾患)
はい ▶
医療保険精神科訪問看護基本療養費
いいえ ▼
介護保険ケアプランに位置づけて利用
よくある落とし穴
  • 認知症のみの方は、精神疾患であっても精神科訪問看護(医療保険)の対象外。要介護認定があれば介護保険です。
  • パーキンソン病はホーエン・ヤール重症度分類Ⅲ以上かつ生活機能障害度Ⅱ度またはⅢ度のときだけ別表7該当(=医療保険)。ヤールⅡ以下は要介護認定があれば介護保険です。重症度は主治医の指示書・診療情報で必ず確認しましょう。
  • 特別訪問看護指示書の期間(最長14日)が終了したら、翌日から介護保険に戻ります。月の途中で保険が切り替わるため、レセプトも2本立てになります。

別表7「厚生労働大臣が定める疾病等」(該当すれば医療保険・週4日以上訪問可)

  • 末期の悪性腫瘍
  • 多発性硬化症
  • 重症筋無力症
  • スモン
  • 筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  • 脊髄小脳変性症
  • ハンチントン病
  • 進行性筋ジストロフィー症
  • パーキンソン病関連疾患※
  • 多系統萎縮症
  • プリオン病
  • 亜急性硬化性全脳炎
  • ライソゾーム病
  • 副腎白質ジストロフィー
  • 脊髄性筋萎縮症
  • 球脊髄性筋萎縮症
  • 慢性炎症性脱髄性多発神経炎
  • 後天性免疫不全症候群(AIDS)
  • 頸髄損傷
  • 人工呼吸器を使用している状態

※進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病(ホーエン・ヤール重症度分類Ⅲ以上かつ生活機能障害度Ⅱ度またはⅢ度に限る)。多系統萎縮症は線条体黒質変性症・オリーブ橋小脳萎縮症・シャイ・ドレーガー症候群を含みます。

別表8「厚生労働大臣が定める状態等」——保険は変えない。訪問の「量」と加算が変わる

別表7とセットで必ず登場するのが別表8です。名前が似ているため混同しやすいのですが、役割がまったく違います。別表7は「どちらの保険を使うか」を決め、別表8は「どれだけ手厚く訪問できるか」を決める——まずこの一文で覚えてください。

別表7(疾病等)別表8(状態等)
何で判定する?診断名(一部は重症度の条件つき)医療処置・状態(診断名は問わない)
保険の種別該当すると要介護認定があっても医療保険に切替切り替わらない(要介護認定があれば介護保険優先のまま)
医療保険での効果週4日以上・1日複数回・複数名訪問が可能。2か所以上のステーション利用も可医療保険で訪問中の方なら、別表7と同様に週4日以上・1日複数回・複数名訪問が可能に。訪問看護管理療養費の特別管理加算の対象
介護保険での効果—(該当した時点で医療保険へ)特別管理加算(Ⅰ・Ⅱ)の算定対象。緊急時訪問看護加算等の体制と合わせ重度者対応を評価

別表8に該当するのは、次のような処置・状態のある方です。

  • 気管カニューレを使用している状態
  • 留置カテーテルを使用している状態
  • 在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている状態
  • 在宅気管切開患者指導管理を受けている状態
  • 在宅酸素療法指導管理(HOT)
  • 在宅人工呼吸指導管理
  • 在宅中心静脈栄養法指導管理(HPN)
  • 在宅成分栄養経管栄養法指導管理
  • 在宅自己導尿指導管理
  • 在宅自己腹膜灌流指導管理
  • 在宅血液透析指導管理
  • 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理(CPAP)
  • 在宅自己疼痛管理指導管理
  • 在宅肺高血圧症患者指導管理
  • 人工肛門・人工膀胱を設置している状態
  • 真皮を越える褥瘡の状態
  • 在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者
別表7と別表8、ここを間違えない
  • 別表8だけの該当では医療保険に切り替わりません。例:要介護3で胃ろう(経管栄養)管理中の方は、別表8該当でも訪問看護は介護保険のまま。介護保険側で特別管理加算を算定します。
  • 逆に、末期がん(別表7)で医療保険に切り替わった方が麻薬持続注入ポンプを使っていれば別表8にも該当し、頻回訪問+特別管理加算の両方が根拠づけられます。「7で保険を決め、8で手厚さを積む」二段構えで確認しましょう。
  • 真皮を越える褥瘡・気管カニューレなどの状態は日々変化します。治癒・抜去で別表8非該当となれば加算根拠が消えるため、指示書・計画書・記録の整合を毎月見直してください。

保険証・受給者証の見方と患者負担(早見表)

🔵 医療保険の自己負担割合(マイナ保険証・資格確認書で確認)

年齢区分自己負担割合確認ポイント
未就学児(義務教育就学前)2割多くの自治体で子ども医療費助成(地方単独公費)によりさらに軽減
就学後〜69歳3割
70〜74歳2割
(現役並み所得者は3割)
高齢受給者証の区分・マイナ保険証の負担割合表示を確認
75歳以上
(後期高齢者医療)
1割
一定以上所得者は2割
現役並み所得者は3割
資格確認書等に負担割合が明記。毎年8月1日に更新されるため夏の切替時期は再確認を
高額療養費もセットで覚える

医療保険の訪問看護療養費は高額療養費制度の対象です。末期がん等で訪問回数が多くなると自己負担が上限額に達することがあり、限度額適用認定証(マイナ保険証利用時は不要)の有無で窓口負担が変わります。負担が大きい方には申請状況を必ず確認しましょう。

🟢 介護保険は「被保険者証+負担割合証」の2枚セットで確認

確認する書類見るべき欄実務ポイント
介護保険被保険者証要介護状態区分(要支援1・2/要介護1〜5)、認定の有効期間、居宅介護支援事業所有効期間切れ・更新申請中でないかを確認。区分変更申請中は暫定プランの扱いをケアマネと共有
介護保険負担割合証利用者負担の割合(1割・2割・3割)と適用期間適用期間は8月1日〜翌年7月31日。毎年7月に新しい割合証が届くため、8月請求分から割合変更がないか要確認

介護保険の訪問看護(訪問看護Ⅰ型・介護予防訪問看護)は、単位数×地域単価で計算した額の1〜3割が自己負担です。区分支給限度基準額を超えてサービスを使うと、超過分は全額(10割)自己負担になる点もご案内のポイントです。

🟠 公費負担医療:受給者証の「法別番号」で見分ける

公費の種類は、受給者証やレセプトに記載される法別番号(2桁)で判別できます。訪問看護の現場で出会う頻度が高いものを整理しました。

法別
番号
制度名患者負担実務ポイント
54特定医療費(指定難病)2割+所得に応じた月額上限(2,500〜30,000円)医療保険が3割の方も2割に軽減。自己負担上限額管理票への記載を忘れずに。介護保険の訪問看護・訪問リハ等(医療系サービス)にも適用可
21自立支援医療(精神通院)1割+所得に応じた月額上限精神科訪問看護とセットで登場。受給者証に記載された指定医療機関(ステーション名)でないと使えない
15
16
自立支援医療
(更生医療/育成医療)
1割+月額上限対象は受給者証に記載の医療内容に限定
12生活保護(医療扶助・介護扶助)原則自己負担なし(本人支払額の設定がある場合あり)国保・後期高齢者医療は適用除外のため公費単独が基本(社保加入者は併用)。医療券・介護券を福祉事務所から受領して請求
19原爆被爆者援護(一般疾病)自己負担なし被爆者健康手帳を確認
52小児慢性特定疾病2割+月額上限小児在宅の訪問看護で登場。上限管理票の記載が必要
51特定疾患治療研究事業(スモン等)自己負担なし難病法施行前から継続する経過措置的な公費
地方単独公費
(重度障害者医療・子ども医療など)
自治体により無料〜定額福岡県・福岡市など自治体ごとに対象・窓口負担・訪問看護への適用範囲が異なるため、受給者証と自治体要綱で個別確認
公費の適用順序:「保険優先」が大原則
  • まず医療保険または介護保険で費用を計算 → 残った自己負担分に公費を適用する、という順番です(生活保護の公費単独などの例外あり)。
  • 指定難病(54)は介護保険優先の場面でも使えます。例:パーキンソン病ヤールⅡで介護保険の訪問看護を利用する場合、介護保険の自己負担分に特定医療費を充当できます(訪問看護・訪問リハ・居宅療養管理指導などの医療系サービスが対象)。
  • 月額上限のある公費(54・21・52など)は、自己負担上限額管理票に自ステーションの徴収額を記載し、上限到達後は徴収しません。他機関(病院・薬局)の記載額との合算管理が必要です。

ケースで確認:この方は何保険?負担はいくら?

CASE 1|82歳・要介護2・高血圧と変形性膝関節症で週1回の訪問看護

別表7非該当、特別指示書なし、精神科指示書なし。

🟢 介護保険(1〜3割:負担割合証で確認)。ケアプランに位置づけ、区分支給限度基準額内で管理。
CASE 2|76歳・要介護4・膵がん末期で連日訪問

末期の悪性腫瘍は別表7該当。要介護認定があっても医療保険に切り替わり、週4日以上・複数回訪問が可能。

🔵 医療保険(後期高齢者:1割・2割・3割を資格確認書で確認)。負担が嵩む場合は高額療養費・限度額適用の案内を。訪問看護は限度額管理の対象なので償還手続きの説明も忘れずに。
CASE 3|58歳・パーキンソン病(ヤールⅣ・生活機能障害度Ⅱ)・指定難病受給者証(法別54)あり

ヤールⅢ以上かつ生活機能障害度Ⅱ度以上のため別表7該当=医療保険。受給者証に月額上限が記載されている。

🔵 医療保険 + 🟠 公費54:3割の方でも2割負担・月額上限まで。訪問のたびに自己負担上限額管理票へ記載し、上限到達後は徴収なし。
CASE 4|44歳・統合失調症・精神科訪問看護指示書・自立支援医療受給者証(法別21)あり

要介護認定なし。精神科訪問看護基本療養費で医療保険請求。受給者証の指定医療機関欄に自ステーションが登録されているかを確認。

🔵 医療保険 + 🟠 公費21:1割負担・月額上限まで。登録がなければ変更申請が済むまで公費は使えない点に注意。
CASE 5|67歳・生活保護受給中・脳梗塞後遺症で要介護3

介護保険第1号被保険者なので介護保険は適用され、自己負担分(1割)が公費12(介護扶助)でカバーされる。医療保険適用場面(特別指示書期間など)では医療扶助。

🟢 介護保険 + 🟠 公費12:自己負担なしが原則。福祉事務所から介護券/医療券を受領して請求。ケアマネ・福祉事務所との連携が必須。

初回訪問前チェックリスト:この6点を必ず確認

  1. 医療保険の資格と負担割合:マイナ保険証・資格確認書で資格の有効性と負担割合(1〜3割)を確認。75歳到達前後・毎年8月の切替時期は特に注意。
  2. 介護保険被保険者証:要介護度・認定有効期間・担当居宅介護支援事業所。更新申請中・区分変更申請中はケアマネに扱いを確認。
  3. 介護保険負担割合証:1割・2割・3割と適用期間(8月1日〜翌年7月31日)。
  4. 公費の受給者証:法別番号・有効期限・月額上限額・指定医療機関の登録・自己負担上限額管理票の有無。
  5. 指示書の種類:訪問看護指示書/特別訪問看護指示書(期間)/精神科訪問看護指示書のどれか。別表7・別表8該当の有無を主治医情報で確認。
  6. 保険の切替イベントの予定:特別指示書の終了日、75歳到達、認定更新、月途中の状態悪化——「いつ保険が変わるか」をカレンダーに落とし込む。

まとめ

  • 訪問看護の費用は医療保険介護保険公費の3層構造。要介護認定があれば介護保険優先、ただし①別表7疾病 ②特別訪問看護指示書期間 ③精神科訪問看護(認知症除く)の3例外は医療保険。
  • 別表7は「保険の種別」を決め、別表8は「訪問の手厚さ」を決める。別表8該当だけでは保険は切り替わらず、介護保険では特別管理加算、医療保険では頻回・複数回・複数名訪問と特別管理加算の根拠になる。
  • 患者負担は、医療保険なら年齢と所得で1〜3割、介護保険なら負担割合証の1〜3割。公費はその自己負担分を軽減する「保険優先」の仕組み。
  • 受給者証は法別番号で判別。54(指定難病)は2割+月額上限、21(精神通院)は1割+月額上限、12(生活保護)は原則負担なし。上限管理票の記載指定医療機関の登録確認が実務の要。
  • 保険は月の途中でも切り替わる(特別指示書・75歳到達・急性増悪)。切替日を予測してチームで共有することが、返戻ゼロと正確な負担案内への近道です。

制度の金額・上限は改定で変わります(直近では2026年6月の令和8年度診療報酬改定で訪問看護療養費の体系が見直されました)。本コラムは2026年7月時点の制度に基づいています。個別の判断に迷うケースは、遠慮なくステーション内でご相談ください。

参考文献・資料

  1. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(2026年):訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法・関連通知。
  2. 厚生労働省告示「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法 別表第7(厚生労働大臣が定める疾病等)・別表第8」。
  3. 厚生労働省保険局「医療費の自己負担割合について」(後期高齢者の窓口負担割合〔1割・2割・3割〕を含む、2022年10月施行分以降の資料)。
  4. 厚生労働省「介護保険制度の概要」および介護保険法:給付優先原則、利用者負担割合(1〜3割)、負担割合証の適用期間。
  5. 難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)および厚生労働省「指定難病患者への医療費助成制度のご案内」:特定医療費の2割負担・自己負担上限月額(2,500〜30,000円)・介護保険の医療系サービスへの適用。
  6. 厚生労働省「自立支援医療(精神通院医療)の概要」:1割負担と所得に応じた月額上限、指定医療機関制度。
  7. 厚生労働省「生活保護制度における医療扶助・介護扶助」:医療券・介護券による現物給付の仕組み。
  8. こども家庭庁「小児慢性特定疾病医療費助成制度」:2割負担と自己負担上限額。
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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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