事務員の肩凝りに1分で効く筋トレ

「夕方になると肩がずっしり重い」「首の付け根が固まって、頭まで痛くなる」――パソコン作業の多い事務職の方にとって、肩こり(肩凝り)は身近な悩みです。
この記事では、デスクワークで肩がこる主な原因と、作業環境・休み方の見直し方、そして職場の席で1分あればできる筋トレとストレッチを、研究結果をもとに紹介します。首・肩の痛みをくり返し感じている働く人を対象にした研究では、1日わずか2分の肩の筋トレを10週間続けたグループで、痛みがはっきり減りました。
SECTION 01 結論:肩こりには「毎日少しの筋トレ」と「同じ姿勢を続けない工夫」
先に結論をまとめます。
主な原因は「同じ姿勢が長く続くこと」
画面に向かって同じ姿勢で座り続けると、首から肩の筋肉が小さな力で休みなく働き続けます。単調な作業、肩の力み、仕事のストレス、冷えなども関係します。
効果がいちばん確かめられているのは首・肩の筋トレ
職場で行う運動の研究をまとめた解析では、首・肩の痛みがある事務職の人で、筋トレによって痛みが減ることが示されました。首・肩を狙った筋トレは、全身の運動よりも効果が大きい傾向でした。
1回1分を1日2回。短くても毎日続ける
1日2分の筋トレでも、10週間続けると痛みが減ったという研究があります。長い時間をとるより、毎日続けることが大切です。
しびれや胸の痛みを伴うときは、運動より先に受診を
肩こりに見えて、首の骨の病気や心臓の病気などが隠れていることがあります。
SECTION 02 肩こりはどれくらい多い?
厚生労働省の2022年(令和4年)国民生活基礎調査で、病気やけがなどの自覚症状がある人の割合(有訴者率)を症状別にみると、男女とも「腰痛」に次いで「肩こり」が2番目に多くなっていました。人口千人あたりでは女性105.4人、男性53.3人で、女性では約10人に1人が肩こりを感じていることになります[1]。
出典:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」[1]。女性105.4、男性53.3(人口千対)をもとに換算。子どもや高齢者も含む全年齢の数字で、事務職に限ったものではありません。
日本整形外科学会によると、肩こりは首すじから首の付け根、肩、背中にかけての張り・こり・痛みで、頭痛や吐き気を伴うこともあります。中心となる筋肉は、首から肩、背中に広がる僧帽筋(そうぼうきん)です[2]。海外の研究では、肩こりは主に「首・肩の痛み(neck/shoulder pain)」や「僧帽筋の筋痛」として調べられています。
SECTION 03 事務仕事で肩がこる主な原因
日本整形外科学会は、肩こりの原因として、首や背中が緊張する姿勢での作業、猫背・前かがみの姿勢、運動不足、精神的なストレス、なで肩、長時間同じ姿勢を続けること、ショルダーバッグ、冷房などを挙げています[2]。事務仕事にあてはめると、次のような悪循環が考えられます。
図1 肩こりが続くしくみ(考えられているもの)
5まで進むと1に戻り、同じことがくり返されます。
日本整形外科学会の解説[2]と、首・肩の筋肉の痛みのしくみについての総説[3]をもとに作成。筋肉の中で起きていることには、まだ仮説の段階のものも含まれます。
原因を1つずつみていきます。
同じ姿勢で座り続ける
パソコン作業では、腕と頭を同じ位置に保つために、首から肩の筋肉が小さな力で長い時間働き続けます。こうした「軽いけれど休みのない負担」が筋肉の一部を疲れさせ、筋肉の中の血の流れを悪くすると考えられています[3]。
頭が前に出た姿勢(前かがみ・猫背)
15の研究をまとめた解析では、首の痛みがある大人は、痛みのない大人より頭が前に出た姿勢になっていて、その程度が強いほど痛みも強い傾向でした。ただし、いずれも同じ時点で比べた研究のため、姿勢が痛みの原因なのか、痛みの結果なのかまではわかっていません[4]。
単調な作業と、体に近すぎるキーボード
事務職を追跡した研究をまとめた解析では、作業内容の変化が少ないこと(首の痛みが起こるリスク1.27倍)や、キーボードが体に近すぎる配置(1.46倍)が、首の痛みの起こりやすさと関係していました[5]。
肩の力み
同じ解析で、「仕事中に筋肉が張っている」と感じている人は、首の痛みが起こるリスクが約1.8〜2.8倍でした[5]。急いでいるときや緊張しているとき、知らないうちに肩がすくんでいることがあります。
仕事のストレス
仕事の要求が大きい、自分の裁量が小さい、周りからの支えが少ないといった職場の心理的な要因が、首・肩の不調の起こりやすさに上乗せして関係するという報告があります[6]。
運動不足と冷え
運動不足や、冷房の風が首・肩に当たることも、肩こりの原因に挙げられています[2]。
事務職を追跡した7つの研究をまとめた別の解析では、強い根拠をもって首の痛みを予測できた要因は「女性であること」と「以前に首の不調があったこと」の2つだけで、心理的なストレスなどは予測因子と確認できませんでした[7]。ストレスについて結果が分かれているのは、事務職に限って調べたか、さまざまな職種の働く人を調べたか、首だけをみたか首と肩をあわせてみたかといった、対象や評価のしかたの違いによると考えられます[6][7]。
原因が1つに決まらない以上、姿勢・作業環境・休み方・運動を少しずつ見直していくのが現実的です。
SECTION 04 解消方法1:作業環境と休み方を整える
厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」は、パソコンなどを使う作業について、次のような目安を示しています[8]。
画面は目から40cm以上離し、上端を目の高さまでに
ガイドラインは、画面を目から40cm以上離し、画面の上端が目の高さを超えないようにすることを勧めています[8]。画面が低すぎると頭が前に下がり、高すぎるとあごが上がります。ノートパソコンは台に載せ、外付けのキーボードを使うと調整しやすくなります。
椅子に深く座り、足の裏全体を床に
椅子には深く座り、足の裏全体が床に着くようにします[8]。足が届かないときは足台を使います。机と椅子の高さは、肩をすくめずにキーボードに手が届くように合わせます。
キーボードとマウスは動かして、腕を楽な位置に
ガイドラインは、肩こりの防止のために、動かせるキーボードやマウスを使うことを挙げています[8]。キーボードが体に近すぎる配置は首の痛みのリスクと関係していたため[5]、机の手前ぎりぎりではなく少し奥に置き、前腕を机に預けられるようにするとよいでしょう。
1時間以内で区切り、途中にも小休止を
ガイドラインは、連続した作業を1時間以内にし、次の作業までに10〜15分の作業休止を、その間にも1〜2回の小休止をとること、ときおり立ち上がることを勧めています[8]。この小休止が、このあと紹介する1分メニューのタイミングです。
作業に変化をつける
書類の整理、電話、コピーなど、姿勢が変わる作業を間に挟むと、同じ筋肉ばかりを使い続けずにすみます。作業内容の変化が少ないことは、首の痛みのリスクと関係していました[5]。
冷房の風が首・肩に当たらないように
冷房も肩こりの原因に挙げられています[2]。風向きを変える、羽織りものやストールを使うなどして、首まわりを冷やさないようにします。
SECTION 05 解消方法2:研究でわかった「短時間の筋トレ」の効果
デンマークの研究グループは、パソコン作業など単調な仕事をしていて、僧帽筋の筋痛(いわゆる肩こり)と診断された女性48人を、1. 痛む筋肉を直接鍛える筋トレ、2. 肩の力を抜いて行う自転車こぎ(全身の運動)、3. 運動をしない、の3つのグループに分けて10週間比べました。その結果、筋トレのグループでは最も強いときの痛みが約8割減ったのに対し、自転車こぎのグループでは、運動の直後に一時的に少し和らぐだけでした[9]。
同じグループの次の研究では、週30時間以上働き、首・肩の痛みをくり返し感じている198人(女性174人、男性24人)を、ゴムチューブを使った筋トレを1日2分行うグループ、1日12分行うグループ、運動をしないグループに分けました(運動はいずれも週5日、10週間)。1日2分のグループが行ったのは、ゴムチューブを持って腕を肩の高さまで上げ下げする「横上げ(サイドレイズ)」を、続けられなくなるまでくり返す1セットだけです[10]。
図2 1日2分の筋トレでも、首・肩の痛みは減った
10週間後の首・肩の痛み(0〜10点)が、運動をしないグループと比べてどれだけ減ったか。
出典:Andersen LL, et al. Pain. 2011;152(2):440-446[10]。対象は首・肩の痛みをくり返し感じている働く人198人。押したときの痛み(圧痛)も、2分・12分のどちらのグループでも同じように減っていました。
図2のとおり、1日2分でも12分でも、痛みは同じように減っていました。研究グループは、1日2分の筋トレでも10週間で、臨床的に意味のある痛みの軽減が得られると結論づけています[10]。
また、オフィスで働く447人を対象にした研究では、週60分の筋トレを「60分×1回」「20分×3回」「7分×9回」に分けて20週間比べたところ、首の痛みがある人では、どのやり方でも痛みが減っていました[11]。まとまった時間がとれなくても、短い時間に分けて続ければよいということです。
こうした研究をまとめた2018年の解析(27のランダム化比較試験)は、首・肩の痛みがある事務職の人では、職場で行う筋トレで痛みが減ることを「中等度」の確かさで示し、首・肩を狙った筋トレのほうが全身の運動より効果が大きかったとしています。一方、机や椅子など作業環境の改善だけの効果は、まだ確かさが低いとされています[12]。
首・肩の痛み(10点中5点以上)が3か月以上続く事務職96人を対象にした研究では、作業姿勢についての資料を全員に配ったうえで、首と肩まわりのストレッチを1日2回、週5日、4週間続けたグループは、資料だけのグループより痛み(0〜10点)が1.4点多く減り、首の機能や生活の質もよくなりました[13]。米国理学療法士協会(整形外科部門)の首の痛みの診療ガイドラインも、慢性の首の痛みに対して、首・肩・肩甲骨まわりの筋力トレーニングやストレッチなどを組み合わせた運動を勧めています[14]。
SECTION 06 1分メニューA:席でできる肩の筋トレ
研究で効果が確かめられた「横上げ」を中心に、肩甲骨まわりと首の深いところの筋肉を使う3つの動きを、1分にまとめました。
横上げ(サイドレイズ)
30秒1椅子に浅く座って背すじを伸ばし、両手に水の入ったペットボトル(500mL)を持つ(なくてもかまいません)
2ひじを軽く曲げたまま、腕を体の真横より少し前に向けて、肩の高さまで上げる
3ゆっくり下ろす。上げ下げで2〜3秒のペースで、30秒間くり返す
ポイント肩をすくめない。腕は肩の高さより上げない。最後の数回が「少しきつい」と感じるくらいが目安です。
肩甲骨寄せ
20秒1背すじを伸ばし、両腕を前に伸ばす
2ひじを曲げながら後ろへ引き、左右の肩甲骨を背骨に寄せて2秒止める
3腕を前に戻す。20秒で4〜5回くり返す
ポイント胸を張り、肩は下げたまま。腰を反らせすぎないようにします。
あご引き
10秒1背もたれから離れて座り、目線は正面に向ける
2あごを引いて、頭を水平に後ろへスライドさせる(二重あごをつくるイメージ)
35秒止めて戻す。これを2回
ポイント下を向かないこと。首の後ろが軽く伸びる感じがあれば正しくできています。
研究ではゴムチューブを使い、続けられなくなるまでくり返し、回数に応じて負荷を上げていました[10]。ペットボトルや素手では負荷が軽いぶん、ゆっくり下ろす、回数を増やすなどして、最後の数回がきつくなるように調整してください。慣れてきたら、市販のトレーニング用ゴムチューブを使うのもよい方法です。
SECTION 07 1分メニューB:固まった首・肩をゆるめるストレッチ
厚生労働省のガイドラインも、小休止や作業休止の間のストレッチは肩の疲れを防ぐとしています[8]。筋トレをした日も、しない日も、小休止のたびに取り入れてみてください。
首の横のストレッチ
左右15秒ずつ1右手で椅子の座面の右端をつかみ、右肩を下げる
2頭をゆっくり左へ倒し、左手を頭に軽く添える
3首の右側が気持ちよく伸びたところで15秒。反対側も同じように行う
ポイント手で強く引っ張らない。反動をつけず、呼吸は止めずに続けます。
胸を開くストレッチ
15秒1椅子に浅く座り、両手を腰の後ろで組む
2肩甲骨を寄せながら、組んだ手を後ろ下へ引き、胸を斜め上へ張る
3呼吸を止めずに15秒
ポイント腰を反らせすぎない。肩が痛む人は手を組まず、両手を腰に当てて胸を張るだけでもかまいません。
肩回し
15秒1両手の指先を、それぞれ同じ側の肩に置く
2ひじで大きな円を描くように、前から上、後ろへと回す
31回3秒くらいのペースで、ゆっくり5回
ポイント痛みのない範囲で。肩甲骨が動いているのを感じながら回します。
SECTION 08 続け方と安全のポイント
タイミングは「小休止」に合わせる
例えば、午前と午後の小休止で1回ずつメニューA(筋トレ)を、それ以外の小休止でメニューB(ストレッチ)を行います。1時間ごとの区切りに合わせると、忘れにくくなります。
週5日、まずは2〜3か月
研究では、筋トレは週5日・10週間[10]、ストレッチは1日2回・週5日・4週間[13]続けて効果が確かめられています。その場で肩が軽く感じても、効果を定着させるには続けることが大切です。
少しずつ負荷を上げる
横上げが楽にできるようになったら、回数を増やす、ゆっくり下ろす、ゴムチューブを使うなど、少しずつきつくしていきます。研究でも、できる回数に応じて負荷を上げていました[10]。
- ✓痛みが強くなる動きはしない(「気持ちよい」「少しきつい」までにとどめる)
- ✓反動をつけず、呼吸を止めない
- ✓首を大きくぐるぐる回したり、後ろへ強く反らせたりしない
- ✓腕や手にしびれが走ったら、すぐに中止する
- ✓めまいやふらつきがあるときは行わない
- ✓五十肩などの肩の痛みや、首の病気で治療中の人は、主治医に相談してから始める
SECTION 09 よくある質問
Q筋トレとストレッチ、どちらがよいですか?
A研究の積み重ねでは、首・肩を狙った筋トレのほうが効果が大きいとされています[12]。ストレッチだけでも痛みが減ったという研究があり[13]、診療ガイドラインは両方を組み合わせることを勧めています[14]。迷ったら、筋トレ(メニューA)を毎日、ストレッチ(メニューB)を小休止のたびに、がおすすめです。
Qまとまった運動の時間がとれません。
A1日2分の筋トレでも痛みが減ったという研究[10]や、週60分の筋トレを細かく分けても効果があったという研究があります[11]。1回1分を1日1〜2回から始めてみてください。
Q肩が痛いときに、やってもいいですか?
A軽い張りやこりであれば、痛みが強くならない範囲で行ってかまいません。動かすと強く痛む、しびれがある、じっとしていても痛む、といった場合は、運動の前に医療機関で相談してください(次の章をご覧ください)。
SECTION 10 こんなときは医療機関に相談を
日本整形外科学会は、首の骨(頚椎)の病気、頭の中の病気、高血圧、目や耳鼻咽喉の病気、肩関節の病気に伴う症状として肩こりが出ることも少なくないとしています[2]。次のような場合は、運動で様子をみずに受診してください。
胸の痛みや圧迫感、冷や汗を伴う
心臓の病気(狭心症・心筋梗塞)では、痛みがあご・首・肩・腕などに広がることがあります[15]。冷や汗を伴う強い胸の痛みや圧迫感が続くときは、ためらわずに救急車を呼んでください。
腕や手のしびれ、力の入りにくさがある
首の骨や神経の病気が隠れていることがあります。まず整形外科で相談してください[2]。
これまでにない強い頭痛を伴う
急に始まった強い頭痛や吐き気を伴う場合は、頭の中の病気の可能性もあります[2]。
じっとしていても痛む、夜も痛む、熱や体重減少がある
筋肉の疲れ以外の原因が隠れている可能性があります。首の痛みの診療ガイドラインでも、こうした症状は詳しく調べるべきサインとされています[14]。
腕が上がらない、肩を動かすと痛い
五十肩(肩関節周囲炎)など、肩の関節の病気のことがあります[2]。
目の疲れや見えにくさ、血圧の高さが気になる
目の病気や高血圧に伴って、肩こりを感じることもあります[2]。
また、病気やけがで通院が難しく、首や肩の痛み、体の動かしにくさで生活に困っている方は、主治医の指示のもとで、理学療法士・作業療法士がご自宅に伺う訪問リハビリを利用できることがあります。ふくろう訪問看護リハビリステーションに、お気軽にご相談ください。
SECTION 11 ご利用・採用のご案内
ふくろう訪問看護リハビリステーション
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参考文献
- 厚生労働省. 2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況. 2023年7月. https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa22/dl/14.pdf
- 日本整形外科学会. 症状・病気をしらべる「肩こり」. https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/stiffed_neck.html(2026年10月5日閲覧)
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