生活保護を受けている方の訪問看護:医療扶助・介護扶助のしくみと手続き

自宅のテーブルで、看護師が高齢の利用者さんに書類を見ながら説明している水彩イラスト。窓辺にふくろうの置物がある

結論:生活保護を受けている利用者の訪問看護は、費用の出どころが2つに分かれます。①医療保険にあたる訪問看護は「医療扶助」(福祉事務所が出す訪問看護券で確認)、②介護保険にあたる訪問看護は「介護保険+介護扶助」(福祉事務所が出す介護券で確認)です。

事業所は、健康保険法・介護保険法の指定に加えて、医療扶助を扱うための生活保護法の指定が必要です(介護は、平成26年7月1日以降に介護保険の指定を受けていれば、原則としてみなし指定です)。請求先も医療扶助と介護扶助で異なるため、「どの券で、どこへ請求するか」を最初に整理しておくと、返戻を防げます。

目次

SECTION 01 しくみ:生活保護を受けると、医療・介護の費用はどうなるか

生活保護を受けている世帯の人は、国民健康保険の被保険者になりません(国民健康保険法第6条第9号)。75歳以上の後期高齢者医療も同じく適用除外です(高齢者の医療の確保に関する法律第51条第1号)。そのため、医療の費用は原則として医療扶助が全額(10割)を負担します。ただし、健康保険(社保)に加入している本人やその被扶養者は、保険が先に使われ、患者負担分に医療扶助が適用されます。

介護の費用は、介護保険の被保険者であれば介護保険が9割、残りの1割が介護扶助です。介護保険の被保険者でない方(たとえば医療保険に加入していない40〜64歳の方など)は、介護扶助で全額をまかなう形になります。実際の組み合わせは、福祉事務所が発行する券の記載で確認します。

分野券・確認書類費用の出どころ請求先
医療保険の訪問看護訪問看護券(医療券)医療扶助(社保加入者は保険が先、自己負担分を医療扶助)社会保険診療報酬支払基金
介護保険の訪問看護介護券介護保険9割+介護扶助1割(被保険者以外は介護扶助のみ)審査支払機関(福岡県国民健康保険団体連合会)
生活保護の利用者:訪問看護の費用の出どころ上:利用者の状況 下の色つきの枠:費用の出どころ1介護保険の被保険者で、要介護・要支援介護保険9割+介護扶助1割2要介護・要支援でも、急性増悪時や末期がん・難病等の訪問看護医療扶助(訪問看護券)3要介護・要支援ではない医療扶助(訪問看護券)4健康保険(社保)に加入している医療保険が先/自己負担分を医療扶助実際の扱いは、福祉事務所の発行する券で確認

図1 生活保護の利用者の訪問看護:費用の出どころ

福岡市の手引きによると、要介護・要支援の方への訪問看護は介護保険または介護扶助が優先されます。医療扶助で給付されるのは、急性増悪時の訪問看護と、末期がん・難病等に対する訪問看護に限られます。ここを取り違えると、請求先が変わります。

SECTION 02 事業所に必要な指定と届出

医療扶助:生活保護法の指定医療機関の指定

医療扶助の訪問看護を行うには、健康保険法の指定とは別に、生活保護法による指定医療機関の指定が必要です。福岡市内の事業所は、福岡市の窓口で手続きをします。

項目内容(福岡市)
申請書様式第3の2号と誓約書。訪問看護ステーションは、添付書類はありません。
提出先福岡市福祉局保護課、または事業所のある区の福祉事務所保護課(管理係)。郵送・持参のほか、保護課のメールアドレスへの送信も案内されています。
指定日原則として、保護課が申請を受理した月の初日。健康保険法等の指定日がそれより後なら、その日が指定日です。
決定通知指定日から約2か月後に届き、福岡市のホームページで告示されます。
変更・休止・廃止の届出事実が起きてから10日以内。辞退届は30日以内(辞退希望日の30日前まで)。

介護扶助:指定介護機関(みなし指定)

福岡県の資料では、平成26年7月1日以降に介護保険法の指定を受けたサービスは、生活保護法等の指定を受けたものとみなされ、別に申請する必要はありません。みなし指定を望まない場合は、介護保険の指定申請のときに辞退届を出します。一方、平成26年6月30日以前に介護保険の指定だけを受け、生活保護の指定を受けていなかった事業所は、新たに申請が必要です。指定は事業所のある地域の自治体(福岡市の事業所は福岡市長)が行い、効力は全国に及びます。

福岡県の資料は令和6年4月1日付です。令和8年4月以降の取り扱いは資料に載っていないため、福岡県福祉労働部 保護・援護課(092-643-3295)や福岡市保護課(092-711-4231)に確認すると確実です。

SECTION 03 利用開始から請求までの流れ

1
福祉事務所に訪問看護の申請をする訪問看護が必要になったら、利用者(またはケースワーカー)が福祉事務所に申請します。事業所だけで始めず、先に福祉事務所の手続きが済んでいるかを確認します。
2
「訪問看護要否意見書」を主治医に記入してもらう福祉事務所が発行する要否意見書に、医療機関が病状などを記入して提出します。提出は初回のあと6か月ごとが標準的とされていますが、実際の時期は福祉事務所の案内に従います。
3
嘱託医の審査を経て「訪問看護券」が発行される福祉事務所が嘱託医の審査をもとに給付を決め、訪問看護券(医療券)を発行します。券に書かれた公費負担者番号・受給者番号が、請求のもとになります。
4
訪問看護療養費・基本利用料は支払基金へ請求医療扶助分は、券の公費負担者番号・受給者番号を使って社会保険診療報酬支払基金に請求します。
5
営業時間外などの利用料・交通費は福祉事務所へ営業時間外等の利用料と看護人の交通費は、「利用料請求書」で福祉事務所に請求します。支払基金への請求とは別です。
6
介護分は「介護券」をもとに介護給付費明細書で請求介護保険の被保険者でない受給者も、福祉事務所が発行する介護券の記載事項をもとに、介護給付費明細書を作成して審査支払機関へ請求します。

SECTION 04 現場で気をつけたい点

券の有効期間と記載内容を毎月確認する

医療券・介護券は、福祉事務所から発行される書類です。有効期間、公費負担者番号、受給者番号、本人支払額(介護券に記載される場合)が、請求書類にそのまま転記されます。月が変わったら新しい券で確認し直します。

医療扶助のオンライン資格確認は、訪問看護での扱いを確認しておく

医療扶助のオンライン資格確認(マイナンバーカードを使った確認)は、令和6年3月から医療機関・薬局等で始まっています。厚生労働省のページでは、対象は「医療機関・薬局等」で、今後広げていく予定と書かれており、訪問看護ステーションが含まれるかどうかは、ページ上では確認できませんでした。当面は、福祉事務所が発行する券を確認する方法を基本にし、オンラインでの確認ができるかどうかは、福祉事務所や支払基金に確認するのが安全です。

お薬手帳の持参が令和8年4月から原則になった

福岡市は、令和8年4月から、生活保護の受給者が受診するときはお薬手帳の持参を原則とすると案内しています。訪問時にお薬手帳の確認ができているかも、あわせて見ておくと役立ちます。

福岡市の手引きは更新状況を確認する

福岡市の「指定医療機関等の手引き」は、令和5年7月作成の版が公表されています。ページの更新日は令和8年9月28日ですが、手引きそのものに発行日や版数の記載はありません。最新の取り扱いは、保護課に確認してください。

SECTION 05 チェックリスト

  • 生活保護の利用者であること(医療扶助・介護扶助の対象か)を、福祉事務所の発行する券で確認している
  • 事業所が、生活保護法の指定医療機関(訪問看護ステーション)の指定を受けているか確認している
  • 介護保険の指定が平成26年7月1日以降か以前かを確認し、必要なら指定申請をしている
  • 訪問看護要否意見書と訪問看護券が、訪問開始までにそろっているか確認している
  • 要介護・要支援の利用者について、医療扶助になる場合(急性増悪時・末期がん・難病等)かを区別している
  • 医療券の公費負担者番号・受給者番号を、正しく請求書類に反映している
  • 営業時間外の利用料・交通費を、支払基金とは別に福祉事務所へ請求している
  • 変更・休止・廃止が起きたら10日以内に届け出る流れを共有している

SECTION 06 Q&A

Q. 生活保護の利用者に、医療保険の自己負担分は発生しますか。

A. 国民健康保険や後期高齢者医療に入らない方は、原則として医療扶助が全額を負担します。社保に加入している方は保険が先に使われ、その自己負担分に医療扶助が適用されます。券の記載で確認してください。

Q. 要介護の利用者の訪問看護は、医療扶助と介護扶助のどちらですか。

A. 原則は介護保険(または介護扶助)です。医療扶助が使われるのは、急性増悪時や末期がん・難病等の訪問看護に限られます(福岡市の手引き)。

Q. 医療扶助の訪問看護の請求先はどこですか。

A. 訪問看護療養費と基本利用料は社会保険診療報酬支払基金です。営業時間外等の利用料と交通費は、福祉事務所へ別に請求します。

Q. 介護保険の指定を受けていれば、生活保護の指定は不要ですか。

A. 平成26年7月1日以降に介護保険の指定を受けた場合は、みなし指定のため不要です。それ以前の指定で生活保護の指定がない場合は、申請が必要です。なお、医療扶助(医療保険の訪問看護)には、別に生活保護法の指定医療機関の指定が必要です。

SECTION 07 ご利用・採用のご案内

ふくろう訪問看護リハビリステーション

ご自宅での看護とリハビリテーション

  • 訪問看護(医療保険・介護保険)
  • 訪問リハビリテーション(理学療法士・作業療法士)
  • 訪問エリア:事業所から半径16kmの福岡市(中央区・博多区・早良区・城南区・西区・南区・東区の一部)と糸島市全域

営業:月〜金/電話受付:平日9:00〜18:00
TEL 092-834-8581

https://nurse-fukurou.jp/

ふくろう訪問クリニック

ご自宅での診療と療養のサポート

  • 訪問診療(頻度の目安は月1〜2回)
  • 専門:緩和ケア、難病・希少疾患、精神科、認知症
  • 訪問エリア:福岡市の早良区・西区・城南区・中央区

ご相談は電話・メール・公式LINEで随時受け付けています。保険証、(可能なら)紹介状、(あれば)お薬手帳、介護保険証、公費の受給者証をご用意ください。
TEL 092-407-7337

https://fukurou.fukuoka.jp/

採用のご案内

いっしょに在宅医療を支える仲間を募集しています

入職祝い金 20万円直接応募限定

ふくろう訪問看護リハビリステーション

募集:看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(常勤・非常勤)
TEL 092-834-8581(平日9:00〜18:00)
nurse@fukurou.fukuoka.jp

採用ページ:https://nurse-fukurou.jp/recruit/

入職祝い金 20万円直接応募限定

ふくろう訪問クリニック

募集:医師(常勤・非常勤)・看護師・医療事務
TEL 092-407-7337
clinic@fukurou.fukuoka.jp

採用ページ:https://fukurou.fukuoka.jp/recruitment/

SECTION 08 参考にした資料

  1. 福岡市福祉局保護課「生活保護法指定医療機関(訪問看護ステーション)の指定申請」ページ. 令和8年9月28日更新. https://www.city.fukuoka.lg.jp/fukushi/hogo/netdetetsuduki/seikatuhogohou-iryou-kaigo/001_2_2.html
  2. 福岡市福祉局保護課「生活保護法による指定医療機関等の手引き」. 令和5年7月. https://www.city.fukuoka.lg.jp/fukushi/hogo/life/documents/tebiki50507.pdf
  3. 福岡県「生活保護法等による指定介護機関について」. 令和6年4月1日. https://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/attachment/228544.pdf
  4. 厚生労働省「医療扶助のオンライン資格確認」. https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25108.html
  5. 厚生労働省老健局老人保健課長通知「介護給付費請求書等の記載要領について」. 平成13年11月16日 老老発第31号. https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000080895.pdf
  6. 厚生労働省委託調査(アクセンチュア株式会社)「要否意見書の電子化に係る調査結果報告書」. 令和7年3月28日(訪問看護要否意見書の提出サイクルの確認に使用). https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001617567.pdf
  7. 国民健康保険法 第6条第9号/高齢者の医療の確保に関する法律 第51条第1号(e-Gov法令検索). https://laws.e-gov.go.jp/

制度の運用は改定されることがあります。実際の指定・請求の取り扱いは、福岡市保護課、福祉事務所、社会保険診療報酬支払基金、福岡県国民健康保険団体連合会の最新の案内でご確認ください。(令和8年10月7日時点)

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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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