頸性頭痛に対するリハビリ・セルフケア

ふくろう訪問看護リハビリステーション コラム

首の動きや姿勢と関係して起こる頭痛は、適切な評価と無理のない運動で改善が期待できます。ただし、高齢者に初めて起きた頭痛や急に悪化した頭痛では、脳血管障害などを先に除外することが重要です。まず安全を確認し、そのうえで「小さく・ゆっくり・続けられる」セルフケアを行いましょう。

「首こりのせい」と決めつけず、危険な頭痛のサインを最初に確認します。

運動は痛みのない範囲から始め、首だけでなく肩甲骨や体幹も整えます。

首を強くひねる・反らす・鳴らすセルフケアは避け、症状を記録して調整します。

1.最初に確認したい「危険な頭痛」のサイン

高齢者の頭痛では、リハビリやマッサージを始める前に、緊急性の高い病気が隠れていないかを確認します。次の症状がある場合は、セルフケアより受診を優先してください。日本頭痛学会も、高齢者の頭部外傷後の頭痛、突然の強い頭痛、50歳以降に始まる側頭部痛などへ注意を促しています。[2]

すぐに救急要請・救急受診を考える症状
  • 突然始まり、短時間で最も強くなった頭痛、または経験したことのない激しい頭痛
  • 顔や手足の片側の麻痺・しびれ、ろれつが回らない、言葉が出ない、意識がぼんやりする
  • 立てないほどのふらつき、物が二重に見える、飲み込みにくい、けいれん
  • 発熱と強い首のこわばり、繰り返す嘔吐、急な視力低下
当日〜早めに医療機関へ相談したい状態
  • 50歳以降に初めて起きた頭痛、またはいつもの頭痛と明らかに違う
  • こめかみの痛み・圧痛、噛むと顎が疲れる、視界がかすむ
  • 転倒や頭部打撲の後に続く頭痛。特に血液を固まりにくくする薬を使用している
  • 日ごとに強くなる、夜間や安静時にも強い、発熱・体重減少・強い倦怠感を伴う
  • がん、免疫機能の低下、関節リウマチ、頸椎手術の既往がある

高齢者では、軽い転倒を本人が覚えていないこともあります。数週間〜数か月前の転倒や頭部打撲、服薬内容も医療者へ伝えましょう。

2.頸性頭痛とは

この記事でいう「頸性頭痛」は、医学的には頸原性頭痛と呼ばれます。首の骨・関節・椎間板・靱帯・筋肉などの問題に関連して起こる二次性頭痛です。国際頭痛分類では、首の病変があるだけでなく、首の状態と頭痛の変化に因果関係が認められることが診断上重要とされています。[1]

よくみられる傾向

  • 後頭部や首の付け根から、こめかみ・目の周囲へ広がる
  • 左右どちらか一方に出やすい
  • 首を動かす、同じ姿勢を続けると悪化しやすい
  • 首の動かしにくさ、肩まわりのこわばりを伴う

自己判断が難しい理由

  • 片頭痛や緊張型頭痛でも首の痛みを伴うことがある
  • 加齢による頸椎の変化は、頭痛がない人にもよくみられる
  • 画像上の「変形」だけでは頭痛の原因と断定できない
  • 複数の頭痛が同時に存在することもある

ポイント:「首が痛い=頸性頭痛」ではありません。頭痛の始まり方、首の動きとの関係、神経症状、服薬、転倒歴などを合わせて評価します。

3.リハビリの考え方とエビデンス

現在の研究では、頸原性頭痛に対して運動療法、専門家による徒手療法、生活指導などを組み合わせる方法で症状が改善する可能性があります。ただし、効果の大きさや最適な内容はまだ一定していません。2023年の系統的レビューでは、運動療法によって頭痛の強さ・頻度・生活上の支障が軽減する可能性が示されましたが、研究の質は低〜非常に低く、最適な運動の種類や回数は確立していません。[3]

2024年の無作為化比較試験では、運動に専門的な関節モビライゼーションを加えた群で、運動のみより頭痛頻度などが改善しました。2026年のネットワークメタ解析でも、複数の非薬物療法を組み合わせる方法が単独療法より短期的に優れる可能性が報告されています。[4][5]

一方、別の2026年の包括的レビューでは、通常ケアと比べた徒手療法や「徒手療法+運動」の効果には不確実性が残り、徒手療法は短期的な軽減に役立つ可能性がある、という慎重な結論でした。[6]また、これらの研究は成人一般が中心で、高齢者だけを対象にした結論ではありません。そのため、持病・骨の状態・体力・転倒リスクに合わせた個別調整が欠かせません。

エビデンスを実際の支援に置き換えると
  • 受け身の施術だけに頼らず、低負荷の運動を続ける
  • 首だけでなく、肩甲骨・胸郭・体幹・歩行まで含めて整える
  • 高齢者では骨粗鬆症、転倒歴、血管リスク、服薬を確認して個別化する
  • 「強く動かすほど効く」のではなく、症状が安定する量から少しずつ増やす

訪問リハビリで確認したい項目

症状と医学的安全性

頭痛の始まり方、血圧、神経症状、転倒・打撲、既往歴、鎮痛薬や抗凝固薬などを確認します。

身体機能

首の可動域、動作による症状変化、肩甲骨の動き、筋持久力、姿勢、バランスを確認します。

生活環境

椅子、テレビやスマートフォンの位置、枕、歩行補助具、家事姿勢、休憩の取り方を確認します。

本人の目標

「新聞を10分読める」「散歩後の頭痛を減らす」など、生活に直結する小さな目標を設定します。

徒手療法について

首の関節を動かす徒手療法は、病歴や神経・血管症状を確認した専門職が行うものです。高齢者では骨粗鬆症や血管疾患などを考慮し、適応を慎重に判断します。自分で首を強くひねって鳴らすことは避けてください。頸部の徒手療法では、まれな重篤事象を念頭に置いた事前スクリーニングが重要とされています。[7]

4.安全に行うセルフケア

以下は、危険なサインがなく、医師やリハビリ専門職から運動を止められていない方を想定した一般的な方法です。体調や持病によって適切な内容は異なるため、無理にすべて行う必要はありません。

始める前の準備
  • 背もたれのある安定した椅子を使い、両足を床につける
  • ふらつきがある方は、家族や専門職の見守り下で行う
  • 眼鏡・補聴器・歩行補助具を普段どおり使用する
  • 息を止めず、「楽に呼吸できる強さ」で行う

呼吸と姿勢のリセット

  1. 椅子に浅すぎず深すぎず座り、足裏を床につけます。
  2. 鼻から息を吸い、口からゆっくり吐きながら肩の力を抜きます。
  3. 頭頂部が上に伸びるイメージで、背中を無理なく起こします。
目安:ゆっくり5呼吸

胸を強く張る、腰を反らす、あごを上げる動きは不要です。

あごを小さく引く運動

  1. 目線を水平に保ちます。
  2. うなずかず、あごを1cmほど後ろへ引くように動かします。
  3. 首の前を強く固めず、3秒ほど保って力を抜きます。
目安:3〜5回から開始

二重あごを強く作る必要はありません。頭痛や首の痛みが明らかに増える場合は中止します。

首を左右へ小さく向ける運動

  1. 正面を向いて座り、肩の力を抜きます。
  2. 痛くない範囲で、顔をゆっくり右へ向けて戻します。
  3. 左側も同じように行います。
目安:左右3〜5回ずつ

首を一周させる、反動をつける、限界まで回すことは避けます。

肩甲骨をやさしく整える運動

  1. 腕を体の横に下ろし、肩をすくめないようにします。
  2. 左右の肩甲骨を、背中の中央へ少し寄せるイメージで動かします。
  3. 3〜5秒保ち、ゆっくり戻します。
目安:5回

力いっぱい寄せず、胸や腰を反らさないようにします。

短時間の歩行・全身活動

  1. 屋内歩行や家の周囲の散歩など、安全な場所を選びます。
  2. 会話できる程度の楽な速さで歩きます。
  3. 一度に長く行わず、短い時間を分けても構いません。
目安:3〜10分から体調に合わせる

胸痛、息苦しさ、強い動悸、ふらつきが出た場合は中止し、必要に応じて受診してください。

運動量の調整ルール
  • 最初は1日1回、合計5〜10分以内から始める
  • 軽い張りは許容しても、鋭い痛みや頭痛の明らかな増加は避ける
  • 運動後も症状が戻らない、または翌日に悪化する場合は回数を減らす
  • 数日間安定してから、1回ずつ増やす
運動を直ちに中止するサイン
  • 急に強くなる頭痛・首の痛み
  • 手足や顔のしびれ・脱力、ろれつの回りにくさ
  • めまい、二重に見える、吐き気、ふらつき
  • 声のかすれ、飲み込みにくさ、新たな歩行障害

5.日常生活の整え方

同じ姿勢を続けない

30〜60分を目安に、座り直す・立つ・数歩歩くなど、姿勢を小まめに変えます。完璧な姿勢を保ち続けるより、姿勢を変えることが大切です。

見る位置を上げる

新聞、本、スマートフォンは膝の上に置き続けず、台やクッションを使って目線に近づけます。

枕は「首が楽か」で選ぶ

高すぎ・低すぎを避け、仰向けや横向きで首が大きく曲がらない高さに調整します。高価な枕が必ず優れるわけではありません。

荷物を片側に集中させない

重い買い物袋は小分けにし、片手だけで長時間持つことを避けます。歩行補助具を使う場合は高さも確認します。

温める場合は低温やけどに注意

心地よい温度で短時間、タオル越しに使用します。眠りながら使わず、感覚低下や循環障害がある方は医療者へ相談してください。

鎮痛薬を自己判断で増やさない

腎臓・肝臓・胃腸の病気や他の薬との相互作用があります。使用日数が増えてきたら、医師や薬剤師に相談しましょう。

避けたいセルフケア
  • 首を勢いよく回す・反らす・鳴らす
  • 強い力で首の横や前を押す
  • マッサージ器を首に強く当てる
  • 痛みを我慢してストレッチを続ける
  • 長時間の頸椎カラー使用を自己判断で始める

6.高齢者に伝わりやすい指導方法

セルフケアは、内容が正しくても「覚えにくい」「怖い」「生活の中で行うタイミングがない」と続きません。高齢者への指導では、次の順番が実践的です。

  1. 安全を確認する:危険なサイン、血圧、転倒歴、服薬、ふらつきを確認します。
  2. 一度に1〜2種類だけ選ぶ:最初から多くの運動を渡さず、最も必要な動作に絞ります。
  3. 短い言葉で説明して見せる:一文を短くし、専門用語を避け、正面または横から実演します。
  4. 一緒に行う:椅子や手すりの位置を整え、同じ速さで2〜3回練習します。
  5. 本人に再現してもらう:「やり方」と「中止する症状」を本人の言葉で説明してもらいます。
  6. 生活習慣と結びつける:朝食後、昼のテレビ前、歯磨き後など、毎日の行動に組み込みます。
  7. 次回に記録を見て調整する:できた回数より、症状がどう変化したかを重視します。
伝わりにくい声かけ

「姿勢を正して、頸部深層筋を使いながら肩甲骨を内転してください」

伝わりやすい声かけ

「目線はそのままです。あごを少しだけ後ろへ。痛くない所で止めましょう」

ご家族・介護者の関わり方
  • 動く範囲を無理に広げず、回数を数える程度の支援にする
  • 「痛くても頑張る」より、「今日は少なくする」判断を尊重する
  • 表情、歩き方、会話の変化など、本人が言葉にしにくい変化も記録する
  • 急な症状変化は、体操の担当者だけでなく医師・看護師へ共有する

7.頭痛日記と再評価

頭痛の強さだけでなく、起きた時間、首の動き、服薬、睡眠などを記録すると、原因を決めつけずに傾向を見つけやすくなります。

記録項目 記入例 確認する意味
日時・持続時間 7月13日 14時、約40分 時間帯や生活動作との関係を確認
痛みの強さ 0〜10のうち「4」 前回や運動前後との比較
痛む場所・性質 右の首からこめかみ、重い感じ いつもと違う変化を見つける
きっかけ 30分ほど下を向いて読書 姿勢・動作との関連を確認
行った対処 休憩、体操3回、処方薬 何が有効だったかを確認
伴う症状 しびれなし、めまいなし 危険なサインの見落としを防ぐ

再評価の目安:頭痛が増える、生活への支障が強くなる、今までにない症状が出る場合は、予定を待たずに医療者へ相談します。安定している場合も、訪問時に日記を見ながら運動の種類・回数・生活環境を調整します。

8.よくある質問

レントゲンで「頸椎が変形している」と言われました。頭痛の原因ですか?

変形が頭痛に関係する場合はありますが、加齢による変化は頭痛のない方にも多くみられます。画像だけで決めず、首の動きと頭痛の関係、神経症状、経過を合わせて判断します。

首や肩をもめば治りますか?

軽い筋緊張が和らぐことはありますが、強いマッサージだけで原因が解決するとは限りません。特に急な後頭部痛、めまい、神経症状があるときは、もまずに受診を優先します。

体操は毎日多く行うほど良いですか?

多ければ良いわけではありません。高齢者では少量から始め、運動後と翌日の症状を見ながら増やします。悪化する場合は、種類・動かす範囲・回数の見直しが必要です。

痛みがある日は安静にした方が良いですか?

危険なサインがなく、軽い症状であれば、完全に動かさないよりも、楽な範囲で姿勢を変えたり短く歩いたりする方が適することがあります。ただし、普段と違う強い頭痛では運動せず受診してください。

「首の体操」だけでなく、生活全体を一緒に整えることが大切です

ふくろう訪問看護リハビリステーションでは、ご本人の症状、持病、服薬、転倒リスク、生活環境に合わせて、無理のない運動や日常動作の工夫を検討します。新しい頭痛や神経症状がある場合は、セルフケアを続ける前に医療機関への相談を優先しましょう。

参考文献・情報源

  1. 日本頭痛学会. 国際頭痛分類第3版(ICHD-3)日本語版:11.2.1 頸原性頭痛.
  2. 日本頭痛学会. 2次性頭痛(危険な頭痛、他の病気に伴う頭痛).
  3. Becher B, et al. Effectiveness of therapeutic exercise for the management of cervicogenic headache: A systematic review. Musculoskelet Sci Pract. 2023.
  4. Satpute K, Bedekar N, Hall T. Mulligan manual therapy added to exercise improves outcomes more than exercise alone in people with cervicogenic headache. J Physiother. 2024.
  5. Koonalinthip N, et al. The comparative efficacy of treatments for cervicogenic headache: a systematic review and network meta-analysis. Eur J Pain. 2026.
  6. Martins L, et al. Efficacy of nonsurgical interventions for the management of adults with cervicogenic headache: a systematic review and meta-analyses. Ann Phys Rehabil Med. 2026.
  7. Peters R, et al. Recommendations for Mobilization and Manipulation Treatment and Screening for Vascular Complications in Clinical Practice Guidelines for Neck Pain: A Systematic Review. Phys Ther. 2025.
免責事項:本記事は一般的な健康情報であり、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。症状、持病、服薬、医師からの指示に応じて内容を調整してください。急な症状や危険なサインがある場合は、速やかに医療機関へ相談してください。
情報確認日:2026年7月
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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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