精神科訪問看護指示書の読み方・注意点

精神科訪問看護指示書(別紙様式17)は、「訪問看護指示書の精神科版」ではありません。交付できる医師が限られ、訪問できる職種が限られ、回数の数え方も、保険の選び方も別ルールです。1枚の紙のどこに何が書いてあるかで、その利用者さんに何回・何分・何人で入れるかが決まります。
この記事では、令和8年度診療報酬改定(2026年6月1日施行)を踏まえて、様式の欄を上から順に読み進めながら、実務でつまずきやすい点を整理しました。指示書を受け取った日にそのまま確認できるチェックリストとQ&Aも用意しています。
- 交付できるのは「精神科を標榜する保険医療機関で精神科を担当する医師」だけ。内科医や、精神科を標榜していない医療機関の指示書では精神科訪問看護基本療養費は算定できません。
- 訪問できるのは保健師・看護師・准看護師・作業療法士。理学療法士・言語聴覚士は訪問できません。
- 回数は週3日まで。ただし退院日の翌日から3か月以内は週5日まで。それ以上必要なら精神科特別訪問看護指示書(月1回・14日)。
- 30分未満の訪問は「短時間訪問の必要性 あり」が指示書に明記されていなければ算定できません。
- 精神科訪問看護指示書が出れば要介護認定を受けていても医療保険。ただし主たる傷病名が認知症だけのときは対象外です。
- 令和8年度改定で、様式の押印欄が削除され、指示書は完結の日から2年間の保存が義務になりました。
SECTION 01まず、4種類の指示書を区別する
医療保険の訪問看護で使われる指示書は、大きく分けて4種類あります。似た名前が並ぶので、受け取った紙の表題と様式番号を最初に確認してください。
| 指示書の種類 | 様式 | 有効期間 | 交付できる医師 | これで算定するもの |
|---|---|---|---|---|
| 訪問看護指示書 | 別紙様式16 | 6か月以内 | 主治医(診療科の限定なし) | 訪問看護基本療養費 |
| 特別訪問看護指示書 | 別紙様式18 | 交付日から14日以内 /原則 月1回 |
主治医(診療科の限定なし) | 訪問看護基本療養費(週4日以上可) |
| 精神科訪問看護指示書 | 別紙様式17 | 6か月以内 | 精神科を標榜する医療機関の 精神科担当医のみ |
精神科訪問看護基本療養費 |
| 精神科特別訪問看護指示書 | 別紙様式17の2 | 交付日から14日以内 /月1回のみ |
精神科を標榜する医療機関の 精神科担当医のみ |
精神科訪問看護基本療養費(週4日以上可) |
※ 特別訪問看護指示書は気管カニューレ使用者・真皮を越える褥瘡の場合に月2回まで交付できますが、精神科特別訪問看護指示書にこの月2回の例外はありません。
有効期間の長さ(交付日から)
※ 精神科の2様式は、精神科を標榜する医療機関の精神科担当医しか交付できません。
SECTION 02誰が出せて、誰が訪問できるのか
交付できる医師は「精神科を標榜」×「精神科を担当」
精神科訪問看護基本療養費は、精神科を標榜する保険医療機関において精神科を担当する医師が交付した精神科訪問看護指示書と、精神科訪問看護計画書に基づいて訪問した場合に算定します。この2条件はどちらも必要です。
心療内科だけを標榜しているクリニックや、精神科を標榜していても内科医が主治医になっているケースでは、様式17で指示が出ていても精神科訪問看護基本療養費の要件を満たしません。新規依頼のときは、医療機関の標榜科と主治医の担当科を必ず確認してください。
訪問できる職種は4つ、PT・STは入れない
精神科訪問看護を行うのは、精神疾患を有する者に対する看護について相当の経験を有する保健師・看護師・准看護師・作業療法士です。「相当の経験」は、次のいずれかを満たすことを指します。
| 「相当の経験」の4要件(いずれか1つ) |
|---|
| ① 精神科を標榜する保険医療機関で、精神病棟または精神科外来に勤務した経験が1年以上 |
| ② 精神疾患を有する者に対する訪問看護の経験が1年以上 |
| ③ 精神保健福祉センターまたは保健所等で、精神保健に関する業務の経験が1年以上 |
| ④ 国・都道府県・医療関係団体等が主催する精神科訪問看護に関する研修を修了している |
精神科訪問看護計画は、相当の経験を有する保健師等(准看護師を除く)が作成します。准看護師は訪問はできますが、計画書の作成者にはなれません。
精神科担当医
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※ 訪問看護ステーションで精神科訪問看護基本療養費を算定できる職種を示しています。
SECTION 03様式17を上から順に読む
ここからは、実際の用紙の並びに沿って欄ごとに読んでいきます。朱色の枠が「読むポイント」です。
「◯年◯月◯日 〜 ◯年◯月◯日」の形で記載されます。6か月以内が上限です。
期間が空欄の指示書は1か月として扱われます。長期に関わる利用者さんなら、切れ目が出ないよう終了日の1か月前には次の指示書を依頼しておくのが安全です。指示期間外の訪問は算定できません。
施設名の欄が埋まっている場合は、同一建物居住者に該当する可能性があります。該当すると精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)となり、同一日に訪問する人数や1か月の訪問日数で単価が変わります。
令和8年度改定で、同一建物の判定に同一敷地内の建物も含まれることが明文化されました。棟が分かれていても同じ敷地なら合算です。
傷病名コードは、令和6年6月からのレセプトオンライン請求に対応して追加された欄です。ICD-10コードではなくレセプト電算処理システム用の傷病名コードを記載します。
主たる傷病名が「認知症」だけで交付された精神科訪問看護指示書では、要介護被保険者等について精神科訪問看護基本療養費を算定できません。認知症が主傷病であれば、原則として介護保険の訪問看護(=様式16の訪問看護指示書)の領域です。
ただし実務上は、指示元の医療機関が精神科在宅患者支援管理料を算定している認知症の利用者について精神科訪問看護を行う取扱いが示されています。判断に迷ったら、受け取った段階で指示元に「精神科在宅患者支援管理料の算定があるか」を確認してください。
診断名だけでなく、今どの病期にあるか(急性期を脱した直後か、維持期か)、直近の入院歴、目立つ症状が書かれます。初回訪問の組み立てはここから始まります。
「退院後」という記載があれば、次の欄より先に退院日を確認してください。退院日は週5日枠(SECTION 04)の起算点になります。指示書に書かれていないことも多いので、退院時共同指導やサマリーで押さえます。
「処方箋添付」にチェックが入っている場合は、添付の処方内容が指示書の一部になります。
改定で、指定訪問看護の提供にあたって服薬状況(残薬の状況を含む)の把握に努めることが運営基準に明記されました。把握した内容は主治医に情報提供し、必要に応じて利用者の同意を得たうえで調剤を行う薬局にも情報提供することが望ましいとされています。残薬の山が見つかったときの動線を、あらかじめステーション内で決めておくと動きやすくなります。
他の指示書にはない、精神科訪問看護指示書に固有の欄です。
病名告知「なし」のときは、訪問時に病名を前提にした説明ができません。「なぜ看護師が来るのか」をどう説明するか、家族はどこまで知っているかを、初回訪問の前に主治医と擦り合わせておきます。「治療の受け入れ」欄も、拒否的なのか半信半疑なのかで初回の距離の取り方が変わります。
「あり」の場合、理由として次の区分が示されます。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 1 | 暴力行為、著しい迷惑行為、器物破損行為等が認められる者 |
| 2 | 利用者の身体的理由により、1人の看護師等による訪問看護が困難と認められる者 |
| 3 | 利用者およびその家族それぞれへの支援が必要な者 |
| 4 | その他( ) |
複数名精神科訪問看護加算は、医師が必要性を認め、精神科訪問看護指示書にその旨の記載があることが算定要件です。「2人で行った」という事実だけでは算定できません。30分未満の訪問では算定できない点にも注意してください。看護補助者・精神保健福祉士が同行する場合は週1日までです。
精神科訪問看護基本療養費は、1回の訪問の実施時間で「30分未満」と「30分以上」のどちらかの区分を算定します。
30分未満の区分は、短時間訪問の必要性があると医師が認め、精神科訪問看護指示書に明記されている場合にのみ算定できます。逆に言えば「なし」の指示書で結果的に25分になった訪問は、そのままでは算定根拠がありません。長時間の関わりが症状を悪化させる利用者さんでは、依頼の段階から「短時間訪問あり」で書いてもらうのが実務のコツです。
1日に2回、または3回以上訪問する場合の欄です。これに対応する精神科複数回訪問加算は、指示元の医療機関が精神科在宅患者支援管理料を算定していて、主治医が複数回の訪問看護が必要と認めた利用者に対して算定します。
「複数回訪問の必要性 あり」だけでは足りません。指示元が精神科在宅患者支援管理料を算定しているかが前提条件です。また、精神科在宅患者支援管理料1・3を算定する医療機関と連携している場合は、加算を算定するのは訪問看護ステーションではなく医療機関側になります(2の場合はステーション側)。ここは請求前に必ず突き合わせてください。
認知症高齢者の日常生活自立度の判定区分に○がつきます。
この欄に記載があること自体は、認知症が主傷病であることを意味しません。あくまで欄03の「主たる傷病名」で判断します。統合失調症の高齢利用者に認知機能低下が併存している、といった読み取りに使う欄です。
ここが精神科訪問看護指示書の中心です。7つの柱が並び、該当するものに指示が書き込まれます。
| 項目 | 訪問で実際に見ること・すること(例) |
|---|---|
| 1 生活リズムの確立 | 起床・就寝時刻、食事回数、日中の過ごし方、昼夜逆転の程度 |
| 2 家事能力、社会技能等の獲得 | 調理・洗濯・掃除・買い物・金銭管理の実行状況と、どこで詰まるか |
| 3 対人関係の改善(家族含む) | 同居家族との距離、近隣とのトラブル、支援者との連絡の取り方 |
| 4 社会資源活用の支援 | 自立支援医療、障害福祉サービス、就労支援、相談支援専門員との接続 |
| 5 薬物療法継続への援助 | 服薬状況・残薬・自己調整の有無、副作用(錐体外路症状・過鎮静など) |
| 6 身体合併症の発症・悪化の防止 | 体重・血圧・血糖、便秘、飲水量、齲歯、喫煙、健診受診状況 |
| 7 その他 | 再燃サインと対応、危機時の連絡順序、家族支援の具体策など |
改定で、指定訪問看護は利用者の心身の状況等に応じて妥当適切に行い、漫然かつ画一的なものとならないよう、看護目標および訪問看護計画に沿って行うことが明記されました。心身の状況を踏まえずに一律に日数・回数・実施時間・人数を定めることは認められません。この7項目のうちどれを、どの順で、どこまで狙うのかを計画書に落とし込み、評価まで記録書に残す運用が求められます。
精神科訪問看護では、訪問しても本人が出てこないことが珍しくありません。だからこそ「不在時の対応法」の欄が独立して用意されています。
「留守なら次回」で済ませてよいのか、何分待つのか、家族に連絡するのか、主治医に報告するのか、警察・保健所と連携する事態はどこからか。空欄のまま受け取ってしまいがちな欄ですが、訪問者の安全と利用者の安全の両方に直結します。空欄なら遠慮なく追記を依頼してください。
電話・FAX・ICT のどれで、誰宛に、どのタイミングで連絡するかを確認します。
他機関の職種がICTで記録した診療情報等を取得・活用して計画的な管理を行った場合の訪問看護医療情報連携加算(月1回 1,000円)が新設されました。ICT連携を行っているなら、この欄で共有基盤を確認しておくと算定要件の整理につながります(施設基準・連携機関数などの届出が必要)。
令和8年度改定で、訪問看護指示書の様式から押印欄が削除されました。精神科訪問看護指示書、精神科特別訪問看護指示書、特別訪問看護指示書も同様です。表記は「医師氏名 印」から「医師署名(又は記名押印)」に変わりました。なお従前の様式も引き続き使用可能なので、押印欄のある古い様式で届いても無効ではありません。
訪問看護計画書・訪問看護報告書、精神科訪問看護計画書・精神科訪問看護報告書についても、書面の場合に署名・押印を求めないこととされ、様式例から押印欄が削除されています。
GAF尺度の値は、指示書には欄がありません。精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)または(Ⅲ)を算定する場合、月の初日の訪問時に判定した値を、訪問看護記録書・訪問看護報告書・訪問看護療養費明細書の3つに記載します。月初の訪問担当者が誰になっても記録が漏れないよう、ステーション内で担当と手順を決めておくことをおすすめします。
SECTION 04訪問回数の枠と、週の数え方
原則は週3日、退院後3か月以内は週5日
精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅲ)は、訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅱ)を算定する日と合わせて週3日が限度です。ただし退院日から起算して3か月以内(退院日は含まない)の期間に行われる場合は週5日まで算定できます。
① 起算点:退院日は含まず、翌日から数えます。12月15日退院なら3月14日までが「3か月以内」です。
② 週の区切り:算定回数が「週」単位のものは、日曜日から土曜日までの1週間を単位とします。
③ 3か月をまたぐ週:3か月に到達する週は、その週のうち3か月の期間中に算定した日を除いて週3日が限度です。週の途中で枠が切り替わるため、混在計算になります。
それ以上必要なら、精神科特別訪問看護指示書
急性増悪等で一時的に頻回の訪問が必要になった場合、精神科特別訪問看護指示書(様式17の2)が交付されると、交付日から起算して14日以内・月1回に限り、14日を限度に毎日の訪問を算定できます。
この場合も、交付日の属する週と14日目の属する週については、その週のうち特別指示期間中に算定した日を除いて週3日が限度です。また、一時的に頻回の訪問看護が必要な理由を記録書に記載し、計画書の作成と訪問の実施について主治医と密に連携することが求められます。
1週間あたりの上限(日曜〜土曜の1週間で数える)
退院後3か月の数え方(例:12月15日退院)
含めない
週5日まで
週3日まで
※ 3か月に到達する週は、その週のうち3か月の期間中に算定した日を除いて週3日が限度です(またぐ週は混在計算になります)。
2か所目のステーションが入れるとき
すでに他のステーションが訪問している利用者には、原則として精神科訪問看護基本療養費を算定できません。例外は次の3つです。
| 例外 | 条件 | 入れるステーション数 |
|---|---|---|
| ア | 特掲診療料の施設基準等 別表第七に掲げる疾病等の利用者 | 他に1か所(計2か所) |
| イ | 精神科特別訪問看護指示書の交付対象で、週4日以上の訪問が計画されている | 他に1か所(計2か所) |
| ウ | 別表第七に掲げる疾病等で、週7日の訪問が計画されている | 他に2か所以下(計3か所) |
※ 複数のステーションが入る場合でも、同一日に両方が訪問看護療養費を算定することはできません。
SECTION 05医療保険か、介護保険か
精神科訪問看護指示書がもたらす最も大きな効果のひとつが、要介護認定を受けている利用者でも医療保険の訪問看護になるという点です。通常は介護保険が優先されますが、精神科訪問看護指示書が交付された精神疾患を有する患者については、要介護被保険者等であっても医療保険で算定できます。
認知症が主たる傷病名で精神科訪問看護指示書が交付された患者については、この取扱いの対象外です。この場合は介護保険が優先し、様式16の訪問看護指示書で介護保険の訪問看護として提供するのが原則になります。
主治医は精神科担当医か?
指示元の医療機関に確認する
▼
※ 精神科在宅患者支援管理料の算定の有無を指示元に確認
▼
(精神科訪問看護基本療養費)
同一月に医療保険と介護保険の訪問看護を併用することはできませんが、月の途中で利用者の状態が変化して、医療保険の精神科訪問看護から介護保険の訪問看護へ変更することは可能です。一方で、恣意的に数日単位で行き来させるような運用は認められません。
SECTION 06令和8年度改定で変わった点
令和8年度診療報酬改定は2026年6月1日施行です。精神科訪問看護指示書の運用に関係する主な変更点を整理します。
| 変更点 | 内容 |
|---|---|
| 押印欄の削除 | 訪問看護指示書の様式から押印欄を削除。精神科訪問看護指示書・精神科特別訪問看護指示書・特別訪問看護指示書も同様。従前の様式も引き続き使用可能。訪問看護計画書・報告書、精神科訪問看護計画書・報告書も書面での署名・押印は不要に。 |
| 指示書の2年間保存 | 運営基準の改正により、訪問看護記録書・訪問看護指示書・訪問看護計画書・訪問看護報告書・市町村等への情報提供書・市町村等との連絡調整に関する記録を整備し、完結の日から2年間保存することが義務化。記録は正確かつ最新の内容に保つことも求められます。 |
| 漫然かつ画一的な訪問の禁止 | 心身の状況等を踏まえずに、一律に訪問の日数・回数・実施時間・人数を定めることは認められないと明記。定期的な訪問を実施していない者が日数等を定めることも不可。 |
| 訪問開始・終了時刻の記録 | 日々の訪問看護利用者氏名、訪問場所、実際の訪問開始時刻および終了時刻、訪問人数等を記録・保管することが明確化。目標達成の程度と効果の評価も記録書に記載。 |
| 服薬・残薬状況の把握 | 心身の状況等の把握に服薬状況(残薬の状況を含む)が追加。主治医への情報提供に加え、必要に応じ利用者の同意を得て薬局へ情報提供することが望ましいとされました。 |
| 機能強化型訪問看護管理療養費4の新設 | 支援ニーズの高い精神科訪問看護利用者等を受け入れ、24時間対応を行い、地域の関係機関と連携する体制のあるステーションを評価。月の初日 9,030円。常勤看護職員4人以上・看護職員割合6割以上などが要件。 |
| 訪問看護遠隔診療補助料の新設 | D to P with N のオンライン診療の補助に係る評価(1日につき2,650円、月1回)。訪問看護指示書の有効期間内にある利用者のみ算定でき、同一日に精神科訪問看護基本療養費等は算定できません。 |
| 訪問看護医療情報連携加算の新設 | 他機関の職種がICTで記録した診療情報等を取得・活用して計画的な管理を行った場合に月1回 1,000円。連携機関5以上などの施設基準あり。同一月に在宅患者連携指導加算とは併算定不可。 |
| 包括型訪問看護療養費の新設 | 高齢者向け住まい等に併設・隣接するステーションが、届出建物の利用者に24時間体制で頻回の訪問看護を行った場合の1日包括評価。算定日は精神科訪問看護基本療養費・精神科複数回訪問加算・複数名精神科訪問看護加算等は別に算定できません。 |
SECTION 07受け取った日に確認する12項目
- 様式は「別紙様式17(精神科訪問看護指示書)」か。様式16や様式18と取り違えていないか。
- 交付元は精神科を標榜する保険医療機関で、主治医は精神科担当医か。
- 指示期間が記載され、6か月以内か。始期・終期の年月日に誤記はないか。
- 主たる傷病名と傷病名コードが記載されているか。認知症だけになっていないか。
- 「病名告知」の有無と「治療の受け入れ」の記載を、初回訪問前に確認したか。
- 短時間(30分未満)で入る予定があるなら、「短時間訪問の必要性 あり」になっているか。
- 複数名で入る予定があるなら、「複数名訪問の必要性 あり」と理由が記載されているか。
- 1日複数回の予定があるなら、指示元が精神科在宅患者支援管理料を算定しているか確認したか。
- 「留意事項及び指示事項」の1〜7のうち、狙う項目が具体的に書かれているか。
- 緊急時の連絡先と、不在時の対応法が埋まっているか。空欄なら追記を依頼。
- 医師の署名(または記名押印)があるか。押印欄のない新様式でも有効。
- 指示書を所定の場所に保管したか。完結の日から2年間の保存対象。
SECTION 08よくある疑問
精神疾患と身体疾患の両方があります。指示書は2枚もらうべきですか。
指定訪問看護は、主治医から交付される指示書に基づいて行われます。複数の医療機関を受診している場合は、原則として訪問看護が必要となる主傷病の診療を担う主治医が交付した指示書に基づいて算定します。主治医は1人が原則で、同一医療機関の同一診療科に所属する複数の医師が共同で主治医を担っている場合に限り、そのいずれかが交付した指示書で差し支えありません。どちらを主とするかは、ケアの中心が精神症状にあるのか身体管理にあるのかで整理し、迷う場合は両医療機関に相談してください。
理学療法士がリハビリで入りたいのですが、精神科訪問看護指示書で訪問できますか。
できません。精神科訪問看護基本療養費の対象職種は保健師・看護師・准看護師・作業療法士で、理学療法士と言語聴覚士は含まれません。リハビリが必要なら、訪問看護指示書(様式16)に基づく訪問看護基本療養費、または介護保険の訪問看護としての整理が必要です。
精神保健福祉士は訪問できますか。
訪問看護ステーションでは、精神保健福祉士単独の訪問で精神科訪問看護基本療養費を算定することはできません。複数名精神科訪問看護加算の同行者としてであれば可能で、この場合は週1日が限度です。なお、保険医療機関が算定する精神科訪問看護・指導料では精神保健福祉士も対象職種になるため、「医療機関の精神科訪問看護」と「ステーションの精神科訪問看護」を混同しないよう注意してください。
精神科特別訪問看護指示書は、月2回もらえますか。
もらえません。特別訪問看護指示書(様式18)には、気管カニューレ使用者と真皮を越える褥瘡の場合に月2回交付できる例外がありますが、精神科特別訪問看護指示書にこの例外はなく、月1回・14日限度です。
押印のない指示書が届きました。差し戻すべきですか。
差し戻す必要はありません。令和8年度改定で様式から押印欄が削除され、「医師署名(又は記名押印)」となりました。医師の署名があれば有効です。逆に、押印欄のある従前の様式も引き続き使用できます。
GAF尺度は毎回の訪問で判定するのですか。
いいえ。精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)または(Ⅲ)を算定する場合、月の初日の指定訪問看護時に判定した値を、訪問看護記録書・訪問看護報告書・訪問看護療養費明細書に記載します。月内に状態が大きく動いた場合は、経過として記録書に残しておくと主治医への報告がしやすくなります。
指示書はいつまで保管すればよいですか。
令和8年度改定で運営基準が改正され、訪問看護指示書を含む所定の記録は完結の日から2年間の保存が義務づけられました。あわせて、記録は正確かつ最新の内容を保つよう整備することも求められています。電子で保管する場合は、医療情報システムの安全管理に関するガイドラインへの対応もあわせて確認してください。
まとめ指示書は「制約」ではなく「設計図」
精神科訪問看護指示書は、算定の可否を決める書類であると同時に、その利用者さんに何を届けようとしているかを主治医と共有するための設計図でもあります。短時間訪問の欄ひとつを「あり」にしてもらうかどうかで、面接に耐えられない時期の関わり方が変わります。不在時の対応法が書かれているかどうかで、訪問した看護師の判断の重さが変わります。
令和8年度改定は、「漫然かつ画一的な訪問はしない」「実際にやったことを記録に残す」という方向を明確にしました。指示書の欄を丁寧に読むことは、そのまま計画書と記録書の質につながります。受け取ったその日に一度、上から順に目を通す習慣をつくってみてください。
ふくろう訪問看護リハビリステーションでは、精神疾患・難病・緩和ケアの在宅療養を支援しています。指示書の内容や保険の適用でご不明な点があれば、お気軽にご相談ください。
参考・出典
- 厚生労働省保険局長「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」令和8年3月5日 保発0305第19号(令和8年6月1日適用/令和8年4月2日訂正後)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686845.pdf - 厚生労働省保険局長「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」令和8年3月5日 保発0305第20号
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001666806.pdf - 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」令和8年3月10日版
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf - 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定の概要 9.質の高い訪問看護の推進」
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671033.pdf - 厚生労働省保険局医療課長「訪問看護計画書等の記載要領等について」令和8年3月27日 保医発0327第10号
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681763.pdf - 厚生労働省保険医療機関及び保険医療養担当規則等の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第21号)
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665209.pdf - 厚生労働省老健局老人保健課長・保険局医療課長「『医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について』の一部改正について」令和8年3月27日 老老発0327第2号・保医発0327第4号(令和8年6月1日適用)
- 厚生労働省保険局医療課長「『特別養護老人ホーム等における療養の給付の取扱いについて』の一部改正について」令和8年3月27日 保医発0327第5号
https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681750.pdf - 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(告示・通知・疑義解釈の一覧)
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html - 一般社団法人全国訪問看護事業協会「令和8年度診療報酬改定まとめ」(訪問看護関係通知の抜粋と原典リンク/2026年7月21日更新)
https://www.zenhokan.or.jp/new/new2753/ - 公益財団法人日本訪問看護財団「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護に関する説明資料等】」
https://www.jvnf.or.jp/news/r8housyu-kaitei/
本記事は2026年7月28日時点で公表されている告示・通知等に基づいて作成しています。診療報酬の解釈は疑義解釈資料の発出等により変わることがあります。個別の算定可否については、管轄の地方厚生(支)局にご確認ください。

