若者の引きこもりの社会復帰を支援するには

こころとくらしのコラム

若者のひきこもりの社会復帰を支援するには
――「出す」ことではなく、「自律」を支えるという考え方

ご本人・ご家族・地域で支える方へ。国の最新指針と医学研究をもとに、いま何がわかっていて、どこに相談でき、訪問看護に何ができるのかを整理しました。

ふくろう訪問看護リハビリステーション/医療法人ふくろうの樹 監修:上松 正和(ふくろう訪問クリニック 院長)

「そっとしておくべきなのか、動かすべきなのか」。ひきこもりの相談で、ご家族が最初にぶつかるのがこの二択です。

結論から言えば、いまの国の指針はどちらでもありません。目標は「家から出すこと」でも「就職させること」でもなく、本人が自分で生き方を決められるようになること(自律)だと明記されました。そのうえで、家族だけで抱えないための窓口と制度が、この数年でかなり整っています。

この記事では、①いまの数字、②「ひきこもり」の医学的な位置づけ、③回復の道すじ、④家族の関わり方、⑤訪問看護にできること、⑥福岡で相談できる場所――の順に、出典を示しながら解説します。

SECTION 01

数字で見る全体像──146万人という推計をどう読むか

内閣府が2022年11月に実施し、2023年3月31日に公表した「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」では、ひきこもり状態にある人の割合は15〜39歳で2.05%、40〜64歳で2.02%でした。これを全国人口にあてはめると15〜64歳で約146万人、およそ50人に1人という推計になります[1][2]

図1 15〜64歳の「およそ50人に1人」 内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」2023年3月31日公表 この1人 推計の内訳 15〜39歳     2.05% 40〜64歳     2.02% 全国推計(15〜64歳) 約146万人 = 生産年齢人口の約50人に1人

図1/この調査の「ひきこもり」は、外出頻度が低い状態が6か月以上続き、かつ病気などが理由でないものを「広義のひきこもり」として集計したものです。同じ定義を一律にあてはめた結果であるため、実際には該当しない人が含まれたり、逆に該当する人が除かれたりする可能性があると内閣府自身が注記しています。

「若者」に限って見ると

10代・20代前半の入り口にあたるのが不登校です。文部科学省が2025年10月29日に公表した令和6年度の調査では、小・中学校の不登校児童生徒数は353,970人で過去最多、12年連続の増加でした。高校は約6万8千人です[3][4]

ただし、この調査には変化の兆しもあります。増加率は前年度の15.9%から2.2%へ大きく鈍化し、新規の不登校児童生徒数(小中合計153,828人)は9年ぶりに減少、不登校が翌年も続く「継続率」も小学校71.7%・中学校77.1%へ低下しました[4]

就労の側から見ると、厚生労働省は15〜49歳で就労も家事も通学もしていない人(若年無業者等)を約120万〜130万人と見積もっており、この層への支援拠点が後述する「サポステ」です[5]

数字に幅があるのはなぜか

ひきこもりの有病率は、報告によって数%から20%超まで大きくばらつきます。19研究を統合した2025年のメタ解析(Zhang W, et al. Psychiatry Clin Neurosci. 2025;79:138-146)は、その理由を測定方法の違いで説明しました。質問紙「HQ-25」を使った研究では21.7%(95%CI 11.8–36.4)と高く、他の質問紙では5.0%(3.1–7.9)、標本の取り方でも非確率標本12.5%に対して確率標本3.1%と、4倍前後の差がつきます[6]

つまり「146万人」と「数%〜20%」は矛盾ではなく、どの物差しで測ったかの違いです。内閣府の146万人は、住民を無作為抽出した確率標本に厳しめの定義をあてた、低めの見積もりにあたります。

SECTION 02

「ひきこもり」は病名ではない──3つの定義とその変化

まず押さえておきたいのは、ひきこもりは診断名ではなく、状態を指す言葉だということです。ICD(国際疾病分類)にもDSM(米国の診断基準)にも、独立した疾患としては載っていません。

そのうえで、この15年で定義の考え方が3段階で変わってきました。

図2 定義はこう変わってきた 2010年 厚労省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」 社会参加を回避し、原則6か月以上おおむね家庭にとどまる状態。統合失調症の症状による ひきこもりとは一線を画す「非精神病性の現象」とした(未診断の統合失調症に留意)。 2020年 国際的な診断基準案(Kato TA, Kanba S, Teo AR) ①自宅での著しい社会的孤立 ②6か月以上持続 ③孤立に伴う機能障害または苦痛。 他の精神疾患の併存は除外条件から外され、3〜6か月未満は「pre-hikikomori」とされた。 2025年1月 厚労省「ひきこもり支援ハンドブック 〜寄り添うための羅針盤〜」 支援の対象を「生きづらさを抱え、他者との交流が限定的で、支援を必要とする状態」と広く とらえ、その状態にある期間は問わないとした。診断がないと支援できない、を明確に否定。

図2/2025年のハンドブックが「期間を問わない」としたのは、6か月という線引きを支援現場が厳密に運用してしまい、「本人を連れてきて診断を受けないと支援できない」という対応につながっていた、という反省を踏まえたものです。

実務上いちばん大事な変化

「6か月たっていないから」「診断がついていないから」「本人が来ないから」は、相談を断る理由にならなくなりました。国際的な診断基準の側でも、うつ病・社交不安症・強迫症などの併存は除外条件から外れています。ひきこもりと精神疾患は「どちらか」ではなく「重なる」ものとして扱う、というのが現在の共通認識です。

なお、国際基準では外出頻度による重症度も示されています。週2〜3日外出できる=軽度、週1日以下=中等度、ほとんど自室から出ない=重度、週4日以上外出している場合は定義上あてはまらない、という整理です[7][8]

SECTION 03

背景にある医学的な問題──見逃してはいけないもの

ひきこもりが病名でないからといって、医学的な評価が不要というわけではありません。むしろ逆です。精神保健福祉センターのひきこもり相談で本人と面談できた事例を調べた研究(近藤ら, 2010)では、その大半に何らかの精神医学的診断が可能でした。とくに発達障害の診断がついたのは全体の30%弱と報告されています[9]

厚労省ガイドラインは、この評価結果を支援方針に直結する3群に整理しています。診断名で機械的に振り分けるのではなく、「どんな支援が中心になるか」で分ける、という発想です。

図3 3群分類:どの支援が中心になるか 厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」(2010)第6軸 第1群 主な診断 統合失調症/気分障害 不安症(社交不安・強迫等) 支援の中心 薬物療法などの医学的治療 +精神療法・生活支援 主な相談先 精神科・心療内科 児童精神科 精神科訪問看護 第2群 主な診断 自閉スペクトラム症など 発達障害/知的障害 支援の中心 特性に合わせた環境調整 生活・就労支援、二次障害治療 主な相談先 発達障害者支援センター 市町村の障害福祉窓口 就労移行支援事業所 第3群 主な診断 パーソナリティの偏り 身体表現性障害/同一性の問題 支援の中心 精神療法的なかかわり 居場所・生活・就労支援 主な相談先 ひきこもり地域支援センター 精神保健福祉センター・保健所 民間支援団体・居場所

図3/この3群は「重症度の順番」ではありません。第1群だから重い、第3群だから軽い、ということではなく、どの引き出しを最初に開けるかの違いです。実際には重なることも多く、時間の経過とともに群が変わることもあります。

とくに早く気づきたい3つ

ガイドラインは、治療開始が遅れると本人の不利益が大きい疾患として次の3つを挙げています[9]

疾患群気づきの手がかりなぜ急ぐのか
気分障害
(うつ病・双極性障害)
ぼんやりしている、ふさぎ込む、好きだったこともしない、「生きている価値がない」「死にたい」と言う。子どもでは説明のつかない苛立ちや不機嫌として出ることも。突発的な自殺に至る可能性がある。休養と薬物療法の開始が必要。
統合失調症と
その類縁疾患
「悪口を言われている」「噂されている」「考えが読まれる」「操られている」といった訴え、ひとりごと、脈絡のない言動。診断できれば速やかな薬物療法の適応。未診断のまま長期化しやすい。
発達障害
(ASD・ADHD・知的障害)
相手の意図や状況の理解が難しい、強いこだわり、集中の困難で自信を失っている、からかいの対象になってきた。特性がわかれば環境調整・学習支援・ペアレントトレーニングなど打てる手が具体化する。

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家族からの情報しかないとき、何を聞くか

本人に会えない段階でも、評価の手がかりはあります。ガイドラインが挙げるのは、睡眠覚醒リズム、食事の摂り方、清潔・不潔へのこだわり方、家族との関係性です。とくに睡眠は重要で、体質的なリズム障害なのか、うつや統合失調症の症状としての不眠なのか、対人不安や自己嫌悪から生じた二次的な昼夜逆転なのかで、意味がまったく違います。

ただし、家族の目を通した間接的な情報である以上、得られた見立てはあくまで推測という慎重さが必要だ、ともガイドラインは釘を刺しています。

SECTION 04

ゴールは「自立」ではなく「自律」──2025年の国の指針

2025年1月、厚生労働省は「ひきこもり支援ハンドブック 〜寄り添うための羅針盤〜」を公表しました[10]。2010年のガイドラインが医学的な評価と支援法を扱ったのに対し、こちらは支援者の姿勢と倫理に踏み込んだ内容です。

そのなかで最も重要なのが、目指す姿の定義です。

ハンドブックが示した「目指す姿」

一人ひとりの背景や心情をとらえずに社会参加や就労のみを求めるのではなく、本人やその家族が、自らの意思で、自身が目指す生き方や社会との関わり方を決めていけるようになること。ハンドブックはこれを「自立ではなく自律」と表現しました。

ここでいう自律とは、自分を律することや社会に適応することではなく、本人の尊厳・主体性・自尊感情が回復することを指します。社会参加や就労は、その自律に向けた取り組みのひとつとして含まれる、という位置づけです。

支援者に求められる4つの姿勢と6つの留意点

4つの姿勢6つの留意点
① 敬意と労いは最大限に① 本人と家族の感じる課題・意向は違う
② 尊重し、共に考える② 広く社会に働きかける視点をもつ
③ 本質を見極め一歩ずつ支援する③ 支援者は一人で抱えない
④ 家族は本人の生活を支え、影響を与える存在である④ 支援の強要に注意する
※ハンドブックは支援の「50のポイント」も示しており、家族支援、アウトリーチ、意向確認、多機関連携、支援者自身のケアまでを網羅しています。⑤ エンパワメントやコーディネートを
⑥ 精神疾患や発達障害の正しい理解
「家族を責めない」は倫理の話

ハンドブックは、本人を「人として尊厳ある存在」と認め、そうならざるを得なかった背景を理解していれば、相談に来た家族にこれまでの関わりを責めるような対応にはならないはずだ、と書いています。同じ論理で、「就職することがゴールである」という提示も起こらないはずだ、と続きます。

2010年のガイドラインも同じ方向を向いており、「親は罪悪感によって子どもを支えることはできない」という一文を残しています。家族の関わり方とひきこもりを直線的な因果で結ぶ「親原因論」は有害でしかない、とも明記されています。

SECTION 05

回復には順番がある──支援の4段階

ひきこもりからの回復は、一段ずつ登る階段にたとえられます。厚労省ガイドラインが示すのは次の4段階です。重要なのは、前の段階の支援をやめて次に進むのではなく、重ねていくという点です。

図4 支援の4段階と、重なっていく支援法 出会い・評価 家族だけの相談から 個人的支援 本人と1対1で会える 中間的・過渡的な 集団との再会 居場所・デイケア 社会参加の試行 就労体験・就学 家族支援(最初から最後まで続ける) 個人面談・必要なら治療 戻ることもある(それは失敗ではない) 厚労省ガイドライン 図3をもとに作図。段階を飛ばして加速させることは推奨されていません。

図4/ガイドラインは、支援者が人工的にこの過程を加速させたり途中段階をショートカットしたりすることは勧められない、と明記しています。避けるべきなのは「時間がかかること」ではなく、支援が届いていない状態での停滞です。

段階ごとの特徴と、周囲の対応

時期本人に起きていること周囲の対応の原則
準備段階まだ通学・就労は続いているが、腹痛・頭痛などの身体症状、不安や緊張の高まり、気分の落ち込みが前景に出る。症状のケアを通じて、心の訴えに耳を傾ける。
開始段階激しい葛藤が表に出る。不安と焦り、気分の落ち込み。親にしがみつくかと思えば暴力的になるなど、不安定さと両価性が目立つ。本人には休養、家族には余裕が必要な時期。支援者が過度に指示しすぎない。
ひきこもり段階不安定さは落ち着き、回避と退行が前景に。ゲームやネットへの没頭が目立つことも。夜間のコンビニなど浅い接触が再開することがある。焦らずに見守り、性急な社会復帰の要求は避ける。家族の不安を支える。ただし変化がないまま長期化する徴候が見えたら積極的な関与も検討。
社会との再会段階社会情勢や具体的な活動への関心が芽生え、「中間的・過渡的な場」を求めるようになる。変化に一喜一憂せず、安定した関わりを。家族が焦って外出刺激を強めやすい時期。

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「中間的・過渡的な場」がなぜ要るのか

ひきこもり状態から、いきなり職場や学校に戻るのは無理があります。あいだに、失敗しても大丈夫な場所が要ります。具体的には、教育支援センター(適応指導教室)、精神科デイケア、フリースペース、居場所、当事者会、福祉作業所などです。

この段階での集団活動には、出席や発言を強制されない/発言を非難されない/いつでも離脱できる、という支持的な枠組みと、スタッフ・場所・時間の安定が必要だとされています。また、集団に入ると最初は人一倍疲れることを、家族もスタッフも知っておく必要があります。

SECTION 06

家族にできること──声かけの具体例と、正直なエビデンスの限界

本人が相談に来ないことは珍しくありません。だからこそ、家族への支援そのものが独立した支援になります。厚労省ガイドラインは、家族への個別面談の目的を4つに整理しています。

  • ひきこもりの子をもつ親の苦悩が受容された、という体験を得る
  • 家族面談を通じて本人への影響が期待できる
  • 親が「共同支援者」としての冷静さと意欲をもてる
  • 両親のあいだに協力関係が築かれる

CRAFTという考え方

家族の関わり方を変えることで本人の受療につなげる方法として、ガイドラインは米国発のCRAFT(Community Reinforcement and Family Training)を参考として紹介しています。認知行動療法の理論に基づき、週1回1セッションで次のことを扱います[9]

CRAFTが扱う8つのこと家庭でのイメージ
① 家族の動機づけを高める「何のためにこれをやるのか」を家族自身が納得しておく
② 問題の行動分析いつ・どんな状況で・何が起きたかを、評価をまじえずに書き出す
③ 家庭内暴力の予防危ないパターンを先に見つけ、避難や連絡の手順を決めておく
④ コミュニケーションスキルの改善命令・詰問をやめ、「私は」を主語にした短い言い方に変える
⑤ 望ましい行動を増やすできたことに、その場で・短く・具体的に反応する
⑥ 望ましくない行動を減らす説教で止めようとせず、反応の仕方を変える
⑦ 家族自身の生活を豊かにする親が自分の予定・楽しみ・つながりを取り戻す
⑧ 本人に受療を勧めるタイミングと言い方を準備してから、一度だけ丁寧に伝える
エビデンスの現状は、正直に言えばまだ弱い

九州大学などのグループは、メンタルヘルス・ファーストエイドとCRAFTに基づく3日間の家族向けプログラムを開発し、ランダム化比較試験で検証しました(Kubo H, et al. Front Psychiatry. 2023;13:1029653)。しかし、この試験はコロナ禍で中断し、目標症例数の36.3%しか集まりませんでした[11]

結果も単純ではありません。プログラム群では本人の攻撃的行動がむしろ有意に悪化し(深刻な家庭内暴力の報告はなし)、家族の自信も低下しました。著者らは「有効性について一般的な結論は出せない」としたうえで、家族がより安全に本人に近づけるようプログラムの改訂が必要だと結論しています。

これは、家族の関わり方を変えること自体が、本人にとっては環境の変化=ストレスにもなりうる、ということを示しています。自己流で急に対応を変えるのではなく、支援者と相談しながら段階的に進めることをおすすめする理由がここにあります。

言い方を少し変えるだけで届き方が変わる

避けたい言い方置きかえの例
「いつまでこうしているつもり?」「今日は何か食べた? 冷蔵庫にうどん置いとくね」
「みんな働いてるんだから」「あなたのペースがあると思ってる。急かさないよ」
「相談に行こう。予約したから」「私が相談に行ってきた。こういう話だったよ。行くかどうかはあとで決めていいよ」
「何が不満なの? 言ってごらん」(沈黙を埋めない。同じ部屋にいる時間を少し延ばす)
「昔はあんなにできる子だったのに」「小さいころ、◯◯が好きだったよね」
「お父さんは何もしてくれない」(きょうだいや本人に愚痴る)(親自身の困りごとは、家族会や相談機関で話す)

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家族会・当事者会という選択肢

内閣府の調査では、家族や知り合い以外に相談したい相手として「同じ悩みを持っている、持っていたことがある人」を挙げた人が、15〜39歳で53.2%、40〜69歳で41.5%にのぼりました[12]。支援する/されるという関係ではなく、対等に支え合える関係が求められている、ということです。

同じ調査で、居場所として「インターネット空間」を挙げた15〜39歳は72.9%でした。オンラインでのつながりは「逃避」ではなく、既に多くの人にとって現実の居場所です。まずそこを認めることが、対話の入り口になります。

SECTION 07

訪問(アウトリーチ)の力と、その「侵襲性」

本人が相談機関に出向けない以上、こちらから訪ねる支援=アウトリーチは有力な選択肢です。実際、通院できない子どもに対して多職種チームで訪問支援を行った厚労科研の報告では、本人の活動範囲・他者との接触頻度・家族の精神的健康度が大半の事例で改善しました[13]

一方で、2025年のハンドブックはアウトリーチについて、その重要性と同時に「侵襲性」を明記しました。自宅や自室を訪ねることは、相手にとって負担の大きい行為だという認識が前提になります。

図5 「近づき方」には距離がある 同じ「会いに行く」でも、本人にかかる負担はまったく違います 本人の部屋 負担が小さい 負担が大きい ① 家族を通じた伝言・手紙・メモを残す 本人は読まなくてもよい。連絡先を置いて帰るだけでも接点になる ② 訪問はするが、家族とだけ話して帰る 本人は別室で気配を感じている。それも支援の一部 ③ ドア越しに声をかける 返事がなくてよいこと、断ってよいことを先に伝える ④ 自宅の別の場所(居間など)で会う 自室を見られたくない人は多い。場所を選べることが安心になる ⑤ 家の外(公園・車内など)で会う/相談室に来る 本人が場所を指定できると、負担はぐっと下がる ✕ 予告なしに自室のドアを開ける(緊急時を除き行わない)

図5/ガイドラインは、了解なしの訪問は緊急の必要性がある場合の例外にとどめるべきだとしています。予告なしの訪問がきっかけで、ひきこもりがひどくなったり家庭内暴力が悪化したりすることがあるためです。逆に、明確な拒否がない場合は「消極的同意」として訪問してみることも一つの方法であり、そのときはキャンセルしてよいと伝えておくことが本人の安心につながります。

訪問前に決めておく5つのこと

  1. 情報を集める――生育歴、相談・治療歴、日常生活の様子、趣味や特技。話しやすく侵襲性の低い話題の素材になります。
  2. その日の目標を決める――漫然と行かない。達成できたかより、なぜできなかったのか・目標設定は適切だったのかを次に活かします。
  3. 行くことを事前に伝える――家族の伝言や手紙を介して、本人の反応を確かめてから。
  4. 場面設定を工夫する――日時、場所、話題、訪問するスタッフの構成。近所に知られたくない家庭では車を近くに停めない、といった配慮も含みます。
  5. 関係機関と共有しておく――事前に連絡協議のあった訪問ほど有効だったと報告されています。
ピアサポーターという切り札

ハンドブックの事例集には、相談員の訪問には反応がなかった方が、ひきこもり経験のあるピアサポーターの同行をきっかけに扉越しに応じるようになった経過が紹介されています。「自分も同じように訪問された時、5年以上話をしなかった。だから無理する必要はない」――経験者だから言えるこの一言が、専門職の百の説明より届くことがあります。

SECTION 08 / 在宅・訪問看護パート

訪問看護にできること・できないこと

ここからは、訪問看護ステーションの立場から、ひきこもりの支援にどう関われるのかを具体的に整理します。

「訪問看護に来てもらえば、本人を外に出してもらえますか」――ときどきいただくご相談です。答えはいいえです。訪問看護は本人を連れ出す仕事ではありません。ただ、できることは思っているより多くあります。

図6 訪問看護でできること/できないこと できること ● 生活リズム(睡眠・食事)の立て直し ● 服薬の状況と残薬の把握、副作用の観察 ● 身体の健康チェック 体重・血圧・う歯・栄養・運動不足・便秘 ● 家族への助言と、家族自身のケア ● 主治医・相談機関・自治体との橋渡し ● 通院同行、社会資源の情報提供 ● 「毎週この時間に人が来る」という枠組み できないこと ✕ 本人の同意なしに部屋に入る ✕ 本人を説得して外に連れ出す ✕ 医師の指示書なしに精神科訪問看護を行う ✕ 家族だけへの訪問を、本人の訪問看護として 算定する ✕ 就労のあっせん 「できないこと」の多くは制度上の制限であり、 同時に本人の権利を守るための線でもあります。

図6/訪問看護が本人の同意を必要とするのは、単なる手続きではありません。「自分が決めた」という感覚を積み重ねること自体が、ハンドブックのいう自律そのものだからです。

精神科訪問看護を使うには、何が要るのか

ひきこもり状態そのものは病名ではないため、それだけを理由に訪問看護は導入できません。導入の条件は次のとおりです。

必要なものポイント
精神科訪問看護指示書精神科を標榜する医療機関の医師が交付します。まず本人が一度でも精神科・心療内科を受診できていることが前提になります(訪問診療で医師が診る形もあります)。
本人の同意訪問看護は本人との契約です。「親が呼んだから来た」だけでは続きません。初回までに、何をする人が・何のために・どのくらいの時間来るのかを本人に伝えておきます。
保険の種類精神科訪問看護は原則として医療保険です。40歳未満の方は年齢の面でも医療保険になります。
自立支援医療
(精神通院医療)
申請すると、精神科の外来・薬・精神科訪問看護の自己負担が原則1割になり、所得に応じた月額上限も設定されます。長く続く支援ほど効いてきます。

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最初の訪問で、看護師が見ていること

訪問看護師は「話を聞くだけ」ではありません。ガイドラインが評価項目として挙げているものは、そのまま訪問時の観察点になります。

  • 睡眠――何時に寝て何時に起きているか。昼夜逆転の「型」は診断の手がかりになります
  • 食事――極端な偏食、拒食・過食、体重の増減
  • 身だしなみと清潔――入浴・着替えができているか。無頓着なのか、不潔恐怖でできないのかで意味が逆になります
  • 部屋と家の状態――ため込み、ごみ、生活動線
  • 家族との関係――強迫症状に家族を巻き込んでいないか、支配的な関係になっていないか
  • 身体――衰弱が疑われれば血圧・脈拍・呼吸・体温の確認を

若い方の場合に、とくに気をつけていること

① 身体の問題が置き去りになりやすい

数年単位で自宅にとどまると、う歯・歯周病、体重の増加または低栄養、運動不足による筋力低下、便秘、ビタミンD不足などが積み重なります。健診も受けていないことがほとんどです。「まず歯医者」から動き出せた方は少なくありません。心の話より身体の話のほうが、本人にとって受け入れやすいことがあります。

② 支援の枠組みそのものが治療になる

「毎週水曜の14時に、看護師が30分来る」。この予定が生活に入るだけで、その日は起きる、着替える、という変化が生まれることがあります。予定を守ること、次回の約束をして帰ることが、支援の恒常性をつくるとガイドラインも述べています。

③ 家族の疲労を測る

訪問看護は、本人だけでなく家庭全体が見える数少ない職種です。介護者・保護者が眠れているか、体調を崩していないか、きょうだいに負担が寄っていないかを見て、必要なら家族側の受診や相談窓口につなぎます。

④ 8050は「親の側」から見つかる

ハンドブックの事例集には、地域包括支援センターやケアマネジャーが親の介護のために訪問した際、同居する子のひきこもり状態を把握したケースが複数収録されています。訪問看護師が最初の相談者になった事例も挙げられています。

高齢の親の訪問看護に入っているとき、「同居のご家族は?」の一言が支援の入り口になることがあります。ただし、他機関につなぐには本人の了解を得ることが必要である点も、事例のなかではっきり示されています。

緊急の判断が必要なとき

次のような場合は、様子を見る段階ではありません。訪問看護であれば主治医へ、それ以外の方は保健所・精神保健福祉センター、状況によっては救急へご連絡ください。

  • 自殺をほのめかす、具体的な計画を語る、実際に行動に及んだ
  • 食事や水分を拒否し、身体的な衰弱が明らかである
  • 家庭内暴力が制御できない水準に達している
  • 幻覚・妄想が顕在化し、外界への強い警戒や恐怖が続いている
  • 近隣への攻撃行動をほのめかす、あるいは実行した
SECTION 09

使える制度と窓口の地図

この数年で、ひきこもり支援の制度は大きく動きました。要点は3つです。

① 相談窓口が「市町村」に降りてきた

ひきこもりに特化した専門相談窓口であるひきこもり地域支援センターは、平成30年4月までに全都道府県・指定都市(67自治体)に設置されました。令和4年度からは設置主体が市町村にも拡大され(令和7年度47自治体)、あわせて次の2つの事業が始まっています[14]

  • ひきこもり支援ステーション事業(令和7年度129自治体)――相談支援・居場所づくり・ネットワークづくりを必須事業として一体的に実施
  • ひきこもりサポート事業(令和7年度164自治体)――相談支援、居場所づくり、当事者会・家族会、サポーター派遣など8メニューから地域の実情に応じて選択

② 精神保健福祉法が変わり、「診断がなくても」相談の対象になった

令和4年に改正された精神保健福祉法が令和6年4月1日に施行され、都道府県・市町村が行う精神保健に関する相談支援の対象が、精神障害者だけでなく「日常生活を営む上での精神保健に関する課題を抱える者」にも広がりました(法第46条・第47条第5項)[15]

この改正の背景資料には、市町村で顕在化している精神保健の課題として「自殺、ひきこもり、虐待等」が明示されています。あわせて、保健所・市町村・精神保健福祉センターの業務運営要領も改正され、「自ら相談窓口で相談することに心理的なハードルを感じる者や、地域に潜在化している者に対しては、多職種によるアウトリーチ支援を適切に実施すること」が盛り込まれました。

ここが実務のポイント

つまり、診断名がなくても、本人が来られなくても、市町村の窓口は相談を受けられる立場になったということです。「精神科にかかっていないので対象外です」と言われた経験がある方は、この改正以降、状況が変わっている可能性があります。

③ 生活困窮・就労の側からも入れる

生活困窮者自立支援法に基づく自立相談支援機関は、経済的な困窮だけでなく社会的孤立も対象にしています。令和6年の改正法(令和7年4月1日施行)では、関係機関が支援方針を協議する「支援会議」の設置が自治体の努力義務となり、深刻な状態にある世帯の早期把握と支援へのつなぎがしやすくなりました[16]

就労の手前の段階を支えるのが地域若者サポートステーション(サポステ)です。対象は15〜49歳で現在働いていない方とそのご家族。コミュニケーション講座、ビジネスマナー講座、職場体験から就職後の定着支援まで、段階を追って利用できます。全国におよそ180か所あります[17]

図7 年齢別・どこに相談できるか 帯の長さ=おおよその対象年齢。重なっている窓口は、どちらに相談してもかまいません 15歳 25歳 35歳 45歳 55歳〜 学校・スクールカウンセラー 〜18歳 教育支援センター/児童相談所 〜18歳 子ども・若者総合相談センター おおむね39歳まで 地域若者サポートステーション 15〜49歳(働いていない方) ひきこもり地域支援センター 年齢を問わず(自治体により対象が異なります) 精神保健福祉センター・保健所 年齢を問わず 市町村の精神保健相談窓口 年齢を問わず(令和6年4月〜対象が拡大) 自立相談支援機関(生活困窮) 年齢を問わず ※発達障害が疑われる場合は発達障害者支援センター、就労が視野に入れば障害者就業・生活支援センターやハローワークも選択肢に入ります。

図7/どこから入っても構いません。窓口どうしは連携する仕組みになっています。迷ったら、まずお住まいの市区町村の窓口か、都道府県のひきこもり地域支援センターへ。

医療・福祉の制度も、選択肢として

制度何ができるか
自立支援医療
(精神通院医療)
精神科の通院・薬・精神科訪問看護・デイケアの自己負担が原則1割に。所得に応じた月額上限あり。市区町村の窓口で申請します。
精神障害者保健福祉手帳取得すると障害者雇用枠での就職、税や公共料金の減免などが使えます。取得は任意で、返納もできます。
障害福祉サービス就労移行支援・就労継続支援、自立訓練(生活訓練)、グループホームなど。市区町村の障害福祉窓口または相談支援事業所へ。
障害年金初診日や納付要件などの条件があります。要件は複雑なため、年金事務所や精神保健福祉士に確認を。
重層的支援体制整備事業介護・障害・子ども・困窮の窓口を分けずに、世帯まるごと受け止める市町村の仕組み。8050など複合的な課題に向いています。

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SECTION 10

福岡で相談できるところ

福岡県ひきこもり地域支援センター(福岡県精神保健福祉センター内)
専用電話
092-582-7530(月〜金・祝日と年末年始を除く/9時〜17時)
相談方法
電話または来所(来所は予約制。継続相談はオンラインでも可)。相談料は無料、秘密は厳守されます。
サテライトオフィス
筑豊 0947-45-1155/筑後 0942-37-2280
あわせて実施していること
ご家族向けの「家族のつどい」、ご本人が家庭以外で過ごせる「フリースペース事業」、就職氷河期世代の社会参加支援。
詳細
福岡県ひきこもり地域支援センターのご案内
福岡市にお住まいの方
よかよかルーム(福岡市ひきこもり成年地域支援センター)
おおむね20歳以上のご本人・ご家族向け。092-716-3344(月〜金 10時〜17時、第1火曜のみ12時〜19時/祝日・年末年始を除く)。各区での「出張ひきこもり相談会」も定期開催されています(要予約)。
ワンド(福岡市地域思春期相談事業・ひきこもり地域支援センター)
思春期年代のご相談はこちら。
市の情報ページ
福岡市ひきこもり支援情報(支援ガイドブックもダウンロードできます)
そのほか
北九州市ひきこもり地域支援センター「すてっぷ」
北九州市にお住まいの方はこちらへ。
KHJ全国ひきこもり家族会連合会 福岡支部「楠の会」
家族会。同じ立場の方と話せる場です。
ひきこもりVOICE STATION(厚生労働省ポータルサイト)
全国の相談窓口、当事者・家族・支援者の声、イベント情報。2025年7月1日にリニューアルされました。
https://hikikomori-voice-station.mhlw.go.jp

※電話番号・受付時間は2026年7月時点で各機関が公表している情報です。お出かけ・お電話の前に各機関の最新情報をご確認ください。

SECTION 11

やってはいけない5つのこと

① 本人の同意なく「引き出す」業者に頼む

本人の同意なく家から連れ出す形の支援は、その後の人間関係と支援機関への信頼を根本から損ないます。ハンドブックが4つの姿勢の第一に「敬意と労い」を、留意点に「支援の強要に注意する」を置いているのは、こうした対応への明確な戒めです。民間団体を利用する際は、公的機関や医療機関から目的にかなった団体を紹介してもらうのが安全です。

② 就労をゴールに設定する

就労は自律に向けた選択肢のひとつであって、支援の到達点ではありません。就労支援機関が関与できるのは、支援がかなり展開して就労が具体的な目標として登場してからで、初期対応のための機関ではないとガイドラインは注意しています。

③ 期間で線を引く

「まだ3か月だから様子を見ましょう」「もう20年だから手遅れです」――どちらも誤りです。2025年のハンドブックは、支援の対象を期間で区切らないと明記しました。

④ 家族を責める/家族が自分を責め続ける

「親原因論」は有害であり何の利益ももたらさない、とガイドラインは断じています。同時に、本人へのひきこもりの原因をもっぱら学校や会社に見ようとする他罰的な見方に安易に迎合すべきでもない、とも述べています。原因探しではなく、いま何ができるかに時間を使います。

⑤ 支援者が一人で抱える

ハンドブックの留意点③がこれです。ひきこもり支援では、従来の福祉サービスにつながりにくい事例や長期の伴走が必要な事例が多く、支援者が疲弊してバーンアウトすることがあると国自身が課題に挙げ、支援者を支える取り組みを事業化しています。訪問看護でも、担当を固定しすぎず、事例検討の場を持つようにしています。

SECTION 12

チェックリストとQ&A

ご家族のためのチェックリスト

  • 睡眠と食事の様子を、責めるのではなく事実として把握できている
  • 「死にたい」「消えたい」という言葉が出ていないか、注意して聞いている
  • 幻覚・妄想を思わせる訴え(悪口が聞こえる、監視されている等)がないか確認した
  • 家族だけでも一度、公的な相談窓口につながった
  • 相談に行ったことを、本人に伝えるかどうかを支援者と一緒に検討した
  • 「いつまで」「みんなは」という言い方を、意識して減らしている
  • 親自身の予定・楽しみ・人とのつながりを、少しでも保てている
  • 家族会や当事者会の存在を知っている(参加するかどうかは別として)
  • 家庭内暴力があるとき、避難と連絡の手順を家族で決めてある
  • 本人が使える制度(自立支援医療・手帳・障害年金など)の情報を集めた
  • 親自身の健康診断・受診を先送りにしていない
  • 「親亡きあと」について、あわてず、しかし少しずつ考え始めている

よくあるご質問

Q1. 本人が絶対に相談に行きません。それでも意味はありますか。

あります。ひきこもり支援は、多くの場合家族だけの相談から始まります。厚労省のハンドブックも、家族支援を独立した支援として位置づけています。ただし、家族だけの相談が長期に及んできたときは、漫然と続けるのではなく「なぜ本人が登場できないのか」をあらためて評価し直すべきだ、ともガイドラインは述べています。

Q2. ゲームやネットばかりです。取り上げたほうがよいですか。

取り上げることは勧められません。内閣府の調査では、15〜39歳の72.9%が「インターネット空間」を居場所として挙げています。ネットが唯一の社会との接点になっていることも多く、それを断つことは孤立を深めます。一方で、昼夜逆転が固定して身体に影響が出ているなら、そこは医学的な相談の対象です。使うこと自体をやめさせるのではなく、時間の枠を一緒に決め直すほうが現実的です。

Q3. 精神科に行けば診断がついて、支援が受けられますか。

診断がつくことで使える制度(自立支援医療、手帳、障害福祉サービス、精神科訪問看護)は確かに増えます。ただし、診断がないと支援できないという考え方は国が明確に否定しました。まずは診断の有無に関わらず、ひきこもり地域支援センターや市町村の窓口に相談することができます。

Q4. 薬でひきこもりは治りますか。

ひきこもりという現象そのものは薬物療法の対象ではありません。背景にある精神疾患を正確に診断したうえで、薬物療法の適応となる重症度か、有効性が期待できるかを評価してから開始するのが原則です。うつ病や統合失調症が背景にある場合には薬物療法が支援の土台になりますが、心理・社会的な支援が優先される事例のほうが多いとガイドラインは述べています。

Q5. 訪問看護は、本人が嫌がっていても来てもらえますか。

いいえ。訪問看護は本人との契約であり、同意が必要です。ただし、「会わなくていい」「今日は玄関先で帰ります」という形からなら始められることがあります。まずはご家族が主治医またはお近くの訪問看護ステーションにご相談ください。導入できるかどうかも含めて一緒に考えます。

Q6. 親が高齢になってきました。何から手をつければよいですか。

いわゆる8050の状況です。親の介護保険サービス(ケアマネジャー、地域包括支援センター)と、本人のひきこもり支援を同時に走らせるのが基本形です。ハンドブックの事例では、親側の支援は地域包括支援センター、本人側はひきこもり支援機関が担い、月1回の支援会議で情報を共有する形が紹介されています。窓口を一本化したい場合は、市町村の重層的支援体制整備事業の担当課に相談する方法もあります。

おわりに

「あなたに生きていてほしい」から始める

2025年のハンドブックには、支援者に向けた印象的な一節があります。自ら社会との関係を拒み、あるいは健康を維持することも放棄してしまっている状態の方に対しても、訪問や声かけを通じて関わりを持つことが求められる。ただし、その関わり自体が本人にとって負担の大きいものであることを理解し、状況を見極めて対応する。そして――ひきこもりながらも生き続けていくために関わり、「あなたに生きていてほしい」という思いを持って伴走していく姿勢が重要である、と。

社会復帰という言葉は、どこかに「戻る」ことを連想させます。けれども実際に起きているのは、多くの場合、戻ることではなくこれまでとは違う進み方を新しく見つけることです。そのために必要なのは、期限でも根性でもなく、途切れない関わりと、少しずつ選べる選択肢です。

私たちふくろう訪問看護リハビリステーションも、精神科訪問看護の枠のなかでできることは限られていますが、生活の場に定期的に足を運べる職種として、その一本の線になれたらと思っています。ご家族だけで抱えている段階でも、どうぞご相談ください。

参考文献・出典

  1. 内閣府「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」2023年3月31日公表. こども家庭庁ウェブサイト. https://www.cfa.go.jp/resources/research/chilren-attitudes
  2. 厚生労働省「ひきこもり支援に関する取組」(2026年7月閲覧). https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/hikikomori/index.html
  3. 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果及びこれを踏まえた対応の充実について(通知)」2025年10月29日公表. https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1422178_00006.htm
  4. 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要」(小・中学校の不登校児童生徒数353,970人、新規不登校児童生徒数153,828人、不登校継続率 小71.7%・中77.1%)
  5. 厚生労働省「令和7・8年度 地域若者サポートステーション事業 仕様書」(15〜49歳の若年無業者等 約120万〜130万人)
  6. Zhang W, Chen MY, Feng Y, Su Z, Cheung T, Jackson T, Zhang Q, Xiang YT. Epidemiology of Hikikomori: A systematic review and meta-analysis of 19 studies. Psychiatry Clin Neurosci. 2025;79(4):138-146. doi:10.1111/pcn.13768(PMID: 40016086)
  7. Kato TA, Kanba S, Teo AR. Defining pathological social withdrawal: proposed diagnostic criteria for hikikomori. World Psychiatry. 2020;19(1):116-117. doi:10.1002/wps.20705
  8. Kato TA, Kanba S, Teo AR. Hikikomori: Multidimensional understanding, assessment, and future international perspectives. Psychiatry Clin Neurosci. 2019;73(8):427-440. doi:10.1111/pcn.12895
  9. 齊藤万比古(研究代表者)「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業(H19-こころ-一般-010), 2010年. https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/000807675.pdf
  10. 厚生労働省「ひきこもり支援ハンドブック 〜寄り添うための羅針盤〜」令和7年(2025年)1月. 概要版: https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471235.pdf/全体版: https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001471237.pdf
  11. Kubo H, Urata H, Sakai M, Nonaka S, Kishimoto J, Saito K, et al. 3-day intervention program for family members of hikikomori sufferers: A pilot randomized controlled trial. Front Psychiatry. 2023;13:1029653. doi:10.3389/fpsyt.2022.1029653(UMIN000037289)
  12. NPO法人KHJ全国ひきこもり家族会連合会「『ひきこもり』全国推計146万人 50人に1人 内閣府調査を受けたKHJの見解」2023年4月(内閣府調査データの引用を含む). https://www.khj-h.com/news/statement/8862/
  13. 齊藤万比古(研究代表者)「思春期のひきこもりをもたらす精神科疾患の実態把握と精神医学的治療・援助システムの構築に関する研究」平成21年度総括研究報告書, 厚生労働科学研究成果データベース. https://mhlw-grants.niph.go.jp/project/16973
  14. 厚生労働省「ひきこもり支援推進事業」(ひきこもり地域支援センター67自治体+市町村47自治体、ひきこもり支援ステーション事業129自治体、ひきこもりサポート事業164自治体/いずれも令和7年度)
  15. 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課「令和6年4月施行の改正精神保健福祉法と精神保健に関する相談支援体制整備」. https://www.mhlw.go.jp/content/12602000/001263850.pdf(障害者総合支援法等一部改正法:令和4年法律第104号、精神保健福祉法第46条・第47条第5項)
  16. 厚生労働省社会・援護局地域福祉課生活困窮者自立支援室「令和6年生活困窮者自立支援法等改正への対応ガイド」(令和7年4月1日施行). https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001268296.pdf
  17. 厚生労働省「地域若者サポートステーション(サポステ)特設サイト」. https://saposute-net.mhlw.go.jp/
  18. 福岡県「福岡県ひきこもり地域支援センターのご案内」2026年4月27日更新. https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/hikikomoricenter30.html
  19. 福岡市「ひきこもり」(福岡市精神保健福祉センター). https://www.city.fukuoka.lg.jp/hofuku/seishinhoken/life/seishinhoken-center/hikikomori.html/福岡市ひきこもり成年地域支援センター「よかよかルーム」https://yokayoka-room.net/

本記事は、一般の方およびご家族・支援者向けの情報提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や状況はお一人ずつ異なります。判断に迷う場合や、ご本人・ご家族の安全に関わる状況では、必ず主治医または最寄りの相談機関にご相談ください。制度の運用や窓口の情報は変更されることがあるため、ご利用の際は各機関の最新情報をご確認ください。
最終更新:2026年7月30日/ふくろう訪問看護リハビリステーション

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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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