指示書の郵送費はステーション負担?

訪問看護指示書の郵送費はステーション負担?
――令和8年の疑義解釈が出した答えと、クラウド共有が進まない本当の理由
ふくろう訪問看護リハビリステーション|制度と実務のコラム
白紙の指示書を印刷して、切手を貼った返信用封筒を添えて、医療機関に送る。多くのステーションで当たり前になっているこの手順には、実は制度上の根拠がありません。
令和8年3月23日、厚生労働省保険局医療課は「訪問看護指示書の郵送代は、訪問看護指示書を交付する医療機関が負担するのか」という問いに、「そのとおり」と答えました。長く曖昧だった論点に、行政解釈がはっきり示されたことになります。ただ、この一行を「これで切手代が浮く」で終わらせてしまうと、いちばん大きなコストを見落とします。当院は指示書を出す側でもあり、受け取る側でもあります。両方の立場から、数字と一次資料をもとに整理します。
この記事の内容
SECTION 01結論:指示書の郵送代は「交付する医療機関」が負担する
令和8年度診療報酬改定(令和8年6月1日施行)の取扱いについて、厚生労働省保険局医療課は令和8年3月23日付の事務連絡「疑義解釈資料の送付について(その1)」を発出しました。その別添1(医科診療報酬点数表関係)の医-11ページ、問36が該当箇所です。
(答) そのとおり。 厚生労働省保険局医療課「疑義解釈資料の送付について(その1)」令和8年3月23日事務連絡・別添1(医-11)
答えは一文のみで、条件も例外も付されていません。これにより、少なくとも医療機関からステーションへ指示書を郵送する場面の郵送代については、交付する医療機関が負担するという行政解釈が明文で示されたことになります。
まず、費用がどちらに流れるのかを整理しておきます。
図1 問36が答えたのは①だけです。②はもともとステーション側の業務であり、③は制度上の根拠がないまま慣行として定着していた部分にあたります。
SECTION 02なぜそうなるのか――積み重なった3つの根拠
令和8年の疑義解釈は、突然現れた新しいルールではありません。「指示書は誰のものか」という制度の建て付けが以前からあり、それを郵送代の面で言語化したものです。根拠は3層に重なっています。
図2 1と2はもともとあった枠組みで、3がそれを郵送代という具体的な場面に当てはめたものです。
ここが誤解されやすい点。「指示書の様式はステーションが準備するのか」という平成24年の問123に対して、厚生労働省は「医師の所属する医療機関が準備し、その交付についても医療機関の責任において行うもの」と答えています。つまり白紙の指示書用紙をステーションが用意して送る運用も、本来の姿ではありません。令和8年の問36は、この延長線上にあります。
SECTION 03全国調査で見る、現場で起きていたこと
公益財団法人日本訪問看護財団は、2024年9月13日から10月28日にかけて、全国の訪問看護ステーション管理者を対象にWebアンケート調査を実施しました。有効回答は3,948件(有効回答率27.0%)で、回答は2024年8月の1か月分について求めています。指示書のやり取りをこれだけの規模で調べた資料は他になく、議論の前提として押さえておく価値があります。
指示書はどうやって届いているのか
図3 最も多いのは「依頼をすると医療機関から郵送される」43.5%。一方で、ステーションが切手付き返信用封筒を用意しているケースが合わせて29.0%あります。電子的なやり取りは、両方合わせても3.7%にとどまります。
1か月にいくらかかっているのか
同じ調査で、2024年8月の1か月間に指示書の受理にかかった費用も尋ねています。合計費用の平均は2,880円、中央値は1,200円でした。うち切手代は平均2,368円、中央値1,008円です。最大値は合計145,260円という回答もありました。
図4 調査が対象とした2024年8月は、郵便料金改定の前です。日本郵便は2024年10月1日から定形郵便物(25g以下)を84円から110円に、25g超50g以下を94円から110円に、通常はがきを63円から85円に改定しました。同じ通数なら、いま同じ作業をすると月3,000円台、年間3〜4万円規模になります。
お金より重い、「届かない」コスト
この調査でむしろ目を引くのは、費用そのものではなく、指示書が予定どおり届かないことによる業務の停滞です。
図5 自由記述の分類は3,229件が対象です。指示書の交付が遅れて「報酬が請求できない」という回答も6.0%あり、月遅れ請求や請求保留につながっています。
もうひとつ、実務上とても示唆的な数字があります。指示書の交付依頼で医療機関側の窓口として最初にやり取りする職種は、文書係(医療事務)が77.0%で圧倒的に多く、看護師9.5%、医師(主治医)7.1%と続きます。つまり多くの場面で、依頼はまず事務窓口に入り、医師には直接届いていません。
切手の話は、実は切手の話ではない
郵送代は1通110円です。指示書を交付された利用者が中央値で月28人ですから、仮に全部をステーションが負担しても月3,000円台、年間で3〜4万円。厳しい経営環境であることは間違いありませんが、この金額そのものが事業所を揺るがすわけではありません。
本当に高いのは、指示書が予定どおり届かないことのコストのほうです。過去6か月で43.0%が指示期間の途切れを経験し、6.0%は請求ができなかったと答えています。1件の指示期間が途切れれば、訪問はできても算定できない日が生まれ、レセプトは保留になり、確認の電話が何本も発生し、管理者の時間が消えます。切手代の何倍もの損失です。
当院は在宅医療を行う医療機関であり、同じ法人で訪問看護リハビリステーションも運営しています。指示書を「書く側」と「待つ側」の両方に立って言えるのは、この問題の本体は費用負担の押し付け合いではなく、経路が医療機関ごとにバラバラで、いつ届くかが読めないことだという点です。宛先が医事課か連携室か外来か、依頼は文書かFAXか専用用紙か、返送か手渡しか窓口受け取りか――全部違います。
ですから、問36を「切手代を返してもらう根拠」として使うより、経路を1本に決めるための会話のきっかけとして使うほうが、はるかに実入りがあります。「郵送代は医療機関負担と示されました。ついては、当ステーションからの依頼はこの窓口・この様式・この期日で統一させてください」と提案する。そのほうが、切手代も届かない問題も同時に片づきます。
SECTION 05往路(ステーション→医療機関)はどうなのか
問36が答えたのは「指示書の郵送代」、つまり医療機関からステーションへ向かう流れだけです。ステーションから医療機関へ送る文書については、文書ごとに位置づけが違います。
| 文書 | 誰の義務か | 送付費用の考え方 |
|---|---|---|
| 訪問看護指示書 (特別指示書・精神科指示書を含む) | 医療機関 (医師の責任で交付) | 交付する医療機関が負担 令和8年疑義解釈 問36 |
| 訪問看護計画書 訪問看護報告書 | ステーション (主治医への提出) | ステーションが負担 提出は訪問看護管理療養費の算定要件 |
| 指示書の交付依頼書 (依頼文) | 制度上の様式ではない (実務上の慣行) | 明文の定めはない 依頼する側が負担するのが通常 |
| 白紙の指示書用紙 | 医療機関 (様式の準備も医療機関) | 本来ステーションが用意するものではない 平成24年疑義解釈 問123 |
| 返信用封筒・切手 | ― | 指示書の返送に使うものであれば、医療機関の負担範囲 |
※表は横にスクロールできます
整理すると、計画書と報告書を主治医に送る費用はステーション側の業務コストであり、これは問36とは別の話です。一方、白紙の指示書用紙と、指示書を返送するための切手付き返信用封筒は、制度の建て付けからは医療機関側の範囲にあたります。この2つを混同したまま「郵送費はどちらが持つのか」を議論すると、話がかみ合いません。
SECTION 06切手を負担するのは「利益供与」にあたるのか
令和8年度改定では、訪問看護をめぐる誘引・誘導の規制が新設されました。「ステーションが切手を出すこと自体が問題ではないか」という疑問が現場から出るのは、この改正が背景にあります。まず条文の中身を正確に押さえます。
| 規定 | 誰に対する規制か | 禁止されている行為 |
|---|---|---|
| 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準 第5条の4(経済上の利益の提供による誘引の禁止) | 指定訪問看護事業者 | 利用者への値引き等、また他の事業者やその従業員に、利用者を紹介する対価として金品を提供することなどにより、自らのステーションを利用するよう誘引すること |
| 同第5条の5(特定の主治の医師及び特定の事業者等への誘導の禁止) | 指定訪問看護事業者 | 利用者に特定の医師を主治医とするべき旨などの指示等を行った対償として、その医師や事業者から金品を収受すること |
| 保険医療機関及び保険医療養担当規則 第2条の5の2(財産上の利益の収受による特定の事業者等への誘導の禁止) | 保険医療機関 | 患者に特定の訪問看護事業者等を利用するべき旨の指示等を行うことの対償として、その事業者から金品その他の財産上の利益を収受すること |
※表は横にスクロールできます
条文の構造を見ると、いずれも「対償性」(何かの見返りであること)と「誘引・誘導」(利用者の選択を動かすこと)が要件になっています。通常の態様で切手や返信用封筒を同封することは、利用者の紹介や主治医の選択と結びついているわけではないため、これらの規定に直ちに該当するとは考えにくいでしょう。
ただし、リスクの水位は確実に上がりました。この改正の趣旨は「金銭のやり取りが、指示書の交付や利用者の紹介の判断に影響しないようにする」ことにあります。「切手を持ってこないと書かない」「うちに依頼するなら封筒も用意して」といった構図が個別に生じているなら、それは対償性を帯びはじめている状態です。
医療機関の側から見ても同じです。指示書の交付が制度上の責任である以上、その費用を取引材料にすることは、令和8年に新設された療養担当規則第2条の5の2の趣旨と相性がよくありません。切手を出す・出さないの慣行は、そろそろ整理しておくのが安全です。個別の事案の法的評価は事情によって変わりますので、判断に迷う場合は弁護士等にご相談ください。
SECTION 07クラウド共有ではだめなのか――制度上は「だめではない」
「そもそも紙で送らなければ、この問題は消える」というのは正しい発想です。日本訪問看護財団の調査でも、指示書・報告書・計画書が医療DXに含まれることを85.9%が希望しており、その理由の第1位は「交付依頼や郵送にかかる負担が減らせると思うから」94.7%でした。
結論から言えば、電子的にやり取りすること自体は、制度上禁止されていません。ただし、クリアすべき関門が3つあります。
図6 「クラウドだからダメ」なのではなく、この3つを満たせる仕組みかどうかが判断の分かれ目です。
署名について:押印は電子署名に代えられる
厚生労働省保険局医療課長通知「訪問看護計画書等の記載要領等について」(保医発0327第2号 令和2年3月27日)の第一の1(4)には、次の一文があります。
この「電子的な署名」の中身については、「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」企画管理編の第14章「法令で定められた記名・押印のための電子署名」が定めており、医師等の国家資格の確認が電子的に検証できる電子署名を用いることとされています。地域の医療介護連携SNSでPDFをやり取りする場合も、そのPDFにHPKI等による電子署名が施されていて初めて、紙の原本の送受をなくすことができる、という整理になります。
なぜ3.7%しか進んでいないのか
制度上は可能なのに、実際に電子で受け取れている割合は3.7%にとどまります。理由は調査にはっきり出ています。医療DXに含まれることを希望しないと答えた事業所の理由は、「電子的なやり取りのためのシステム等の整備が大変だから」58.8%、「費用が心配だから」35.9%でした。
加えて、2026年8月現在、国が整備している電子カルテ情報共有サービスが扱う「3文書」は、診療情報提供書・退院時サマリー・健康診断結果報告書であり、訪問看護指示書は含まれていません。つまり全国共通の基盤に乗る道筋は、まだできていないということです。当面は、地域の医療介護連携ネットワークや民間サービスを、上の3つの関門を満たす形で個別に使うしかありません。
現実的な中間解。全面的な電子化が難しくても、「郵送する通数そのものを減らす」ことはすぐにできます。訪問診療に同行する日にまとめて手渡す、受診同行の際に受け取る、指示期間を1か月から6か月に見直せる利用者は主治医と相談する――全国では訪問看護指示書の54.7%が1か月の指示期間ですが、6か月も27.0%あります。状態が安定している方の指示期間を延ばせれば、郵送も修正の往復も一気に減ります。
SECTION 08令和8年度改定で様式が変わった(押印まわり)
令和8年度改定では、業務の簡素化の一環として、訪問看護に関する様式の署名・押印欄が見直されました。ここは指示書と計画書・報告書で扱いが違うので、正確に区別しておく必要があります。
| 文書 | 改定前 | 改定後 | 意味するところ |
|---|---|---|---|
| 訪問看護指示書 (特別指示書・精神科指示書・精神科特別指示書も同様) | 「医師氏名 印」 | 「医師署名(又は記名押印)」 =押印欄を削除 | 署名または記名・押印は引き続き必要。様式上の「印」の表記が消えただけ |
| 訪問看護計画書 訪問看護報告書 (精神科の計画書・報告書も同様) | 「管理者氏名 印」 | 押印欄を削除 | 書面の場合、署名・押印そのものを求めないこととされた |
※表は横にスクロールできます
従前の様式も引き続き使用できます。手元に旧様式の在庫がある医療機関・ステーションが、それをすぐ差し替えなければならないわけではありません。ただ、指示書について「押印欄がなくなった=ハンコも署名も要らなくなった」と誤読すると、記載不備での返送につながります。指示書には医師の署名か記名押印が必要――ここは変わっていません。
SECTION 09令和8年度改定で新しく使える評価
紙のやり取りを減らす方向には、令和8年度改定で新しい評価も用意されました。ただし、いずれも「指示書を電子で受け取ること」そのものへの評価ではない点に注意が必要です。
訪問看護医療情報連携加算(1,000円・月1回)
他の医療機関等の関係職種がICTを用いて記録した利用者の診療情報等を活用したうえで、訪問看護の計画的な管理を行った場合の評価です。主な要件は次のとおりです。
- 利用者の同意(情報を取得・活用すること、および自らの訪問看護の記録を共有すること)
- 訪問看護を行う際に、過去90日以内に記録された診療情報等をICTで1つ以上取得していること(特別の関係にある機関の記録を除く)
- 診療情報等が連携機関間の協議に基づき一元的に管理されたサーバーで保管されていること
- 参加者の範囲が随時設定可能で、利用者が同意した者のみで共有されること
- 連携機関(特別の関係にあるものを除く)が5以上であること
- 連携体制を構築している旨をステーション内に掲示し、原則としてウェブサイトにも掲載すること(ウェブサイト掲載は令和8年9月30日までの経過措置あり)
- HISPROのSNS利用に関する事項および厚生労働省の安全管理ガイドラインを参考にすること
- 地方厚生局長等への届出が必要
- 在宅患者連携指導加算、在宅医療情報連携加算との重複算定は不可
訪問看護遠隔診療補助料(2,650円・1日につき)
主治医がオンライン診療を行う際、看護職員が利用者宅を訪問して診療の補助を行う場合の評価です(D to P with N)。訪問看護計画書に基づく定期の訪問とは別の場面に限られ、月1回までの算定です。
指示書との関係で押さえておく点。この評価は有効な訪問看護指示書の交付を受けている利用者のみが対象です。指示書の有効期間が切れていると、ステーション側では算定できません。ここでも「指示期間を途切れさせない管理」が、そのまま収益に直結します。
SECTION 10 ステーションで明日からできること
制度の理屈がわかっても、目の前の1件は今日届かないと困ります。実務に落とし込みます。
10-1 まず1枚、「医療機関別・指示書台帳」を作る
調査の自由記述で繰り返し出てくるのが、医療機関ごとに宛先も方法もタイミングも違うという声です。裏を返せば、そこを1回調べて記録すれば、以後の混乱は大幅に減ります。台帳に載せるのは次の6項目で足ります。
② 依頼の方法(郵送/FAX/専用申請書/窓口/ICT)
③ 依頼から交付までの実績リードタイム(前回は何日かかったか)
④ 返送の方法(郵送/手渡し/窓口受け取り/本人・家族経由)
⑤ 医師の外来日・非常勤かどうか
⑥ 過去の返送理由(何の記載でつまずいたか)
③が特に重要です。「1か月前に依頼」を全医療機関に一律で適用しても、実績が2週間の医療機関と6週間の医療機関では意味が違います。
10-2 依頼日は「期限の何日前」ではなく、カレンダー上の日付で固定する
「有効期限の1か月前」という運用は、担当者が変われば揺れます。台帳の③をもとに、利用者ごとに「毎月◯日に依頼を出す」という固定日を決め、担当者不在でも回るようにします。指示期間が1か月の利用者が全国で54.7%を占める以上、これは毎月必ず発生する定型業務です。定型業務は日付で管理するのが最も壊れにくいやり方です。
10-3 切手を出す・出さないの前に、経路の本数を減らす
費用負担の議論を始める前に、そもそも郵送しなくてよい経路がないかを確認します。優先順位はこうです。
- 手渡し――同一法人・近隣の医療機関、訪問診療に同行する日、退院前カンファレンスの場
- 受診同行・家族経由――指示書等は、患者の求めに応じて患者やその家族等を介して交付できるとされています
- 電子的な送受――SECTION 07の3つの関門を満たす仕組みがある場合
- 郵送――上記が使えない場合の最後の手段と位置づける
10-4 断り方ではなく、伝え方を決めておく
「切手は入れません」と言うと角が立ちます。疑義解釈を根拠として示しつつ、こちらの提案を添えるのが実務的です。文例です。
令和8年3月23日付の厚生労働省保険局医療課の疑義解釈(その1)問36で、訪問看護指示書の郵送代は交付する医療機関が負担する旨が示されました。(該当ページの写しを同封しています)
つきましては、当ステーションからの返信用封筒の同封は今後控えさせていただきます。あわせて、行き違いを減らすため、依頼の宛先とご返送の方法を統一させていただけますと幸いです。当方からは毎月◯日に依頼書をお送りし、◯日までにご返送をお願いする形を考えております。ご都合をお聞かせください。
この文書の要点は、費用の話を「ではどうするか」に着地させていることです。事務窓口(77.0%がここです)が判断できる具体案を一緒に渡すと、話が進みやすくなります。
10-5 修正の往復を減らす――依頼書に載せる項目
返送・再依頼が発生した事業所は45.6%、その原因の多くは記載の不備です。医療機関側が「書き方がわからない」と答えている実態(自由記述の分類で9.2%)を踏まえると、依頼側で情報を整えておくのが結果的に早くなります。
□ 希望する指示期間(開始日・終了日を明記。延長可否も添える)
□ 保険の別(医療保険/介護保険)と、別表第7・第8該当の有無
□ リハビリテーションを行う場合の職種・1回あたりの時間・週の回数
□ 褥瘡がある場合のDESIGN-R2020分類またはNPUAP分類
□ 装着・使用医療機器等、投与中の薬剤
□ 在宅患者訪問点滴注射指示の要否(必要なら薬剤・投与量・投与方法)
□ 緊急時の連絡先(記載が必須です)
□ 精神科の場合はGAF値の記載欄
白紙の用紙をこちらで用意する必要はありませんが、「何をどう書けばよいか」の情報を添えることは、用紙を用意することとは別です。前者は連携、後者は責任の肩代わりです。
10-6 届かないときの記録の残し方
指示期間が途切れる事態は、43.0%が経験しています。ゼロにはできない以上、記録の残し方を決めておきます。
- 依頼した日・方法・宛先・応対者を、利用者ごとに残す
- 督促した日と、その際の回答(「医師が非常勤で次回来院は◯日」など)も残す
- 郵便事故が疑われる地域・医療機関では、特定記録など追跡できる方法に切り替える
- 指示期間が切れた期間の訪問について、請求の扱いをその都度確定させ、保留のまま放置しない
10-7 電子でやり取りを始めるときに確認する3点
ベンダーや連携ネットワークの担当者に、この3つをそのまま聞いてください。
- 署名――医師の国家資格を電子的に検証できる電子署名(HPKI等)に対応していますか。対応していない場合、紙の原本の扱いはどうなりますか
- 安全管理――医療情報システムの安全管理に関するガイドライン第6.0版に沿った構成ですか。責任分界はどこですか
- 保存――完結の日から2年間、真正性・見読性・保存性を保った形で保存できますか。サービス終了時のデータはどうなりますか
SECTION 11よくある質問
Q1医療機関から「切手を貼った返信用封筒を必ず入れてください」と言われています。断ってよいのでしょうか。
A制度上は、指示書の郵送代は交付する医療機関が負担するものと示されています(令和8年疑義解釈 問36)。したがって同封しないことに制度上の問題はありません。ただし現場の関係を壊してまで押し通す性質のものではないので、疑義解釈の写しを添えて相談し、あわせて依頼から返送までの手順を一緒に決める形で切り出すのが実務的です。文例はSECTION 10-4にあります。
Q2郵送代を利用者に実費として請求できますか。
A想定されていません。指示書の交付は医師の責任で行われるものであり、その郵送代は交付する医療機関が負担すると示されています。計画書・報告書を主治医に提出する費用も、ステーションが訪問看護療養費の中で行う業務のコストです。いずれも利用者に別途請求する前提はありません。
Q3白紙の指示書用紙をステーションで印刷して送るのはやめるべきですか。
A平成24年の疑義解釈(問123)で、様式の準備も交付も医療機関の責任とされています。ですから本来は不要です。ただ、この解釈を「知らなかった」と答えた管理者が24.8%いた調査結果もあり、医療機関側でも認知が十分でない場合があります。いきなりやめるより、最新様式の入手先(厚生労働省の様式ページや地方厚生局のサイト)を案内したうえで段階的に移行するほうが摩擦が少なくて済みます。
Q4FAXで届いた指示書で訪問を開始してよいですか。原本はどうなりますか。
A交付の事実が確認できていれば、緊急時などにFAXの写しをもとに訪問を開始する運用は実務上広く行われています。ただし、令和8年度改定で訪問看護指示書は「完結の日から2年間保存」すべき記録として運営基準に明記され、正確かつ最新の内容を保つことも求められました。FAXは暫定と位置づけ、署名または記名押印のある原本を必ず後日受領・保管し、いつ受領したかも記録してください。取扱いが地域で異なる場合もあるため、都道府県の訪問看護支援センターや地方厚生局への確認をおすすめします。
Q5指示書のPDFをメールで送ってもらうのは違法ですか。
A違法ではありませんが、それだけでは足りません。記名・押印を電子署名に代えるには、医師等の国家資格を電子的に検証できる電子署名(HPKI等)が求められます。加えて、通信と保管の安全管理(安全管理ガイドライン第6.0版)と、2年間の保存要件を満たす必要があります。一般的なメール添付でこの3つを満たすのは難しく、実務では地域の連携ネットワークや対応サービスを使うか、紙の原本を別途受領する形になります。
Q6これまで負担してきた切手代を、さかのぼって請求できますか。
A疑義解釈は令和8年度改定の取扱いを示したものであり、過去の負担分の精算について定めたものではありません。過去の請求より、これからの運用を医療機関と決め直すことに労力を使うほうが、回収できる時間もお金も大きくなります。
指示書のやり取りでお困りの医療機関・ステーションの方へ
ふくろう訪問クリニックは福岡市早良区で在宅医療を行っており、同じ法人でふくろう訪問看護リハビリステーションを運営しています。指示書を交付する側と受け取る側の両方の実務を持っているため、依頼から交付までの経路づくりについて、具体的な形でご相談に応じられます。
訪問看護の導入をご検討中のご本人・ご家族、連携先をお探しのケアマネジャーや医療機関の皆さまも、お気軽にお問い合わせください。
本コラムは2026年8月時点で公表されている法令・通知・事務連絡等に基づいて作成しています。制度は改正されることがあり、また個別の取扱いは地方厚生(支)局や都道府県によって運用が異なる場合があります。実際の判断にあたっては、必ず最新の一次資料をご確認いただくか、所管の窓口にお問い合わせください。個別の法的評価が必要な場合は、弁護士等の専門家にご相談ください。
参考文献・出典
- 厚生労働省保険局医療課.「疑義解釈資料の送付について(その1)」令和8年3月23日事務連絡. 別添1 医科診療報酬点数表関係 問36(医-11). https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001678310.pdf
- 厚生労働省保険局医療課.「疑義解釈資料の送付について(その1)」平成24年3月30日事務連絡. 別添1 問123(訪問看護指示書の様式の準備と交付の責任について).
- 厚生労働省保険局医療課.「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」令和8年3月10日版. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
- 厚生労働省.「令和8年度診療報酬改定について」(告示・通知一覧). https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
- 厚生労働省保険局医療課長.「訪問看護計画書等の記載要領等について」保医発0327第2号, 令和2年3月27日. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/000613544.pdf
- 公益財団法人日本訪問看護財団.「令和6年度 日本訪問看護財団調査 訪問看護指示書の交付に係る医療機関及び訪問看護ステーションの連携に関するWebアンケート調査(訪問看護ステーション)報告書 第2報」2024年12月(2025年10月10日一部訂正). https://files.jvnf.or.jp/files/user/kenkyu/R6/r6_shijisyo-chousa_station_rivise20251010.pdf
- 厚生労働省.「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版」令和5年5月・企画管理編(第14章 法令で定められた記名・押印のための電子署名). https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001102575.pdf
- 厚生労働省.「『医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第6.0版』に関するQ&A」令和7年5月. https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001145860.pdf
- 一般社団法人保健医療福祉情報安全管理適合性評価協会(HISPRO).「医療情報連携において、SNSを利用する際に気を付けるべき事項」. https://hispro.or.jp/open/pdf/SNS_RiyouCheckJikou_20160126.pdf
- 厚生省健康政策局長・医薬安全局長・保険局長.「診療録等の電子媒体による保存について」健政発第517号・医薬発第587号・保発第82号, 平成11年4月22日. https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1104/h0423-1_10.html
- 厚生労働省.「電子カルテ情報共有サービス(医療従事者向け)」. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/johoka/denkaru_iryoujuuji.html
- 日本郵便株式会社.「郵便料金の改定について」2024年6月13日. https://www.post.japanpost.jp/notification/pressrelease/2024/00_honsha/0613_01_01.pdf
- 指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(平成12年厚生省令第80号)第5条の4・第5条の5・第9条・第28条・第30条(令和8年度改定に伴う改正). 条文は文献3に掲載.
- 保険医療機関及び保険医療養担当規則 第2条の5の2(令和8年度改定で新設). 条文は文献3に掲載.

