精神科特別訪問看護指示書の読み方・注意点

訪問看護師・リハ職向け令和8年度診療報酬改定対応2026年6月1日施行

精神科特別訪問看護指示書は、精神科訪問看護を利用している方が服薬中断などで急性増悪したときに、短期間だけ訪問の枠を広げるための指示書です。様式は別紙様式17の2。有効期間は交付日から14日以内月1回までで、通常の特別訪問看護指示書にある「月2回」の例外はありません。

1枚の紙で「週3日まで」が「毎日訪問できる」に変わります。だからこそ、期間の起算・週の数え方・どの加算が付いてどの加算が付かないかを取り違えると、返戻や過誤の原因になります。この記事では様式17の2の欄を上から順に読み解きながら、令和8年度改定(2026年6月1日施行)で変わった点まで整理します。

※ 姉妹記事「特別訪問看護指示書の読み方・注意点」「訪問看護指示書の読み方・注意点」と合わせてお読みいただくと、5種類の指示書の関係が立体的に見えてきます。

目次

SECTION 01まず全体像 ── 「土台」と「上乗せ」の関係

精神科特別訪問看護指示書は、単独では成立しません。かならず精神科訪問看護指示書(別紙様式17)という「土台」の上に乗る紙です。土台がなければ上乗せもできません。

そして意外と見落とされるのが、精神科系と一般系は混ぜられないという点です。精神科訪問看護指示書が出ている利用者に、通常の「特別訪問看護指示書(別紙様式18)」を重ねることはできません。褥瘡処置など精神科以外の理由で頻回訪問が必要になった場合は、その月の初日にさかのぼって「訪問看護指示書+特別訪問看護指示書」の組み合わせに切り替える必要があります。

図1|4枚の指示書の関係(縦=上乗せ/横=組み合わせ不可)
精神科ルート 精神科訪問看護指示書 様式17/最長6か月 精神科特別訪問看護指示書 様式17の2/14日/月1回 一般ルート 訪問看護指示書 様式16/最長6か月 特別訪問看護指示書 様式18/14日/月1〜2回 × × 縦の矢印=上乗せできる / 横の×=組み合わせられない
左右のルートは「たすき掛け」できない
  • 精神科訪問看護指示書 + 特別訪問看護指示書(様式18) → 不可
  • 精神科訪問看護指示書 + 訪問看護指示書(同一月に両方算定) → 不可
  • 精神科以外の理由で頻回訪問が必要になったときは、その月の初日にさかのぼって一般ルートへ切り替える

別紙様式16・17・17の2・18の関係。精神科特別訪問看護指示書(様式17の2)は精神科訪問看護指示書(様式17)の上乗せとして機能する。

切り替えるときは利用者負担が変わる

精神科訪問看護は自立支援医療(精神通院医療)の対象になり得ますが、一般ルート(訪問看護指示書+特別訪問看護指示書)に切り替えると自立支援医療は使えません。自己負担が上がる可能性があるため、切り替え前に必ず利用者・ご家族へ説明してください[5]

SECTION 02別紙様式17の2を上から順に読む

ここからは実物の欄に沿って読んでいきます。様式は各地方厚生局のサイト、または厚生労働省の「様式(医科)」からダウンロードできます[2]。内容に大きな相違がなければ医療機関独自のフォーマットでも差し支えありませんが、下記の欄が欠けていないかは必ず確認してください。

別紙様式17の2 精神科特別訪問看護指示書・在宅患者訪問点滴注射指示書※ 該当する指示書を○で囲む(両方に必要なら両方を○)
① 表題の○囲み

1枚の紙に「精神科特別訪問看護指示書」と「在宅患者訪問点滴注射指示書」が同居しています。どちらの指示なのかを、医師が○で囲んで示します。

○がどこにも付いていない指示書は、何の指示なのかが特定できません。点滴が不要なら「精神科特別訪問看護指示書」だけに○が付いているのが正しい状態です。届いた時点で確認し、抜けていれば交付元へ確認を。
② 特別看護指示期間

交付の日から起算して14日以内。これが上限で、医師の判断で7日など短く設定されることもあります。14日を超える期間が書かれていたら記載誤りです。

留意事項通知は「精神科特別訪問看護指示書の交付の日から起算して14日以内に行った場合は、月1回に限り、14日を限度として所定額を算定できる」と定めています[1]診察日=交付日が起点であり、訪問開始日ではありません。
③ 点滴注射指示期間

在宅患者訪問点滴注射指示書として使う場合の欄。こちらは7日以内で、週3日以上の点滴が必要なときに交付されます。特別看護指示期間(14日)とは別のカレンダーで動く点に注意してください。

14日の枠に引きずられて点滴期間まで14日と書かれているケースがあります。2つの期間は必ず別々に読むこと。
④ 患者氏名・生年月日(年齢)

土台の精神科訪問看護指示書と氏名・生年月日が一致しているかを照合します。様式17の2には傷病名の欄がありません。主たる傷病名・傷病名コードは、原則として精神科訪問看護指示書側に記載されます[3]ので、そちらで確認してください。

⑤ 病状・主訴

いま何が起きているのかが書かれる欄。「不眠・易怒性が増悪」「幻聴の再燃」「拒薬が3日間持続」など、訪問看護計画の見直しに直結する情報です。

⑥ 一時的に訪問看護が頻回に必要な理由 ★最重要

この指示書の存在理由そのものが書かれる欄です。通知は、ここでいう「一時的に頻回」とは恒常的な頻回訪問の必要性ではなく、状態の変化等で日常行っている訪問回数では対応できない場合であり、その理由を精神科特別訪問看護指示書に記載することと明示しています[3]

この欄が空欄・「急性増悪のため」だけ、といった記載は実地指導で最も指摘されやすいポイントです。さらにステーション側も、一時的に頻回な訪問看護が必要な理由を訪問看護記録書に記載する義務があります[1]。医師の指示書とステーションの記録、両方が揃って初めて根拠になります。
⑦ 留意事項及び指示事項(複数名訪問/短時間訪問)

点滴注射薬の相互作用・副作用の留意点に加え、チェック式で2つの欄があります。

  • 複数名訪問の必要性 あり・なし+理由
  • 短時間訪問の必要性 あり・なし+理由
30分未満の訪問(短時間区分)は、医師が必要性を認め指示書に明記されている場合にのみ算定できます[1]。また複数名精神科訪問看護加算も、医師が複数名訪問の必要性を認め、指示書にその旨の記載がある場合に算定します[1]。「あり」に○だけで理由が空欄、は不十分です。
⑧ 特に観察を要する項目 ── 精神科版だけの欄

一般の様式18にはなく、様式17の2にだけある欄です。該当項目に○が付きます。

  1. 服薬確認
  2. 水分及び食物摂取の状況
  3. 精神症状(観察が必要な事項を記載)
  4. 身体症状(観察が必要な事項を記載)
  5. その他
交付理由の多くが「服薬中断等による急性増悪」である以上、1.服薬確認に○が付くのが自然な流れです。3・4は「観察が必要な事項」まで書かれているかを見てください。ここが具体的であるほど、訪問時の観察項目と報告書の質が上がります。
⑨ 点滴注射指示内容(投与薬剤・投与量・投与方法等)

点滴の指示がある場合のみ記載されます。薬剤名・量・投与ルート・速度まで揃っているかを確認し、疑問があれば実施前に必ず疑義照会を。

⑩ 緊急時の連絡先等

通知は、精神科訪問看護指示書等には緊急時の連絡先として診療を行った保険医療機関の電話番号等を必ず記載した上で交付することと定めています[3]。急性増悪期に使う指示書ですから、この欄の空白は実害に直結します。

⑪ 医師署名(又は記名押印)/交付日

令和8年度改定で、様式の押印欄(「印」)が削除されました。精神科訪問看護指示書・精神科特別訪問看護指示書・特別訪問看護指示書のいずれも同様で、従前の様式も引き続き使用可能です[4]

押印がないことを理由に差し戻す必要はありません。逆に、署名も記名押印もない指示書は無効です。また指示は原則として主として診療を行う保険医療機関の医師(精神科の医師)1人が行います。同一医療機関の同一診療科で複数医師が共同して主治医を担っている場合は、そのいずれかの交付で差し支えありません[1]

SECTION 0314日間の数え方と「週」の境界

返戻が最も起きやすいのが、ここです。要点は3つ。

  • 起算日は「交付の日」。交付日から起算して14日以内。
  • 「週」は日曜日から土曜日。算定回数が週単位のものは、この1週間を単位に数えます[1]
  • 指示期間にかかる週の「期間外の日」は週3日まで。交付日の属する週と、14日目の属する週については、その週のうち精神科特別訪問看護指示書の期間中に算定した日を除き、週3日を限度として算定します[1]
図2|交付日を起点にした14日間と、週境界のカウント
例)水曜日に診察・交付 交付日 1日目 14日目 期間外 週の区切り 指示期間14日/毎日訪問が可能 週3日まで 週3日
境界の週はこう数える
  • 交付日の属する週(日〜土)のうち、指示期間より前の日(この例では日・月・火)は通常どおり週3日まで
  • 14日目の属する週も同様に、期間終了後の日は週3日まで(期間中に算定した日は除いて数える)
  • 退院日の翌日から3月以内なら、指示書がなくても週5日まで算定できる(退院日は含まない)

交付日を1日目として14日間。週の起算は日曜日。境界週は「期間中に算定した日を除いて週3日まで」。

退院直後は、そもそも指示書がなくても枠が広い。 精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅲ)は原則週3日ですが、退院日から起算して3月以内(退院日は含まない)の期間は週5日まで算定できます。ただし退院後3月となる週については、その週のうち3月の期間中に算定した日を除き週3日が限度です[1]。退院直後に「毎日入りたい」場合だけ精神科特別訪問看護指示書の出番、という整理になります。

SECTION 04通常の特別訪問看護指示書との違い

精神科特別訪問看護指示書特別訪問看護指示書
様式別紙様式17の2別紙様式18
土台となる指示書精神科訪問看護指示書(様式17)訪問看護指示書(様式16)
交付できる医師診療を担う保険医のうち精神科の医師患者の主治医
交付事由服薬中断等により急性増悪し、一時的に頻回の訪問看護が必要と認めた場合急性増悪・終末期・退院直後等により、一時的に週4回以上の頻回の訪問看護が必要と認めた場合
有効期間交付日から起算して14日以内交付日から起算して14日以内
交付回数月1回のみ(月2回の例外なし)月1回。気管カニューレを使用している状態真皮を越える褥瘡の状態は月2回
算定する基本療養費精神科訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅲ)訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅱ)
医療機関側の報酬精神科訪問看護指示料(300点)+精神科特別訪問看護指示加算 100点(月1回)訪問看護指示料(300点)+特別訪問看護指示加算 100点(月1回。厚生労働大臣が定める者は2回)
特有の記載欄特に観察を要する項目(服薬確認/水分・食物摂取/精神症状/身体症状/その他)留意事項及び指示事項、点滴注射指示内容 等
自立支援医療精神科訪問看護として対象になり得る対象外

出典:訪問看護療養費の留意事項通知(令和8年3月5日保発0305第19号)第2の4・第3の7、医科点数表I012-2およびC007の留意事項通知。点数は令和8年度改定後の医科点数表による。

最も多い誤解:「月2回出せますよね?」

通常の特別訪問看護指示書には、気管カニューレ・真皮を越える褥瘡に該当する場合の月2回交付という例外があります。しかし精神科特別訪問看護指示書にこの例外はありません。留意事項通知第3の7は「月1回に限り、14日を限度として」とだけ規定しています[1]。同じ月にもう一度14日の枠が欲しい場合は、そもそも「一時的」の要件を満たしているか、恒常的な頻回訪問になっていないかを主治医と検討し直すのが筋です。

SECTION 05広がる枠と、広がらない枠

「特別指示が出たから全部算定できる」と思い込むと過誤請求になります。指示書1枚で自動的に広がるものと、別の要件を満たさないと広がらないものを切り分けてください。

図3|精神科特別訪問看護指示書で「広がるもの/広がらないもの」
○ 指示書だけで広がる
週3日 → 週4日以上/毎日訪問14日を限度。精神科訪問看護基本療養費で算定する
2か所の訪問看護STの併用週4日以上の訪問が計画されている場合に限る
医療機関の精神科訪問看護・指導料との同月併算定ただし同一日には算定できない
医療機関側:精神科特別訪問看護指示加算 100点月1回
前提として必要なこと・精神科訪問看護指示書(土台)が有効であること
・精神科訪問看護基本療養費の届出があること
・相当の経験を有する保健師等が訪問すること
× 指示書だけでは広がらない
精神科複数回訪問加算医療機関が精神科在宅患者支援管理料を算定し、主治医が複数回訪問を必要と認めた利用者が対象
特別管理加算別表第八等に該当することが要件。特別指示の交付そのものは算定根拠にならない
複数名精神科訪問看護加算医師が必要性を認め、指示書にその旨の記載があることが要件
30分未満(短時間)区分医師が短時間訪問の必要性を認め、指示書に明記されている場合のみ
月2回目の交付精神科版には月2回の例外規定が存在しない

左=交付により自動的に広がる枠/右=別要件を満たさないと算定できないもの。スマートフォンでは上下に並びます。

2か所の訪問看護ステーションが入れる条件

精神科訪問看護基本療養費は、すでに他の訪問看護ステーションから訪問を受けている場合は原則として算定できません。ただし例外があり、精神科特別訪問看護指示書の交付対象となった利用者であって、週4日以上の指定訪問看護が計画されているものが、すでに他の1つの訪問看護ステーションから訪問を受けている場合は算定できます[1]

つまり「特別指示が出ている」だけでは足りず、「週4日以上の計画がある」ことがセットです。計画書と実績の両方でその根拠が示せるようにしておいてください。

医療機関の精神科訪問看護・指導料との関係

同一の利用者について、保険医療機関が精神科訪問看護・指導料等を算定した月は、原則として訪問看護療養費を算定できません。ただし特別訪問看護指示書又は精神科特別訪問看護指示書の交付を受けた利用者であって週4日以上の指定訪問看護が計画されている場合は例外とされています[1]ただし同一日には算定できません。訪問日の割り振りを医療機関と事前にすり合わせておきましょう。

医療機関自身が訪問する場合の「7日」に注意。 精神科訪問看護・指導料(I012)には、服薬中断等により急性増悪した場合、月1回に限り急性増悪した日から7日以内の期間について1日1回算定できる、という別の特例があります。訪問看護ステーションに交付される精神科特別訪問看護指示書の「14日」とは別の制度です。「14日」「7日」が会話の中で混ざりやすいので、どちらの話をしているか常に確認を。

SECTION 06令和8年度改定(2026年6月1日施行)で押さえること

精神科特別訪問看護指示書そのものの要件(14日・月1回)は据え置きですが、周辺のルールが動いています。急性増悪期の頻回訪問という性質上、影響が大きいものから並べます。

1. 指示書の押印欄が削除された

医師の署名又は記名・押印が必要な訪問看護指示書について、様式の押印欄を削除する様式変更が行われました。精神科訪問看護指示書、精神科特別訪問看護指示書及び特別訪問看護指示書についても同様で、従前の様式も引き続き使用可能です[4]。訪問看護計画書・報告書、精神科訪問看護計画書・報告書も、書面の場合には署名・押印を求めないこととされ、様式例から押印欄が削除されています。

2. 訪問看護指示書に2年間の保存義務が明記された

指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準(記録の整備)が改正され、訪問看護記録書・訪問看護指示書・訪問看護計画書・訪問看護報告書・市町村等に対する情報提供書・市町村等との連絡調整に関する記録について、完結の日から2年間の保存と、正確かつ最新の内容を保つ整備が義務づけられました[4]。14日で役割を終える紙だからこそ、廃棄せず綴じ込みのルールを決めておいてください。

3. 「漫然かつ画一的」な訪問の禁止が明記された

留意事項通知に、指定訪問看護は利用者の心身の状況等に応じて妥当適切に行い、漫然かつ画一的なものとならないよう、看護目標及び訪問看護計画に沿って行うこと、そして心身の状況等を踏まえずに一律に訪問の日数・回数・実施時間・人数を定めることは認められないと明記されました[1]

精神科特別訪問看護指示書は、この規定と最も相性が悪い書類

「特別指示が出たから14日間フルで毎日入る」という運用は、まさに一律の回数設定です。状態が落ち着けば期間内でも訪問回数は減らすのが本来の姿。回数の増減とその判断根拠を、計画書と記録書に残してください。

4. 訪問開始時刻・終了時刻の記録が明確化

訪問看護ステーションにおける日々の訪問看護利用者氏名、訪問場所、訪問時間(実際の指定訪問看護の開始時刻及び終了時刻)、訪問人数等を記録・保管することが明記されました[1]。頻回訪問期は1日に複数回入ることもあるため、記録の粒度が問われます。

5. 服薬状況(残薬を含む)の把握が運営基準に

心身の状況等の把握に「服薬状況」が追加され、主治医への情報提供に加え、必要に応じて利用者の同意を得て調剤を行う保険薬局へ情報提供することが望ましいと規定されました[1][4]。精神科特別訪問看護指示書の交付事由そのものが「服薬中断等」ですから、この改定は精神科訪問看護の中核業務がそのまま制度に書き込まれたと読めます。様式17の2の「特に観察を要する項目 1.服薬確認」と一直線につながる話です。

6. 機能強化型訪問看護管理療養費4が新設

支援ニーズの高い精神科訪問看護利用者等を受け入れ、24時間の対応を行い、地域の関係機関と連携する体制が整備されている訪問看護ステーションを評価する機能強化型訪問看護管理療養費4(月の初日9,030円)が新設されました[4]。常勤看護職員4人以上・看護職員割合6割以上、24時間対応体制加算の届出、別表第七/第八該当者又は重点的な支援を要する精神障害を持つ利用者の受け入れ、地域の医療機関・訪問看護STへの研修年2回以上、連携機関との会議参加実績などが要件です。精神科訪問看護に注力するステーションは、届出の検討価値があります。

7. その他、頻回訪問期に効いてくる改定

  • 訪問看護遠隔診療補助料(2,650円/月1回)の新設。ただし主治医から交付を受けた訪問看護指示書の有効期間内にある者のみが算定でき、有効な指示書がない場合はステーションでは算定できません[1]
  • 包括型訪問看護療養費の新設。高齢者向け住まい等に併設・隣接するステーションが対象で、算定すると精神科訪問看護基本療養費・精神科複数回訪問加算・訪問看護管理療養費等は同一日に算定できません[1]
  • 同一建物居住者への評価の細分化。精神科訪問看護基本療養費(Ⅲ)も、同一建物居住者の人数と月の算定日数(月20日目まで/月21日目以降)で区分されます[1]
  • 訪問看護医療情報連携加算(1,000円/月1回)の新設。ICTで記録された診療情報を取得・活用した計画的管理を評価します[4]
  • 訪問看護物価対応料の新設、訪問看護ベースアップ評価料の見直し[4]

SECTION 07受け取ったら確認する10項目

精神科特別訪問看護指示書 受領時チェックリスト
  1. 表題の○囲みが付いているか(精神科特別訪問看護指示書/在宅患者訪問点滴注射指示書)
  2. 有効な精神科訪問看護指示書(土台)があり、氏名・生年月日が一致しているか
  3. 特別看護指示期間が14日以内か。起算日は交付日(診察日)になっているか
  4. 点滴の指示がある場合、点滴注射指示期間は7日以内か(14日と混同していないか)
  5. 「一時的に訪問看護が頻回に必要な理由」が具体的に書かれているか
  6. 「特に観察を要する項目」に○が付き、精神症状・身体症状は観察事項まで記載されているか
  7. 複数名訪問/短時間訪問の必要性が、算定予定の加算・区分と整合しているか
  8. 緊急時の連絡先(医療機関の電話番号等)が記載されているか
  9. 医師の署名または記名があるか(押印欄がなくても可)。交付医は精神科の医師か
  10. 今月すでに交付を受けていないか(月1回まで)。週の境界日の訪問計画は週3日以内に収まっているか

SECTION 08現場からのQ&A

精神科特別訪問看護指示書が出たので、1日2回訪問しました。精神科複数回訪問加算は算定できますか。
指示書の交付だけでは算定できません。精神科複数回訪問加算は、医科点数表の精神科在宅患者支援管理料を算定し、主治医が複数回の訪問看護が必要であると認めた利用者に対して1日に2回又は3回以上の訪問看護を行った場合に算定するものです[1]。あわせて精神科訪問看護指示書の「複数回訪問の必要性」欄の記載や、ステーション側の届出状況も確認が必要です[5]。訪問自体は可能ですが、加算の可否は別問題と切り分けてください。
精神科訪問看護で介入中の方に褥瘡ができ、週4日以上の処置が必要になりました。精神科特別訪問看護指示書でよいでしょうか。
褥瘡処置が目的であれば、精神科ルートのままでは対応できません。訪問看護指示書+特別訪問看護指示書(様式16+18)への切り替えが必要です。精神科訪問看護指示書と訪問看護指示書は同一月に両方算定できないため、その月の介入初日にさかのぼって訪問看護指示書を作成してもらう運用になります。この場合自立支援医療は使えないため、自己負担が発生することを事前に説明してください[5]。状態が落ち着いた後、翌月以降に精神科訪問看護へ戻すことは可能です。
退院直後の利用者に、退院日の翌日から毎日訪問したいと言われました。指示書は必要ですか。
「毎日(週6〜7日)」なら必要です。退院日の翌日から3月以内は指示書なしで週5日まで算定できますが、それを超える回数には精神科特別訪問看護指示書が要ります[1]。なお退院日は3月の期間に含めません。ただし令和8年度改定で「一律に訪問回数を定めることは認められない」と明記されたことを踏まえ、本当に毎日必要かをアセスメントし、根拠を記録に残すことが前提です。
認知症の方に精神科特別訪問看護指示書を出してもらうことはできますか。
精神科訪問看護基本療養費の対象は「精神疾患を有する者又はその家族等」ですが、認知症のみを主たる傷病とする場合は精神科訪問看護の対象とならず、訪問看護基本療養費で算定します。したがって土台が訪問看護指示書となり、頻回訪問が必要な場合は通常の特別訪問看護指示書(様式18)を用います。認知症に他の精神疾患を合併している場合の取扱いは個別判断になるため、地方厚生局に確認してください。
14日間のうち、状態が改善して後半は週2回で足りそうです。途中で減らしても問題ありませんか。
まったく問題ありません。むしろそうすべきです。「一時的に頻回」とは恒常的な頻回訪問の必要性ではなく、状態の変化等で日常行っている訪問回数では対応できない場合を指します[3]。令和8年度改定でも、目標達成の程度及びその効果等について評価を行い、その内容を訪問看護記録書に記録し、必要に応じて訪問看護計画書を見直すことが求められています[1]。回数を減らした判断とその根拠を記録に残すことが、適正な運用の証明になります。
押印のない指示書が届きました。差し戻すべきですか。
差し戻す必要はありません。令和8年度改定で訪問看護指示書の押印欄は削除され、「医師署名(又は記名押印)」に変更されました。精神科特別訪問看護指示書も同様で、従前の様式も引き続き使用できます[4]。ただし署名も記名もない場合は指示として成立しませんので、その場合は確認してください。

SECTION 09まとめ

  • 精神科特別訪問看護指示書は別紙様式17の2。精神科訪問看護指示書という土台の上に乗る、14日間・月1回の上乗せ指示書。
  • 交付事由は服薬中断等による急性増悪。交付できるのは精神科の医師
  • 月2回交付の例外は存在しない。一般の特別訪問看護指示書との最大の違い。
  • 起算日は交付日、週は日曜〜土曜。境界の週は、期間中に算定した日を除き週3日まで。
  • 広がるのは訪問回数の枠。精神科複数回訪問加算・特別管理加算・複数名加算・短時間区分は別要件
  • 令和8年度改定では押印欄削除/指示書の2年保存/漫然画一的な訪問の禁止/訪問開始・終了時刻の記録/服薬状況の把握が要点。精神科訪問看護にとっては「服薬」と「回数の根拠」が制度上の焦点になった改定です。

迷ったときの原則はひとつ。指示書の紙面と、計画書・記録書の中身が一本の線でつながっているか。この記事のチェックリストが、その線を引く助けになれば幸いです。

参考資料(すべて公的一次資料)

  1. 厚生労働省保険局長「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」令和8年3月5日 保発0305第19号(令和8年4月2日訂正後). 第1の4(週の起算)、第2の4(特別訪問看護指示書)、第3(精神科訪問看護基本療養費)、第3の7(精神科特別訪問看護指示書)、第3の11・13、第3の14、第4の1・3・6・7、第5の3、第9. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686845.pdf
  2. 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)様式(医科)」令和8年3月5日 保医発0305第6号(令和8年6月19日訂正後)※別紙様式17の2ほか指示書様式を収載. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001713885.pdf/様式のWord版は各地方厚生局サイト(例:近畿厚生局)でも配布. https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/iryo_shido/documents/17-2.doc
  3. 厚生労働省「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(通知)医科点数表」令和8年3月5日 保医発0305第6号(令和8年6月19日訂正後). I012-2 精神科訪問看護指示料(精神科特別訪問看護指示加算・様式17の2・傷病名コード・緊急時連絡先)、I012 精神科訪問看護・指導料. https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001713882.pdf
  4. 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」令和8年3月10日版. 押印欄削除(p.21)、記録の整備・2年保存(p.28)、漫然かつ画一的な訪問の禁止(p.26)、服薬状況の把握(p.53)、機能強化型訪問看護管理療養費4(p.34-35)、訪問看護医療情報連携加算(p.33). https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf/厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(告示・通知・疑義解釈一覧)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  5. 一般社団法人大阪府訪問看護ステーション協会「訪問看護Q&A|精神科訪問看護に関する事項」(2026年3月26日更新). 精神科特別訪問看護指示書の交付頻度・有効期間、複数回訪問加算の要件、医療保険と自立支援医療の取扱い. https://daihoukan.or.jp/houmon-kango-qa/hk-qa07/
  6. 九州厚生局「令和8年度診療報酬改定について」(訪問看護ステーション向け資料・施設基準届出). https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/iryo_shido/r08_shinryohoshu_00001.html

本記事は2026年7月28日時点で公表されている告示・通知等に基づき作成しています。診療報酬の解釈は個別事例により異なる場合があり、疑義解釈資料の追加発出等により取扱いが変わることがあります。実際の算定にあたっては、必ず最新の通知および管轄の地方厚生(支)局へご確認ください。

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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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