訪問看護師のための塗り薬10種類(改訂版)

訪問看護師のための塗り薬10種類
― 現場で迷わないための使い分けガイド
ご自宅の薬箱に眠っている軟膏・クリーム。「白い方? 青い方?」と迷った経験はありませんか。在宅の現場でよく出会う10種類の外用薬について、何のための薬なのか、どこに塗ってはいけないのかを整理しました。看護師・リハビリ職はもちろん、ご本人やご家族にも読んでいただける内容です。
- 塗り薬は「保湿するもの」「炎症を抑えるもの」「菌をたたくもの」「傷を治すもの」の4系統に分けると整理しやすくなります。
- ステロイドは強さが5段階。同じ「ステロイド」でも、デルモベートとオイラックスHでは効き目がまったく違います。
- リンデロンVGは褥瘡(床ずれ)には使えません。電子添文で潰瘍は禁忌とされています。
- 褥瘡の薬は「創の色」で選びます。滲出液が多く感染していればカデックス、赤い肉芽を育てたいならプロスタンディン。
- 塗る量の目安は1FTU(フィンガーチップユニット)=約0.5g=大人の手のひら2枚分。「うっすら」では足りません。
1. 塗り薬を4系統に分けて考える
外用薬は種類が多く、名前だけでは何の薬か分かりません。まず「この薬は何をしたい薬か」で大きく4つに分けると、頭の中が整理されます。今回の10種類は、次のように分類できます。
図1:本記事で扱う10剤の系統別マップ。リンデロンVGはB(炎症)とC(感染)の両方にまたがる配合剤です。
この4系統のうち、在宅で判断を誤ると影響が大きいのは「B(ステロイド)」と「D(褥瘡)」です。特に、炎症を抑える薬と傷を治す薬は目的が正反対に近く、取り違えると治りを遅らせます。以下ではこの点を繰り返し確認していきます。
2. ステロイドの「強さ」5段階を知る
塗るステロイド(ステロイド外用薬)は、日本では作用の強さによって5段階に分類されています[2]。同じ「ステロイドが入った薬」でも、最も強いものと最も弱いものでは効き目が大きく異なります。この5段階を頭に入れておくだけで、「なぜ顔にはこの薬なのか」「なぜこの薬は手のひらに使うのか」が理解できるようになります。
図2:ステロイド外用薬のランク。デルモベートとオイラックスHは、同じ「ステロイド入り」でも位置がまったく違うことが分かります。
同じ薬でも、皮膚から吸収される量は部位で大きく変わります。顔・首・陰部・わきの下は吸収されやすく、手のひらや足の裏は吸収されにくいのが特徴です。そのため「顔には弱め、手のひらには強め」という使い分けが生まれます。訪問時に「顔にデルモベートが塗られている」といった状況を見つけたら、必ず主治医に確認してください。
3. 10種類 早見表
| 薬剤(商品名) | 系統 | 主な目的 | 現場での最重要ポイント |
|---|---|---|---|
| ① プロペト (ワセリン) | 保湿・保護 | 皮膚の保護 | 刺激が最も少ない。迷ったらこれ。塗りすぎるとムレて毛包炎に |
| ② ヒルドイド (ヘパリン類似物質) | 保湿・保護 | 乾燥、血行改善 | 出血しているところには使わない。出血性血液疾患は禁忌 |
| ③ オイラックスH | かゆみ+弱ステロイド | 湿疹、かゆみ | 塗ると温かい感じ。ヒリヒリ訴えは想定内だが強ければ中止相談 |
| ④ アズノール軟膏 | 非ステロイド抗炎症 | 湿疹、びらん・潰瘍 | 青色が寝具に付く。基剤に精製ラノリン → かぶれの原因になりうる |
| ⑤ ドボベット軟膏 | ビタミンD+ステロイド | 尋常性乾癬 | 1週間90gまで。顔には使わない。乾癬以外には使わない |
| ⑥ デルモベート | ステロイド(最強) | 頑固な湿疹、掌蹠 | 顔・陰部は原則NG。漫然使用で皮膚萎縮・毛細血管拡張 |
| ⑦ リンデロンVG | ステロイド+抗菌薬 | 感染を伴う湿疹 | 潰瘍・褥瘡には禁忌。「とりあえずVG」は耐性菌の温床 |
| ⑧ アクアチム | 抗菌薬 | とびひ、毛包炎、ざ瘡 | 期間を決めて使う。よくなったら漫然と続けない |
| ⑨ プロスタンディン軟膏 | 褥瘡治療 | 肉芽・表皮形成の促進 | 出血している患者は禁忌。1日10g超えない。ガーゼ交換は愛護的に |
| ⑩ カデックス軟膏 | 褥瘡治療 | 感染+滲出液の多い創 | ヨウ素過敏は禁忌。甲状腺・腎機能に注意。乾いた創には不向き |
※ 表は横にスクロールできます。
4. A系統|保湿・皮膚保護
- どんな薬か
- 石油由来の油分そのものです。水分を「与える」のではなく、皮膚の表面に膜を張って、体内から出ていく水分を逃がさないタイプの保湿剤です。プロペトは白色ワセリンをさらに精製したもので、不純物が少なく、眼のまわりにも使えるほど刺激が弱いのが特徴です。
- 在宅で活躍する場面
- ・おむつ内の皮膚を尿・便から守る
・テープを貼る前後の皮膚保護、スキン-テア予防
・口唇・鼻の下の乾燥、酸素カニューレ接触部
・薬の成分でかぶれやすい方の「最後の砦」 - 注意したいこと
- 油なので厚く塗りすぎるとムレて毛包炎(毛穴の炎症)を起こすことがあります。特に夏場と、背中・胸部など汗のたまる部位は薄く。また、ガーゼが張り付くのを防ぐ目的で使うときは、貼付材の吸収を妨げないか確認が必要です。
- どんな薬か
- ヒアルロン酸と同じ「ムコ多糖類」の仲間で、水分を抱え込んで離さない性質を持ちます。ワセリンが「ふた」なら、ヘパリン類似物質は「水を引き寄せて保持する」タイプ。さらに、血液を固まりにくくするヘパリンに似た構造から、血行を促す作用と穏やかな抗炎症作用も併せ持ちます[5]。
- 在宅で活躍する場面
- 高齢者の皮脂欠乏症(乾燥肌)が最も多い使い道です。そのほか、しもやけ、打撲後の血腫、肥厚性瘢痕・ケロイドの予防などにも用いられます。
剤形が豊富なのが強みで、広い背中や下肢にはローションやフォーム、手指や亀裂にはソフト軟膏と使い分けると介護者の負担が減ります。 - 注意したいこと
- 血を固まりにくくする性質があるため、出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑病など)や、わずかな出血でも重大な結果を招く方には禁忌です。訪問先では、抗凝固薬・抗血小板薬を内服中で老人性紫斑が出ている高齢者は少なくありません。「出血している部位」「びらん面」には塗らないと覚えてください。また、炎症で荒れた皮膚にローションやフォームを使うとしみることがあります。
5. B系統|炎症・かゆみを抑える
- どんな薬か
- 2つの成分の合剤です。クロタミトンは皮膚に軽い温かさを感じさせ、その感覚でかゆみを紛らわせます。ヒドロコルチゾンは5段階で最も弱いランクのステロイドで、軽い炎症を抑えます。「かゆみは強いが、炎症はそれほど強くない」という高齢者の乾燥性皮膚そう痒症によく処方されます。
- 在宅で活躍する場面
- 夜間のかき壊しに悩む方、虫さされ、軽い湿疹など。ステロイドが弱いので、比較的長めに使いやすい薬です。
- 注意したいこと
- ・塗った直後にポカポカ・ヒリヒリするのは成分の作用で、異常ではありません。ただしご本人が「痛い」と強く訴える場合は使用を中止して相談を。
・疥癬(かいせん)の治療薬ではありません。クロタミトン単剤はヒゼンダニに対して用いられることがありますが、オイラックスHはステロイド配合のため、疥癬が疑われる場面で漫然と使うと症状を隠し、悪化・拡大させます。
・「かゆみ=オイラックスH」と自動的に考えず、白癬や疥癬など感染症を除外する視点を持ってください。
- どんな薬か
- カミツレ(カモミール)由来成分をもとにした抗炎症薬で、ステロイドを使わずに穏やかな抗炎症作用を発揮します。電子添文上の効能は「湿疹」「熱傷・その他の疾患によるびらん及び潰瘍」で、皮膚がめくれた面にも使える点が大きな特徴です[6]。基剤の大部分が白色ワセリンで、伸びがよく、創面を保護する働きも兼ねています。
- 在宅で活躍する場面
- 浅い褥瘡(発赤〜びらん)、スキン-テア、失禁関連皮膚炎、テープかぶれなど、「ステロイドは使いたくないが、何かで守りたい」場面の定番です。効き目は穏やかなので、はっきりした炎症には力不足なこともあります。
- 注意したいこと
- ・青い色が寝具・衣類・おむつに移ります。介護者に事前に伝えておくとトラブルになりません。
・添加物に精製ラノリンが含まれます。ラノリンは接触皮膚炎の原因になりうる成分で、「塗っているのに赤みが増える」ときは薬そのものによるかぶれを疑ってください。
・壊死組織を溶かす力はありません。黒色壊死のある褥瘡に塗り続けても前に進みません。
- どんな薬か
- 乾癬(かんせん)専用の配合薬です。乾癬では皮膚の細胞が異常な速さで作られて厚く積み重なり(鱗屑)、同時に強い炎症が起きています。ドボベットは、ビタミンD3が「細胞の作りすぎ」を、ステロイドが「炎症」を、同時に抑えます。国内試験でも、それぞれの単剤より高い改善が示されています[7]。
- 使い方のルール
- ・1日1回塗布
・1週間に90gを超えて使わない(軟膏・ゲル・フォームを併用する場合も合計で90gまで)
・使用開始から4週間を目安に、続ける必要があるかを医師が判断します - 注意したいこと
- ・使いすぎるとビタミンD3の全身作用で高カルシウム血症を起こすことがあります。倦怠感、食欲不振、吐き気、脱力といった症状は要注意サインです。腎機能が低下している方では特に慎重に。
・顔には使いません。顔に皮疹がある場合は別の薬が併用されます。
・潰瘍面や、細菌・真菌・ウイルスによる皮膚感染症、疥癬には禁忌です。「乾癬の薬」であって「感染症の薬」ではないことを、ご家族にも伝えておきましょう。
- どんな薬か
- 日本で使えるステロイド外用薬の最上位ランクです。手のひら・足の裏の頑固な湿疹、掌蹠膿疱症、円形脱毛症、天疱瘡など、弱い薬では歯が立たない病変に使われます。「強い=悪い薬」ではありません。必要な場所に、必要な期間、しっかり使うことが正解です。
- 在宅で活躍する場面
- 手指の亀裂性湿疹で日常生活に支障が出ている方、頭皮の頑固な病変(スカルプローションが便利)など。効果が高いぶん、短期間で改善が見込めます。
- 注意したいこと
- ・顔・首・陰部・わきの下・鼠径部には原則使いません。これらの部位は吸収が良く、皮膚萎縮やステロイド酒さを起こしやすいためです。
・長期・広範囲の使用では皮膚が薄くなる(萎縮)、毛細血管が浮き出る、傷が治りにくくなるといった局所の副作用が出ます。まれに全身作用(副腎抑制)も。
・訪問時のチェックポイント:「いつから」「どこに」「1日何回」使っているか。チューブの減り方が早すぎないかを確認し、漫然と続いている場合は主治医に情報提供を。
- どんな薬か
- 「ステロイド(リンデロンV)」に「抗菌薬(ゲンタマイシン)」を足した配合剤です。細菌感染を伴う、あるいは感染しやすい状態の湿疹・皮膚炎が本来の対象です。かき壊して浸出液が出ている湿疹などで力を発揮します。
- いちばん大事な注意
- 潰瘍(ベーチェット病を除く)、および第2度深在性以上の熱傷・凍傷は禁忌です。ステロイドが皮膚の再生を抑え、治癒を遅らせるためです。褥瘡に塗る薬ではありません。訪問先で褥瘡にリンデロンVGが使われているのを見つけたら、必ず主治医に確認してください。
- 「とりあえずVG」問題
- 感染していない単なる湿疹に、抗菌薬入りを選ぶ必要はありません。ゲンタマイシンを漫然と使い続けると耐性菌が生まれ、いざ必要なときに効かなくなります。また、長期連用ではゲンタマイシン自体の副作用(腎障害・聴覚障害)も理論的リスクとして挙げられます。感染がなければリンデロンV(ステロイド単剤)で十分、というのが現在の考え方です。
- その他
- 真菌症(水虫・カンジダ)、ヘルペスなどのウイルス感染、疥癬にも禁忌です。「原因がはっきりしない皮疹に、とりあえず強めの合剤」は、診断を遅らせる典型的なパターンです。
6. C系統|感染をたたく
- どんな薬か
- 細菌のDNA複製を妨げて殺菌するタイプの外用抗菌薬です。黄色ブドウ球菌・表皮ブドウ球菌といった皮膚の代表的な原因菌と、ニキビの原因となるアクネ菌の両方に働きます。表在性皮膚感染症(とびひ、毛包炎、せつなど)と、化膿を伴うざ瘡(ニキビ)に用いられます。
- 剤形の使い分け
- ・クリーム…最も汎用的
・軟膏…びらん面や乾燥の強い部位
・ローション…頭皮・毛のある部位、広い面 - 注意したいこと
- ・「よくなったら止める」が原則です。ざ瘡の診療ガイドラインでも炎症性皮疹に対して推奨されていますが、耐性菌を防ぐため、治療上必要な最小限の期間にとどめることが電子添文にも明記されています[3]。訪問先で「もう半年塗っています」というケースは要注意です。
・ステロイドは入っていないので、湿疹そのものには効きません。「かゆみ止め」と誤解されないよう説明を。
7. D系統|褥瘡・皮膚潰瘍を治す
- どんな薬か
- 血管を広げて創部の血流を良くし、肉芽(にくげ/赤い治癒組織)と表皮の形成を促す薬です。適応は褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、糖尿病性潰瘍、下腿潰瘍、術後潰瘍)。「創がきれいになったのに、なかなか埋まってこない」赤色期の創が最も良い適応です。
- 使い方
- 1日2回、潰瘍周囲から潰瘍部を清拭したあと、ガーゼに伸ばして貼るか直接塗布してガーゼで保護します。原則として1日10gを超えて使わないことになっています。
- 禁忌 ― ここを外さない
- ・重篤な心不全のある方(心不全を悪化させるおそれ)
・出血している方(頭蓋内出血、出血性眼疾患、消化管出血、喀血など)
・妊婦・妊娠している可能性のある女性
加えて、重症糖尿病、出血傾向のある方、胃潰瘍の既往、抗凝固薬・抗血小板薬・血栓溶解薬を使用中の方では慎重投与です。在宅の高齢者はこれらに該当することが多く、訪問看護師が全身状態と内服内容を把握しておく意味が大きい薬です。 - 現場での実務ポイント
- ・新しい肉芽はもろく、ガーゼ交換のわずかな刺激で出血します。創面に固着させない、剥がすときは生理食塩液で湿らせる、といった愛護的な処置を徹底してください。出血傾向が強まった場合は使用を中止して報告を。
・壊死組織を溶かす作用はありません。黒色壊死が残っている段階では、まずデブリードマンが必要です。
・約8週間使っても改善しない場合は、外科的治療を含めた方針の見直しが検討されます。
- どんな薬か
- 2つの働きを1つで担う薬です。デキストリンでできた微細なビーズ(カデキソマー)が滲出液をぐんぐん吸い込み、その過程で閉じ込められていたヨウ素が徐々に放出されて殺菌します。適応は褥瘡、皮膚潰瘍(熱傷潰瘍、下腿潰瘍)。「じくじくして臭う、感染した創」が最も良い適応です。
- 使い方
- 患部を生理食塩液などで洗浄し、清拭後に1日1回塗布します(直径4cmあたり3gが目安)。滲出液が多い場合は1日2回。交換のときは、残っている薬を生理食塩液で十分に洗い流してから新しい薬を使います。ビーズが残ったまま重ね塗りしないことが大切です。
- 注意したいこと
- ・ヨウ素過敏症の方には禁忌です。造影剤アレルギーの既往は必ず確認を。
・甲状腺機能異常のある方は、創から吸収されたヨウ素で症状が悪化するおそれがあります。また電子添文でも、多量投与・長期連用時には甲状腺機能の変動に注意するよう記載されています。長期使用例では甲状腺機能の確認を主治医に相談しましょう。
・腎機能障害のある方では血清中ヨウ素濃度が著しく上昇するおそれがあります。
・乾いた創には向きません。吸水作用が強いため、滲出液の少ない創に使うとかえって乾燥させ、治癒を妨げます。「滲出液が減ってきたら次の薬へ」という切り替えの判断が訪問看護師の腕の見せどころです。
・約2か月使用しても改善がなければ、外科的療法の検討が推奨されています。
8. 褥瘡は「創の色」で薬を選ぶ
褥瘡の外用薬は、病期を色でとらえると選びやすくなります。黒 → 黄 → 赤 → 白と進むイメージです。それぞれの段階で「創に何をしてほしいか」が違うため、使う薬も変わります。
図3:創の色による考え方。訪問時は「色」「におい」「滲出液の量」「創周囲の皮膚」の4点を毎回同じ順で観察すると、変化に気づきやすくなります。
- 褥瘡にステロイド配合剤(リンデロンVGなど)…潰瘍は禁忌。治癒が遅れます。
- 乾いた創にカデックス…吸水作用でさらに乾き、上皮化が進みません。
- 出血傾向のある方にプロスタンディン…出血している患者は禁忌。抗凝固薬内服中は特に慎重に。
9. 塗り方の基本 ― 量・順番・タイミング
量の目安は「1FTU」
外用薬でいちばん多い失敗は、「量が少なすぎる」ことです。効かないから強い薬に変えたが、実は量が足りていなかった、というのは日常的に起こります。目安としてFTU(フィンガーチップユニット)が広く使われています[2]。
図4:1FTU=約0.5g=大人の手のひら2枚分。ローションの場合は1円玉大が約1FTU相当とされます。
塗る順番と部位
- 保湿剤と薬を両方使う場合は、どちらが先でも大きな差はないとされていますが、「広い範囲に保湿剤 → 病変部だけに薬」の順にすると、薬を広げすぎずに済みます。
- すり込まない。皮膚の上にそっと「置いて、伸ばす」が基本です。強くすり込むと、かえって刺激になり、高齢者ではスキン-テアの原因にもなります。
- 毛の流れに沿って塗ると、毛穴の炎症(毛包炎)を防ぎやすくなります。
タイミング
- 保湿剤は入浴後5〜10分以内が最も効果的です。訪問入浴のあと、体が乾ききる前に塗れるよう段取りしておきましょう。
- ステロイドは1日1〜2回が一般的。「回数を増やせば早く治る」わけではありません。
- ドボベットは1日1回と決まっています。
塗り薬は「処方されたか」ではなく「実際に塗れているか」で結果が決まります。手指の変形で背中に届かない、目が見えづらくチューブを取り違える、介護者が疲れて夜だけになっている ―― こうした生活の中の障壁を見つけて外せるのは、家に入る職種だけです。薬の名前を覚えることと同じくらい、「誰が・いつ・どこに塗るのか」を具体的に決めることが治療になります。
10. 現場でよくある質問
古い塗り薬が残っています。使ってもいいですか?
開封後の外用薬は、においや色、分離の有無を確認したうえで、原則として使い切らずに残ったものは処分をおすすめします。特にチューブの口を患部に直接つけて使っていた場合は細菌汚染の可能性があります。また、以前の症状に効いた薬が今回の症状に合うとは限りません。自己判断で使い回さず、主治医・薬剤師に確認してください。
ステロイドは体に悪いと聞きました。塗るのが怖いです。
塗るステロイドは、適切なランクを、必要な期間、必要な量使う限り、安全性の高い薬です。むしろ、怖がって少量しか塗らずに炎症が長引くほうが、皮膚のバリアが壊れ、かき壊しや感染につながります。ご心配な点は、我慢して自己判断で中止するのではなく、主治医や訪問看護師に率直に伝えてください。ランクを下げる、非ステロイドに切り替えるなど、方法はいくつもあります。
かゆいところに、家にある薬を塗って様子を見てもいいですか?
おすすめしません。かゆみの原因が水虫(白癬)や疥癬などの感染症だった場合、ステロイド入りの薬を塗ると一時的に楽になっても、菌やダニが増えて悪化・拡大します。特に施設や同居家族で複数人にかゆみが出ているときは、疥癬を疑って早めに相談してください。
床ずれに市販の消毒薬を使ってもいいですか?
消毒薬は細菌だけでなく、傷を治そうとしている細胞も傷めます。現在は「洗浄が基本、消毒は限定的」という考え方が主流です。褥瘡予防・管理ガイドラインでも、創の状態に応じた外用薬・ドレッシング材の選択が整理されています[1]。自己判断で消毒を続けず、まず主治医・訪問看護師にご相談ください。
同じ場所に2種類の塗り薬を出されました。混ぜてもいいですか?
混ぜないでください。薬によっては混ぜることで有効成分が分解したり、濃度が変わって効き目が落ちたりします。処方時に混合が必要であれば、薬局で適切に調製されたものが出されます。ご自宅で混ぜる必要はありません。
まとめ
- 塗り薬は「保湿・保護」「炎症を抑える」「菌をたたく」「傷を治す」の4系統で整理する。
- ステロイドは5段階のランクと部位ごとの吸収の違いをセットで覚える。
- リンデロンVGを褥瘡に使わない。潰瘍は禁忌。
- 褥瘡は創の色で薬を選ぶ。滲出液が多く感染していればカデックス、肉芽を育てたいならプロスタンディン。
- 量は1FTU=約0.5g=手のひら2枚分。少なすぎる外用は「効かない薬」を作る。
- そして最後に――塗れているかどうかを確かめられるのは、生活の場に入る訪問看護だけです。
ふくろう訪問看護リハビリステーションでは、褥瘡・スキンテア・失禁関連皮膚炎などの皮膚トラブルに対して、主治医と連携しながら継続的なケアを行っています。「この薬で合っているのか分からない」「家族が塗るのが大変」といったご相談も、どうぞお気軽にお寄せください。
参考文献
- 一般社団法人日本褥瘡学会(編):褥瘡予防・管理ガイドライン 第5版.照林社,2022年3月.ISBN 978-4-7965-2553-4/Minds ガイドラインライブラリ収載(2024年1月選定)
- 日本皮膚科学会・日本アレルギー学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン策定委員会(佐伯秀久 他):アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2024.日本皮膚科学会雑誌 2024;134(11):2741-2843.
- 尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン策定委員会(山﨑研志 他):尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023.日本皮膚科学会雑誌 2023;133(3):407-450.
- 日本皮膚科学会 創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン策定委員会:創傷・褥瘡・熱傷ガイドライン-3:褥瘡診療ガイドライン(第2版).日本皮膚科学会雑誌 2022;132(5):1041-1094.
- 各製剤の電子添文(医薬品医療機器総合機構〈PMDA〉医療用医薬品情報検索):プロペト、ヒルドイド(ヘパリン類似物質)、オイラックスHクリーム、アズノール軟膏0.033%、ドボベット軟膏、デルモベート、リンデロン-VG、アクアチム、プロスタンディン軟膏0.003%、カデックス軟膏.いずれも2026年7月時点の最新版を参照.
- アズノール軟膏0.033% 電子添文(日本新薬):効能・効果「湿疹」「熱傷・その他の疾患によるびらん及び潰瘍」、添加剤に精製ラノリン・白色ワセリンを含む.
- ドボベット軟膏 電子添文(レオファーマ):国内第III相試験にてPASI変法の平均変化率は本剤群−64.3%、カルシポトリオール製剤群−50.5%、ベタメタゾンジプロピオン酸エステル製剤群−53.6%(いずれもp<0.0001、4週時).用法及び用量に関連する注意として1週間90gの上限、4週間を目安とした必要性の再検討を規定.
【免責】本記事は一般的な医療情報の提供を目的としたものであり、個々の患者さんに対する診断・治療を行うものではありません。外用薬の選択・変更・中止は必ず主治医の指示に従ってください。記載内容は2026年7月時点の各ガイドラインおよび電子添文に基づいています。添付文書(電子添文)は随時改訂されるため、実際の使用にあたっては最新版をご確認ください。

