訪問点滴指示書はどういう時に必要?

訪問看護師・リハビリ職向け / 令和8年度診療報酬改定(2026年6月1日施行)対応

「先生、点滴の指示書もらえますか?」——脱水や食思不振で在宅点滴が始まるとき、現場で必ず出てくるやりとりです。ただ、この“訪問点滴指示書”がどんな場面で必要になり、何日分をカバーし、保険上どう扱われるのかは、意外と曖昧なまま運用されがちです。ここでは正式名称・交付要件・カウントの数え方・医療保険と介護保険の切り分けまで、告示と通知に沿って整理します。

結論(3行)

  • 正式名称は「在宅患者訪問点滴注射指示書」週3日以上の点滴注射を訪問看護で行う必要があると医師が認めたときに交付します。
  • 有効期間は7日以内。指示日から7日間のうち看護師等が3日以上実施した「3日目」に、医療機関が在宅患者訪問点滴注射管理指導料(100点/週1回)を算定します。
  • 介護保険の利用者でも交付できます。ただし点滴指示書だけでは医療保険の訪問看護に切り替わりません(切替は別表第七・特別訪問看護指示書)。
目次

1「訪問点滴指示書」の正式名称と位置づけ

現場で「点滴指示書」「訪問点滴指示書」と呼ばれている書類の正式名称は、在宅患者訪問点滴注射指示書です。単独の様式があるわけではなく、訪問看護指示書と一体の様式として作られています。通知では、別紙様式16(訪問看護指示書)・別紙様式17の2・別紙様式18を参考に作成することとされています[1]。実務上は、訪問看護指示書の用紙の上部にある「訪問看護指示書/在宅患者訪問点滴注射指示書」のどちらかに丸を付け、点滴用として発行する形が一般的です。

この指示書は、医療機関が在宅患者訪問点滴注射管理指導料(C005-2・100点/1週)を算定するための前提になる文書でもあります。つまり「点滴を頼む連絡票」ではなく、報酬要件と直結した公式文書だと理解しておくのが安全です。

2必要になるのはどんなときか

指示書が必要になる条件は、次の4つがそろったときです。ひとつでも欠けると、点滴自体はできても管理指導料の算定要件は満たしません。

要件内容
対象者在宅で療養していて、通院が困難な患者
医師の判断在宅療養を担う保険医が診療に基づき週3日以上の点滴注射が必要と認めること
実施者看護師または准看護師が患家を訪問して実施すること(医師が行った点滴は日数に含まれません)
物品の供与使用する薬剤・回路等・必要十分な保険医療材料・衛生材料を医療機関が供与すること

出典:令和8年3月5日保医発0305第6号「診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」C005-2[1]

在宅で点滴注射が必要になった 週3日以上の点滴が必要か? 医師が診療に基づいて判断 はい いいえ(週2日以下) 在宅患者訪問点滴注射指示書 を交付(有効期間7日以内) 3日以上実施できた「3日目」に 管理指導料 100点(週1回) 管理指導料は算定できない 通常の訪問看護指示書の 指示内容として点滴を実施 薬剤料は算定できる

図1 訪問点滴指示書が必要になる場面の判断フロー

37日間をどう数えるか

指示書の有効期間は7日以内と定められています。ここでいう「1週間」は暦週(月曜〜日曜)ではなく、指示を行った日から起算した7日間です[1]。この7日間のうち看護師等が3日以上訪問して点滴を実施すると、3日目に管理指導料100点が算定されます。

指示日から起算して7日間=ひとつの指示のカバー範囲 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 点滴① 点滴② 点滴③ 看護師が実施 看護師が実施 3日目 → 算定 在宅患者訪問点滴注射管理指導料 100点 患者1人につき週1回まで/算定するのは医療機関 曜日の区切りではなく 指示日からの7日間

図2 実施が3日目に達した時点で算定。実施日が連続している必要はありません。

点滴を継続する場合は、7日ごとに指示書を更新します。逆に、途中で点滴が終了したときや状態が変わったときは、実施した看護師等から主治医へ速やかに連絡することとされています(電話等でも差し支えありません)[1]

4現場でつまずきやすい5つのポイント

Q1 医師が1日、看護師が2日実施した場合は?

算定不可算定要件になる点滴注射は看護師等が実施したものに限られ、医師が行った点滴は日数に含まれません。この場合は「看護師実施2日」となり、3日の要件を満たしません[1]

Q2 体調が回復して2日で点滴が終了した場合は?

薬剤料は可管理指導料は算定できませんが、使用した分の薬剤料は算定できます[1]。レセプトにはその旨を記載しておくと査定リスクが下がります。

Q3 輸液セットやサーフロー針の費用は別に請求できる?

別途不可管理指導料には必要な回路等の費用が含まれており、別に算定できません。一方で薬剤料は別に算定できます[1]

Q4 中心静脈栄養や麻薬の持続注射を行っている人は?

併算定不可在宅中心静脈栄養法指導管理料(C104)、在宅麻薬等注射指導管理料(C108)、在宅腫瘍化学療法注射指導管理料(C108-2)、在宅強心剤持続投与指導管理料(C108-3)、および令和8年度改定で新設された看護師等遠隔診療注射実施料を算定した場合は、管理指導料は算定できません[1]

Q5 ステーション側に何か算定できるものはある?

加算あり管理指導料そのものは医療機関が算定するもので、ステーションの収入にはなりません。ただし特別管理加算の対象になります(次章)。

5医療保険と介護保険で何が変わるか

点滴指示書は、医療保険の訪問看護を受けている人にも、介護保険の訪問看護を受けている人にも交付できます。管理指導料の算定要件では、介護保険法に基づく指定居宅サービス事業者(訪問看護)等から訪問看護を受けている患者も対象に含まれているためです[1]。つまり訪問看護は介護保険、点滴の管理指導料は医療保険という組み合わせが成立します。

医療保険の訪問看護 介護保険の訪問看護 訪問回数 別表第八に該当するため 週4日以上の訪問が可能 訪問回数 ケアプランと区分支給 限度基準額の範囲内 ステーションの加算 特別管理加算 2,500円/月 ステーションの加算 特別管理加算(Ⅱ) 250単位/月 共通:管理指導料(100点)を算定するのは医療機関。薬剤料も医療保険。 点滴指示書が出ても、要介護者の訪問看護が医療保険に切り替わるわけではありません

図3 保険別の扱い。加算の要件・届出はそれぞれの基準に従います。

医療保険:別表第八に該当し、週4日以上が可能になる

特掲診療料の施設基準等・別表第八には「在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者」が挙げられています[2][4]。医療保険の訪問看護では、原則週3日までという回数の上限がありますが、別表第八に該当する利用者は週4日以上の訪問看護が可能になります。あわせて、届出を行ったステーションでは特別管理加算 2,500円(月1回)が算定できます[3]

介護保険:特別管理加算(Ⅱ)250単位/月

要支援・要介護の利用者では訪問看護は介護保険が優先され、訪問回数はケアプランと区分支給限度基準額の範囲で組み立てます。ステーションは特別管理加算(Ⅱ)250単位/月の対象となります。ただしこれは「点滴注射を週3日以上行う必要があると認められる状態」に対する加算で、指示が出ているだけでは足りず、実際に週3日以上実施していることが前提です。

よくある誤解

「点滴指示書が出たから医療保険に切り替わる」——これは誤りです。要介護者の訪問看護が介護保険から医療保険に移るのは、別表第七の疾病等に該当する場合と、特別訪問看護指示書が交付された場合です。点滴指示書は保険の切替スイッチではありません。

6特別訪問看護指示書との違い

どちらも「一時的に手厚く関わるための指示書」ですが、目的も期間も別物です。急性増悪で連日の点滴と頻回訪問が必要になったときは、2枚とも交付されることがあります

 在宅患者訪問点滴注射指示書特別訪問看護指示書
目的週3日以上の点滴注射を行うため急性増悪等で一時的に頻回(週4日以上)の訪問看護を行うため
有効期間7日以内指示日から14日以内
交付回数必要な期間ごとに更新(回数制限の定めなし)月1回(気管カニューレ使用中・真皮を越える褥瘡の場合は月2回)
保険の扱い訪問看護の保険区分は変わらない要介護者でも訪問看護が医療保険扱いになる
関連する報酬在宅患者訪問点滴注射管理指導料 100点(医療機関)訪問看護指示料の特別訪問看護指示加算 100点(医療機関)

出典:令和8年3月5日保医発0305第6号、厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」[1][2]

7令和8年度改定で押さえておく3点

令和8年度診療報酬改定は2026年6月1日施行です[1]。点滴指示書まわりで実務に影響するのは次の3点です。

項目改定内容
指示書の押印欄訪問看護指示書(別紙様式16)等の押印欄が削除され、「医師署名(又は記名押印)」に変更。従前の様式も引き続き使用可能です[2]
別表第八の追加「在宅難治性皮膚疾患処置指導管理」を受けている状態が別表第八に追加。点滴と直接の関係はありませんが、週4日以上の訪問対象者が広がりました[2][4]
オンライン診療との関係新設の訪問看護遠隔診療補助料を算定する場合、訪問看護療養費等は算定できませんが、在宅患者訪問点滴注射管理指導料は算定できます。一方、新設の看護師等遠隔診療注射実施料を算定した場合は併算定できません[1][2]

8ステーション側のチェックリスト

  • 指示書に有効期間(7日以内)指示内容(薬剤名・量・投与方法)が記載されているか
  • 継続する場合、7日ごとの更新が滞っていないか
  • 実施者が看護師・准看護師か(リハビリ職の訪問日は日数に含まれません)
  • 訪問看護記録書に点滴の実施内容を記録し、指示書を添付しているか
  • 点滴が終了したとき・状態が変化したときに、主治医へ速やかに連絡したか
  • 特別管理加算の届出状況と、医療/介護の同月重複算定になっていないかの確認

点滴が始まる局面は、脱水・食思不振・終末期の症状変化など、状態が動きやすい時期と重なります。書類の要件を満たすことは目的ではなく、7日ごとに医師と状態をすり合わせる仕組みとして機能させることが本来のねらいです。「あと何日続けるか」「いつ終了とするか」を主治医と共有しながら運用してください。

出典・参考資料

  1. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(診療報酬の算定方法の一部を改正する件〈令和8年厚生労働省告示第69号〉、診療報酬の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について〈令和8年3月5日保医発0305第6号〉C005-2 在宅患者訪問点滴注射管理指導料)令和8年6月1日施行 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  2. 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」(令和8年3月10日版) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
  3. 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第74号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665206.pdf
  4. 特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件(令和8年厚生労働省告示第71号/別表第七・別表第八) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001675855.pdf
  5. 「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正について(令和8年3月27日保医発0327第4号・老老発0327第2号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001697767.pdf
  6. 訪問看護計画書等の記載要領等について(令和8年3月27日保医発0327第10号) https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681763.pdf

※本記事は2026年7月27日時点で公表されている告示・通知(令和8年6月1日施行分および同年6月26日付「疑義解釈資料の送付について(その9)」まで)に基づいて作成しています。実際の算定・請求にあたっては、必ず通知の原文および地方厚生(支)局の指導内容をご確認ください。介護保険の単位数は令和6年度介護報酬改定に基づく現行のものです。

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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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