訪問リハビリの役割

VISITING REHABILITATION

訪問リハビリの役割
――「家で暮らし続ける」を支えるということ

訪問リハビリは「家に来てくれる機能訓練」ではありません。暮らしの場そのものを評価し、その人が実際にやりたい生活行為へ橋を架ける仕事です。この記事では、名前の似た2つのサービスの違い、実際に何をするのか、効果はどこまで確かめられているのか、そして令和6年度・令和8年度の制度改定が現場に何を求めているのかを、公的資料と査読論文にあたって整理します。

SECTION 01

結論:訪問リハビリが担う3つの役割

訪問リハビリの目的を一言でいえば「病院で回復した力を、自宅での生活に翻訳すること」です。病院のリハビリ室で10メートル歩けても、自宅の廊下に段差があり、手すりがなく、トイレのドアが内開きなら、その10メートルは生活にはつながりません。訪問リハビリは、その断絶を埋めるために存在します。

訪問リハビリが担う3つの役割 1 機能を守る 動かないことで失われる力 (筋力・関節・持久力・嚥下 ・呼吸)を評価し、低下の 速度を緩める。痛みや転倒 のリスクにも介入する。 2 生活行為をつくる 「トイレに一人で行く」 「風呂に入る」「買い物に 出る」など、本人が望む具体 的な行為を目標に置き、 その場で反復して定着させる。 3 環境と人を整える 手すり・福祉用具・住宅改修 を提案し、介助する家族に やり方を伝える。ケアマネや 看護師・医師へ生活の情報を 戻すのも役割のうち。 3つが揃ってはじめて「暮らしが続く」――どれか1つだけでは生活は変わらない

図1 訪問リハビリの3つの役割。1だけに偏ると「訓練はしているが生活は変わらない」状態になり、3だけに偏ると「環境は整ったが本人が動かない」状態になります。

この記事のいちばん大事な一文

訪問リハビリの成果は、関節可動域や筋力の数値ではなく、「その人の1日の中で、できることがどれだけ増えたか」で測られます。目標が「膝を伸ばす」で止まっているうちは、まだ訪問リハビリになりきっていません。

SECTION 02

名前が似ている2つのサービス

在宅でリハビリを受ける方法には、制度上まったく別の2つのルートがあります。利用者・ご家族はもちろん、ケアマネジャーや病院の退院支援担当者でも混同されることが多いところです。

在宅でリハビリを受ける2つのルート ① 訪問リハビリテーション 提供元:病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院 その事業所の医師が診察し、指示を出す (計画的な医学的管理が前提) 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が訪問 ② 訪問看護からのリハ職の訪問 提供元:訪問看護ステーション かかりつけ医が訪問看護指示書を交付 (主治医は医療機関を問わない) 看護職員の「代わりに」リハ職が訪問 どちらも訪問するのは同じ国家資格者。違うのは「誰が指示を出し、どの枠組みで提供されるか」です

図2 2つのルートの構造。①は医療機関等が自らの医師の医学的管理のもとで提供するサービス、②は訪問看護の一部として提供されるサービスです。

 ① 訪問リハビリテーション② 訪問看護からのリハ職の訪問
提供する事業所病院・診療所・介護老人保健施設・介護医療院訪問看護ステーション
指示を出す医師その事業所に所属し、診療を行っている医師かかりつけの主治医(訪問看護指示書)
制度上の位置づけリハビリテーションそのものを提供するサービス「看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心とするもの」であり、看護職員の代わりに訪問させるという位置づけ
1回の単位20分を1回として計算20分を1回として計算
介護保険の基本報酬
(令和6年6月〜)
308単位/回
(介護予防は298単位/回)
294単位/回
(介護予防は284単位/回)
回数の上限(介護保険)週6回まで。退院・退所の日から3か月以内は週12回まで週6回まで。1日に2回を超えると1回あたり減算
看護師との関係必要に応じて他事業所と連携同じ事業所の看護師と計画・報告を共有することが制度上の前提
向いている場面退院直後で医学的管理を密に要する時期/集中的に量を確保したい時期看護的な観察(褥瘡・服薬・呼吸・栄養など)とリハビリを同じ事業所で束ねたい場合

実務のコツ|ケアマネジャーへの説明のしかた

「訪問リハと訪問看護のリハ、どちらがいいですか」と聞かれたときは、サービス名で答えるのではなく「今この人にとって、看護の目が週に何回必要か」から考えると整理できます。医療的な観察が薄くてよければ①、褥瘡・在宅酸素・服薬管理・終末期など看護の関与が要る人は②のほうが情報が1つの事業所に集まり、急変時の判断も速くなります。

SECTION 03

訪問リハビリは実際に何をしているのか

訪問リハビリの1回は20分から60分程度。その中身は「訓練」だけではありません。実際の流れは、評価から始まり、生活行為への翻訳を経て、再評価に戻るサイクルです。

訪問リハビリのサイクル(評価 → 翻訳 → 介入 → 再評価) ① 評価 体の状態だけでなく、 家の間取り・段差・ 介護力・1日の過ごし方 を含めて見る ② 生活行為への翻訳 「歩けるように」ではなく 「夜中にトイレへ自分で 行けるように」まで 目標を具体化する ③ 介入 訓練・動作指導・ 福祉用具や住環境の調整・ 家族への介助方法の伝達 を組み合わせる ④ 再評価 できたか/できな かったかを記録し、 計画を見直す。 卒業の判断もここ 回るサイクルにする。回らないまま同じ内容を続けることは「漫然かつ画一的な提供」として制度上も認められない 訪問リハビリの本体は②の「翻訳」――ここを飛ばすと、ただの出張体操になってしまう

図3 訪問リハビリのサイクル。令和8年度診療報酬改定では、この「評価を行い記録に残す」という部分が明文化されました(SECTION 07)。

訪問リハビリが扱う8つの領域

領域具体的にやっていること
起き上がり・移乗ベッドからの起き上がり、車椅子への移乗、立ち上がり。介助者の腰を守る介助方法までセットで扱う
歩行・移動屋内の歩行、玄関の上がりかまち、外出のための段差・坂道・バス停までの距離。杖や歩行器の選定と高さ調整
ADL(身のまわり)トイレ動作、入浴、更衣、整容。浴槽をまたぐ順番、ズボンをはく手順など、実際の場所で反復する
IADL(暮らしの活動)調理、洗濯、買い物、金銭管理、公共交通の利用。作業療法士が中心になることが多い
嚥下・口腔・栄養むせの評価、食形態や姿勢の調整、口腔体操。言語聴覚士が関わる領域で、誤嚥性肺炎の予防に直結する
コミュニケーション失語症・構音障害・高次脳機能障害への対応。伝える手段を作り、家族の接し方を調整する
呼吸・心臓・痛み排痰、呼吸練習、息切れが出ない動き方の設計。心不全や慢性呼吸器疾患では「頑張らせない技術」が要になる
環境・家族支援手すりの位置、住宅改修の助言、福祉用具の選定、家族への介助指導、介護負担の評価

「家に行くからこそ分かること」

病院では絶対に見えない情報があります。夜間だけ使っているポータブルトイレの位置、洗面所の床の濡れ、階段の3段目だけ高いこと、冷蔵庫の中身、家族が実際にどう手を貸しているか。訪問リハビリの評価が病院のリハビリと決定的に違うのはこの点で、本人の能力と環境の「掛け算」で生活を見ることができます。

SECTION 04

効果はどこまで確かめられているのか

「家でのリハビリは、病院でやるより効果が落ちるのではないか」という質問をよく受けます。この点については、脳卒中を対象とした比較的新しいシステマティックレビュー・メタ解析があります。

脳卒中における在宅リハビリの効果(46件のRCT・4,049人) Do Y, et al. Physical Therapy. 2025;105(6):pzaf044 比較1:在宅リハビリ vs 入院・外来でのリハビリ 日常生活動作(ADL)の自立度に、統計学的な差は認められなかった 標準化平均差 0.17(95%信頼区間 0.00〜0.34) → ほぼ同等。エビデンスの確実性は「高」と評価 比較2:在宅リハビリ vs 通常のケア(リハビリなし等) ADL自立度・歩行速度・バランス・持久力のいずれも在宅リハビリ群で良好だった 標準化平均差 1.24(95%信頼区間 0.69〜1.79) → ばらつきが大きく、確実性は「非常に低」 46件すべてがバイアスリスク「低」に該当せず。数字は方向性として読み、過大評価しないことが大切

図4 在宅リハビリのエビデンス。読み取るべきは「在宅だから効果が落ちるという根拠はない」という点であり、「在宅なら必ず良くなる」ではありません。

このレビューでは、通常ケアと比べた場合の個別の指標として、10メートル歩行(標準化平均差0.45、95%信頼区間0.28〜0.62)、バランス指標であるBerg Balance Scale(平均差2.69点、1.49〜3.88)、6分間歩行距離(平均差34.4メートル、22.8〜45.0)で在宅リハビリ群が良好でした。一方で上肢機能(Fugl-Meyer評価)では有意差がなく、すべての機能が一律に伸びるわけではないことも示されています。

大腿骨近位部骨折の術後についても

高齢者の大腿骨近位部骨折術後を対象としたランダム化比較試験のメタ解析では、在宅での運動プログラムは身体機能に良い効果を示した一方、歩行速度・SPPB・ADL・転倒への恐怖では有意差が示されない項目もありました。救急受診・再入院・転倒といった有害事象は対照群と差がなく、在宅で行うこと自体の安全性は支持されています(Zhao ら, PLOS ONE, 2024)。

数字を読むときの注意

上記の効果量は、対象疾患・時期・介入内容がばらばらな研究をまとめた値です。とくに「通常ケアとの比較」で数値が大きく出ているのは、対照群にリハビリをまったく行っていない研究が含まれることや、脳卒中発症後6か月以内の自然回復が混ざることが影響していると論文自身が指摘しています。個々の利用者に「これだけ良くなります」と数字を約束できる性質のものではありません。

SECTION 05

病期によって役割は変わる

訪問リハビリは「機能を良くするもの」だと理解されがちですが、実際には病期によって目的そのものが変わります。同じ職種が訪問していても、やっていることは別物です。

時期・状態この時期の目的訪問リハビリの中心的な仕事
退院直後
(3か月以内)
取り戻す病院で獲得した動作を自宅の環境に移し替える。量を確保できる時期でもあり、介護保険の訪問リハビリでは退院・退所日から3か月以内に限り週12回まで提供できる
生活期
(安定している)
維持し、広げる失われやすい力を守りつつ、外出・趣味・役割など「参加」に踏み出す。数か月ごとに目標を組み替え、必要なら回数を減らす/終了する判断も行う
進行性の疾患
(神経難病など)
先回りする今できることを長く保ち、次に来る低下に備えて環境と道具を先に準備する。「良くする」ではなく「困る時期を後ろにずらす」ことが成果になる
認知症を伴う混乱を減らす手順を単純化し、環境の手がかりを増やす。本人より先に家族が疲れることが多く、介助方法の調整が効果を左右する
終末期楽にする・叶える呼吸の楽な姿勢、痛みの少ない動き方、褥瘡を防ぐポジショニング。「もう一度ベランダに出たい」「トイレで用を足したい」という願いを、残された時間の中で形にする

終末期のリハビリは「訓練の縮小版」ではありません

体力が落ちていく時期に筋力訓練を続けることは、本人を消耗させるだけになりかねません。この時期のリハビリ職の役割は、同じ体力でより楽に、より意味のあることに使えるように配分を組み替えることです。座って窓の外を見る時間を作る、家族と食卓を囲めるように椅子とテーブルの高さを合わせる、といった介入が中心になります。

SECTION 06

制度:どちらの保険を使うのか、いくらかかるのか

訪問リハビリを利用するときにまず決まるのが、介護保険と医療保険のどちらで使うかです。ここは原則と例外がはっきりしています。

介護保険と医療保険の使い分け(訪問看護ステーションから訪問する場合) 要介護・要支援の認定を受けている? はい いいえ 原則:介護保険 ケアプランに位置づけ、区分支給限度額の中で使う 医療保険 40歳未満の方や、小児も含めてこちら ただし、要介護認定を受けていても医療保険に切り替わる3つの例外 ① 厚生労働大臣が定める疾病等(別表第7)に該当する場合 ② 急性増悪等により主治医が特別訪問看護指示書を交付した場合(原則14日間) ③ 精神科訪問看護(認知症を除く精神疾患)として提供される場合 切り替わったことに気づかず介護保険で請求してしまう事故が最も多い。指示書が届いた時点が確認のタイミング

図5 保険の使い分け。別表第7に含まれる代表的な疾患には、末期の悪性腫瘍、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病関連疾患(一定の重症度)、脊髄小脳変性症、多系統萎縮症、人工呼吸器を使用している状態などがあります。

費用の目安

介護保険の場合、自己負担は所得に応じて1割から3割です。訪問看護ステーションからのリハビリ職の訪問は1回(20分)あたり294単位、訪問リハビリテーションは308単位が基本で、1単位はおおむね10円台前半(地域区分により異なります)。40分の訪問を週2回、1割負担で利用した場合、月あたりの自己負担はおおよそ5,000円前後が目安になります。ここに事業所の体制に応じた加算が加わるため、正確な金額は事業所とケアマネジャーにご確認ください。

令和8年6月からの変更点(費用に関わるもの)

令和8年度の介護報酬改定(2026年6月1日施行)で、これまで対象外だった訪問看護(加算率1.8%)と訪問リハビリテーション(同1.5%)が介護職員等処遇改善加算の対象になりました。事業所が加算を算定している場合、その分が総費用に反映されます。これは在宅を支える人材を確保するための措置で、対象が「介護職員」から「介護従事者」へ広がり、リハビリ職が制度上初めて含まれた改定です。

SECTION 07

令和6年度・令和8年度改定が現場に求めていること

ここ数年の制度改定は、訪問リハビリに一貫したメッセージを送っています。それは「看護と切り離されたリハビリ」と「見直されないリハビリ」を認めないというものです。利用者・ご家族にとっても、事業所を選ぶときの目安になります。

令和6年度介護報酬改定:連携していない事業所は減算される

改定内容意味するところ
前年度のリハビリ職の訪問回数が看護職員の訪問回数を超えている事業所は、リハビリ職の訪問1回につき8単位を減算訪問看護ステーションが実質的に「リハビリ専門事業所」になっている状態を是正する趣旨
緊急時訪問看護加算・特別管理加算・看護体制強化加算のいずれも算定していない場合も同じ減算24時間対応や重度者の受け入れといった訪問看護の中核機能を担っているか、が問われている
介護予防で12か月を超えて提供する場合はさらに15単位を減算要支援の方に漫然と長期継続することへの牽制。目標を立て直し、終了も含めて検討する
訪問回数の数え方:連続して2回訪問した場合(40分など)は1回として数える令和6年3月15日付の厚生労働省Q&A(Vol.1)で明示

制度の前提:リハビリ職は「看護職員の代わりに」訪問している

訪問看護ステーションからのリハビリ職の訪問は、制度上「その訪問が看護業務の一環としてのリハビリテーションを中心としたものである場合に、看護職員の代わりに訪問させるという位置づけ」と定められています(老企第36号)。このため、訪問看護計画書と訪問看護報告書は看護職員とリハビリ職が連携して作成することが求められ、リハビリ職のみが訪問している利用者についても、おおむね3か月に1回は看護職員が訪問して状態を評価する運用が示されています。

令和8年度診療報酬改定:記録と評価が明文化された

2026年6月1日に施行された診療報酬改定では、訪問看護(リハビリ職の訪問を含む)について次の点が明確化されました。

  • 漫然かつ画一的な提供の禁止:利用者の心身の状況等に応じて妥当適切に行い、看護目標および訪問看護計画に沿って行うことが明記されました。心身の状況を踏まえずに一律に日数・回数・実施時間・人数を定めることは認められません。
  • 評価を記録に残す:目標達成の程度と効果について評価を行い、その内容を訪問看護記録書に記載することが求められます。必要に応じて計画書を見直すことも併せて規定されました。
  • 実際の訪問開始時刻・終了時刻の記載:日々の利用者氏名、訪問場所、実際の開始時刻と終了時刻、訪問人数の記録・保管が明確化されました。
  • 実施時間の標準:訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅱ)については1回30分から1時間30分程度を標準とし、やむを得ない事情による場合等を除き、標準を下回る訪問が頻繁に行われている場合は実施したと認められません。
  • 服薬状況・残薬の把握:運営基準に服薬状況(残薬の状況を含む)の把握が加わりました。リハビリ職の訪問時にも、飲み残しに気づいたら共有する場面が出てきます。
  • 計画書・報告書の押印欄が削除:訪問看護計画書・報告書について、書面の場合の署名・押印を求めないこととされ、様式例から押印欄が削除されました(従前の様式も引き続き使用可能)。

この改定を利用者側から読むと

「毎回同じ内容を、何年も続けている」訪問リハビリは、制度上も望ましくないと明示されたということです。3か月に一度は「今の目標は何か」「達成できたか」「回数は今のままでよいか」が話し合われているか。それが良い訪問リハビリを見分ける、いちばん分かりやすい指標になります。

SECTION 08

よくある5つの誤解

誤解1|「マッサージをしてもらうサービス」

訪問リハビリは医師の指示に基づく医療の一部で、慰安を目的としたものではありません。もちろん痛みの緩和のために徒手的な介入を行うことはありますが、それは目標達成の手段の1つです。訪問のたびに揉んでもらって終わる時間が続いているなら、目標の設定が止まっている可能性があります。

誤解2|「良くならない人には意味がない」

進行性疾患や終末期であっても、役割ははっきりあります。低下の速度を緩めること、家族の介助を安全にすること、痛みや息苦しさを減らすこと、そして本人が「まだこれはできる」と感じられる時間を作ること。改善だけがリハビリの成果ではありません。

誤解3|「家族がやっていることを代わりにやってくれる」

むしろ逆で、家族が抱え込んでいる介助を減らすのが仕事です。移乗を2人がかりで持ち上げていたのが、手すりの位置を変えることで1人で支えられるようになる。そうした変化を作るために、リハビリ職はあえて本人にやってもらい、家族には見ていてもらいます。

誤解4|「一度始めたら、ずっと続けるもの」

訪問リハビリには「卒業」があります。目標が達成され、自主トレーニングや通所サービス、地域の活動に移行できるなら、それは成功です。回数を減らす・終了する提案は、見放しではなく計画通りの着地です。もちろん、状態が変われば再開できます。

誤解5|「看護とリハビリは別の話」

訪問看護ステーションからの訪問では、制度上も実務上も分けられません。血圧や熱、傷の状態、薬の飲み残し、食事量は、そのまま今日どこまで動いてよいかの判断材料になります。逆に、歩けなくなってきたという変化は、心不全の悪化や薬の副作用の最初のサインであることもあります。

SECTION 09

うまくいく訪問リハビリの条件

  • 目標が生活の言葉で書かれている:「筋力向上」ではなく「4月までに、杖で近所のコンビニまで往復できる」。日付と場所と手段が入っていると、達成したかどうかを本人も家族も判断できます。
  • 週1〜2回の訪問以外の時間が設計されている:週2回40分では、1週間168時間のうち1時間ちょっとにすぎません。残りの167時間をどう過ごすかを一緒に決めることが、実は最も効果を左右します。
  • 家族が「やり方」を知っている:介助方法が家族と共有されていないと、訪問した日だけできて、翌日には戻ります。リハビリ職が家族に伝えた内容を、看護師やヘルパーも知っている状態が理想です。
  • 看護師・医師・ケアマネジャーと情報が回っている:訪問リハビリは生活の場を最も長く観察できる職種の1つです。そこで得た情報が主治医やケアマネジャーに戻らないのは、大きな損失です。
  • やめどきが話し合われている:始めるときに「どうなったら終わりにするか」を決めておくと、漫然とした継続を防げます。終わり方の設計は、始め方の設計と同じくらい大切です。

ご家族に一度考えてみていただきたいこと

「この人に、もう一度何をしてほしいですか」――散歩でも、孫と会うことでも、自分でお茶を淹れることでもかまいません。その願いが1つ言葉になると、訪問リハビリの目標は驚くほど具体的になります。専門職が目標を決めるより、本人と家族の願いから逆算したほうが、たいていうまくいきます。

SECTION 10

Q&A

Q1 訪問リハビリと通所リハビリ(デイケア)は、どちらを選ぶべきですか。

外に出られるなら通所が有利な面が多くあります。運動の量を確保しやすく、人と会うことそのものが刺激になるからです。一方で、外出が難しい、家の中での動作に課題がある、環境調整が必要という場合は訪問が向いています。実際には「訪問で家の中の動作を整えてから通所につなぐ」という組み合わせもよく行われます。まずはケアマネジャーにご相談ください。

Q2 訪問看護は受けていますが、リハビリは別の事業所に頼んだほうがよいですか。

どちらもあり得ます。同じ事業所にまとめる利点は、看護師とリハビリ職が同じ記録を見て、同じカンファレンスで話せることです。急変時の判断も速くなります。一方、集中的にリハビリの量を確保したい時期や、特定の分野に強い事業所を使いたい場合は、医療機関からの訪問リハビリテーションを併用する選択もあります。ただし同じ時間帯に複数のサービスを重ねることはできないため、調整はケアマネジャーが行います。

Q3 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、どう違うのですか。

おおまかには、理学療法士は起き上がる・立つ・歩くといった基本的な動作、作業療法士は食事・入浴・調理・趣味など生活の中の作業、言語聴覚士は話す・聞く・飲み込むを中心に扱います。ただし在宅では役割がきれいに分かれるわけではなく、担当する職種は事業所の体制と本人の課題によって決まります。「うちにはSTがいないから飲み込みは見ない」ということではなく、必要があれば他職種や主治医につなぐのが本来の形です。

Q4 週にどのくらい来てもらえますか。

介護保険では、訪問看護ステーションからのリハビリ職の訪問・訪問リハビリテーションのいずれも週6回(20分×6)が上限です。ただし訪問リハビリテーションについては、病院等を退院・退所した日から3か月以内に限り週12回まで提供できます。実際の回数は区分支給限度基準額の範囲内で、他のサービスとの兼ね合いで決まります。医療保険で提供される場合は、また別の枠組みになります。

Q5 主治医が「リハビリはもういい」と言っています。

その判断には理由があるはずなので、まず「何が心配なのか」を確認することをおすすめします。心不全や不整脈、骨折後の荷重制限など、医学的に運動量を絞るべき時期は実際にあります。一方で「良くならないから」という理由であれば、維持や介助負担の軽減、環境調整といった別の目的で継続する意味があることを、担当のリハビリ職や訪問看護師から医師へ伝えてもらう方法もあります。

Q6 毎回同じことをしている気がします。言ってもよいものでしょうか。

ぜひおっしゃってください。むしろ制度上も、心身の状況を踏まえずに画一的な内容を続けることは認められていません。「今の目標は何ですか」「次の3か月で何を目指しますか」と聞いていただくだけで、計画の見直しにつながります。伝えにくければ、ケアマネジャーを通していただいてもかまいません。

ふくろう訪問看護リハビリステーションから

私たちは、看護師とリハビリ職が同じ事業所で、同じ記録を見ながら動いています。血圧や薬の変化を知っているリハビリ職が動作を組み立て、その日の歩き方を知っている看護師が体調を見る。この往復ができることが、訪問看護ステーションからリハビリを提供する最大の意味だと考えています。

「どこまで良くなりますか」という問いには、正直なところ確かな答えを持っていません。けれども「この人が家で暮らし続けるために、次の3か月で何ができるか」であれば、一緒に考えることができます。リハビリを始めるべきか迷っておられる段階でも、担当のケアマネジャーや主治医、当ステーションにお気軽にご相談ください。

参考資料

  1. 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】(令和8年3月10日版)」
    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
  2. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(告示・留意事項通知・疑義解釈等)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  3. 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」(改定事項・留意事項通知・算定構造)
    https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38790.html
  4. 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第36号)
    https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000080856.pdf
  5. 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)」介護保険最新情報Vol.1225(令和6年3月15日)
    https://www.mhlw.go.jp/content/001227740.pdf
  6. 社会保障審議会介護給付費分科会(第142回)参考資料2「訪問看護(参考資料)」平成29年7月5日
    https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000170290.pdf
  7. Do Y, Lim Y, Jin S, Lee H. Effectiveness of Home-Based Rehabilitation on Activities of Daily Living in Patients With Stroke: Systematic Review and Meta-Analysis. Physical Therapy. 2025;105(6):pzaf044. DOI: 10.1093/ptj/pzaf044(PMID: 40167208)
    https://doi.org/10.1093/ptj/pzaf044
  8. Zhao J, et al. Effectiveness of home-based exercise for functional rehabilitation in older adults after hip fracture surgery: A systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. PLOS ONE. 2024;19(12):e0315707. DOI: 10.1371/journal.pone.0315707
    https://doi.org/10.1371/journal.pone.0315707
  9. 公益社団法人全日本病院協会「地域における訪問看護・リハビリテーションの実態調査研究報告書」令和3年度老人保健事業推進費等補助金(令和4年3月)
    https://www.ajha.or.jp/voice/pdf/other/220414_2.pdf

本記事は2026年8月時点で公表されている告示・通知・学術文献に基づいて作成しています。診療報酬・介護報酬は改定や疑義解釈により取扱いが変わることがあります。個別の算定や利用可否の判断にあたっては、最新の告示・通知および地方厚生(支)局・保険者にご確認ください。また、記事の内容は一般的な情報提供であり、個々の方の診断・治療方針を示すものではありません。

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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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