夜間に緊急訪問したら何が算定できる? 医療保険と介護保険の違い

夜の住宅街。明かりのついた家の前に訪問看護の車が停まり、カバンを持った看護師が玄関へ向かう。電柱の上からふくろうが見守っている水彩イラスト

夜中の2時、利用者さんのご家族から「息が苦しそう」と電話が入る。主治医に連絡して指示をもらい、駆けつけて処置をして、記録を書き終えたら朝4時。翌月、請求の段になって「これ、何が算定できるんだっけ?」と手が止まる。

夜間・深夜の緊急訪問は、医療保険と介護保険で算定の考え方がまったく違います。医療保険は「緊急の加算+時間帯の加算」を訪問した日ごとに積み上げ、介護保険は「月単位の体制加算+時間帯の割増(2回目以降)」という組み立てです。この記事では、令和8年6月1日施行の現行の取り扱いを、訪問看護師の目線で整理します。

SECTION 01 結論:医療保険と介護保険の違いは1枚で見る

医療保険介護保険
緊急の評価緊急訪問看護加算
月14日目まで2,650円/15日目以降2,000円(1日1回)
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)600単位/(Ⅱ)574単位
月単位の体制評価。緊急訪問1回ごとの加算ではない
時間帯の加算夜間・早朝(18〜22時、6〜8時)2,100円
深夜(22〜6時)4,200円
(同一建物居住者でない場合・1〜2人の金額)
夜間・早朝+25%/深夜+50%
緊急訪問の1回目は不可、1月以内の2回目以降から
併算定緊急訪問看護加算と時間帯加算は併算定できる訪問した時間に応じた訪問看護費に、時間帯の割増を乗せる
要件の要利用者・家族の求め+主治医(診療所または在宅療養支援病院)の指示緊急時訪問看護加算の届出と利用者の同意が前提

SECTION 02 時間帯と加算の早見

時間帯ごとに、医療保険の加算額と介護保険の割増率を並べました。日中は、時間帯の加算はつきません。

時間帯ごとの加算(1〜2人・1回あたり)早朝6〜8時医療:夜間・早朝訪問看護加算 2,100円介護:訪問看護費の+25%日中8〜18時医療:時間帯の加算なし(緊急訪問看護加算のみ)介護:時間帯の加算なし夜間18〜22時医療:夜間・早朝訪問看護加算 2,100円介護:訪問看護費の+25%深夜22〜6時医療:深夜訪問看護加算 4,200円介護:訪問看護費の+50%※介護保険は緊急訪問の「2回目以降」から(1回目は不可)

SECTION 03 医療保険:緊急+時間帯の加算を重ねる

医療保険の訪問看護(訪問看護基本療養費)では、緊急の訪問を評価する加算と、時間帯を評価する加算が別々に用意されています。夜間・深夜の緊急訪問では、この2つを併せて算定できます。

1緊急訪問看護加算

利用者・家族の求めに応じて、主治医の指示に基づいて緊急に訪問した場合に算定します。月14日目までは2,650円、15日目以降は2,000円で、1日1回です。主治医は診療所または在宅療養支援病院の医師に限られます。精神科訪問看護の場合は、精神科緊急訪問看護加算として扱います。

2夜間・早朝訪問看護加算/深夜訪問看護加算

夜間(18〜22時)・早朝(6〜8時)は2,100円、深夜(22〜6時)は4,200円です(1〜2人の場合)。利用者・家族の求めによる訪問に限るため、ステーションの都合で夜間にずらした訪問には算定できません。

3同一建物居住者の場合

同一建物居住者に訪問した場合は、同じ建物の利用者数と、月の訪問日数に応じて金額が下がる仕組みです。たとえば夜間・早朝は、3〜9人で月15日目まで2,100円・16日目以降1,900円のように段階が分かれています。該当する利用者さんは、告示の表で人数区分を確認してください。

医療保険の体制評価にあたる24時間対応体制加算は、今回の「緊急訪問1回ごと」の加算とは別枠です。混同しないよう、明細書でも項目を分けて確認しましょう。

SECTION 04 介護保険:1回目は割増なし、2回目以降から

介護保険では、緊急時訪問看護加算(Ⅰ)600単位/(Ⅱ)574単位は、24時間の連絡・相談体制を評価する月単位の加算です。緊急訪問するたびにつく加算ではありません。緊急訪問をしたときは、訪問した時間に応じた訪問看護費を算定します。

ここで間違えやすいのが時間帯の割増です。夜間・早朝(+25%)、深夜(+50%)は、1月以内の2回目以降の緊急時訪問から算定できます。1回目の緊急訪問は、夜間や深夜に行っても割増は算定できません。

その月の緊急訪問時間帯時間帯の割増
1回目深夜(2時)算定不可(訪問看護費のみ)
2回目夜間(20時)+25%
3回目深夜(23時)+50%

この表は考え方を示す例です。実際の単位数は、訪問時間(20分未満・30分未満など)で決まる訪問看護費に、割増率を掛けて計算します。

SECTION 05 算定の前に確認する3点

夜間の緊急訪問のあと、請求前に確認する3点を図にまとめました。

夜間の緊急訪問:まず確認する3点1利用者・家族の求めによる訪問かはい→加算の対象いいえ→夜間・深夜加算なし2医療保険か介護保険か医療→緊急+夜間/深夜介護→2回目以降から3主治医の指示はあるか(医療)診療所・在支病の医師それ以外→厚生局に確認

SECTION 06 記録と請求のチェックリスト

1明細書に算定理由を書く

医療保険の緊急訪問看護加算は、訪問看護療養費明細書に算定理由を記載します。

2日時・内容・対応を記録する

緊急の連絡を受けた日時、訪問した日時、状態、実施した内容、その後の対応を、訪問看護記録書に残します。時間帯の加算は、訪問開始の時刻がもとになります。

3主治医へ速やかに報告する

緊急訪問の内容は、主治医へ速やかに報告します。主治医の指示に基づく訪問であることが、加算の要件です。

4「誰の求めか」を残す

夜間・早朝/深夜の加算は、利用者・家族の求めによる訪問が前提です。電話の内容と、求めがあった事実を記録しておくと、あとから説明できます。

SECTION 07 よくある質問

Q. 主治医が在宅療養支援病院以外の病院の医師だと、緊急訪問看護加算は算定できませんか?

告示の文言は「診療所又は在宅療養支援病院の保険医に限る」です。それ以外の病院の医師が主治医の場合の扱いは、事例ごとに判断が分かれる可能性があります。迷うときは、九州厚生局へ確認するのが安全です。

Q. 訪問看護ステーションの都合で夜間に訪問した場合は?

医療保険の夜間・早朝/深夜の加算は、利用者・家族の求めによる訪問が条件です。ステーションの都合で時間帯を決めた訪問には算定できません。

Q. 介護保険の緊急時訪問看護加算を算定していれば、夜間の訪問は毎回割増になりますか?

なりません。緊急時訪問看護加算は月単位の体制評価で、時間帯の割増は1月以内の2回目以降の緊急訪問から算定します。1回目は算定できません。

Q. 医療保険か介護保険か、どちらで請求するのか迷います。

利用者さんの疾患や状態で、医療保険と介護保険のどちらの対象かが決まります。別表7・別表8の考え方は、当ステーションのコラム「別表8は「医療」?「介護」?」「別表7は「脊髄損傷」or「頸髄損傷」どっち?」で整理しています。

SECTION 08 まとめ

  • 医療保険は、緊急訪問看護加算に夜間・早朝/深夜の加算を重ねて算定できる(利用者・家族の求め+主治医の指示が要件)。
  • 介護保険の緊急時訪問看護加算は月単位の体制評価で、緊急訪問1回ごとの加算ではない。
  • 介護保険の時間帯の割増(+25%・+50%)は、緊急訪問の2回目以降から。1回目は算定できない。
  • 算定理由・日時・内容・対応・主治医への報告を、その日のうちに記録に残す。

夜中に駆けつけた仕事が、きちんと評価として残るように。制度は毎年変わるので、最新の告示・通知と、九州厚生局・福岡県国民健康保険団体連合会の案内を確認してください。

SECTION 09 ご利用・採用のご案内

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clinic@fukurou.fukuoka.jp

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SECTION 10 参考文献

  1. 厚生労働省.訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(令和8年厚生労働省告示第74号、令和8年3月5日).区分番号01(注9・注13・注14)、区分番号01-2(注6・注9・注10)。改正後の金額は「別紙2 訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法(傍線部分は改正部分)」.https://www.mhlw.go.jp/content/10808000/001655181.pdf (2026年10月4日確認)
  2. 厚生労働省保険局.訪問看護療養費の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について(令和8年3月5日 保発0305第19号).
  3. 厚生労働省.令和8年度診療報酬改定について(疑義解釈資料の送付について その1〜13を含む).https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html (2026年10月4日確認)
  4. 厚生労働省.介護報酬の算定構造(令和8年6月改定箇所).https://www.mhlw.go.jp/content/001675193.pdf ※緊急時訪問看護加算(Ⅰ)600単位・(Ⅱ)574単位の区分は令和6年度介護報酬改定による。

※制度は改定されることがあります。実際の算定は、最新の告示・通知と、九州厚生局・福岡県国民健康保険団体連合会の案内でご確認ください。

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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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