大地震のニュースで不安になってしまう方へ

こころとからだのケア

大地震のニュースで
不安になってしまう方へ

胸がドキドキする。テレビを消せない。眠れない。揺れていないのに揺れている気がする。——それは弱さではなく、あなたのからだが自分を守ろうとしている反応です。福岡で療養されている方とご家族に向けて、いま起きていることと、今日からできることを、医学的・看護的な視点で整理しました。

ふくろう訪問看護リハビリステーション / 2026年7月28日 掲載
※本文中の地震の情報は2026年7月28日夜の時点のものです。最新情報は気象庁・自治体の発表をご確認ください。

この記事でお伝えすること

  1. いま起きていることを、まず落ち着いて整理する
  2. 不安になるのは「異常」ではありません
  3. からだに出るサイン ── 血圧・めまい・眠れなさ
  4. 今日からできる5つのこと
  5. 高齢の方・持病のある方がとくに気をつけたいこと
  6. ご家族・介護をされている方へ
  7. 在宅療養中の方へ ── 訪問看護ができること
  8. こんなときは相談・受診を
目次

SECTION 01いま起きていることを、まず落ち着いて整理する

不安がふくらむとき、その多くは「何が起きたのか」より「これからどうなるのか分からない」ことから来ています。まずは、確認できている事実を並べてみます。

項目確認されている内容
発生2026年7月28日 16時27分ごろ
震源・規模熊本県熊本地方、深さ約10km、マグニチュード7.1(推定)
最大震度震度7(熊本県宇城市・氷川町)
福岡県内の揺れ柳川市・大川市で震度5弱、大牟田市・久留米市・朝倉市・飯塚市などで震度4
津波有明海・八代海に津波注意報が発表されたが、同日18時10分に解除
気象庁の呼びかけ今後1週間程度、特に2〜3日は同程度の揺れに注意

※表は横にスクロールできます。

!福岡市周辺にお住まいの方へ

福岡県内で震度5弱を観測したのは県南部の一部地域で、福岡市を含む多くの地域はそれより小さい揺れでした。家具が倒れる・ものが落ちるといった被害が出るレベルの揺れではなかった地域が大半です。「うちの地域は、実際にはどのくらい揺れたのか」を数字で確認するだけでも、気持ちの整理につながります。

一方で、揺れが強かった地域では被害の確認が続いています。テレビやSNSで流れてくる映像は、被害のもっとも大きな場所を、繰り返し映すものです。画面に映っているものが、あなたの周囲でこれから起きることとイコールではありません。この点は、次の章でお話しする「不安のしくみ」を理解するうえでとても大切です。

SECTION 02不安になるのは「異常」ではありません

地震のあと、こんな状態になっていませんか。

  • 胸がドキドキする、息がつまる感じがする
  • ニュースやSNSを何度も確認してしまい、やめられない
  • 小さな物音や車の振動にビクッとする
  • 寝つけない、途中で何度も目が覚める
  • ぼんやりして、家事や仕事が手につかない
  • 涙が出る、些細なことでイライラする

これらはすべて、大きな災害のあとに多くの人に起こる、ごく自然な反応です。医学的には「急性ストレス反応」と呼ばれ、病気ではなく、危険から身を守るためにからだが総動員されている状態を指します。

脳とからだで、何が起きているのか

図1 不安が起きるしくみ ── 危険センサーとブレーキ

きっかけ 繰り返す余震 ニュース映像 扁桃体 (脳の危険センサー) 考えるより先に 「危ない」と反応 交感神経 ストレスホルモン アドレナリン コルチゾール からだの反応 動悸・血圧上昇 筋肉の緊張 眠れない 食欲が落ちる 前頭前野(考える脳)=ブレーキ役 「いまは安全」と確かめられると、センサーの反応は静まっていく ※不安の身体症状は「気のせい」ではなく、実際に自律神経とホルモンが働いた結果です。

大きな揺れや衝撃的な映像は、まず脳の奥にある扁桃体(へんとうたい)という危険センサーを刺激します。ここは「考える」より先に働くため、頭では「もう大丈夫」と分かっていても、心臓は勝手にドキドキします。逆にいえば、安全を実感できる情報と時間が積み重なるほど、ブレーキ役の前頭前野が働き、反応は自然におさまっていきます。

直接被災していなくても、不安になります

「自分の家は無事なのに、こんなに落ち着かないのはおかしいのだろうか」と感じる方がいます。おかしくありません。

米国の大規模調査では、爆弾テロ事件の直後に1日6時間以上メディアで関連報道に接した人は、現場に直接居合わせた人よりも急性ストレス症状が強かったと報告されています(Holman ら、PNAS、2014年、4,675人)。映像は繰り返し流れ、そのたびに脳の危険センサーは新しい出来事として反応してしまうためです。「見続けること」そのものが、不安を維持する要因になります。

多くの場合、時間とともにおさまっていきます

図2 時間の経過と、こころ・からだの反応

反応の強さ 直後 3日 2週間 1か月 3か月 多くの方はこの経過をたどります 一部の方は続く(相談を) 急性ストレス障害(3日〜1か月) PTSD(1か月以上) ※模式図です。回復の速さには個人差があり、遅いことは「弱さ」を意味しません。

災害や事故のあとに強いストレス反応が出ても、大多数の人は特別な治療なしに数日〜数週間で回復します(Bonanno、American Psychologist、2004年)。症状が3日以上1か月未満続く場合を「急性ストレス障害」、1か月を超えて続く場合を「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」と呼び、この段階では専門的な支援が役に立ちます。

SECTION 03からだに出るサイン ── 血圧・めまい・眠れなさ

不安は「気持ちの問題」にとどまりません。とくに高齢の方や持病のある方では、からだの数値にはっきり表れ、それ自体が健康リスクになります。

部位よくあるサイン背景にあること
心臓・血管 動悸、脈が速い、血圧がいつもより高い、胸の圧迫感 交感神経の緊張。血圧上昇は数週間続くことがある
頭・耳 揺れていないのに揺れている感じ、ふらつき、頭痛 「地震後めまい症候群」。平衡感覚と自律神経の乱れ
睡眠 寝つけない、浅い、夜中に目が覚める、悪夢 覚醒レベルが上がったまま下がりにくい状態
消化器 食欲が落ちる、胃の痛み、下痢・便秘 消化管の働きが自律神経の影響を受ける
呼吸 息苦しい、息が浅い、過呼吸 不安に伴う呼吸の変化。それがさらに不安を強める
気持ち・思考 映像が頭に浮かぶ、集中できない、イライラ、涙もろさ 脳が「危険」を処理し続けている状態

※表は横にスクロールできます。

血圧の上昇は、実際に数字として現れます

阪神・淡路大震災の被災地域で高齢の高血圧患者を調べた研究では、震災後に収縮期血圧(上の血圧)が平均で十数mmHg(約17mmHg)上昇し、数週間続いたと報告されています(Kario ら、Journal of the American College of Cardiology、1997年)。同じ研究グループの淡路島での調査では、震災後に冠動脈疾患による死亡が約1.5倍、脳卒中による死亡が約1.9倍に増えたとされています(Kario・Ohashi、Journal of the American Geriatrics Society、1997年)。

だからこそ、この時期は「血圧を測って記録する」ことに大きな意味があります。ただし、数値が高いからといって自己判断で薬を増やしたり減らしたりせず、記録を持って主治医・訪問看護師にご相談ください。

「揺れていないのに揺れている」──地震後めまい症候群

地震のあと、実際には揺れていないのに、座っているときや横になっているときに体がふわっと揺れる感じがすることがあります。これは「地震後めまい症候群(Post-Earthquake Dizziness Syndrome:PEDS)」と呼ばれる、よく知られた反応です。

2016年の熊本地震を経験した方を対象とした調査では、4,231人のうち1,543人(約37%)にこの症状がみられ、女性、耳鳴りや耳のつまり感がある方、不安が強い方、乗り物酔いをしやすい方で多いことが分かっています(Miwa ら、PLOS ONE、2021年)。

地震後めまいへの対応

  • 多くは一過性で、余震が落ち着くとともに軽くなります
  • ふらつくときは無理に動かず、壁や手すりのある場所で座る
  • 水分をしっかりとる(脱水はめまいを悪化させます)
  • 目を閉じてじっとするより、遠くの動かないものを見るほうが楽なことがあります
  • ぐるぐる回る回転性のめまい、片方の耳が急に聞こえにくい、手足のしびれ・ろれつが回らないなどを伴う場合は、別の病気の可能性があるため受診を

SECTION 04今日からできる5つのこと

「不安をなくす」ことを目標にすると、かえってつらくなります。目標は「不安があっても、生活と体調を守れる状態にする」ことです。順番に、無理のないものから試してみてください。

1

情報との距離を、自分で決める

情報を遮断する必要はありません。「いつ・どれくらい見るか」を先に決めるだけで大きく変わります。

  • 見る時間を決める(例:朝と夕方の2回、各15分)
  • テレビを一日中つけっぱなしにしない。音声だけ流し続けるのもやめる
  • 寝る1時間前は見ない。スマホは寝室の外に置く
  • 必要な情報は、気象庁・自治体・NHKなど公式の発表から。SNSで流れてくる真偽不明の情報や刺激の強い動画は追わない
2

「吸う4秒・吐く6秒」の呼吸を3分

ゆっくりした呼吸、とくに息を吐く時間を長くする呼吸は、副交感神経の働きを高め、心拍や不安を落ち着かせる方向に働くことが繰り返し報告されています(Zaccaro ら、Frontiers in Human Neuroscience、2018年、システマティックレビュー)。特別な道具も場所もいりません。

図3 4-6呼吸のリズム ── 吸う4秒、吐く6秒を3回

鼻からゆっくり吸う(4秒) 口をすぼめて長く吐く(6秒) 1回目 2回目 3回目 吸う 4秒 吐く 6秒 吸う 4秒 吐く 6秒 吸う 4秒 吐く 6秒 0秒 10秒 20秒 30秒 大切なのは「吸う時間より、吐く時間を長くする」ことだけです

図の帯を左から指でなぞりながら行うと、秒数を数えなくてもリズムがつかめます。この3回で30秒、これを6セット続けると3分です。肩の力を抜き、お腹に手を当てて、お腹がふくらむのを確かめながら。息苦しさや過呼吸が強いときは、まず吐くことから始めてください。めまいが出たら中止します。

3

「いま・ここ」に戻る ── 5-4-3-2-1

頭の中が地震の映像や「また来たらどうしよう」でいっぱいになったとき、五感を使って現在に注意を戻す方法です。声に出しても、心の中で数えてもかまいません。

  • 5つ ── 目に見えるものを挙げる(時計、湯呑み、カーテン…)
  • 4つ ── 聞こえる音を挙げる(冷蔵庫の音、車の音…)
  • 3つ ── 触れられるものに触れる(椅子の背、毛布、床の感触)
  • 2つ ── においを探す(お茶、石けん)
  • 1つ ── 味を感じる(お茶をひと口)
4

いつもの生活リズムを、できるだけ崩さない

非常時ほど、「いつもどおり」が薬になります。起きる時間、食事の時間、薬の時間、入浴。これらを平常どおりに保つことが、脳に「日常は続いている」と伝える最も確実な方法です。

  • 食欲がなくても、少量を回数を分けて。水分は意識して多めに
  • お酒で眠ろうとしない(寝つきはよくなっても睡眠が浅くなり、夜中に目覚めやすくなります)
  • カフェイン(コーヒー・緑茶・栄養ドリンク)は午後以降控えめに
  • 昼間に10〜15分でも外の光を浴びる。体内時計が整い、夜眠りやすくなります
5

ひとりで抱えない ── 声を交わす

不安は、黙って一人で抱えているときに最も大きくなります。家族に電話をする、近所の方と立ち話をする、訪問時に看護師に話す。「怖かったですね」と誰かに言ってもらうことには、それ自体に効果があります。

話したくないときは、無理に話す必要はありません。そばに誰かがいる、という状態だけで十分です。

図4 安心を支える4本の柱

気持ちの安定 眠る 同じ時刻に休む 寝室にスマホを 持ち込まない 食べる・飲む 少量を回数多く 水分は意識して 多めに 体を動かす 室内でも足踏み 日中に光を浴びる (暑さに注意) つながる 電話でひと言 話せないときは そばにいるだけで 土台=いつもどおりの生活リズムと、薬をきちんと続けること

どれか1本でも欠けると、他の柱に負担がかかります。全部を完璧にする必要はありません。「いちばん崩れている1本」を立て直すところから始めてください。

SECTION 05高齢の方・持病のある方がとくに気をつけたいこと

ご高齢の方、持病をお持ちの方では、不安そのものよりも「不安をきっかけに生活が乱れること」のほうが、健康への影響が大きくなります。

絶対に切らさない・自己判断で止めない薬

不安や生活の乱れで飲み忘れが起きたり、「余震が来たら病院に行けない」と考えて飲む量を減らしてしまう方がいます。次の薬は急にやめると命に関わることがあります。

  • 降圧薬・心臓の薬
  • 抗てんかん薬
  • 抗パーキンソン病薬
  • ステロイド(副腎皮質ホルモン)
  • インスリン・糖尿病の薬
  • 抗凝固薬(血液をさらさらにする薬)
  • 医療用麻薬(痛み止め)
  • 抗精神病薬・気分安定薬

手元の残り数を今日確認し、少なくなっていれば早めに主治医・薬局・訪問看護師にご連絡ください。お薬手帳をスマートフォンで撮影しておくと、いざというときに役立ちます。

脱水と熱中症に、いつも以上の注意を

福岡は連日、最高気温36℃前後の猛暑が続いています。不安で食欲が落ちる、トイレの回数を気にして水分を控える、片づけで動き回る——これらが重なると、脱水から熱中症、さらに血液が固まりやすくなって血栓症のリスクが上がります。

喉が渇く前に、時間を決めて飲む。心不全や腎臓病で水分制限がある方は、その指示の範囲内で、暑さに応じた調整を主治医・訪問看護師にご相談ください。

睡眠薬・安定剤を自己判断で増やさない

眠れないつらさから、手元の睡眠薬や安定剤を「もう1錠」と足したくなることがあります。しかし高齢の方では、ベンゾジアゼピン系の薬を増やすとふらつき・転倒・骨折、日中のぼんやり、せん妄(急に混乱した状態になること)のリスクが高まります。地震後の室内は物が動いていることも多く、転倒の危険はふだんより高い状態です。

眠れない日が続くときは、量を自分で調整するのではなく、「何時に寝て、何時に目が覚めて、何日続いているか」を記録して相談するほうが確実です。

認知症のある方の場合

認知症のある方は、テレビに映る被害の映像を「いま、ここで起きていること」として体験されることがあります。そのため強い不安や落ち着かなさが現れ、同じ質問を何度も繰り返したり、夕方に混乱が強くなったりします。

  • 地震関連の映像は消す、または別の部屋で視聴する
  • 同じ質問には毎回同じ短い言葉・同じ穏やかなトーンで答える(「揺れは止まりましたよ。ここは安全です」)
  • 「さっき言ったでしょう」と訂正しない。訂正は不安を強めるだけです
  • 食事・散歩・入浴など、日課をいつもどおりに続ける
  • 急に混乱が強くなった場合は、不安だけでなく脱水・便秘・尿路感染・発熱・薬の飲み間違いなど身体の原因が隠れていることが多いため、必ず相談を

精神科に通院されている方

うつ病、不安症、統合失調症、PTSDなどで治療中の方は、大きな出来事のあとに症状が再燃することがあります。「眠れない日が3日以上続く」「幻聴や被害的な考えが強まる」「気分の落ち込みが急に深くなる」といった変化は、早いうちに主治医・訪問看護師へお伝えください。早期に対応すれば、多くの場合は大きく崩れる前に立て直せます。

SECTION 06ご家族・介護をされている方へ

不安な方のそばにいる方にできることは、実はとてもシンプルです。国際的に推奨されている「心理的応急処置(サイコロジカル・ファーストエイド/PFA)」の考え方は、「見る・聴く・つなぐ」の3つに集約されます。

図5 そばにいる人ができる3つのこと

見る Look 聴く Listen つなぐ Link 顔色・食事・睡眠 薬の残り・危険 を「気づく」 話したいときだけ さえぎらずに聴く 無理に語らせない 主治医・訪問看護 ケアマネ・相談窓口 へつなげる ※WHO『Psychological First Aid: Guide for Field Workers』(2011年)の3原則より。

専門家でなくてもできることばかりです。「聴く」は「聞き出す」ではありません。体験を無理に語らせることは、かえって症状を悪化させる場合があると分かっており、国際的にも推奨されていません。

かけたい言葉・避けたい言葉

場面避けたい言葉かけたい言葉
不安を訴えられたとき 「大丈夫、心配しすぎ」 「怖かったですね」「そばにいますよ」
何度も同じ話をされるとき 「さっきも言ったでしょう」 「揺れは止まっていますよ」(同じ言葉・同じトーンで)
眠れないと言われたとき 「早く寝なさい」 「眠れないのはつらいですね。明日、先生に相談しましょう」
ニュースを見続けているとき 「もう見るのをやめて」 「一緒に、夕方のニュースだけにしてみませんか」

※表は横にスクロールできます。

お子さんがいるご家庭では

  • 年齢に合わせて、短く・正確に説明する(「地震があったけれど、この家は無事だよ」)
  • 被害の映像を繰り返し見せない。大人が見ている画面も、子どもは見ています
  • 赤ちゃん返り、夜尿、甘えが増えるのは自然な反応。叱らずに、そばにいる時間を増やす
  • 遊びや宿題など、いつもの日課を続けることが安心につながります

介護をされている方ご自身のケアを

不安な方に寄り添い続けると、支える側にも疲労がたまります(共感疲労)。支える人が倒れると、支えられている方の生活も止まります。

ご自身の睡眠・食事・休息を確保してください。ショートステイやレスパイト入院、訪問回数の一時的な調整など、使える仕組みがあります。「まだ大丈夫」と思っている段階で、ケアマネジャーや訪問看護師にご相談ください。

SECTION 07 / 在宅療養中の方へ

訪問看護ができること

在宅で療養されている方とご家族には、ふだんの訪問のなかでできる備えと支援があります。遠慮なくお声がけください。

訪問時に、私たちが見ているところ

  • 血圧・脈・体重・水分量:災害後の血圧上昇や脱水を早期に見つけます
  • 睡眠と表情:眠れているか、食べられているか、表情に変化はないか
  • 残薬:飲み忘れ・飲みすぎがないか、手持ちが足りるか
  • 寝室と生活動線:ベッドの周りに倒れる家具はないか、夜間に通る場所に物が落ちていないか
  • テレビの位置と音量:ベッドから常に映像が目に入る配置になっていないか
  • 介護されているご家族の様子:支える側が限界に近づいていないか

停電・断水に備えて確認しておくこと

  • 在宅酸素・人工呼吸器・吸引器をお使いの方は、バッテリーの残量、予備電源、業者の緊急連絡先を確認
  • 手動式吸引器・アンビューバッグなど、電気を使わない代替手段の置き場所を家族全員で共有
  • 経管栄養をされている方は、栄養剤と洗浄用の水の備蓄
  • お薬手帳・保険証・訪問看護指示書の控え・緊急連絡先を1つの袋にまとめておく

一時的に、訪問回数を増やせる場合があります

急に症状が悪化し、頻回の訪問看護が必要と主治医が判断した場合、特別訪問看護指示書が交付されると、一定期間(原則14日間)は週4日以上の訪問が可能になります。「不安で夜が越せない」「介護者が限界」というときは、まずご相談ください。制度上できることを一緒に探します。

個別避難計画を、この機会に見直す

介護が必要な方、医療機器を使っている方は、市町村が作成する個別避難計画の対象になります。「誰が」「どの経路で」「どこへ」避難するのか。福祉避難所を使えるのか。今回の地震は、その計画を家族で確認し直す機会でもあります。担当のケアマネジャーとあわせてご相談ください。

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大きな地震のときに医学的に気をつけること ── 停電・断水・薬・避難の判断

SECTION 08こんなときは相談・受診を

「これくらいで相談していいのだろうか」と迷ったときは、相談してください。迷う状態が続くこと自体が、負担になります。

様子を見てよい
  • 眠りが浅い日が数日ある
  • ニュースが気になるが、生活は送れている
  • ときどきふらつくが、日常動作はできる
  • 食欲が少し落ちているが、水分はとれている
早めに相談を
  • 眠れない日が3日以上続いている
  • 血圧がいつもより明らかに高い状態が続く
  • 食事量が半分以下の日が続く/体重が減ってきた
  • ふらつきが強く、転びそうになる
  • 薬の残りが少ない、飲み忘れが増えた
  • 持病の症状(動悸、息切れ、むくみ、痛みなど)が悪化している
  • 介護をしている方自身が眠れない・限界を感じる
すぐに相談・受診を
  • 胸の強い痛み、締めつけられる感じ、冷や汗
  • 強い息苦しさ、横になれないほどの呼吸困難
  • 片側の手足の力が入らない、ろれつが回らない、顔がゆがむ
  • 意識がぼんやりする、呼びかけへの反応が鈍い
  • ほとんど水分がとれない、尿が極端に少ない
  • けいれん、急な激しい頭痛や嘔吐
  • 気持ちが強く追いつめられ、消えてしまいたいという考えが浮かぶ

!命に関わる症状が疑われるときは119番へ

判断に迷う場合は、救急安心センター事業「#7119」(対応地域)に電話すると、医師・看護師などから受診の必要性について助言を受けられます。

こころの相談窓口

こころの健康相談統一ダイヤル(厚生労働省)

0570-064-556

お住まいの都道府県・政令指定都市の公的な相談窓口につながります。受付時間は自治体により異なります。

よりそいホットライン(24時間・通話無料)

0120-279-338

どんな内容でも相談できます。眠れない、不安でたまらない、誰かに話したい——それだけで十分な理由です。

ふくろう訪問看護リハビリステーションをご利用中の方は、いつもの連絡先へご相談ください。訪問時にお話しいただいても、お電話でも構いません。「こんなことで連絡していいのかな」と思われる内容こそ、私たちがお聞きしたいことです。

この記事のまとめ

  • 地震のあとの不安・動悸・不眠は、危険から身を守るための自然な反応。多くは数日〜数週間で軽くなります
  • 直接被災していなくても、報道を見続けること自体が強いストレス反応につながります。見る時間と回数を自分で決めましょう
  • 高齢の方では血圧の上昇が数週間続くことがあります。測って記録し、自己判断で薬を変えないこと
  • 「揺れていないのに揺れる」感覚は地震後めまい症候群。多くは一過性ですが、転倒に注意を
  • できることは4-6呼吸・情報との距離・いつもの生活リズム・水分・人とつながること
  • そばにいる方は「見る・聴く・つなぐ」。無理に体験を語らせないでください
  • 迷ったら相談を。眠れない日が3日以上続いたら、早めにご連絡ください

免責事項:本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療方針を示すものではありません。症状や治療については、必ず主治医・かかりつけ医にご相談ください。記載した地震関連情報は2026年7月28日夜時点のもので、最新の情報は気象庁・自治体の発表をご確認ください。

参考文献

  1. 気象庁「地震情報(2026年7月28日16時27分 熊本県熊本地方、M7.1、最大震度7)」および津波注意報の発表・解除に関する発表(2026年7月28日)
  2. Bonanno GA. Loss, trauma, and human resilience: have we underestimated the human capacity to thrive after extremely aversive events? American Psychologist. 2004;59(1):20–28. doi:10.1037/0003-066X.59.1.20
  3. Holman EA, Garfin DR, Silver RC. Media’s role in broadcasting acute stress following the Boston Marathon bombings. Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA. 2014;111(1):93–98. doi:10.1073/pnas.1316265110
  4. Kario K, Matsuo T, Kobayashi H, et al. Earthquake-induced potentiation of acute risk factors in hypertensive elderly patients: possible triggering of cardiovascular events after a major earthquake. Journal of the American College of Cardiology. 1997;29(5):926–933. doi:10.1016/S0735-1097(97)00002-8
  5. Kario K, Ohashi T. Increased coronary heart disease mortality after the Hanshin-Awaji earthquake among the older community on Awaji Island. Journal of the American Geriatrics Society. 1997;45(5):610–613.
  6. Miwa T, Matsuyoshi H, Nomura Y, et al. Post-earthquake dizziness syndrome following the 2016 Kumamoto earthquakes, Japan. PLOS ONE. 2021;16(8):e0255816. doi:10.1371/journal.pone.0255816
  7. 野村泰之, 戸井輝夫, 池田真紀.「地震後めまい症候群」に関する研究. 日本大学医学部総合医学研究所紀要. 2014;2:36–38.
  8. Zaccaro A, Piarulli A, Laurino M, et al. How breath-control can change your life: a systematic review on psycho-physiological correlates of slow breathing. Frontiers in Human Neuroscience. 2018;12:353. doi:10.3389/fnhum.2018.00353
  9. World Health Organization, War Trauma Foundation, World Vision International. Psychological First Aid: Guide for Field Workers. Geneva: WHO; 2011.(日本語版:(独)国立精神・神経医療研究センター、ケア宮城、公益財団法人プラン・ジャパン 訳, 2012年)
  10. 日本循環器学会ほか.「災害時循環器疾患の予防・管理に関するガイドライン(JCS 2014)」
  11. American Psychiatric Association. Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision (DSM-5-TR). Washington DC: APA Publishing; 2022.(急性ストレス障害・心的外傷後ストレス障害の診断基準)
  12. 日本トラウマティック・ストレス学会「惨事報道の視聴とメンタルヘルス」(重村淳ほか, 2022年)

ふくろう訪問看護リハビリステーション
福岡市早良区/緩和ケア・難病・精神科・認知症の在宅支援
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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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