不整脈とは:訪問看護師のための「脈」の見方

訪問看護師のための「脈」の見方第1回/全3回
不整脈とは

脈が「乱れている」を、どう見て、どう伝えるか

訪問先に心電図はありません。あるのは自分の指と、血圧計が出す脈拍数の表示だけです。 それでも訪問看護師は、不整脈の「入口」をいちばん多く握っている職種です。 この3回のコラムは、心電図のない家で脈に触れて、何を疑い、誰にいつ伝えるかを整理します。 第1回は土台として、不整脈という言葉の中身を、触れる脈から逆算して分けます。 読み終えたときに、脈の乱れを「不整」の一言でなく、速さ・規則性・症状の3点で報告できることを目指します。

この3連コラムの現在地 第1回 不整脈とは 第2回 頻脈をみたとき 第3回 徐脈をみたとき 第1回 不整脈とは——脈が「乱れている」を、どう見て、どう伝えるか

この回の結論

  1. 不整脈は「速さ」「規則性」「出どころ」の3つの軸で分ける。指で触れてわかるのは前の2つで、3つめは心電図の仕事である。
  2. 在宅でいちばん重い不整脈は心房細動である。脈そのものより、そこからできる血栓による脳梗塞が問題で、抗凝固薬を飲んでいるかを看護師が把握しておく。
  3. 心電図がなくても、「脈78、不整、以前は整、症状なし」と言える看護師は、診断の入口を握っている。乱れを一言にせず、3点で伝える。

SECTION 01 脈に触れることが、いまも診断の入口になっている

不整脈の診断は心電図でつけます。それなのに、なぜ看護師が脈に触れるのか。 答えは、心電図を「いつ撮るか」を決める材料が、脈にしかないからです。 心房細動の多くは発作的に出ては消えます。外来で12誘導心電図を撮った瞬間に出ていなければ、 記録には残りません。そのあいだに、家で毎週脈に触れている人がいる。それが訪問看護師です。

日本循環器学会と日本不整脈心電学会の合同ガイドライン(2022年改訂版)は、 65歳以上の高齢者に検脈を行い、脈が不規則な場合には心電図検査を行うことを、 もっとも強い推奨(推奨クラスI、エビデンスレベルA)としています〔文献1〕。 同じガイドラインは、検脈は感度が高いが特異度は低いので、心電図で診断する必要があるとも書いています。 つまり、指で「乱れている」と気づくことと、心電図で「心房細動である」と決めることは、役割が違う2つの仕事です。

検脈の精度は数字で示されています。3つの研究、計2,385人を統合した系統的レビューでは、 脈の触診で心房細動を見つける感度は94%、特異度は72%でした〔文献2〕。 感度が高いということは、「整っている」と触れた脈は、ほぼ心房細動ではないと言ってよい、ということです。 特異度が72%ということは、「不整だ」と触れた脈の一部は、期外収縮など心房細動以外の乱れだ、ということです。 だから不整に触れたら、次の手は「心電図を撮る人につなぐ」であって、自分で診断名をつけることではありません。

実務のコツ

「不整脈があります」と報告すると、主治医は「どの不整脈か」を聞き返すしかありません。 看護師が渡せるのは診断名ではなく、脈の速さ・規則性・その人の平常との違い・症状の有無の4つです。 この4つがそろっていれば、主治医は心電図をいつ撮るかを決められます。この回の残りは、その4つを言えるようにするための整理です。

SECTION 02 不整脈を3つの軸で分ける——速さ・規則性・出どころ

不整脈という言葉は「正常でない脈」全部を指すので、そのままでは使えません。 臨床では3つの軸で分けます。1つめは速さ、2つめは規則性、3つめは電気の出どころです。 このうち指で触れてわかるのは1つめと2つめで、3つめは心電図でしかわかりません。 3つめがわからなくても、1つめと2つめだけで報告の骨格はできます。

  • 速さ——頻脈か、徐脈か安静時に1分間100回を超えれば頻脈、50回を下回れば徐脈と呼びます。50から100は「正常範囲」ですが、その人の平常から大きく動いていれば、範囲内でも意味があります。頻脈は第2回、徐脈は第3回で扱います。
  • 規則性——整か、不整か間隔がそろっていれば整、そろっていなければ不整です。不整はさらに「ときどき飛ぶ」と「まったくバラバラ」に分かれます。前者の代表が期外収縮、後者の代表が心房細動です。
  • 出どころ——心房側か、心室側か心臓の上の部屋(心房や房室結節)から出る乱れを上室性、下の部屋(心室)から出る乱れを心室性と呼びます。心室性のほうが一般に危険ですが、これは心電図の波形でしか区別できません。指ではわからない、と知っておくことが大切です。
図1 指で触れる脈は、速さ×規則性で4つに分けられる 触れてわかる 心電図で決める 1 速くて、整っている 洞性頻脈(熱・脱水・貧血・痛み・心不全の結果)、発作性上室頻拍(突然始まって突然止まる)、心房粗動 → 原因を探す。150を超える・突然始まった・血圧が下がる、は急ぐ(第2回) 2 速くて、バラバラ まず心房細動の頻脈を疑う。間隔も強さもそろわず、弱くて触れない拍が混じる(脈拍欠損) → 以前から心房細動と分かっている人か、初めてかで急ぎ方が変わる(第2回) 3 遅くて、整っている 洞徐脈(薬・甲状腺・睡眠中・鍛えた人)、完全房室ブロック(下から出る補充調律で、ゆっくり規則正しい) → まず薬を疑う。失神・ふらつき・息切れがつながる徐脈は、ペースメーカの相談対象(第3回) 4 遅くて、バラバラ/ときどき飛ぶ 徐脈性心房細動、第2度房室ブロック(周期的に1拍抜ける)、頻発する期外収縮(早い拍と長い間が混じる) → 「飛ぶ」が1分に何回か、症状があるかを数えて伝える 注:どの箱も、確定は心電図で行う。指でできるのは「どの箱に近いか」と「症状があるか」を言葉にすることまで。

図1 速さと規則性の組み合わせだけで、疑う不整脈はかなり絞れます。ただし箱の中のどれかを決めるのは心電図です。

「不整」と「不整脈」は、同じ言葉ではない

指で触れて間隔がそろっていない状態を「不整」と呼びます。これは所見です。 一方「不整脈」は、心電図で確かめた診断名の総称です。看護記録に「不整脈あり」と書くと、 診断したように読めてしまいます。書くべきは「脈拍78、不整(バラバラ)、前回まで整」のように、 自分が触れた所見です。所見と診断を書き分ける癖は、この3回を通じていちばん役に立ちます。

もうひとつ、健康な人にもある乱れを知っておきます。呼吸に合わせて脈がわずかに速くなったり遅くなったりする 呼吸性洞性不整脈は、若い人や睡眠中によく見られ、病気ではありません。 また、期外収縮は健康な高齢者にも珍しくなく、1分に数回の「飛び」だけで症状がなければ、 それだけで急ぐ理由にはなりません。乱れを見つけることと、乱れを恐れることは別です。

SECTION 03 触れてわかること、機器が出すこと、心電図でしかわからないこと

訪問看護師の手元には3つの情報源があります。自分の指、血圧計やパルスオキシメータの表示、 そして必要なときに撮ってもらう心電図です。それぞれに見えるものと見えないものがあり、 ここを混同すると「機器の数字を写しただけ」の記録になります。

情報源わかることわからないこと・落とし穴
自分の指(橈骨動脈)速さ、規則性、強さのばらつき、「飛び」の回数。その人の平常と比べた変化出どころ(上室性か心室性か)。弱い拍は触れないので、心房細動では実際の心拍より少なく数える(脈拍欠損)
自動血圧計の脈拍表示おおよその脈拍数。不整脈マークが出る機種もある規則性は表示されない。心房細動では血圧値も脈拍数も測定ごとにぶれる〔文献3〕。数字だけ写すと不整が記録から消える
パルスオキシメータの脈拍表示末梢に届いた脈の数。脈波の波形が見える機種なら規則性の目安になる末梢循環が悪いと拾えない。心房細動では弱い拍を落として少なく出る
スマートウォッチの通知「不規則な脈」の通知は、心電図で確かめると高い割合で心房細動と一致する〔文献4〕通知は診断ではない。心電図で確かめて初めて診断になる
心電図(12誘導・1誘導・ホルター)出どころ、波形、心房細動の確定診断(30秒以上P波がなくRR間隔が絶対不整〔文献1〕)撮った瞬間に出ていなければ記録されない。だから「いつ撮るか」を脈で決める

表1 脈に関する情報源の使い分け。指と機器と心電図は競合するものではなく、役割が違います。

触れ方の型——30秒か60秒か

手首の親指側に人差し指・中指・薬指の3本を当て、まず10秒ほど数えずに「間隔」を聴きます。 そろっていれば30秒数えて2倍にします。看護師103人が心電図と同時に橈骨動脈を数えた研究では、 15秒カウントは100回以上の速い脈で誤差が大きく、30秒が正確さと効率の両方で妥当でした〔文献5〕。 不整があれば60秒そのまま数えます。短く数えて掛け算すると、不規則さも一緒に掛け算されるからです。 看護師版連載の第4回「からだをみる」で書いた「15秒×4で不整を取りこぼす」は、この根拠によります。

数えるのと同時に、3つを覚えておきます。1. 間隔がそろっているか、2. 強さがそろっているか、 3. 「飛び」があれば1分に何回か。この3つと、その人の前回までの脈を並べれば、報告の材料はそろいます。

注意

血圧計やパルスオキシメータの脈拍数と、自分が触れた脈拍数がずれているときは、機器が間違っているのではなく、 弱い拍が機器にも指にも届いていない可能性を考えます。心房細動ではこのずれ(脈拍欠損)自体が所見です。 ずれを消して片方だけ記録するのではなく、「機器92、触診76、不整」と両方書きます。

SECTION 04 心房細動が、訪問看護で特別な理由

不整脈のなかで、訪問看護がいちばん頻繁に出会い、いちばん結果が重いのが心房細動です。 理由は2つあります。1つは、多いこと。日本の健診データ63万人の解析では、心房細動の有病率は全体で0.56%ですが、 80歳以上では男性4.4%、女性2.2%まで上がります〔文献6〕。訪問看護の利用者さんの年齢層では、 担当している20〜30人のうち1人以上が心房細動を持っている計算になります。

もう1つは、脳梗塞につながること。心房細動では心房がきちんと縮まないため、左心房の隅に血がよどんで血栓ができ、 それが脳に飛びます。フラミンガム研究では、心房細動があると脳卒中の発症が約5倍で、 しかも80代では脳卒中の寄与危険度が23.5%まで上がっていました〔文献7〕。 高齢になるほど、心房細動は脳梗塞の原因として重くなる。訪問看護の利用者さんは、まさにその年齢層です。

抗凝固薬を「飲んでいるか」を、看護師が知っている意味

脳梗塞を防ぐ手段は抗凝固薬です。日本循環器学会の2020年改訂版ガイドラインは、 脳梗塞のリスクを「CHADS2スコア」で数え、1点以上なら直接経口抗凝固薬(DOAC)を推奨、 ワルファリンを考慮可としています〔文献8〕。スコアの中身は表2のとおりで、訪問看護の利用者さんなら、 年齢だけで1点、高血圧か心不全があればもう1点つく人がほとんどです。

項目点数訪問看護師が確かめること
心不全1点診断名、利尿薬、体重の推移
高血圧1点降圧薬、家庭血圧の平常値
年齢75歳以上1点年齢
糖尿病1点診断名、血糖の薬
脳梗塞・一過性脳虚血発作の既往2点既往歴、後遺症

表2 CHADS2スコア(2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン 図12〔文献8〕から)。合計1点以上で抗凝固療法が推奨されます。

看護師がこのスコアを計算して薬を決めるわけではありません。けれど「心房細動と言われているのに、抗凝固薬が処方に見当たらない」 「抗凝固薬が出ているが、飲み忘れが多い」「転倒して頭を打った人が抗凝固薬を飲んでいる」——この3つの場面は、 看護師が気づかなければ誰も気づかない場面です。処方箋とお薬手帳を見て、抗凝固薬の名前と飲めているかを、 初回訪問の情報に必ず入れておきます。

実務のコツ

抗凝固薬を飲んでいる人の訪問では、脈と一緒に「出血のサイン」を1つずつ確かめます。 歯ぐきや鼻からの出血、黒い便、皮下出血の広がり、尿の色。そして転倒の有無。 抗凝固薬を飲んでいる人が頭を打ったら、症状がなくてもその日のうちに主治医へ連絡します。 これはセラピスト版連載の第8回でも同じ線を引いています。

SECTION 05 治療の地図——薬・カテーテルアブレーション・植込みデバイス

不整脈の治療は3本の柱でできています。薬、カテーテルアブレーション、植込み型のデバイス(ペースメーカなど)です。 訪問看護師がこの地図を持っておく理由は、治療を選ぶためではなく、 「この人は地図のどこにいて、次に何が起こりうるか」を知って、主治医の判断を先読みするためです。

図2 不整脈の治療は3本柱。訪問看護師は「その人がどこにいるか」を知っておく 1 薬——3種類の目的を分けて覚える 脈を遅くする薬(β遮断薬・カルシウム拮抗薬・ジゴキシン)/リズムを整える抗不整脈薬/血栓を防ぐ抗凝固薬 → 看護師の仕事:飲めているか、脈が下がりすぎていないか、出血していないか 2 カテーテルアブレーション——乱れの出どころを焼いて根治を狙う 足の付け根の血管からカテーテルを入れ、肺静脈の周りなどを焼く・凍らせる。上室頻拍では根治率が高い → 看護師の仕事:術後3か月は再発が出ても様子見の期間と知る。穿刺部・抗凝固薬の継続・再発の検脈 3 植込みデバイス——遅すぎる脈を補う、致死的な速い脈を止める ペースメーカ(徐脈を補う)/植込み型除細動器(致死的な速い脈を止める)/心臓再同期療法(心不全) → 看護師の仕事:手帳の設定レート、創部、電磁干渉、遠隔モニタリングの有無(第3回) 注:3本は排他ではなく重なる。アブレーション後も抗凝固薬が続く人、ペースメーカと抗不整脈薬を併用する人は珍しくない。

図2 治療の3本柱。この回では全体像だけを押さえ、アブレーションの適応は第2回、ペースメーカの適応は第3回で扱います。

アブレーションは「最後の手段」ではなくなった

10年前まで、心房細動のカテーテルアブレーションは「薬が効かなかった人の次の手」でした。 2018年改訂の不整脈非薬物治療ガイドラインで、症状のある心房細動に対して、薬を経ずにアブレーションを行うことが 抗不整脈薬と並ぶ第一選択の1つ(推奨クラスIIa)として加わりました〔文献9〕。 背景には、初めから冷凍バルーンでアブレーションした群と抗不整脈薬で始めた群を比べた試験で、 1年後の再発が42.9%対67.8%と、アブレーションのほうが明らかに少なかったという結果があります〔文献10〕。

そして2024年のフォーカスアップデートでは、症状のある再発性の発作性心房細動に対して、 冷凍バルーンによるアブレーションを第一選択として行うことが、推奨クラスI・エビデンスレベルAに引き上げられました。 同じ更新で「80歳以上」という年齢だけを理由にアブレーションの選択肢を外さないことも明記されています〔文献11〕。 訪問看護の利用者さんにも、この治療を受ける人、受けた人が増えていきます。

ペースメーカについても同じことが言えます。遅い脈で失神やふらつきがつながっている人には、 年齢にかかわらずペースメーカが標準治療で、いまはリードのない小さな機種も使われています。 「もう高齢だから」と看護師の側で治療の可能性を閉じないでください。適応を決めるのは主治医と循環器の医師ですが、 候補になる人を見つけて渡すのは、脈に触れている看護師です。

SECTION 06 訪問看護師が「脈」で見ておく5つ

ここまでを、訪問1回の動きに落とします。全部を毎回やる必要はありません。 初回訪問で土台をつくり、以後は変化だけを拾う、という順番です。

  • その人の「脈の平常」を持つ速さだけでなく規則性を含めて。「72〜80、整」「88前後、不整(心房細動)、脈拍欠損あり」のように、幅と条件つきで記録に置きます。平常がなければ、変化に気づけません。
  • 不整脈の診断名と、抗凝固薬の有無をセットで知る心房細動なら、DOACかワルファリンか、飲めているか、出血のサインがないか。診断名だけ知っていて薬を知らないのは、半分しか知らないのと同じです。
  • 脈に効く薬の変更を見逃さないβ遮断薬、カルシウム拮抗薬、ジゴキシン、抗不整脈薬、そして認知症のドネペジル。処方が変わった次の訪問は、脈をいつもより丁寧に触れます(第3回)。
  • 症状と脈を同じ時刻で記録する動悸、息切れ、ふらつき、失神、胸の違和感。「訴えがあった」だけでなく、そのときの脈と血圧を並べて書きます。症状と脈がつながっているかどうかが、アブレーションでもペースメーカでも適応の中心になります。
  • 報告は所見4点で速さ、規則性、平常との違い、症状。「不整脈があります」ではなく「脈88、バラバラ、前回まで整、動悸なし、血圧いつもどおり」。この形なら、主治医は次の一手を決められます。
他職種はここを見ている

主治医が脈の報告で知りたいのは「初めてか、以前からか」と「症状があるか」の2つです。この2つで緊急度がほぼ決まります。 理学療法士・作業療法士は、運動を始める前の安静時脈拍を見ていて、40以下や120以上では始めず、 運動中に140を超えたら止めるという線を持っています(セラピスト版連載 第8回)。 看護師が「今日の脈は不整で、いつもより速い」と一言伝えるだけで、その日のリハビリの強さが変わります。 ケアマネジャーは、心房細動と抗凝固薬の情報を福祉用具や住環境の話(転倒対策)につなげたい、と考えています。

当ステーションの視点

心電図がない場所で脈に触れる看護師は、診断の入口を握っています。入口の仕事は、決めることではなく、渡すことです。

在宅に来て「心電図がないから、不整脈はわからない」と言う人がいます。半分は正しくて、半分は違います。 診断は確かに心電図の仕事です。けれど、いつ心電図を撮るべきかを決める材料は、家で毎週脈に触れている人の手の中にしかありません。 外来の数分では出ていなかった乱れを、あなたの指が拾う。それが診断の入口です。

入口の仕事で大切なのは、決めないことです。「心房細動だと思います」と診断名で報告すると、 合っていても外れていても、主治医は確かめ直す手間が増えます。 「脈88、バラバラ、前回まで整、動悸なし」と所見で渡せば、主治医はその場で心電図の段取りを決められます。 決めないことは、力がないことではありません。次の人が判断できる形で渡すのが、入口の技術です。

当ステーションが新しく入った人に最初に頼むのは、担当する全員の「脈の平常」を、規則性つきで記録に置くことです。 速さだけの数字はどこにでもあります。「整」「不整」の一文字が入った平常値は、その家に通う看護師にしか書けません。

採用のご案内

ふくろう訪問看護リハビリステーションは、
訪問看護が未経験の方を歓迎しています。

この3回のコラムは、心電図のない家で脈に触れて、何を疑い、誰にいつ伝えるかを、 当ステーションが日々の訪問で実際に確かめていることをもとに書いたものです。 言いかえれば、当ステーションが新しく入った人と一緒に確かめていく順番そのものです。 経験がないことは、ここでは前提であって、条件ではありません。

1. いきなり一人にしません 見学から一部実施、メイン担当、見守り、単独訪問へ。段階を戻すことを失敗と呼びません。
2. 医師との距離が近い環境 同じ法人にふくろう訪問クリニックがあり、迷ったときに相談できる相手がすぐ近くにいます。
3. 「わかりません」と言える その日のうちに報告できることを、技術より先に身につけてほしいと考えています。
いちばん早いのは、当ステーションへ直接ご連絡いただくことです
  1. 日程が早く決まります。間に人が入らないぶん、お問い合わせから見学、面談までを最短の日程で組めます。
  2. 条件を、決める人と直接相談できます。勤務日数、1日の訪問件数、オンコールの有無といった働き方の話を、伝言でなくその場でやりとりできます。
  3. 入職祝い金20万円を進呈します。直接応募限定紹介手数料がかからないぶんを、求職者の方に還元します。
まずは見学だけでも歓迎します/お電話・メールどちらでも

ブランクのある方、病棟の経験しかない方、まず話だけ聞いてみたいという方も、お気軽にご連絡ください。

訪問で「できる」チェックリスト(第1回ぶん)

  • 担当している利用者さんの脈の平常を、速さと規則性の両方で言える
  • 手首に触れて、まず間隔を聴き、整なら30秒、不整なら60秒で数えている
  • 機器の脈拍数と触診の脈拍数がずれたとき、両方を記録し、ずれの意味(脈拍欠損)を説明できる
  • 心房細動と診断されている人について、抗凝固薬の名前と、飲めているかを言える
  • 抗凝固薬を飲んでいる人の出血のサイン(歯ぐき・鼻・黒い便・皮下出血・尿の色)を訪問で確かめている
  • 「不整脈があります」ではなく、速さ・規則性・平常との違い・症状の4点で報告できる
  • 「不整」(所見)と「不整脈」(診断名)を書き分けている
  • 治療の3本柱(薬・アブレーション・デバイス)のどこにその人がいるかを、言葉で説明できる

Q&A よくある質問

Q利用者さんのスマートウォッチに「不規則な心拍」の通知が出ました。どう扱えばよいですか。
A通知はきっかけとして十分に信頼できます。約42万人が参加した研究では、通知を受けた人のうち、その後の心電図パッチで心房細動が確認された割合は34%、通知と同時刻の心電図での陽性的中率は0.84でした〔文献4〕。ただし通知は診断ではありません。通知が出た日時と、そのとき自分が触れた脈(速さ・規則性)と症状を記録して、主治医に「心電図の検討を」と伝えてください。通知を消さず、画面を写真に撮っておくと医師に渡しやすくなります。
Q家庭用の血圧計に「不規則脈波」のマークが出ます。心房細動でしょうか。
Aマークは「測定中に脈の間隔がそろわなかった」という意味で、期外収縮でも出ますし、腕が動いても出ます。心房細動かどうかは決められません。マークが出たら、その場で自分の指で60秒触れて、バラバラなのか、ときどき飛ぶだけなのかを確かめてください。毎回出るようになった、症状が出た、というときに主治医へ伝えます。心房細動の人では血圧の値も測定ごとにぶれるので、3回測って記録します〔文献3〕。
Q期外収縮と言われている人の脈が、今日は1分に10回くらい飛びます。急ぎますか。
A症状がなく、血圧がいつもどおりなら、その日のうちの報告で足ります。ただし「いつもは2〜3回」が「10回」に増えたなら、それは変化なので、回数を数えて伝えてください。日本リハビリテーション医学会の基準では、1分に10回以上の期外収縮は運動を中止する目安です(セラピスト版連載 第8回)。動悸・ふらつき・胸の違和感が重なったときは、今日中ではなく今すぐです。
Q心房細動と診断されているのに、抗凝固薬が処方されていません。看護師から言ってよいことですか。
A言ってよい、というより、看護師しか気づけない場面です。出血しやすい病気がある、転倒を繰り返す、本人が希望しない、など処方しない理由があることも多いので、「処方すべきです」ではなく「心房細動の診断がありますが、抗凝固薬が見当たりません。理由をご存じでしょうか」と、事実と質問の形で主治医に伝えてください。理由が記録に残れば、次の看護師も迷いません。
Q脈が不整でも、本人は何ともないと言います。それでも報告が要りますか。
A要ります。心房細動の多くは無症状で、最初の症状が脳梗塞ということが珍しくありません。だからこそガイドラインは、症状の有無にかかわらず65歳以上に検脈を勧めています〔文献1〕。急ぐかどうかは症状で決まりますが、伝えるかどうかは症状では決まりません。「初めて不整に触れた」は、それだけで伝える理由になります。

この回に関連する記事

連載の外にある、ふくろう訪問看護リハビリステーションのコラムです。この回の内容をさらに掘り下げたいときに読んでください。

3連コラム「訪問看護師のための『脈』の見方」全3回

  1. 不整脈とは——脈が「乱れている」を、どう見て、どう伝えるか
  2. 頻脈をみたとき——速い脈の原因を3つに分け、今すぐ動く線を引く
  3. 徐脈をみたとき——遅い脈で疑う薬と、ペースメーカの適応まで

REFERENCE 参考資料

  1. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会. 2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン. 表15「AFの診断に関する推奨とエビデンスレベル」(65歳以上の高齢者に検脈を推奨する:クラスI/エビデンスレベルA)、2.1.3 検出法. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Takase.pdf
  2. Cooke G, Doust J, Sanders S. Is pulse palpation helpful in detecting atrial fibrillation? A systematic review. J Fam Pract. 2006;55(2):130-134.
  3. Park SH, Choi YK. Measurement reliability of automated oscillometric blood pressure monitor in the elderly with atrial fibrillation: a systematic review and meta-analysis. Blood Press Monit. 2020;25(1):2-12. doi:10.1097/MBP.0000000000000414
  4. Perez MV, Mahaffey KW, Hedlin H, et al. Large-scale assessment of a smartwatch to identify atrial fibrillation. N Engl J Med. 2019;381(20):1909-1917. doi:10.1056/NEJMoa1901183
  5. Hollerbach AD, Sneed NV. Accuracy of radial pulse assessment by length of counting interval. Heart Lung. 1990;19(3):258-264.
  6. Inoue H, Fujiki A, Origasa H, et al. Prevalence of atrial fibrillation in the general population of Japan: an analysis based on periodic health examination. Int J Cardiol. 2009;137(2):102-107. doi:10.1016/j.ijcard.2008.06.029
  7. Wolf PA, Abbott RD, Kannel WB. Atrial fibrillation as an independent risk factor for stroke: the Framingham Study. Stroke. 1991;22(8):983-988. doi:10.1161/01.STR.22.8.983
  8. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会. 2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン. 図12「心房細動における抗凝固療法の推奨」、表35. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf
  9. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会. 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版). 第3章 カテーテルアブレーション(心房細動). https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/07/JCS2018_kurita_nogami.pdf
  10. Andrade JG, Wells GA, Deyell MW, et al. Cryoablation or drug therapy for initial treatment of atrial fibrillation. N Engl J Med. 2021;384(4):305-315. doi:10.1056/NEJMoa2029980
  11. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会. 2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療. 表13「症候性再発性の発作性心房細動に対するクライオバルーンアブレーションの推奨」、CQ1「高齢者(80歳以上)に対して心房細動カテーテルアブレーションを行うべきか?」. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Iwasaki.pdf
本記事は、公開されている法令・通知・ガイドライン等をもとに、訪問看護の実務に必要な範囲を整理したものです。 制度の取扱いは改定や個別の事情によって変わることがあります。実際の判断にあたっては、 主治医、所属事業所の管理者、審査支払機関、地方厚生局等の窓口にご確認ください。 個々の健康上の問題については、かかりつけ医にご相談ください。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

目次