頻脈をみたとき:訪問看護師のための「脈」の見方

訪問看護師のための「脈」の見方第2回/全3回
頻脈をみたとき

速い脈の原因を3つに分け、今すぐ動く線を引く

訪問で脈を数えたら112だった。ここから何をするか。速い脈の大半は、心臓の病気ではなく、 熱・水分・血液・痛み・息苦しさといった「体のどこかの請求書」です。けれど一部に、 心臓そのものから出る速い脈があり、その一部は今すぐ動く必要があります。 この回は、速い脈を3つに分けて、原因を探す順番と、今すぐ動く線を引きます。 あわせて、心房細動と発作性上室頻拍のカテーテルアブレーションが「どういう人に勧められるか」を、 看護師が主治医の話についていける程度に整理します。

この3連コラムの現在地 第1回 不整脈とは 第2回 頻脈をみたとき 第3回 徐脈をみたとき 第2回 頻脈をみたとき——速い脈の原因を3つに分け、今すぐ動く線を引く

この回の結論

  1. 安静時に100を超える脈を数えたら、まず「整か不整か」「突然か徐々にか」を触れ、次に熱・水・血・痛み・息を探す。速い脈の多くは、心臓以外の原因の結果である。
  2. 血圧低下、急に意識がぼんやりする、冷や汗などのショック徴候、胸の痛み、急な息苦しさのどれかが重なった頻脈は、原因を探す前に119番である。150を超える脈で突然始まったものも、同じ扱いにする。
  3. 心房細動の速い脈は、薬で「速さ」を抑える治療と、アブレーションで「乱れの出どころ」を治す治療がある。症状のある発作性心房細動では、いまはアブレーションが第一選択の1つである。

SECTION 01 速い脈の大半は、心臓の病気ではない

安静時の脈が1分間に100回を超える状態を頻脈と呼びます。在宅で出会う頻脈のほとんどは洞性頻脈、 つまり心臓の電気の出どころは正常なまま、体の要求に応えて心臓が速く打っている状態です。 発熱、脱水、貧血、痛み、低酸素、心不全の悪化、甲状腺機能亢進、不安、 そして薬(気管支拡張薬、抗コリン薬、一部の抗うつ薬)やカフェイン、アルコールの離脱。 どれも「心臓が速い」のではなく「心臓を速くさせる何か」があります。

洞性頻脈の特徴は3つです。1. 脈は整っている。2. 徐々に速くなり、徐々に戻る。3. 原因を取り除くと下がる。 逆に言えば、この3つのどれかが当てはまらない頻脈は、心臓側の乱れを疑う理由になります。 「突然120になった」「バラバラに速い」「熱も脱水もないのに速い」——ここに次の節の分け方が効いてきます。

もうひとつ、高齢者に特有の事情があります。年齢とともに心臓が出せる最高の速さは下がり、 ストレスに対する心拍の反応も鈍くなります。看護師版連載の第4回で書いたとおり、高齢者は発熱も頻脈も起こしにくい。 だから高齢の利用者さんの「いつも68の人が今日は96」は、若い人の「72が120」に相当する変化として読みます。 正常範囲の中にいても、その人の平常から大きく動いていれば、それは頻脈として扱います。

実務のコツ

速い脈を見つけたら、数字を書く前に3つ触れます。整か不整か、突然か徐々にか、その人の平常からどれだけ離れたか。 そのあとで体温、血圧、SpO2、呼吸数を取り、水分と食事の量、痛みの有無、便と尿の様子を聞きます。 機器の数字より先に、指と質問で原因の見当をつけるほうが速いことが多いからです。

SECTION 02 速い脈を3つに分ける——結果の頻脈、心房細動の頻脈、突然始まる頻脈

速い脈は、原因の場所で3つに分けると動きやすくなります。1つめは体のどこかの結果として速い脈、 2つめは心房細動そのものが速く伝わっている脈、3つめは心臓の中の回路が突然回り出す発作性の頻脈です。 指で触れる特徴が違うので、心電図がなくても「どれに近いか」は言えます。

図1 速い脈は「原因の場所」で3つに分ける 1 結果の頻脈(洞性頻脈)——心臓は正常、体が速さを要求している 触れ方:整っている。徐々に速くなる。100〜130くらいにとどまることが多い 探す:熱・水(脱水)・血(貧血・出血)・痛み・息(低酸素・心不全)・薬・甲状腺・不安 → 原因を見つけて伝える。原因が見当たらない頻脈こそ、心臓側を疑う理由になる 2 心房細動の頻脈——乱れた心房の信号が、速く心室へ伝わっている 触れ方:バラバラで速い。強さもそろわない。機器の脈拍数と触診がずれる(脈拍欠損) 探す:以前からか初めてか。脈を抑える薬を飲めているか。感染・脱水・心不全が引き金でないか → 初めての人は心電図へ。以前からの人は「今日の速さ」と症状で緊急度を決める 3 突然始まる頻脈——心臓の中の回路が回り出す(発作性上室頻拍、心室頻拍など) 触れ方:スイッチを入れたように突然150前後以上になり、突然止まる。多くは整っている 探す:始まった時刻、動悸の言葉、血圧、意識、胸の痛み。心臓の病気(心筋梗塞・心不全)の既往 → 不安定の徴候があれば119番。なくても発作中に心電図を撮れると診断が進む 注:3つは重なる。心房細動の人が発熱すると1と2が同時に起こる。分けるのは、探す順番を決めるため。

図1 速い脈の3分類。指で触れる特徴(整か不整か、突然か徐々にか)だけで、3つのどれに近いかは言えます。

頻脈の種類指で触れるとよくある背景心電図で決まること
洞性頻脈整。徐々に速く、徐々に戻る発熱、脱水、貧血、痛み、心不全、薬正常な波形が速いだけ。治療は原因に対して
心房細動(頻脈性)バラバラ。強さも不ぞろい高齢、高血圧、心不全、感染や脱水が引き金P波がなくRR間隔が絶対不整。脈を抑える薬と抗凝固薬
心房粗動整で速いことが多い(150前後)心房細動と行き来する人のこぎり状の波。アブレーションの成績がよい
発作性上室頻拍突然始まり突然止まる。整。150〜200若い人にも多い。動悸を「ドキドキが急に始まる」と表現回路の場所で治療が決まる。根治率が高い
心室頻拍速い。整のことが多い。血圧が下がりやすい心筋梗塞の既往、心不全、心筋症幅の広い波形。植込み型除細動器の適応にかかわる

表1 頻脈の主な種類。指でわかるのは左から2列目まで。右の列は心電図の仕事です。

SECTION 03 今すぐ動く線——速さより「不安定の徴候」で決める

速い脈で救急要請するかどうかを、脈拍数だけで決めることはできません。 米国心臓協会の2020年ガイドラインが示す「脈のある頻拍」の初期対応では、 心拍数はおおむね150以上が対象になりますが、実際の分かれ目は数字ではなく、 頻脈のせいで循環が保てなくなっている徴候があるかどうかです〔文献1〕。 その徴候は5つです。低血圧、急に始まった意識の変容、ショックの徴候(冷や汗、冷たく湿った皮膚、蒼白)、 虚血による胸の痛みや不快感、急性心不全(急な息苦しさ、起坐呼吸)。 どれか1つでも頻脈に重なっていれば、原因を探すのは後で、まず119番です。

この5つがないなら、時間があります。熱・水・血・痛み・息を探し、その人の平常と比べ、 今日中に主治医へ伝える。整った頻脈で原因が見当たるなら、原因への対応(水分、解熱、痛みの処置)を主治医と相談して、 次の訪問までに脈が下がるかを見ます。整った頻脈で原因が見当たらない、あるいはバラバラで速い脈が初めて出た、 というときは、心電図を撮れる段取りをその日のうちに主治医と決めます。

図2 速い脈を見つけてからの順番——数字より先に「不安定の徴候」を見る 1 触れる(30秒。不整なら60秒) 整か不整か、突然か徐々にか、その人の平常からどれだけ離れたか。同時に顔色・汗・呼吸・話し方を見る 2 不安定の徴候が1つでもあれば → 119番(原因探しは後) 低血圧/急に始まった意識の変容/ショックの徴候(冷や汗・冷たく湿った皮膚・蒼白) /虚血による胸の痛み・不快感/急性心不全(急な息苦しさ・起坐呼吸) 突然始まって150を超える脈も、この段に入れて扱う(発作中の心電図が診断の決め手になる) 3 徴候がなければ、原因を探す → 今日中に主治医へ 熱(体温)・水(口渇・尿量・皮膚)・血(顔色・便の色・出血)・痛み・息(SpO2・呼吸数・浮腫・体重) 薬の変更・飲み忘れ、甲状腺、不安。心房細動の人なら「脈を抑える薬」を飲めているか 原因が見当たる整った頻脈は、原因への対応を相談して次回まで見る。見当たらなければ心電図の段取りへ 4 伝える——所見4点+原因の見当+時刻 「脈118、整、いつもは70台、動悸なし、体温38.2、尿少なめ。14時に気づいた」。数字は機器と触診の両方 注:不安定の徴候は米国心臓協会2020年ガイドラインの「脈のある頻拍」の判断項目〔文献1〕。迷ったら、迷った時点で119番でよい。 急変後の初動(誰に何をどの順で連絡するか)は看護師版連載 第6回にまとめてある。

図2 速い脈を見つけてからの順番。段2の判断が最初にあり、原因探しはそのあとです。

注意

発作性上室頻拍の人が「息をこらえると止まる」「冷たい水で顔を洗うと止まる」と教えてくれることがあります。 これは迷走神経を刺激して頻拍を止める手技で、医療機関では医師の管理下で行われるものです。 看護師が訪問先で本人に勧めたり、頸動脈を押したりしてはいけません。 本人が自分で日常的にやっている方法を、主治医が知っているかどうかを確かめるところまでにします。

SECTION 04 心房細動の速い脈——「速さ」を抑える薬と、看護師が見る2つの数字

以前から心房細動と分かっている人の脈が速いとき、主治医が最初に考えるのは「速さを抑える薬(レートコントロール)が効いているか」です。 使われるのはβ遮断薬(ビソプロロールなど)、心機能が保たれている人ではカルシウム拮抗薬(ベラパミル、ジルチアゼム)、 そしてジゴキシンです。日本循環器学会の2020年改訂版ガイドラインでは、心機能が保たれた頻脈性心房細動にβ遮断薬と カルシウム拮抗薬のどちらも推奨クラスIで、ジゴキシンを長年にわたって心拍数調節に使い続けることは推奨されていません(クラスIII)〔文献2〕。

目標の速さはどのくらいか。同じガイドラインは、安静時80未満を目指す厳格な調節と、110未満でよしとする緩やかな調節を比べた試験で、 イベントに差がなかったことを引き、心拍数の調節は自覚症状と心不全徴候の軽減を目指して個別化すべきだとしています〔文献2〕。 つまり、看護師が見るべきは「110を超えているか」という1つの線と、「その速さで本人が苦しいか、浮腫や息切れが増えていないか」という もう1つの数字にならない観察です。安静時に110を超える日が続く、あるいは症状が増えているなら、薬の調整の相談材料になります。

  • 脈を抑える薬を飲めているかβ遮断薬やジゴキシンの飲み忘れは、速い心房細動の引き金としていちばん多いものです。残薬とお薬カレンダーを見ます。逆に飲みすぎや腎機能の低下で、ジゴキシンは徐脈や吐き気を起こします(第3回)。
  • 引き金が体の側にないか感染、脱水、貧血、甲状腺機能亢進、心不全の悪化。心房細動の人が発熱すると、洞性頻脈の分と合わさって脈がはね上がります。速い脈の原因が心房細動「だけ」とは限りません。
  • 抗凝固薬が続いているか速い遅いにかかわらず、心房細動の人の脳梗塞予防は抗凝固薬です(第1回)。速さの相談をする日に、抗凝固薬の服薬状況と出血のサインも一緒に伝えると、主治医は2つの判断を一度にできます。

SECTION 05 カテーテルアブレーションの適応を、軽く理解する

カテーテルアブレーションは、足の付け根の血管からカテーテルを心臓に入れ、乱れた電気の出どころや回路を 高周波で焼く、あるいは冷凍バルーンで凍らせて、乱れを根元から断つ治療です。 看護師が適応を決めることはありません。けれど「この人はアブレーションの話が出てもおかしくない人だ」と分かっていると、 主治医や循環器の医師の説明についていけますし、利用者さんの「手術って言われたけど、私の歳で?」という問いに、 根拠を持って「相談する価値がありますよ」と言えます。

発作性上室頻拍とWPW症候群——根治を狙える代表

突然始まって突然止まる整った頻脈の代表が、発作性上室頻拍です。心臓の中の小さな回路(房室結節の二重伝導路や、副伝導路)を 電気がぐるぐる回ることで起こります。回路の場所が決まっているので、そこを焼けば根治が期待できます。 2018年改訂の不整脈非薬物治療ガイドラインでは、症状のある房室結節リエントリー性頻拍に対するアブレーションは推奨クラスI、 WPW症候群で副伝導路に関連する頻拍発作がある場合もクラスIです〔文献3〕。 薬で発作を抑え続けるより、一度の治療で発作そのものをなくす、という考え方が標準になっています。

心房細動——「薬の次」から「第一選択の1つ」へ

心房細動のアブレーションは、肺静脈の周りをぐるりと焼く(あるいは凍らせる)「肺静脈隔離」が基本です。 第1回で触れたとおり、2018年改訂版で、症状のある心房細動に薬を経ずにアブレーションを行うことが第一選択の1つ(クラスIIa)に加わり、 2024年のフォーカスアップデートで、症状のある再発性の発作性心房細動に対する冷凍バルーンアブレーションは 第一選択治療として推奨クラスI・エビデンスレベルAになりました〔文献4〕。 根拠となった試験の1つでは、初回治療として冷凍バルーンを選んだ群の1年後の再発が42.9%、抗不整脈薬で始めた群が67.8%でした〔文献5〕。

2024年の更新は、訪問看護にとって大切な2点を明記しています。1つは、無症状の再発性発作性心房細動でも、 脳梗塞のリスクスコア(CHA2DS2-VASc)が3点以上なら、アブレーションを考慮する(クラスIIa)としたこと。 もう1つは、80歳以上であっても、年齢だけを理由にアブレーションの選択肢を外さない、と臨床疑問への答えとして書いたことです〔文献4〕。 ただし同じ箇所で、高齢者では全身状態(フレイル、認知機能、併存疾患)の個人差が大きく、症状の改善という利益とリスクを 本人と共有して決める、とも書かれています。そこで役に立つのが、訪問看護師の持っている生活の情報です。

対象ガイドラインの位置づけ訪問看護師が知っておくこと
症状のある発作性上室頻拍・WPW症候群の頻拍発作アブレーション クラスI(2018年改訂版)〔文献3〕「突然始まって突然止まる動悸」を聞いたら、始まった時刻と続いた時間を記録する。発作中の心電図が撮れると診断が進む
症状のある再発性の発作性心房細動冷凍バルーンアブレーションを第一選択として クラスI/A(2024年更新)〔文献4〕「薬が効かなくなってから」を待つ必要はない、と知っておく。本人が動悸で生活を狭めていないかを聞く
無症状の再発性発作性心房細動で脳梗塞リスクが高いアブレーションを考慮 クラスIIa/B(2024年更新)〔文献4〕無症状でも治療の相談対象になりうる。検脈で拾った乱れは、症状がなくても伝える
心不全をともなう心房細動心房細動が原因と強く疑われる心機能低下ではクラスI、標準治療中の低左心機能ではクラスIIa(2024年更新)〔文献4〕浮腫・体重・息切れの記録が、心不全の側からの判断材料になる
80歳以上年齢だけを理由に選択肢から外さない(2024年更新 CQ1)〔文献4〕フレイル・認知機能・併存疾患・本人の希望を、看護師の言葉で主治医に渡す

表2 アブレーションの適応の要点。適応を決めるのは医師ですが、右の列は看護師にしか集められない情報です。

アブレーションを受けた人が帰ってきたら

退院後の訪問で見るのは3つです。1つめは穿刺部(足の付け根)の出血・血腫・痛み。2つめは抗凝固薬の継続。 アブレーション後も、脳梗塞リスクに応じて抗凝固薬は続くのが原則で、「治ったから薬はやめた」は看護師が拾うべき誤解です。 3つめは再発の検脈。ただし術後3か月は「ブランキング期間」と呼ばれ、この間に出る乱れは治療の影響として様子を見ることが多く、 それだけで再発と決めません〔文献3〕。3か月を過ぎても不整に触れるなら、主治医に伝える意味が出てきます。

SECTION 06 報告の型——速い脈は、原因の見当と時刻を添えて渡す

速い脈の報告は、第1回の所見4点(速さ・規則性・平常との違い・症状)に、原因の見当と気づいた時刻を足します。 「脈が速いです」だけでは、主治医は電話口で同じ質問を繰り返すしかありません。

「Aさん、脈118で整、いつもは70台です。動悸の訴えはなく、血圧は128/76でいつもどおり。体温38.2度、昨日から食事が半分で、尿が少ないとご家族が言っています。 14時の訪問で気づきました。熱と脱水の頻脈と考えていますが、抗菌薬や点滴の指示をいただけますか。」 整った頻脈で、原因の見当がついているときの伝え方の例
「Bさん、脈が今日初めてバラバラで、触診で96、血圧計の表示は112です。いつもは70前後で整でした。息切れが少しあり、SpO2は94%でいつもより2%低いです。 血圧は118/70で下がっていません。胸の痛みはありません。心電図をどこで撮っていただけますか。」 バラバラで速い脈が初めて出たときの伝え方の例。「初めて」と「機器と触診の両方の数字」を必ず入れる
他職種はここを見ている

理学療法士・作業療法士は、安静時の脈が120以上ならその日のリハビリを始めず、運動中に140を超えたら止める、 という日本リハビリテーション医学会の基準を使っています(セラピスト版連載 第8回)。 看護師が「今日は脈が速い」と伝えると、リハビリの強さが変わるだけでなく、 リハビリ職が運動中に見た脈の変化(上がりやすさ、戻りにくさ)が看護師に返ってきます。 主治医が速い脈の報告で知りたいのは、「初めてか以前からか」「不安定の徴候はあるか」「原因の見当はつくか」の3つです。

当ステーションの視点

速い脈は病気ではなく、体からの請求書です。何に対する請求かを読むのが、看護師の仕事です。

頻脈という言葉を聞くと、心臓の病気を思い浮かべます。けれど在宅で出会う速い脈の多くは、熱や脱水や痛みや息苦しさに対して、 心臓が正直に働いた結果です。心臓を責める前に、心臓に請求しているものを探す。当ステーションが新しい人に最初に伝えるのはこれです。

同時に、請求書ではない速い脈があることも知っておいてほしい。突然始まって、整っていて、原因が見当たらない。 バラバラで、今日初めて。こういう脈は、心臓そのものの乱れです。そして、この乱れはいま、根治を狙える治療が標準になりつつあります。 「高齢だから様子を見ましょう」と看護師の側で決めてしまうと、その人は治療の相談台に上がる前に降りることになります。

不安定の徴候があれば119番。なければ請求書を読む。読めなければ心電図の段取りへ。この3つの順番を、玄関を開ける前に持っておく。 速い脈で慌てなくなるのは、心臓に詳しくなったときではなく、順番が体に入ったときです。

採用のご案内

ふくろう訪問看護リハビリステーションは、
訪問看護が未経験の方を歓迎しています。

この3回のコラムは、心電図のない家で脈に触れて、何を疑い、誰にいつ伝えるかを、 当ステーションが日々の訪問で実際に確かめていることをもとに書いたものです。 言いかえれば、当ステーションが新しく入った人と一緒に確かめていく順番そのものです。 経験がないことは、ここでは前提であって、条件ではありません。

1. いきなり一人にしません 見学から一部実施、メイン担当、見守り、単独訪問へ。段階を戻すことを失敗と呼びません。
2. 医師との距離が近い環境 同じ法人にふくろう訪問クリニックがあり、迷ったときに相談できる相手がすぐ近くにいます。
3. 「わかりません」と言える その日のうちに報告できることを、技術より先に身につけてほしいと考えています。
いちばん早いのは、当ステーションへ直接ご連絡いただくことです
  1. 日程が早く決まります。間に人が入らないぶん、お問い合わせから見学、面談までを最短の日程で組めます。
  2. 条件を、決める人と直接相談できます。勤務日数、1日の訪問件数、オンコールの有無といった働き方の話を、伝言でなくその場でやりとりできます。
  3. 入職祝い金20万円を進呈します。直接応募限定紹介手数料がかからないぶんを、求職者の方に還元します。
まずは見学だけでも歓迎します/お電話・メールどちらでも

ブランクのある方、病棟の経験しかない方、まず話だけ聞いてみたいという方も、お気軽にご連絡ください。

訪問で「できる」チェックリスト(第2回ぶん)

  • 速い脈を数えたら、数字を書く前に「整か不整か」「突然か徐々にか」「平常からどれだけ離れたか」を触れている
  • 不安定の徴候5つ(低血圧・急な意識変容・ショック徴候・胸の痛み・急な息苦しさ)を、見ないで言える
  • 徴候がない頻脈で、熱・水・血・痛み・息の順に原因を探し、見当を言葉にできる
  • 心房細動の人について、脈を抑える薬の名前と、飲めているかを言える
  • 安静時の脈が110を超える日が続いているかどうかを、記録から拾える
  • 「突然始まって突然止まる動悸」を聞いたら、時刻と続いた時間を記録している
  • アブレーションが、症状のある発作性心房細動で第一選択の1つになっていることを、利用者さんに説明できる
  • アブレーション後の訪問で、穿刺部・抗凝固薬の継続・術後3か月の意味を確かめている

Q&A よくある質問

Q血圧計の脈拍表示が150と出ました。本人は平気そうです。
Aまず自分の指で60秒触れてください。機器は不整な脈を数え間違えることがあります。触診でも150前後で整っていて、突然始まったのなら、発作性上室頻拍や心房粗動の可能性があります。本人が平気でも、血圧・意識・胸の症状・息苦しさを確かめ、不安定の徴候がなければ、主治医に「発作中に心電図を撮れる方法」をその場で相談してください。発作が止まってから受診しても、心電図には残りません。徴候が1つでもあれば119番です。
Q動悸を訴えるのに、触れると脈は72で整です。
A訴えを打ち消さないでください。発作性の頻脈は訪問の直前に止まっていることがよくあります。「いつ始まって、いつ止まったか」「どんな感じか(速い、飛ぶ、強い)」「そのとき何をしていたか」を聞いて記録し、次に起きたときに本人や家族が脈を触れて数えられるよう、手首の触れ方を教えておきます。スマートウォッチや家庭用血圧計の記録があれば、それも材料になります。動悸と不安が結びついている人もいますが、それは心臓側を除外したあとの話です。
Q心房細動の人の脈が速くて、自動血圧計が何度もエラーになります。
A心房細動では脈の間隔も強さもそろわないので、機器が測り切れないことがあります。姿勢を整えて2〜3回測り、測れた値を平均する形で記録してください。高齢の心房細動患者で自動血圧計と聴診法を比べた系統的レビューでは、差は5mmHg未満で、実務上は使えるとされています。測れないこと自体も所見なので、「エラー3回、触診で不整・96」と書きます。
Qアブレーションを勧められた利用者さんが「もう年だから」と迷っています。看護師は何が言えますか。
Aガイドラインが、80歳以上であることだけを理由に選択肢から外さないと書いている、という事実は伝えられます。同時に、決めるのは症状の改善という利益と、体の予備力や併存疾患というリスクを本人と共有したうえで、と書かれていることも伝えます。看護師にできるのは、本人が動悸でどれだけ生活を狭めているか、歩ける距離、認知機能、家族の支えといった情報を主治医に渡し、本人が納得して決められる場を整えることです。受けるよう説得することでも、やめるよう勧めることでもありません。
Q頻脈の利用者さんに、看護師の判断で水分を多めに勧めてよいですか。
A脱水の所見(口渇、尿量減少、皮膚の乾燥、食事量の低下)がそろっていて、心不全や腎不全で水分制限がない人なら、通常の範囲で水分を勧めることは看護の判断でできます。ただし心不全のある人では、水分を増やすと浮腫や息切れが悪化することがあります。心不全の既往、利尿薬、水分制限の指示があるかを先に確かめ、あれば主治医に相談してからにしてください。「頻脈だから水」ではなく、「脱水の所見があるから水」です。

この回に関連する記事

連載の外にある、ふくろう訪問看護リハビリステーションのコラムです。この回の内容をさらに掘り下げたいときに読んでください。

3連コラム「訪問看護師のための『脈』の見方」全3回

  1. 不整脈とは——脈が「乱れている」を、どう見て、どう伝えるか
  2. 頻脈をみたとき——速い脈の原因を3つに分け、今すぐ動く線を引く
  3. 徐脈をみたとき——遅い脈で疑う薬と、ペースメーカの適応まで

REFERENCE 参考資料

  1. Panchal AR, Bartos JA, Cabañas JG, et al. Part 3: Adult basic and advanced life support: 2020 American Heart Association guidelines for cardiopulmonary resuscitation and emergency cardiovascular care. Circulation. 2020;142(16 suppl 2):S366-S468. doi:10.1161/CIR.0000000000000916(成人の「脈のある頻拍」アルゴリズム:心拍数はおおむね150以上、不安定の徴候=低血圧・急性の意識変容・ショック徴候・虚血性胸部不快・急性心不全)
  2. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会. 2020年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン. 表44「心房細動に対する心拍数調節療法の薬物治療の推奨とエビデンスレベル」、4.3「心拍数調節における目標心拍数」. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf
  3. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会. 不整脈非薬物治療ガイドライン(2018年改訂版). 表57「WPW症候群および他の心室早期興奮症候群に対するカテーテルアブレーションの推奨」、表58「AVNRTに対するカテーテルアブレーションの推奨」、第3章 4(心房細動アブレーション後の心房頻拍:ブランキング期間 術後3ヵ月). https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2018/07/JCS2018_kurita_nogami.pdf
  4. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会. 2024年JCS/JHRSガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療. 表13・表14・表16、CQ1. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2024/03/JCS2024_Iwasaki.pdf
  5. Andrade JG, Wells GA, Deyell MW, et al. Cryoablation or drug therapy for initial treatment of atrial fibrillation. N Engl J Med. 2021;384(4):305-315. doi:10.1056/NEJMoa2029980
  6. Park SH, Choi YK. Measurement reliability of automated oscillometric blood pressure monitor in the elderly with atrial fibrillation: a systematic review and meta-analysis. Blood Press Monit. 2020;25(1):2-12. doi:10.1097/MBP.0000000000000414
  7. 日本循環器学会/日本不整脈心電学会. 2022年改訂版 不整脈の診断とリスク評価に関するガイドライン. 表15「AFの診断に関する推奨とエビデンスレベル」. https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2022/03/JCS2022_Takase.pdf
本記事は、公開されている法令・通知・ガイドライン等をもとに、訪問看護の実務に必要な範囲を整理したものです。 制度の取扱いは改定や個別の事情によって変わることがあります。実際の判断にあたっては、 主治医、所属事業所の管理者、審査支払機関、地方厚生局等の窓口にご確認ください。 個々の健康上の問題については、かかりつけ医にご相談ください。
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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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