ステーションの業務改善のコツ

STAFF NOTE / 訪問看護リハビリステーション

ステーションの業務改善のコツ
「減らす・移す・速くする」の順番で考える

業務改善は、気合いでも根性でもありません。順番と、測り方と、続け方のことです。厚生労働省が示している進め方の型、2026年の制度改定で軽くなった手続き、そして改善活動そのもののエビデンスを合わせて整理します。

本稿は2026年8月時点の告示・通知等に基づいています。診療報酬・介護報酬は改定や疑義解釈で扱いが変わることがあるため、実際の届出・請求にあたっては必ず最新の通知と、福岡県国民健康保険団体連合会・福岡市・九州厚生局の案内をご確認ください。

01結論:改善は「減らす→移す→速くする」の順番でしか効かない

この記事の結論
  1. 順番を守る。まずやめる仕事を探し(減らす)、次に担い手を変え(移す)、最後に道具で速くする。逆順で始めると、非効率な仕事がそのまま高速で回るだけになります。
  2. 測ってから決める。「なんとなく大変」では改善できません。1週間だけ、粗くていいので全員で時間を書き出す。これが手順のほぼすべてです。
  3. 個人ではなく仕組みを変える。燃え尽きへの介入研究でも、研修を一度やって終わりの受け身の企画では効果が乏しく、時間の確保と管理者の後押しがセットになったときに初めて意味が出ています。

訪問看護の現場でいちばん多い失敗は、③の「速くする」から手をつけてしまうことです。記録システムを新しくする、タブレットを配る、チャットツールを入れる——どれも有効な手ですが、それはその仕事を続けると決めたあとの話です。やめられる仕事、他の人が担える仕事を先に外さないと、道具は「非効率をきれいに保存する装置」になります。

図1 業務改善の3つの順番 STEP 1 減らす やめる・まとめる ・二重入力と転記をなくす ・探す時間/待つ時間を消す ・使っていない帳票を捨てる STEP 2 移す 担い手を変える ・看護師でなくてよい仕事を出す ・事務/法人本部へ寄せる ・手順書とセットで渡す STEP 3 速くする 道具と型を入れる ・記録のテンプレートを決める ・端末・チャット・電子申請 ・繰り返す作業を自動化する よくある失敗 STEP 3 から始める やめられる仕事を残したまま道具を入れると、非効率がそのまま高速で回るだけになります。
図1 順番を守ることが最大のコツ。導入コストがかかるSTEP 3は、STEP 1・2で仕事の総量を絞ったあとに検討する。

02国が用意した型:7つの取組と6つの手順

ゼロから考える必要はありません。厚生労働省が「介護分野における生産性向上ポータルサイト」で、取り組みの分類と進め方を公開しています。訪問看護は「介護サービス事業(医療系サービス分)における生産性向上に資するガイドライン(令和6年度改訂)」と、施設・居宅・医療系に共通する共通冊子が該当します。

7つの取組(何を変えるかのメニュー)

図2 生産性向上のための7つの取組 1 職場環境の整備 5Sの視点で安全な環境と 働きやすい職場をつくる 2 業務の明確化と 役割分担 ムリ・ムダ・ムラを削減 3 手順書の作成 経験と知識を可視化し 標準化する 4 記録・報告様式 の工夫 読み解きやすくする 5 情報共有の工夫 ICTで転記を減らし 時差なく一斉に伝える 6 OJTの仕組み 教育内容の統一と 指導方法の標準化 7 理念・行動指針 自律的に動ける職員を 育てる 4と5は組み合わせると 文書量の削減にも 効果が期待できる 出典:厚生労働省「介護分野における生産性向上ポータルサイト」業務改善に向けた取組
図2 訪問看護で優先度が高いのは 2(役割分担)・4(記録様式)・5(情報共有)の3つ。直行直帰と単独訪問が多いぶん、情報が分断されやすいためです。

6つの手順(どう進めるか)

厚生労働省は改善活動を6手順で示しています。ポイントは「3か月を1周期として、1年でPDCAを回す」という時間の設計です。半年後に一度だけ振り返る、では続きません。

図3 改善活動の標準的な6つの手順 手順1 準備 チームを 立ち上げる 経営層が宣言 手順2 見える化 課題を 洗い出す 業務時間を測る 手順3 Plan 課題を絞り 計画を立てる 3か月が目安 手順4 Do とにかく やってみる 小さな成功から 手順5 Check 途中経過を 確かめる 軌道修正する 手順6 Action 計画を 練り直す 次の3か月へ 3か月×4周=1年でPDCAを回す 手順2で使える無料ツール:課題把握シート/業務時間見える化ツール(厚生労働省ポータルサイトから入手可能)
図3 厚生労働省「介護分野における生産性向上ポータルサイト」改善活動の標準的なステップをもとに作成。

03見える化:測らないものは減らせない

手順2が最大の山場です。ここを飛ばした改善は、たいてい声の大きい人の不満を解決して終わります。訪問看護の場合、1日の時間がどこに消えているのかを実際に測ると、多くの人の直感と結果がずれます。

1週間だけ、15分単位で書く

完璧な調査は要りません。1週間、全員が15分単位で「訪問/移動/記録/連絡・調整/事務・請求/その他」に印をつけるだけで十分です。粗くていいので全員が同じ様式で書くことのほうが大事です。

図4 どこに時間が消えているかを測る 1日の時間の使い方(分類のイメージ図。実際の割合は測って初めてわかります) 訪問(ケアそのもの) 移動 記録 連絡 事務 ▲ 減らせるのは基本的に右の4つ。左端の「訪問」は減らす対象ではなく、増やしたい時間。 ステーションで測る5つの数字 1 1訪問あたりの 記録時間 2 1日の移動時間 と移動距離 3 事業所に戻って やっている作業 4 電話・オンコール の件数と時間 5 月末月初の 請求業務時間 この5つのうち、改善の効果がいちばん早く出るのは 1(記録時間) 毎日、全員に、必ず発生する作業だから。1訪問あたり5分短縮できれば、月に何時間になるか計算してみてください。
図4 移動時間の短縮は訪問エリアの設計に踏み込む話になり、時間がかかります。まずは記録から。

棚卸しシートで、全員から集める

当ステーションでは、看護師・療法士それぞれに現状の業務を書き出してもらうところから始めます。書いてもらう項目は4つです。

項目書いてもらうことこれでわかること
現在の業務の1日の流れ(9:00〜18:00)人によってやり方が違う工程はどこか。属人化の場所。
現在の業務で非効率だと思っていること本人が気づいている無駄。すぐ直せるものが混ざっている。
管理者の代わりに担える業務/管理者の負担になっていると思う業務移せる仕事と、移したいと思っている人の存在。
クリニックの事務に担ってほしい業務法人内で移管できる事務の候補。

目的をはっきり伝えることが前提です。「管理者の業務負担を減らすこと」「みんなが快適に仕事ができるようにすること」——評価のための調査ではないと、最初に言葉にしてください。

注意

見える化の目的を伝えずに時間調査だけ配ると、「効率が悪いと言われている」という受け取られ方をします。厚生労働省のポータルサイトでも、手順1で経営層が事業所全体に取組開始を宣言することが最初に挙げられています。順番を守るのは、ここでも同じです。

04減らす:訪問看護で「二重になりやすい」7か所

ムダのなかでも、いちばん見つけやすくて、いちばん効くのが二重入力と転記です。同じ情報を2回以上、人の手で書いている場所を探します。訪問看護でよくあるのは次の7か所です。

二重になりやすい場所何が起きているか直し方の方向
訪問看護記録書 → 報告書月末に記録を読み返して報告書を書き起こしている記録の項目を報告書の構成に合わせる
記録 → 計画書評価の記載が記録になく、計画書のたびに思い出す記録に「評価」欄を常設する
紙メモ → システム入力訪問先で紙に書き、事業所で入力し直す訪問先で入力を完了させる型をつくる
チャット → 申し送りノート連絡が2か所に分散し、両方見ないと分からない置き場所を1つに決める
予定表 → システムの訪問予定スケジュール変更が2か所で管理されている正本を1つに決め、他は見るだけにする
指示書の期限管理各自が手帳で管理し、抜けたときだけ気づく期限一覧を1枚にまとめ、自動で色が変わるようにする
加算の算定チェック請求時にレセプトを見ながら思い出している訪問した日に確定させる項目を決める

「直し方の方向」は例です。自分のステーションの記録システムでできる形に読み替えてください。

実務のコツ|「探す時間」はゼロ円で消せる

5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)は、7つの取組の1番目「職場環境の整備」にあたる、費用ゼロの改善です。物品棚の定数管理、書類の置き場所の統一、共有フォルダの命名ルール。1日5分の「探す」が10人分あれば、月に約17時間です。地味ですが、投資額に対する効果では最強の部類に入ります。

「やめる会議」より「やめる基準」

やめる候補を議論すると、たいてい「一応残しておこう」に着地します。個別に議論するのではなく、基準を先に決めるほうが速く進みます。

  • 誰も見ていないものはやめる(過去3か月、誰かが参照したかを確認する)
  • 法令・通知で求められていないものは、やめる候補として一度は俎上に載せる
  • 戻せるものから試す。3か月やめてみて困らなければ、それは要らなかったということ
やめてはいけないもの

令和8年度診療報酬改定で、指定訪問看護の運営基準に記録の整備が明記されました。訪問看護記録書・訪問看護指示書・訪問看護計画書・訪問看護報告書・市町村等に対する情報提供書・市町村等との連絡調整に関する記録の6種類は、完結の日から2年間の保存が求められ、かつ正確かつ最新の内容を保つよう整備することとされています。ここは「減らす」の対象外です。

05移す:担い手を書き換える

7つの取組の2番目「業務の明確化と役割分担」がここに当たります。訪問看護ステーションでは、看護職しかできない仕事と、そうでない仕事が混ざったまま管理者に集まるのが典型的な詰まり方です。事務職員がいない事業所では、なおさらそうなります。

図5 その仕事は誰が担えるか 看護職しかできない 看護職なら誰でも リハ職も担える 事務が担える ・訪問看護の実施と判断 ・緊急時の看護上の判断 ・オンコールの一次対応 ・主治医への病状報告 ・計画書/報告書の 内容の確定 ここを増やすのが目的 ・初回訪問の情報収集 ・担当者会議への出席 ・退院時共同指導 ・新人の同行指導 ・記録の内容確認 管理者に集めない =担当制にする ・住環境と福祉用具の評価 ・家族への動作指導 ・目標設定の素案づくり ・事故防止の環境チェック ・研修の企画と実施 看護とリハの往復が 当ステーションの強み ・指示書の受領と期限管理 ・レセプト請求と返戻対応 ・体制等の届出、電子申請 ・書類の発送、押印、保管 ・勤怠、備品発注、契約書類 法人内のクリニック事務へ 移せるものを検討中 仕事を移すときの3条件 ① 手順書がある ②「迷ったらこうする」の判断基準が書いてある ③ うまくいかなかったときの戻し方が決まっている
図5 左から右へ動かせる仕事を探すのが「移す」の作業。動かす先がなければ、それは「減らす」に戻して考える。
実務のコツ|移管は「手順書ごと」渡す

口頭で引き継いだ仕事は、必ず質問として戻ってきます。移した側の負担が減らず、移された側も不安なままという最悪の状態になりがちです。7つの取組の3番目が「手順書の作成」なのは、これが理由です。A4で1枚、スクリーンショットを貼ったものでかまいません。

管理者の事務作業はテレワークでもよい

制度メモ|テレワークの取扱い

厚生労働省は、介護保険サービス事業者におけるテレワークの考え方を事務連絡で示しています(介護保険最新情報Vol.1237、令和6年3月29日)。書類作成等の事務作業については、テレワークで実施しても利用者の処遇に支障がないと考えられるとの整理です。ただし、テレワークで事業所を不在にする職員が出ることで、事業所内で従事する職員の負担が過重になったり、職員間のコミュニケーションが不十分になったりしないよう留意すべきこと、緊急時に連絡が取れる体制を確保すること、個人情報の取扱いに関する法令やガイドラインに準拠することが求められています。テレワークを行える日数・時間数は、サービスの種類や事業所の実態に応じて事業者が個別に判断し、求めに応じて説明できるようにしておく必要があります。

管理者が事業所にいる時間を「事務のための時間」で埋めるのではなく、書類仕事は場所を選ばずに片づけ、事業所にいる時間は相談・同行・調整に充てる。そういう時間の配分の変更も、立派な業務改善です。

06速くする:2026年、制度のほうが軽くなった

令和8年度診療報酬改定と、介護分野の行政手続のデジタル化によって、書類仕事がいくつか正式に軽くなりました。「昔からこうしている」を見直す絶好のタイミングです。

図6 令和8年度改定:軽くなったこと/重くなったこと 軽くなった(やめてよくなった) 訪問看護計画書・報告書 書面の場合も署名・押印を求めない。 様式例から押印欄を削除。 訪問看護指示書 様式の押印欄を削除(医師署名または 記名押印に変更)。従前様式も使用可。 訪問看護ベースアップ評価料の手続 届出時の賃金改善計画書の作成が不要に。 区分変更の届出は1割以上の変動時のみ。 (Ⅰ)は賃金改善算定基礎額の算出が不要。 介護の指定申請・加算届 電子申請・届出システムの使用が基本原則化。 重くなった(新たに求められること) 記録書に「実際の時刻」 予定時刻ではなく、実際の訪問開始時刻と 終了時刻を記録し、保管する。 記録書に「評価」 目標達成の程度と効果について評価を行い、 その内容を訪問看護記録書に記録する。 安全管理の体制確保 考え方・事故発生時の対応方法を文書化し、 原因を解明し再発を防ぐ体制を整備する。 服薬状況(残薬を含む)の把握 運営基準に追加。主治医へ情報提供し、 薬局への情報提供も望ましいとされた。 出典:厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」ほか
図6 押印と計画書の手続は軽くなり、記録の中身への要求は重くなった。「書く量」ではなく「書く場所」が変わったと捉えるのが正確です。

押印欄がなくなった書類は、運用も変える

様式が変わっても、事業所の運用が「印鑑をもらいに行く」ままなら、負担は1ミリも減りません。誰が押印をもらいに行っていたか、その往復に何日かかっていたかを確認して、フローごと書き換えてください。従前の様式も引き続き使用できるとされているため、切り替えは自分たちで意識的に行う必要があります。

電子申請・届出システムは「原則」になった

制度メモ|介護の申請・届出

介護保険法施行規則第165条の7の改正により、介護サービスの指定および報酬請求(加算届出を含む)に関する申請・届出について、「電子申請届出システム」の使用が基本原則化されました。福岡市も、本システムによる受付を原則としています。利用にはデジタル庁のGビズIDが必要で、取得には2週間程度かかります。やむを得ず書面で提出する場合は、各サービスのチェック表に電子申請ができない理由を記載する運用です。

ICT連携には新しい評価がついた

令和8年度改定で訪問看護医療情報連携加算(1,000円・月1回)が新設されました。他の医療機関等の関係職種がICTを用いて記録した診療情報等を取得・活用したうえで、計画的な管理を行った場合の評価です。

  • 訪問看護を行う際、過去90日以内に記録された利用者の医療・ケアに関する情報を、ICTを用いて1つ以上取得していること(特別の関係にある機関が記録した情報を除く)
  • 診療情報等が連携機関間の協議に基づき一元的に管理されたサーバーで保管されていること、参加者の範囲が随時設定可能であること、時系列で速やかに表示されること
  • 連携機関(特別の関係にあるものを除く)の数が5以上であること
  • ICT連携体制を構築している旨を見やすい場所に掲示し、原則としてウェブサイトにも掲載すること(ウェブサイト掲載は令和8年9月30日までの経過措置あり)

点数の大きさより、「連携先とどの情報を、どの仕組みで共有するか」を一度決め切ることに価値があります。電話とFAXで確認していたことが減れば、それがそのまま時間になります。

07記録の型を決めることが、最大の投資対効果

令和8年度改定で、記録書に求められる内容が具体化しました。裏を返せば、何を書けばよいかが国から示されたということでもあります。これを機に、記録のテンプレートを事業所で1つに決めてしまうのが最も効率的です。

記録の枠書く内容これがないと困ること
① 時刻実際の訪問開始時刻と終了時刻(予定時刻ではない)算定要件の根拠が示せない
② 状態体温・脈拍等の心身の状態、病状、家庭等での看護の状況変化の追跡ができない
③ 実施実施した指定訪問看護の内容と、要した時間の概要報告書を一から書き直すことになる
④ 評価目標達成の程度と効果についての評価改定で求められた記載が欠ける/計画の見直しができない
⑤ 次回次回に確認すること、申し送り事項担当が替わったときに引き継げない
+ 服薬服薬状況(残薬の状況を含む)運営基準で把握に努めることとされている

枠を決めるだけで、書く人の迷いが消え、読む人の探す時間が消えます。7つの取組の4番目「記録・報告様式の工夫」そのものです。

「漫然かつ画一的」への注意

同じ改定で、指定訪問看護は利用者の心身の状況等に応じて妥当適切に行い、漫然かつ画一的なものとならないよう、看護目標及び訪問看護計画に沿って行うことが明記されました。心身の状況を踏まえずに一律に日数・回数・実施時間・人数を定めることは認められないとされています。記録のテンプレート化は「様式の統一」であって、「ケア内容の一律化」ではありません。枠は同じでも、中身は一人ひとり違うのが当然です。

あわせて、訪問看護基本療養費(Ⅰ)および(Ⅱ)の実施時間は1回の訪問につき30分から1時間30分程度が標準とされ、標準の時間を下回る訪問が同一日に同一の利用者に複数回、あるいは複数の利用者に頻繁に行われている場合は、指定訪問看護を実施したとは認められないとされています。訪問時の利用者側のやむを得ない事情による場合等は除かれますが、その場合もなぜ短くなったのかが記録から読めることが要になります。

08正直に:改善活動は本当に効くのか

ここまで制度の話をしてきましたが、改善活動そのものの効果についても、正直に書いておきます。

エビデンス|業務改善手法(リーン)の効果

2019年1月から2024年10月までの文献を対象にした系統的レビュー(Wang Jら, Int J Health Policy Manag 2025, doi:10.34172/ijhpm.8974)では、6,021件から60件が選定されました。効果が報告されていたのは効率に関する研究が最も多く49件(待ち時間、在院日数、患者数など)、質の改善が12件、コスト削減が17件でした。一方で、10年前の系統的レビューのレビュー(Andersen H, Røvik KA, Ingebrigtsen T. BMJ Open 2014;4:e003873. doi:10.1136/bmjopen-2013-003873)は「病院におけるリーン思考——エビデンスの不在に処方箋はあるか」という題名で、研究デザインの弱さを正面から指摘していました。

要するに、業務改善は「やれば必ず効く魔法」ではないということです。効いた事例は多く報告されているものの、研究の質にはばらつきがあり、何が効いて何が効かなかったのかは、やってみて測らなければ分かりません。だからこそ手順5の Check が入っているのだと考えるべきです。

エビデンス|看護師の燃え尽きへの介入

臨床看護師を対象とした介入研究のメタアナリシス(Lee M, Cha C. Sci Rep 2023;13:10971. doi:10.1038/s41598-023-38169-8)では、11研究の統合で情緒的消耗感(SMD −0.752、95%CI −1.044〜−0.460、I²=68.3%)と脱人格化(SMD −0.822、95%CI −1.088〜−0.557、I²=60.0%)は減少しましたが、個人的達成感の低下は改善しませんでした。2025年10月までを検索した新しい系統的レビュー・メタアナリシス(Jiménez-García S, Flor-Martínez A. Int J Nurs Stud 2026;178)では、マインドフルネスや短時間のポジティブ心理学的介入が最も安定して効果を示す一方、受け身の教育パッケージだけでは不十分であり、バリント・グループやリフレクティブ・スーパービジョンのような対話型の形式は、時間の確保と管理者の後押しがセットになったときに有望と結論づけられています。

ここから読み取るべきことは1つです。「研修を1回やる」「マニュアルを配る」では変わらない。時間を確保し、管理者が後押しし、続けたときにだけ変わる。業務改善に3か月という周期が設定されているのも、同じ理由です。

数字の読み方について

上記のメタアナリシスはいずれも異質性(I²)が高く、対象・介入内容・評価尺度がばらついています。効果量の数値そのものを自分の事業所にそのまま当てはめることはできません。「介入すれば情緒的消耗感は下がりうるが、達成感は別の要因で決まる」という方向性を読むのが適切な使い方です。

0990日プラン:小さく始めて、続ける

図7 90日で1周する改善のタイムライン 第1〜2週 宣言と体制づくり ・目的を全員に伝える ・担当を2名以上決める ・毎月の会議日を固定する 管理者1人でやらない 第3〜4週 見える化 ・棚卸しシートを配る ・1週間の業務時間を測る ・全部貼り出して眺める 評価には使わない 第5〜8週 3つだけやる ・1つ「減らす」 ・1つ「移す」 ・1つ「速くする」 4つ目に手を出さない 第9〜12週 測って、決める ・同じ指標をもう一度測る ・続けるものを決める ・戻すものを決める 記録を残して次の3か月へ これを4周すると1年。記録を残しておけば、次の周でそのまま材料になります。
図7 最初の1周は「うまくいくこと」より「1周まわし切ること」を目標にしてください。2周目からのほうが必ず速くなります。
実務のコツ|3つに絞る理由

棚卸しをすると、必ず20個以上の課題が出てきます。全部やろうとすると全部中途半端になり、「やっぱり変わらなかった」という記憶だけが残ります。3つに絞り、残りは「次の3か月の候補」として貼り出しておく。捨てるのではなく順番待ちにするのが、納得感を保つコツです。

10うまくいかない8つの理由

よくある失敗何が起きるか対処
道具から入る非効率な業務が高速で保存される減らす→移すを先にやる
全部やろうとするどれも終わらず、疲労感だけが残る3つに絞る
管理者が1人でやる管理者の負担を減らすはずが増える担当を2名以上置く
効果を測らない続けるかやめるかを決められない前後で同じ指標を測る
「忙しいから後で」永遠に来ない。忙しさは改善の理由であって障害ではない会議日を先に固定する
やらされ感形だけ整い、元に戻る目的を最初に言葉にする
記録の型を決めずにシステムを入れる入力先が増えただけになる先に紙で型を確定させる
改善が「増やす」ばかりになるチェックリストと会議が積み上がる1つ足すなら1つやめる

最後の1つが最も見落とされます。改善活動そのものが業務量を増やしていないか、3か月ごとに確認してください。

11Q&A

Q忙しすぎて、改善に割く時間がありません。
A

それが改善が必要な状態そのものです。ただ、いきなり毎週の会議を設けるのは現実的ではありません。まずは月1回30分だけ確保してください。厚生労働省の手順でも、まず取組開始を宣言し、担当を決めるところから始まります。時間を作れないのであれば、最初に取り組むテーマは「会議と申し送りの時間そのものを短くすること」でもかまいません。

Q記録システムを新しくすれば解決しますか。
A

解決する部分と、しない部分があります。転記や二重入力は道具で減らせますが、「何を書くか」が決まっていない状態でシステムだけ替えると、入力先が増えます。先に記録のテンプレート(時刻・状態・実施・評価・次回)を紙で確定させ、それをシステムに移す順序にしてください。道具を入れるなら、入れる前の型づくりが本体です。

Q直行直帰なのに、情報共有の仕組みが要りますか。
A

直行直帰だからこそ必要です。事業所に集まらないぶん、情報は自然には伝わりません。7つの取組の5番目が「情報共有の工夫」で、ICTなどによる転記削減、一斉同時配信による報告・申し送りの効率化、情報共有のタイムラグの解消が挙げられています。まず連絡の置き場所を1つに決めることから始めてください。2か所あると、両方見る手間が全員に発生します。

Q小さい事業所には向かない取り組みではありませんか。
A

逆です。小さいほど、1人が抜けたときの影響が大きく、属人化のリスクが高く、管理者に業務が集中します。また、全員が同じ場にいるので合意形成が速く、試して戻す判断もすぐにできます。厚生労働省の生産性向上ガイドラインも、施設・居宅・医療系のサービス別に分冊化されていて、訪問系サービスの事例が収録されています。

Q誰が旗を振るべきですか。管理者ですか。
A

宣言するのは経営層・管理者ですが、推進役は管理者以外に置くのが定石です。管理者が推進役を兼ねると、「管理者の負担を減らす」という目的と手段が矛盾します。厚生労働省も改善活動の「支援・促し役」を別立てで解説し、ファシリテーションのスキルを整理しています。看護師でも療法士でもかまいません。2名以上で組んでください。

Q効果はいつ出ますか。
A

「減らす」は数週間で出ます。「移す」は手順書ができてから1〜2か月。「速くする」は導入と習熟で3か月以上かかることが多く、いったん遅くなる時期を挟みます。だから3か月が1周期に設定されています。1周目で成果が出なくても、それは失敗ではなく想定内だと最初に共有しておいてください。

Q一言でいうと、何から始めればよいですか。
A

棚卸しシートを配って、1週間だけ時間を測ってください。それだけで、厚生労働省が示す手順2(現場の課題の見える化)を終えたことになります。何を改善するかは、その紙の上に必ず書いてあります。

ステーションからのメッセージ

業務改善という言葉は、しばしば「もっと速く働け」という意味に受け取られます。そうではありません。訪問という、いちばん時間をかけたい仕事のために、それ以外の時間を削るという作業です。図4の帯のいちばん左を厚くするために、右の4つを薄くする。目的はそれだけです。

そして2026年の改定では、押印や計画書まわりの手続きが実際に軽くなりました。一方で、記録の中身に求められることは増えています。手続きの負担が減った分を、記録の質と、利用者さんに向き合う時間に回す——今年の改定は、そういう組み替えを求めていると読むのが正確だと思います。

まずは、書き出すところから。うまくいかなかった取り組みも、記録に残しておけば次の3か月の材料になります。1周まわし切ることを、最初の目標にしましょう。

参考にした資料

  1. 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」(令和8年3月10日版)
    https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
  2. 厚生労働省「介護分野における生産性向上ポータルサイト」/業務改善に向けた取組(7つの取組)
    https://www.mhlw.go.jp/kaigoseisansei/what/effort.html
  3. 同上/改善活動の標準的なステップ(6つの手順)
    https://www.mhlw.go.jp/kaigoseisansei/what/step.html
  4. 同上/業務の改善活動の支援・促し役
    https://www.mhlw.go.jp/kaigoseisansei/support/index.html
  5. 厚生労働省「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」施設・居宅・医療系各サービス共通冊子(令和6年度改訂)/医療系サービスガイドライン(令和6年度改訂)前半・後半
    https://www.mhlw.go.jp/stf/kaigo-seisansei-information.html
  6. 厚生労働省「介護サービス事業所におけるICT機器・ソフトウェア導入に関する手引き」
    https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001276275.pdf
  7. 厚生労働省老健局「介護保険サービス事業者におけるテレワークの取扱いについて」(介護保険最新情報Vol.1237、令和6年3月29日)
    https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2024/0401140404365/ksvol.1237.pdf
  8. 福岡市「電子申請届出システム」(介護保険法施行規則第165条の7の改正に伴う基本原則化)
    https://www.city.fukuoka.lg.jp/fukushi/jigyousyasido/health/00/05/kaigo_densisinsei_2.html
  9. 九州厚生局「訪問看護ステーションの基準に関する届出について(令和8年度診療報酬改定)」
    https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kyushu/gyomu/gyomu/hoken_kikan/kango/todokede_r8.html
  10. Wang J, Lv H, Chen M, Liu C, Ren W, Jiang H, Zhang L. A Systematic Review of Lean Implementation in Hospitals: Impact on Efficiency, Quality, Cost, and Satisfaction. Int J Health Policy Manag. 2025. doi:10.34172/ijhpm.8974
  11. Andersen H, Røvik KA, Ingebrigtsen T. Lean thinking in hospitals: is there a cure for the absence of evidence? A systematic review of reviews. BMJ Open. 2014;4(1):e003873. doi:10.1136/bmjopen-2013-003873(PMID: 24435890)
  12. Lee M, Cha C. Interventions to reduce burnout among clinical nurses: systematic review and meta-analysis. Sci Rep. 2023;13:10971. doi:10.1038/s41598-023-38169-8
  13. Jiménez-García S, Flor-Martínez A. Interventions for preventing or reducing nurse burnout: A systematic review and meta-analysis. Int J Nurs Stud. 2026;178:105271.

本稿の制度に関する記述は2026年8月時点の告示・通知等に基づいています。診療報酬・介護報酬の取扱いは疑義解釈等で変わることがあります。届出・請求の実務にあたっては、必ず最新の通知および福岡県国民健康保険団体連合会・福岡市・九州厚生局の案内をご確認ください。

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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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