訪問1回の組み立て方:ゼロから始める訪問看護

ゼロから始める訪問看護第3回/全10回

訪問1回の組み立て方

玄関の前から次回の予約まで

訪問看護には、病棟の「日勤の流れ」にあたるものがありません。1件目の玄関を開け、閉め、 次の家へ移動し、また開ける。この「1回」の組み立てが自分の中で決まっていないと、 何年たっても訪問は毎回ぶっつけ本番になります。この回では、訪問1回を5つの場面に分けて、 それぞれで何を決めておくかを整理します。あわせて、制度が「ここは必ず」と求めている部分も示します。 新人の方と、同行する先輩の方の双方に読んでいただくことを想定しています。

この連載の現在地 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 第3回 訪問1回の組み立て方

この回の結論

  1. 訪問1回の単位は「玄関を開けてから閉めるまで」ではありません。前回の記録を開いたときに始まり、次回の訪問予定日を書き終えたときに終わります。制度が定める訪問看護記録書Ⅱの様式も、実際の開始時刻から始まり、次回の訪問予定日で終わる形になっています。
  2. 時間は「余ったら何かする」ものではなく、先に配るものです。医療保険の指定訪問看護は1回30分から1時間30分程度が標準と決められており、その中で何にどれだけ使うかを決めておくのが訪問看護計画です。
  3. 時間が足りなくなったとき、落ちるのはいつも同じものです。処置と測定は忘れませんが、説明と家族への関わりは、最初に時間を取っておかないと消えます。国も測定方法も違う2つの調査が、この点だけは一致しています。

SECTION 01 訪問1回は、玄関を開ける前から始まっている

病棟では、看護の単位は「勤務」でした。日勤に入り、受け持ちを割り当てられ、申し送りをして帰る。 その日のうちに何度も同じ人のところへ行けますし、迷ったら詰所に戻れば誰かがいます。

訪問看護の単位は「1回の訪問」です。そして1回の訪問は、玄関を開けた瞬間に始まるわけではありません。 前回の記録を開いた時点ですでに始まっていて、次回いつ誰が来るかを決めて記録を書き終えたところで、 ようやく閉じます。この前後を含めて1つの単位として扱えるようになることが、 1年目にいちばん効く「型」です。

図1 訪問1回を構成する5つの場面 1 出る前 前回の続きから始める 5分前後 前回の記録と指示書を開き、今日の訪問で確かめることを2つか3つ決める。 2 道中と玄関前 道具と身なりを整える 3〜5分 駐車と到着の合図。玄関を開ける前に、手指衛生と持ち込むものを確認する。 3 入って最初の3分 測る前に、見る 3分 顔色、声、呼吸、におい、部屋の様子。前回との差を拾ってから測定に入る。 4 訪問の本体 観察・ケア・説明を配る 30〜60分 説明と相談は余った時間にやるものではない。最初から時間を取っておく。 5 閉じる 次回の予定日まで書いて終わる 5〜10分 本人と家族に1つ返し、次回の日時と連絡先を渡し、実際の時刻から記録する。 ※時間は当ステーションで60分の訪問を組むときの目安。利用者の状態と計画によって配分は変わります。 ※1と5は利用者宅の外での作業です。訪問の実施時間(記録に残す時間)には含めません。

図1 訪問1回を5つの場面に分けたもの。1と5は玄関の外側にあり、ここを飛ばすと、3と4で何を見ればよいかが決まらないまま家に上がることになります。

SECTION 02 出る前の5分——前回の続きから始める

第1回で、訪問看護のアセスメントは前回からの数日間を復元する作業だと書きました。 復元するには、前回の自分(あるいは前回行った同僚)が何を見て、何を保留にしたかを知っている必要があります。 出る前に開くのは、この3つです。

  • 前回の訪問看護記録書Ⅱバイタルの数字だけでなく、「気になったが、その場では確かめられなかったこと」を探します。前回の担当が残した保留は、今日いちばん先に確かめるべきことです。
  • 訪問看護指示書と訪問看護計画書指示書の有効期間が切れていないか。今月の看護目標は何か。今日やると計画に書いてあることは何か。指示書の読み方は「訪問看護指示書の読み方」で扱っています。
  • かばんと車衛生材料、手指消毒剤、手袋、身分証。足りないものは、出る前にしか補充できません。玄関の前で気づいても、もう戻れません。
図2 出る前に開く3つと、そこで決まること 前回の記録書Ⅱ 今日いちばんに確かめること 前回のバイタルと、前回の担当が「確かめられなかった」と書き残したこと。 指示書と計画書 今日やると決めたこと 指示書の有効期間、今月の看護目標、計画に書いてある今日の内容。 かばんと車 戻れなくなる前の最終確認 衛生材料、手指消毒剤、手袋、身分証。玄関の前で気づいても遅い。

図2 出る前の数分でここまで決まっていると、家に上がってからの30分の中身が変わります。

制度メモ 身分証は「持っていく」だけでなく「見せる」もの

指定訪問看護の基準省令は、事業者に対して、看護師等に身分を明らかにする証書や名札等を携行させ、 初回訪問時と、利用者や家族から求められたときは提示するよう指導しなければならないと定めています。 証書には事業所の名称と本人の氏名を記載し、写真の貼付や職種の記載を行うことが望ましいとされています。 「持っているが、かばんの底にある」は、この条文を満たしていません。

実務のコツ かばんは「在庫」ではなく「配置」で管理する

何が入っているかを覚えるのではなく、どこに何があるかを固定します。 利用者宅の床にかばんを広げて探す時間は、そのまま観察と説明の時間を削ります。 1年目のうちに、自分のかばんの配置図を一度紙に書いてみると、抜けが見つかります。

SECTION 03 時間を先に配る——30分から1時間30分をどう使うか

訪問看護の1回あたりの時間は、感覚で決めてよいものではありません。 医療保険の指定訪問看護については、国の通知に標準の実施時間が書かれています。

指定訪問看護の実施時間は、1回の訪問につき、訪問看護基本療養費(Ⅰ)及び(Ⅱ)については30分から1時間30分程度を標準とする。 出典:厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」(令和8年3月5日 保発0305第19号)第4の2

同じ箇所には続きがあります。標準の時間に応じた計画を立てて訪問したが、 利用者側のやむを得ない事情で短くなった場合などを除き、 標準を下回る訪問が頻繁に行われている場合には、指定訪問看護を実施したとは認められないとされています。 さらにその次の項では、利用者の心身の状況等を踏まえずに 一律に日数・回数・実施時間・人数を定めることは認められないと明記されました。 「うちは全員週2回30分で」という組み方が、制度の側から名指しで否定されたということです。

では30分から90分の中で、何にどれだけ使うのか。ここが訪問看護計画の中身です。 下の図は、当ステーションで60分の訪問を組むときの標準的な配分です。 これがそのまま正解というわけではなく、「配分をあらかじめ決めてから玄関に立つ」という手順のほうが要点です。

図3 60分の訪問を1本の帯にすると 12分 25分 10分 8分 5分 導入と観察(12分) あいさつ、最初の3分の観察、バイタル測定。ここを削ると、あとが全部あやしくなる。 ケアと処置(25分) 清潔ケア、創傷処置、カテーテル管理、服薬管理など。計画に書いてある本体。 説明と相談(10分) 本人と家族への説明、次までにやってもらうことの確認。最初に確保しておく枠。 閉じる作業(8分) 次回の日時、連絡先の確認、片づけ、その場でできる記録。 予備(5分) 話が長くなった、処置が難航した、電話が入った。予備がないと説明の枠が食われる。 ※これは当ステーションの目安であり、通知が定めているのは「30分から1時間30分程度を標準とする」という全体の枠だけです。 ※内訳は利用者ごとの計画で変わります。同じ配分を全員に当てはめることは、通知が禁じている「一律」に当たります。

図3 60分をどう配るかの一例。予備の5分をあらかじめ取っておくと、想定外が起きたときに真っ先に削られるのが説明の枠になる、という事故を防げます。

注意 早く終わったときに、時間を「埋めない」

予定より早く終わったとき、何かを足して時間をつじつま合わせするのは逆方向です。 記録に書くのは実際の時刻ですから、短くなったのなら短いまま書き、 なぜ短くなったのかを一行残します。 「本人が入浴直後で処置を希望されなかった」のような理由です。 同じ理由が続くなら、直すのは記録ではなく計画のほうです。管理者に相談してください。

介護保険の訪問看護では、時間が20分未満から1時間30分未満までの区分に分かれており、 どの区分で提供するかはケアプランと訪問看護計画に位置づけられます。 保険による考え方の違いは「医療保険・介護保険・公費」と第2回で扱っていますので、 ここでは「実際の訪問がいつも計画の区分からずれているなら、それは計画のほうを直す合図」とだけ覚えてください。

SECTION 04 玄関の前でやること——持ち込まない、持ち出さない

病棟では、感染対策の設備は建物の側にありました。手洗い場があり、消毒剤が壁についていて、 使い終わったものを捨てる場所が決まっています。訪問看護では、その全部を自分が持っていきます。 そして訪問看護師は、1日のうちに何軒もの家を続けて回ります。 自分が家と家のあいだをつなぐ経路になりうる、という前提から始めてください。

厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き」は、訪問系サービスを含めた標準予防策の基本として、 血液等の体液(汗を除く)はすべて感染性があるものとみなして必ず手袋を着用して触れること、 粘膜と正常でない皮膚にも必ず手袋を着用して触れること、そのうえでこまめに手洗いをすることを挙げています。 また職員については、事業所を離れる際に手指衛生を行い、ケア時に使用した服を着替えるなど、 感染経路の遮断に留意する必要があるとしています。 在宅では、この「区切り」が1日の終わりだけでなく、1軒ごとに発生すると考えてください。

  • 入る前の手指衛生玄関を開ける前に、携帯用の手指消毒剤で1回。前の家から何も持ち込まない、という意思表示でもあります。速乾性の消毒剤は自分で携行します。利用者宅の洗面所が使えるとは限りません。
  • 持ち込むものを絞るかばんごと居室に持ち込まず、必要なものだけを取り出して上がる方法もあります。かばんの底は、玄関の床や車の座席に触れています。
  • 出るときの手指衛生と、次の家までの区切りケアの後、手袋を外した後、家を出るときに手指衛生を行います。使用した物品を持ち帰る場合の扱いは、事業所の手順に従ってください。ここは自己流にしない部分です。
制度メモ 感染予防の備品は、事業所が備え付けるもの

基準省令の衛生管理の条文について、国の通知は、管理者は看護師等が感染源となることを予防し、 また看護師等を感染の危険から守るため、使い捨ての手袋等の感染を予防するための備品等を備え付けるなどの対策を講じる必要があるとしています。 手袋やマスクが足りないのは個人の準備不足ではなく、事業所の体制の問題です。 足りなければ、遠慮せず管理者に言ってください。

実務のコツ インターホンを押す前に、10秒立ち止まる

玄関の前は、切り替えの場所です。前の家のことをいったん置き、これから会う人の名前と、 今日確かめることを頭の中で1回言い直します。 あわせて、駐車の位置が近隣の迷惑になっていないか、雨の日なら傘と靴の始末をどうするかを決めておきます。 訪問先で最初に苦情になるのは、たいていケアの中身ではなく、車と靴と時間の話です。

SECTION 05 入ってからの3分——測る前に、見る

病棟から来た人がいちばん変えにくいのが、ここです。 病棟では、部屋に入ったらまず測ります。体温、血圧、脈拍。数字が出てから考える。 在宅では順番が逆になります。測定は、すでに見て気づいたことを確かめるための道具として使います。

理由は単純で、在宅には比較対象になるモニターも、直前まで見ていた日勤帯の記録もないからです。 数字だけを見ても、それがその人にとって高いのか低いのかは判断できません。 第4回で扱う「その人の平常値」を持っていることと、 今日の顔を見た瞬間の違和感を持っていること。この2つがそろって、はじめて数字が意味を持ちます。

図4 入って最初の3分で見る3つの層 1. 本人 顔色、声の出方、呼吸、姿勢、動きの速さ。話しかけながら見れば、測る前にだいたい分かる。 2. 場 におい、室温、床に増えた物、台所とごみ、薬の残り。前回との差がそのまま情報になる。 3. 介護者 表情、口数、こちらを見る余裕があるか。介護者の消耗は、本人の状態と同じくらい先を左右する。 ※3つを順番に見るのではなく、あいさつと世間話をしながら同時に拾います。3分は「別枠の時間」ではありません。

図4 最初の3分で拾う3層。ここで違和感を持てたかどうかで、そのあとの測定とケアの意味が変わります。

制度メモ 「把握に努める」と書かれている範囲は、思ったより広い

基準省令の心身の状況等の把握について、国の通知は、把握に努めるべき内容として 病歴、病状、服薬状況(残薬の状況を含む)、介護の状況、家屋の構造等の家庭環境、 他の保健・医療・福祉サービスの利用状況等を挙げ、 これらは訪問看護記録書に記入して保存しなければならないとしています。 つまり、部屋の様子や介護者の状況を見るのは、余裕があればやることではなく、制度が想定している業務の一部です。

他職種はここを見ている 残薬

医師は、処方どおりに飲めている前提で次の処方を考えます。薬剤師は、渡した薬がどう使われたかを知りません。 残薬の山を見ることができるのは、その家に上がる職種だけです。 国の通知も、主治医に対して心身の状況や服薬状況(残薬の状況を含む)等の情報提供を行うこと、 さらに必要に応じ、利用者の同意を得て保険薬局に情報提供することが望ましいとしています。 「たくさん余っていました」ではなく、「◯月◯日処方分が◯日分残っています」と言えると、処方が動きます。

SECTION 06 落ちるのは、いつも説明のほう

訪問時間が押したとき、何が削られるか。これは個人の性格の問題ではなく、 どこの国でも同じところが削られることが、観察研究で示されています。 ただし、こうした研究の数字は、そのまま並べて比べられるものではありません。 ここでは2つの研究を、食い違いも含めて見ておきます。

図5 在宅ケアの時間配分を調べた2つの研究 利用者に直接向き合う時間 それ以外の業務(移動・記録・調整) どちらとも分類できなかった分 フィンランド 2020 看護師18人・観察記録196件/分母は8時間勤務全体 38% 50% 12% イタリア 2026 看護師300人・訪問527件/分母は記録された活動時間343時間 64.3% 35.7% 割合そのものは比べられません。ただし、落ちていたものは一致しています。 フィンランドでは明示的な患者教育が訪問の3.5%でしか観察されず、イタリアでは家族の参加と セルフケア教育が「行われていなかった重要な直接ケア」として報告されています。

図5 2つの研究の直接/間接の割合。フィンランドは休憩や会議を含む勤務時間全体が分母、イタリアは記録された活動時間の合計が分母で、そもそも測っているものが違います。

数字が食い違う理由は3つあります。 1つめは分母です。フィンランドの研究は8時間勤務まるごとを分母にしており、 休憩や職員間の会議、翌日の準備も「直接ケア以外」に入っています。 イタリアの研究は、看護師が記録した44種類の活動時間の合計を分母にしています。 2つめは測り方で、前者は学生による第三者の観察、後者は看護師の自己記録です。 3つめは国と制度で、訪問1回に何を含めるかがそもそも異なります。

ですから「日本の訪問看護の直接ケアは何%か」をこの2つから言うことはできません。 それでも、両方の研究がそろって指摘していることが1つあります。 本人と家族への説明・教育が、ほとんど行われていないという点です。 フィンランドの研究では、明示的な患者教育が観察されたのは訪問の3.5%でした。 イタリアの研究は、時間の6割以上が直接ケアに使われていたにもかかわらず、 家族の関与とセルフケア教育は行われていなかったと結論に書いています。 直接ケアの割合が高くても低くても、消えるのは同じ場所だということです。

実務のコツ 説明は「最後の5分」ではなく「処置の最中」に置く

最後にまとめて説明しようとすると、押した日に必ず消えます。 創部を洗いながら「ここ、前より赤みが引いてきています」と言う。 薬の袋を数えながら「この分が残っているのは、朝を飛ばした日がある感じですか」と聞く。 手が動いているあいだに言葉を乗せると、説明の時間はケアの時間と重なるので、最初に消える枠ではなくなります。

SECTION 07 訪問を閉じる——次回の予定日までが今日の訪問

国が示している訪問看護記録書Ⅱの参考様式を見ると、書く順番がそのまま訪問の順番になっています。 実際の訪問日時から始まり、利用者の状態、バイタルサイン、実施した看護の内容と続き、 いちばん下に「次回の訪問予定日」の欄があります。 訪問1回の記録は、次にいつ来るかを書いたところで完成する、という設計です。

図6 訪問を閉じるときにやる4つ 1 今日わかったことを、1つ返す 本人と家族へ 「変わりないですね」で終わらせない。良くなった点でも、気になる点でも、具体的に1つ。 2 次までにやることを、1つ渡す 宿題は1つだけ 3つ頼むと3つとも実行されない。いちばん効くものを1つに絞って、紙に書いて置いてくる。 3 次回の日時と、来る職種を確認する 記録書Ⅱに欄がある 口頭で言うだけにしない。次が自分でない日は、誰が来るかまで伝えておく。 4 困ったときの連絡先が手元にあるか見る 冷蔵庫か電話の横 渡した文書が見当たらないなら、その場でもう一度出す。夜に探させない。 ※訪問看護記録書Ⅱの参考様式には「次回の訪問予定日」の欄が設けられています(厚生労働省 保医発0327第10号 参考様式2)。

図6 閉じるときの4つ。どれも1分かかりませんが、抜けると次の訪問までの数日間に効いてきます。

制度メモ 24時間対応体制加算を算定しているなら、連絡先は「文書で交付」

24時間対応体制加算について、国の通知は、この体制にある旨を説明するにあたっては、 利用者に対して訪問看護ステーションの名称、所在地、電話番号、ならびに時間外及び緊急時の連絡方法を記載した文書を交付することを求めています。 また、利用者等から電話等で看護に関する意見を求められて対応した場合や、緊急に訪問した場合は、 その日時・内容・対応状況を訪問看護記録書に記録することとされています。 夜間の電話は「話して終わり」ではなく、記録までが一続きです。

SECTION 08 記録は「実際の時刻」から始まる

記録と書類そのものは第8回でまとめて扱いますが、訪問1回の組み立てという意味では、 ここで押さえておくことが1つあります。令和8年6月からの取扱いで、 訪問看護記録書Ⅱに書く訪問時間は「実際の指定訪問看護の開始時刻及び終了時刻」であることが、 記載要領の中で明確に書かれました。

あわせて、指定訪問看護の提供にあたっては目標達成の程度とその効果等について評価を行い、 その内容を訪問看護記録書に記録すること、必要に応じて計画書の見直しを行うことも求められています。 実施したことを並べるだけでは、記録として足りない、ということです。

訪問看護記録書Ⅱの欄訪問中のどこで拾うか1年目が落としやすいところ
実際の訪問日時玄関を入った時刻と、出た時刻予定の時刻をそのまま書いてしまう
利用者の状態(病状)最初の3分と、ケア中の会話「著変なし」で済ませ、前回との差が残らない
バイタルサイン測定(体温・脈拍・呼吸・血圧)呼吸数を数えていない。様式には欄がある
実施した看護等の内容ケアと、そのときの説明処置は書くが、説明した内容が書かれない
評価訪問の終わりに考えるやったことの列挙で終わり、効果の判断がない
次回の訪問予定日閉じるとき口頭で伝えて、記録に書かない

表1 訪問看護記録書Ⅱの参考様式にある欄と、それを訪問中のどこで拾うか。出典:厚生労働省「訪問看護計画書等の記載要領等について」(令和8年3月27日 保医発0327第10号)参考様式2および第一の2の(3)。

注意 記録の訂正には作法がある

国の通知は、記録の訂正は訂正した者、内容、日時等が分かるように行われなければならないとし、 字句などを不当に変更する改ざんを行ってはならないとしています。 紙であれば二重線と訂正者の記載、電子カルテであれば訂正履歴が残る操作を使います。 「書き直したほうがきれいだから」で上書きしないでください。 なお、利用者ごとの記録は、その完結の日から2年間保存することとされています。

実務のコツ その場で書くもの/戻ってから書くものを分ける

時刻とバイタルは、その場で書かないと確実に曖昧になります。 一方で、評価や気づいたことの整理は、目の前で考え込むより、車に戻ってからのほうが速いことが多いです。 当ステーションでは「数字はその場、文章は車に戻って3分以内」を目安にしています。 次の家に着いてから前の家のことを書くのは、いちばん抜けが出ます。

SECTION 09 予定どおりに終わらなかった日

ここまでは、うまく組み立てられた日の話です。実際には、予定どおりに終わらない日のほうが多いかもしれません。 大事なのは、うまくいかなかったこと自体ではなく、うまくいかなかった内容を3つに分けて扱えることです。

図7 予定どおりに終わらなかった日の3つのパターン A 時間が足りなかった まず、自分が何を優先して何を残したのかを言葉にする。残したのは偶然ではなく判断のはず。 記録には、できたことと、できなかったことと、その理由を書く。次に行く人はそこを読む。 B 予定していたケアを、本人が希望しなかった 断られたこと自体が情報。体調か、気分か、前回のやり方か。推測ではなく聞いた言葉で残す。 1回で判断しない。2回続いたら、主治医とケアマネジャーに共有して計画を見直す。 C 予定外のことが起きた 発熱、転倒、いつもと違う言動。ここで決めるのは処置の中身ではなく、報告の締切のほう。 今すぐ(その場で主治医へ)/今日中(事業所に戻る前に)/次回まで(記録に残して申し送る)。 3つに共通してやること 実際の開始時刻と終了時刻を、予定ではなく実績で書く。そのうえで、判断した理由を1行残す。

図7 予定どおりにいかなかった日ほど、記録の値打ちが上がります。ここを書いておくと、計画を直すときの材料になります。

制度メモ 急変したときに、まずやると決まっていること

基準省令の緊急時の対応について、国の通知は、訪問中に利用者の病状に急変等が生じた場合には、 運営規程に定められた緊急時の対応方法に基づき、速やかに主治医に連絡を行い指示を求めるとともに、 必要に応じて臨時応急の手当を行う等の必要な措置を講じなければならないとしています。 判断してから連絡するのではなく、連絡しながら判断する。 同じ通知には、訪問看護は保険医療機関内の場合と異なり看護師が単独で行うことに十分留意し、 慎重な状況判断が要求されることを踏まえ、主治医と密接な連携を図ることとも書かれています。 1人で決めなくてよい、というのは制度の側の前提でもあります。

この回で出てきた決まりの一覧

場面やること根拠
出る前指示書の有効期間と、計画に書かれた今日の内容を確認する基準省令第14条・第16条
玄関先身分証を携行し、初回訪問時と求められたときは提示する基準省令第11条
入ってから病状、服薬(残薬を含む)、介護の状況、家屋の状況を把握する基準省令第9条
訪問中妥当適切に行い、漫然かつ画一的なものにならないようにする基準省令第14条/留意事項 第4の3
時間1回30分から1時間30分程度を標準として計画する留意事項 第4の2
急変時速やかに主治医へ連絡して指示を求め、必要に応じ臨時応急の手当を行う基準省令第19条
記録実際の開始・終了時刻、実施内容、評価を書く記載要領/留意事項 第4の4・第4の6
事業所として日々の利用者氏名・訪問場所・訪問時間・訪問人数等を記録し保管する留意事項 第4の6

表2 この回で触れた決まりの一覧。「基準省令」は指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準、「留意事項」は令和8年3月5日 保発0305第19号を指します。いずれも令和8年6月1日施行・適用のものです。

訪問1回の型が身につくと、次に効いてくるのは中身のほうです。 第4回では、その30分から60分のあいだに「からだをどう見るか」を扱います。 技術と姿勢の全体像については、「訪問看護師が身につけるべき知識・技術・姿勢」もあわせてお読みください。

当ステーションの視点

1回の訪問は、玄関ではなく、次回の予定日で終わります。

病棟では、勤務の終わりに申し送りがあって、続きは次の人がやってくれました。在宅は違います。 玄関を閉めたあと、次にその家に入るのは3日後の自分か、別の誰かです。 それまでのあいだ、その家では誰も看護をしません。

ですから訪問を閉じるというのは、自分の作業を終えることではなく、 次の訪問までの数日間を、その家が自力で持ちこたえられる状態にして出てくることです。 持ちこたえるための材料は、3つしかありません。 1つめは、本人と家族が「何を見ていればいいか」を知っていること。 2つめは、困ったときにどこへ電話すればいいかが、探さなくても手元にあること。 3つめは、次にいつ、誰が来るかが決まっていること。

この3つがそろっていない訪問は、予定した処置をすべて時間内に終えていても、まだ閉じていません。 逆に言えば、処置が予定どおりにいかなかった日でも、この3つを置いてこられたなら、その訪問は成立しています。 1年目のあいだは、訪問の出来をここで測ってください。 手が速くなるのは、そのあとで構いません。

採用のご案内

ふくろう訪問看護リハビリステーションは、
訪問看護が未経験の方を歓迎しています。

この連載は、訪問看護の経験がないまま入職した看護師が、ひとりで訪問して、 観察して、判断して、報告できるようになるまでの道のりをそのまま書いたものです。 言いかえれば、当ステーションが新しく入った人と一緒にたどる順番そのものです。 経験がないことは、ここでは前提であって、条件ではありません。

1. いきなり一人にしません 見学から一部実施、メイン担当、見守り、単独訪問へ。段階を戻すことを失敗と呼びません。
2. 医師との距離が近い環境 同じ法人にふくろう訪問クリニックがあり、迷ったときに相談できる相手がすぐ近くにいます。
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いちばん早いのは、当ステーションへ直接ご連絡いただくことです
  1. 日程が早く決まります。間に人が入らないぶん、お問い合わせから見学、面談までを最短の日程で組めます。
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まずは見学だけでも歓迎します/お電話・メールどちらでも

ブランクのある方、病棟以外の経験しかない方、まず話だけ聞いてみたいという方も、お気軽にご連絡ください。

1年目チェックリスト(第3回ぶん)

  • 出る前に、前回の記録書Ⅱから「気になったが確かめられなかったこと」を1つ挙げられる
  • 玄関の前で、今日確かめることを2つか3つ、言葉にして言える
  • 身分証を携行しており、求められたらすぐ出せる場所に入れている
  • 自分の担当する訪問時間の中で、説明にあてる枠を先に決めている
  • 玄関を開ける前と、家を出るときに手指衛生をしている
  • 測定に入る前に、本人・場・介護者の3つを見ている
  • 帰る前に、次回の日時と、連絡先の紙がどこにあるかを確認している
  • 記録に、予定の時刻ではなく、実際の開始時刻と終了時刻を書いている

Q&A よくある質問

Q訪問が予定より早く終わってしまいます。時間を延ばすために、何か足したほうがいいですか。
A足さないでください。記録に書くのは実際の時刻ですから、短くなったのならそのまま書き、理由を1行残します。ただし、短い訪問が続くのは放置してよい話ではありません。通知は、利用者側のやむを得ない事情による場合などを除き、標準の実施時間を下回る訪問が頻繁に行われている場合には指定訪問看護を実施したとは認められない、としています。直すのは記録ではなく計画のほうなので、管理者に相談してください。
Q記録は訪問先で書くべきですか、事業所に戻ってから書くべきですか。
Aどちらでも構いませんが、実際の開始時刻・終了時刻とバイタルは、その場でないと必ず曖昧になります。一方で評価や気づきの整理は、目の前で考え込むより、退出後に短時間で書いたほうが速いことが多いです。避けたいのは、次の家に着いてから前の家の記録を書くことです。
Q家族から「ついでにこれもお願いします」と頼まれたときは、どうすればいいですか。
Aその場で足すと、たいてい説明の枠が消えます。断るのではなく、預かってください。「今日はここまでの時間しか取れないので、次までにできるか主治医とケアマネジャーに確認します」と伝え、事業所に持ち帰ります。指定訪問看護は指示書と訪問看護計画に基づいて行うものなので、内容を増やすなら計画の側を動かすのが筋です。
Q「測る前に見る」と言われても、つい血圧計から出してしまいます。
A順番を無理に変えなくて構いません。血圧計を出しながら話しかければ、その数十秒で顔色も声も呼吸も見えます。慣れるまでの練習としては、玄関を出たあとに「今日、部屋に入って最初に目に入ったもの」を1つ書き出してみてください。書けない日が続くなら、まだ測定に意識が寄っています。
Q次回の訪問日は、その場で決めてしまってよいのですか。
A定期の曜日が決まっているなら、その確認をする場です。回数や曜日を変える話になったときは、その場で確定させないでください。介護保険の訪問看護はケアプランに位置づけられて動いていますし、医療保険でも回数は指示と計画に関わります。「持ち帰って調整します」で構いません。
Q1日に何件回れるようになれば一人前ですか。
A件数は、地域の広さ、利用者の状態、その日の担当によって変わるので、目標にする数字ではありません。当ステーションが1年目に見ているのは、件数ではなく「次に行く人が困らないだけのものを持ち帰れているか」です。件数は、それができるようになると後から自然に増えます。

連載「ゼロから始める訪問看護」全10回

  1. 訪問看護という仕事の全体像——病棟と何が逆転するのか
  2. 制度の入口——使う保険と、指示書という1枚
  3. 訪問1回の組み立て方——玄関の前から次回の予約まで
  4. からだをみる——「その人の平常値からのズレ」で読む
  5. 暮らしをみる——情報は家の中に置いてある
  6. 「いつもと違う」に気づき、動く——予測と急変時の初動
  7. 報告・連絡・相談——SBARと「今すぐ/今日中/次回まで」
  8. 記録と書類——訪問看護記録書・計画書・報告書
  9. 多職種連携——誰が何を持っていて、何を待っているか
  10. 家族とともにいる——意思決定支援から看取りまで

REFERENCE 参考資料

  1. 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」令和8年3月5日 保発0305第19号(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686845.pdf
  2. 厚生労働省「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」令和8年3月5日 保発0305第20号(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001666806.pdf
  3. 厚生労働省「訪問看護計画書等の記載要領等について」令和8年3月27日 保医発0327第10号(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681763.pdf
  4. 「保険医療機関及び保険医療養担当規則等の一部を改正する省令」令和8年厚生労働省令第21号(第3条が指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準)(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665209.pdf
  5. 「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件」令和8年厚生労働省告示第74号(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665206.pdf
  6. 厚生労働省保険局医療課「令和8年度診療報酬改定について【訪問看護ステーション向け】」令和8年3月10日版(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001671099.pdf
  7. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」関係法令・通知等(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  8. 厚生労働省老健局「介護現場における感染対策の手引き 第3版」令和5年9月(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001149870.pdf
  9. Vaartio-Rajalin H, Näsman Y, Fagerström L. Nurses’ activities and time management during home healthcare visits. Scand J Caring Sci. 2020;34(4):1045–1053. doi:10.1111/scs.12813
  10. Iovino P, et al. Direct and Indirect Nursing Activities in Three Home Care Settings in Italy: An Observational Time and Motion Study. Public Health Nurs. 2026;43(2):346–354. doi:10.1111/phn.70042
本記事は、公開されている法令・通知・ガイドライン等をもとに、訪問看護の実務に必要な範囲を整理したものです。 制度の取扱いは改定や個別の事情によって変わることがあります。実際の判断にあたっては、 主治医、所属事業所の管理者、審査支払機関、地方厚生局等の窓口にご確認ください。 個々の健康上の問題については、かかりつけ医にご相談ください。 なお、本記事の作成にあたって、企業等からの資金提供や便宜供与は受けていません。
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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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