要介護度は「誰が」「どのように」決めるのか

「お母さんは要介護2です」――介護保険を使い始めるとき、必ず耳にするこの「要介護度」。でも、いったい誰が、何を根拠に決めているのか、ご存じでしょうか?
実は要介護度は、医師が一人で決めるものでも、役所の窓口で決まるものでもありません。複数の専門家とコンピュータ判定を組み合わせた「二段階の審査」を経て、公平に決められています。今回はその仕組みを、訪問看護の現場からわかりやすく解説します。
結論:最終的に決めるのは「市区町村」。ただし二段階の審査つき
要介護度を認定する主体は、介護保険の保険者であるお住まいの市区町村です。ただし市区町村が独断で決めるわけではなく、次の流れで「一次判定(コンピュータ)」と「二次判定(専門家会議)」という二段階のチェックを経て決定されます。
申請本人・家族など
市区町村の介護保険窓口に申請します。本人や家族のほか、地域包括支援センターや居宅介護支援事業所などに申請を代行してもらうこともできます。
認定調査(訪問調査)認定調査員
市区町村の職員などの認定調査員が自宅や入院先を訪問し、全国共通の74項目の基本調査(体の動き・生活動作・認知機能など)と、数字にできない事情を書き残す「特記事項」を記録します。
主治医意見書かかりつけ医
市区町村からの依頼で、かかりつけ医が病気の状態や心身の様子について意見書を作成します。費用は市区町村が負担するため、本人の自己負担はありません。
一次判定コンピュータ
調査結果と主治医意見書の一部をもとに、全国共通の判定ソフトが「要介護認定等基準時間」=介護にかかる手間を時間に換算した指標を計算し、機械的に要介護度の候補を出します。
二次判定介護認定審査会
保健・医療・福祉の専門家(医師・看護師・介護福祉士など)で構成される介護認定審査会が、一次判定の結果に「特記事項」と「主治医意見書」を照らし合わせ、実態に合っているかを合議で審査します。
認定・結果通知市区町村
審査会の判定に基づいて市区町村が認定し、結果を通知します。申請から通知までは原則30日以内とされています。
「コンピュータの客観性」と「専門家の目」の両方を通すことで、全国どこでも公平に、かつ一人ひとりの実情に合わせて判定できる仕組みになっています。主治医が一人で決めるわけでも、調査員の印象で決まるわけでもありません。
「どのように」決まる? 鍵は”介護の手間を時間に換算”
一次判定:介護にかかる手間を「分」で見積もる
一次判定のコンピュータは、認定調査の74項目のデータから、食事・排せつ・入浴・移動・認知症状への対応など、1日にどれくらいの介護の手間(時間)が必要かを統計的に推計します。これが「要介護認定等基準時間」です。この時間が長いほど、重い区分に判定されます。
※基準時間は「実際に受けている介護時間」ではなく、判定用に統計的に算出されるものさしです。
要支援2と要介護1は基準時間が同じ帯で、状態の安定性や認知機能などにより振り分けられます。
二次判定:数字に表れない「実情」をすくい上げる
コンピュータは客観的ですが、実情とずれることもあります。たとえば「調査の日はたまたま調子がよく、いつもより動けてしまった」「認知症で日によって波が大きい」といったケースです。
そこで二次判定では、介護認定審査会の専門家たちが、調査員の書いた特記事項と主治医意見書を読み込み、一次判定の結果が妥当かを議論します。この審査で一次判定の結果が変更されることもあります。要介護度だけでなく、認定の有効期間もここで決まります。
認定調査のとき、つい頑張って「できます」と答えてしまう方が少なくありません。しかし判定の材料は調査の記録と意見書がすべてです。「普段の一番大変なとき」の様子、夜間の状態、日によるムラを、家族が同席して具体的に伝えることが、実情に合った認定につながります。メモを用意しておくのもおすすめです。
よくある質問
Q1. 認定結果に納得できないときは?
まずは市区町村の窓口やケアマネジャーに相談を。状態が変わった場合は「区分変更申請」でいつでも見直しを求められます。また、都道府県の介護保険審査会への審査請求(不服申立て)という制度もあります。
Q2. 認定はずっと有効ですか?
いいえ、有効期間があります。新規認定は原則6か月、更新認定は原則12か月で、状態が安定している場合は最長48か月まで延長できることになっています。期限が近づいたら更新申請が必要です。
Q3. 結果が出る前に介護サービスは使えますか?
申請日にさかのぼって認定されるため、申請後すぐに暫定的にサービスを利用開始できる仕組みがあります。急ぎの場合は地域包括支援センターやケアマネジャーにご相談ください。
ふくろう訪問看護リハビリステーションより
要介護認定は、介護保険サービスの入り口となる大切な手続きです。「そろそろ申請したほうがいい?」「調査で何をどう伝えればいい?」「認定結果が実態と合っていない気がする」――そんなお悩みは、日頃からご自宅での生活を看ている訪問看護師・リハビリスタッフが一緒に考えることができます。
福岡市早良区を中心に、看護師・理学療法士・作業療法士がご自宅へお伺いしています。どうぞお気軽にご相談ください。
福岡市で申請するには
福岡市でも認定の流れは本記事のとおり全国共通ですが、申請窓口は「福岡市要介護認定事務センター」に集約されています。次の3つの方法で申請できます。
申請方法(いずれか)
① 郵送:福岡市要介護認定事務センターへ申請書類を郵送
② 窓口:各区役所の福祉・介護保険課に隣接する「事務センター支部窓口」で申請(早良区にお住まいの方は早良区役所内の支部窓口へ)
③ オンライン:マイナポータルから電子申請
福岡市要介護認定事務センター
〒810-0072 福岡市中央区長浜3丁目11番3号 505号室
電話:092-711-6030(認定結果へのご相談もこちら)
※本人や家族による申請のほか、地域包括支援センター(いきいきセンターふくおか)や居宅介護支援事業所などによる代行申請も可能です。
※結果通知は法律上「原則30日以内」ですが、福岡市では実際には1〜2か月程度かかる場合があります。サービス利用をお急ぎの場合は、申請と並行して早めにご相談ください(申請日にさかのぼって認定されるため、暫定利用が可能です)。
※令和8年(2026年)5月1日から申請書の様式が変更されています。最新の様式は福岡市ホームページからダウンロードできます。
参考資料
- 厚生労働省「要介護認定はどのように行われるか」(要介護認定に係る制度の概要)
- 厚生労働省 老健局「認定調査員テキスト2009 改訂版(令和6年4月改訂)」
- 兵庫県「介護認定審査会の手順とポイント」介護認定審査会委員研修資料(令和6年度)
- 厚生労働省 老健局「要介護認定の有効期間の見直しについて」(令和3年4月施行:更新認定の有効期間上限を48か月に延長)
- 福岡市「要介護認定」関連ページ(【認定の流れ1】まず、申請します/審査・判定が行われます/結果が通知されます)(2026年時点)
※本記事は2026年7月時点の制度に基づき作成しています。個別の手続きの詳細は、お住まいの市区町村の介護保険窓口にご確認ください。

