制度の入口:ゼロから始める訪問看護

ゼロから始める訪問看護第2回/全10回

制度の入口

使う保険と、指示書という1枚

訪問看護は、主治医から届く1枚の紙から始まります。その紙がなければ、どれだけ必要に見えても訪問できません。 そして同じ看護をしていても、医療保険で行くのか介護保険で行くのかによって、行ける回数も、書く書類も、 連絡する相手も変わります。この回では、担当を持ったときに「この人は何の指示書で、どの保険で、週何回まで行けるのか」を 自分の言葉で言えるようになることを目標にします。制度が苦手な人ほど、最初にここを通っておくと後がずいぶん楽になります。

この連載の現在地 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 第2回 制度の入口——使う保険と、指示書という1枚

この回の結論

  1. 訪問看護は、主治医の訪問看護指示書がなければ1回も訪問できません。指示期間が切れた日の訪問は、あとから取り返せません。
  2. 医療保険か介護保険かは、事業所も本人も選べません。年齢・要介護認定・病名・状態の4つで決まります。認定があれば介護保険が原則で、そこから外れる例外は3つだけです。
  3. 制度を覚える理由は、請求を間違えないためではありません。その人にまだ使える枠を、見落とさないためです。

SECTION 01 訪問看護は、紙が1枚届いてから始まる

病棟にいたころ、医師の指示は電子カルテの中にありました。朝、指示を確認して、その日のケアが決まる。 指示が変われば画面が変わり、変わったことはすぐにわかりました。

在宅では、指示は紙で届きます。訪問看護指示書という1枚です。主治医が書き、ステーションに送られてきて、 ファイルに綴じられます。この1枚がなければ、どれだけ訪問が必要に見える人でも、訪問看護として伺うことはできません。 逆にいえば、訪問看護師の仕事は「この紙に書かれた期間と内容の範囲で、家に上がって、自分で判断して動く」ことです。 範囲を決めているのが制度で、その中身を決めているのが看護です。

訪問1回を支えている紙は、4枚ある

指示書だけではありません。ひとつの訪問が制度の上に成り立つまでに、少なくとも4枚の紙が動いています。 誰から誰へ渡る紙なのかを、最初に整理しておきましょう。

図1 訪問1回を支えている4枚の紙 医師から届く ステーションから出す 利用者と交わす 1 訪問看護指示書 主治医からステーションへ。この1枚がなければ、1回も訪問できない。 2 訪問看護計画書 ステーションから主治医と利用者へ。何を目標に、何をするかを決めて渡す。 3 訪問看護報告書 ステーションから主治医へ。月に1回、状態と実施した内容を返す。 4 契約書・重要事項説明書 ステーションと利用者・家族。訪問を始める前に説明し、同意をいただく。 ※ 指示書は主治医が書き、計画書と報告書は看護師が書く。契約書と重要事項説明書は管理者が交わす。 ※ このうち期限切れで困るのは指示書。その期限に最初に気づくのは、たいてい訪問に行く看護師。

図1 訪問1回を支えている4枚の紙。新人のうちは「自分が書くのは2と3」と覚えておけば十分だが、1の期限だけは自分で見る習慣をつける。

実務のコツ

訪問に出る前に、指示書の「指示期間」の欄だけ見る。30秒で終わります。 担当を持ったら、受け持ち全員の指示期間の終了日を自分のカレンダーに書き出しておくと、 切れる前に主治医へ依頼できます。切れてから慌てるのと、2週間前に動くのとでは、まったく違う仕事になります。

SECTION 02 「指示書」と呼んでいる紙は、5種類ある

現場では全部まとめて「指示書」と呼びますが、様式は5種類あります。 何が出ているかによって、行ける回数も、使う保険も、書く書類も変わります。 まずは名前と有効期間だけ、頭に入れてください。

指示書出す医師有効期間出ると何が変わるか
訪問看護指示書 主治医(1人) 最長6か月。指示期間の記載がなければ交付日から1か月 訪問看護が始められる。すべての土台になる1枚
特別訪問看護指示書 主治医 診療の日から14日以内。原則、月1回 その期間は医療保険になり、週4日以上の訪問ができる
精神科訪問看護指示書 精神科を標榜する医療機関の精神科の医師 最長6か月 精神科訪問看護になる(認知症を除く)。医療保険で行く
精神科特別訪問看護指示書 同上 14日以内。月1回 急性増悪などのときに、一時的に回数を増やせる
在宅患者訪問点滴注射指示書 主治医 7日以内 週3日以上の点滴を、看護師が実施できる

表1 指示書の種類と有効期間。特別訪問看護指示書は、気管カニューレを使用している状態の人と、真皮を越える褥瘡がある人だけ月2回まで交付できる。 欄の読み方は「訪問看護指示書の読み方・注意点」で1欄ずつ解説しています。

注意

指示期間が切れている日の訪問は、あとから指示書をもらっても取り返せません。 「先生に頼んであります」は、まだ紙が届いていないという意味です。 期限はステーションの持ち出しに直結するので、気づいた人がその日のうちに管理者へ伝えてください。 新人が言い出しても、誰も怒りません。むしろ助かります。

制度メモ

令和8年度の診療報酬改定(令和8年6月1日施行)で、指示書の様式から押印欄が削除され、 交付を受けた指示書は訪問看護記録書等と同じく2年間保存することとされました。 あわせて、漫然かつ画一的な訪問を行わないこと、訪問の開始時刻と終了時刻を記録することが明確化されています。 「先月と同じだから今月も同じ回数」という決め方は、制度の側からも見直しを求められている、と理解しておいてください。

SECTION 03 保険は「選ぶ」ものではなく「決まる」もの

新人が最初に戸惑うのが、同じ訪問看護なのに医療保険と介護保険の2つがあることです。 ここで大事なのは、どちらを使うかを、事業所も本人も選べないということです。 法律で、介護保険が使えるならそちらが優先すると決まっています。

被保険者に係る……訪問看護療養費……の支給は、同一の疾病又は負傷について、 介護保険法の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない。 出典:健康保険法(大正11年法律第70号)第55条第3項 ※抜粋

条文はかたい言い方をしていますが、意味はひとつです。 介護保険で訪問看護が受けられる人には、医療保険から訪問看護のお金は出ない。 だから「この人は要介護認定を受けているか」が、最初の分かれ道になります。

図2 どの保険で訪問するかは、この順番で決まる 年齢 要介護・要支援の認定 使う保険 40歳未満 認定の対象外(加入は40歳から) 医療保険 40〜64歳 16特定疾病で認定を受けている 介護保険 40〜64歳 上記以外 医療保険 65歳以上 認定あり(要支援を含む) 介護保険 65歳以上 認定なし 医療保険 介護保険になった人でも、次の3つのどれかに当てはまれば医療保険に切り替わる 1 別表第七の疾病等(末期の悪性腫瘍、ALS、人工呼吸器を使用している状態など20項目) 2 特別訪問看護指示書が出ている期間(原則14日間) 3 精神科訪問看護指示書が出ている(認知症を除く精神疾患) ※ 同じ日に医療保険と介護保険の訪問看護を両方算定することはできない。切り替わる日は、その日のうちにケアマネジャーへ伝える。

図2 保険の判定は、年齢 → 認定の有無 → 3つの例外、の順で見る。迷ったら「認定があるか」に戻ると整理しやすい。

40歳未満の人は介護保険の被保険者ではないので、迷う場面がありません。 40〜64歳は、末期のがんや初老期の認知症など16の特定疾病で認定を受けている場合だけ介護保険になります。 65歳以上は、認定を受けていれば介護保険です。

そのうえで、介護保険になった人でも医療保険に切り替わる例外が3つあります。 別表第七の疾病等・特別訪問看護指示書の期間・精神科訪問看護指示書の3つです。 この3つは、そのまま暗記してしまってください。現場で判断に迷う場面のほとんどは、この3つのどれかです。 保険の見分け方をもう少し細かく知りたい方は、「訪問看護の医療保険・介護保険・公費の見分け方」もあわせてどうぞ。

SECTION 04 別表第七と別表第八は、名前が似ているだけの別物

先輩の会話に「この人、別表7だから」「別表8がついてる」という言い方が出てきます。 同じ告示の別表なので名前は似ていますが、役割はまったく違います。 ここを混ぜると、保険の判定も加算も一緒に間違えます。

図3 別表第七と別表第八は、役割が違う 別表第七=疾病等のリスト → どの保険で行くかが変わる 1 要介護・要支援の認定があっても、医療保険の訪問看護になる 2 週4日以上の訪問ができる。1日2〜3回の訪問もできる 3 2か所、週7日の計画があれば3か所のステーションが入れる 別表第八=状態等のリスト → 保険は変わらない。管理の手厚さが変わる 1 医療保険か介護保険かは、このリストでは変わらない 2 特別管理加算の対象になる(留置カテーテル、人工肛門、週3日以上の点滴など) 3 気管カニューレと真皮を越える褥瘡は、特別訪問看護指示書が月2回まで出せる ※ 別表第七は「どの保険で行くか」のリスト、別表第八は「どんな管理が必要か」のリスト。 ※ この2つを混ぜると、保険の判定も加算も同時に間違える。別の紙だと思って覚える。

図3 どちらも「特掲診療料の施設基準等」という同じ告示の別表だが、第七は保険の入口を、第八は管理の手厚さを決めている。

他職種はここを見ている

ケアマネジャーが見ているのは、区分支給限度基準額です。介護保険の訪問看護は、この枠の中に入っています。 利用者が別表第七に該当したり、特別訪問看護指示書が出たりして医療保険に移ると、その分だけ介護の枠が空きます。 逆に、期間が終わって介護保険に戻る日には、また枠を使い始めます。 切り替わる日を伝えるのは、ケアマネジャーの仕事を増やす連絡ではなく、減らす連絡です。

SECTION 05 保険が変わると、何が変わるのか

保険が変わっても、行う看護そのものは変わりません。変わるのは、回数の上限、事前に必要なもの、 連絡する相手、請求の出し先です。担当を持つ前に、この表を一度ながめておいてください。

 医療保険の訪問看護介護保険の訪問看護
誰が対象か 要介護・要支援の認定がない人。認定があっても3つの例外にあたる人 要介護・要支援の認定を受けている人
回数の上限 原則、週3日まで・1日1回・1か所のステーション ケアプランに位置づけた範囲内(区分支給限度基準額の中)
1回の時間 おおむね30〜90分 20分未満/30分未満/30分以上1時間未満/1時間以上1時間30分未満の区分
始める前に必要なもの 訪問看護指示書 訪問看護指示書+ケアプランへの位置づけ
計画と報告 訪問看護計画書・報告書を主治医へ 同じ。あわせてケアマネジャーへの情報提供が必要
請求先 社会保険診療報酬支払基金・国民健康保険団体連合会 国民健康保険団体連合会
自己負担 年齢と所得で1〜3割 介護保険負担割合証のとおり1〜3割
負担の上限 高額療養費 区分支給限度基準額、高額介護サービス費

表2 医療保険と介護保険の違い。別表第七に該当する人や特別訪問看護指示書が出ている期間は、医療保険側の「週3日・1日1回・1か所」の枠が外れる。

SECTION 06 公費——「3割」が3割にならないとき

保険が決まると自己負担の割合が決まりますが、そこで終わりではありません。 自己負担のさらに上に、公費(公費負担医療)が重なることがあります。 訪問看護で出会う公費は限られているので、種類を知っておくだけで、ずいぶん見通しがよくなります。

図4 1回の訪問の費用は、3つの層に分かれる ※ 割合は年齢と所得で決まる。ここでは自己負担3割の人を例にしている。 1 訪問看護にかかった費用(10割) 2 保険が払う(7割) 自己負担(3割) 公費が使えるときは、この自己負担の中身がさらに分かれる 3 公費が負担 窓口 ※ 公費が肩代わりする範囲は制度ごとに違う。全額のこともあれば、月額の上限までのこともある。 ※ どの公費が使えるかは受給者証で確認する。月が替わったら、有効期限をもう一度見る。

図4 保険で自己負担の割合が決まり、その自己負担の一部または全部を公費が肩代わりする、という順番になっている。

訪問看護でよく出会う公費は、次のようなものです。

  • 自立支援医療(精神通院医療)精神科の通院医療の自己負担を軽くする制度で、精神科訪問看護も対象になります。原則1割で、所得に応じた月額の上限があります。精神科訪問看護指示書とセットで出てくることが多い組み合わせです。
  • 指定難病の医療費助成指定難病の受給者証をお持ちの方は、自己負担が2割になり、所得に応じた月額の上限が設けられます。別表第七に載っている神経難病の方と重なることが多く、「医療保険で毎日訪問できて、負担にも上限がある」という形になります。
  • 小児慢性特定疾病の医療費助成20歳未満の方が対象です。小児の在宅を担当するときは、保険証と一緒に受給者証を確認します。
  • 重度障がい者医療・子ども医療費助成など、自治体の助成お住まいの市町村によって範囲も申請方法も違います。福岡市とお隣の市で扱いが違うこともあるので、思い込みで答えないのが安全です。
  • 生活保護医療保険の訪問看護は医療扶助(医療券)、介護保険の訪問看護は介護扶助(介護券)で扱います。毎月の券の到着を事務が確認しているので、訪問の予定が変わったときは早めに共有してください。
実務のコツ

月が替わったら、その月の最初の訪問で保険証と受給者証を見せていただく。これを習慣にすると、ほとんどの事故が防げます。 介護保険負担割合証は毎年8月1日から新しいものに切り替わりますし、受給者証にもそれぞれ有効期限があります。 「先月と同じはず」がいちばん危ない考え方です。

SECTION 07 1年目がつまずくのは、だいたいこの7つ

ここまでの内容を、現場で実際に起きる形に置き換えておきます。 どれも新人だけの問題ではなく、忙しい時期には誰もが踏むところです。

  • 指示期間の切れ目に気づかない6か月の指示書は、切れる日をすっかり忘れたころにやってきます。受け持ちの終了日を、担当を持った日にまとめてカレンダーへ。
  • 特別訪問看護指示書が出たことを、ケアマネジャーに伝えていないその日から保険が変わります。伝わっていないと、提供票と実際のサービスがずれたまま月末を迎えます。
  • 保険が切り替わったのに、記録の様式が前のまま月末にまとめて直すのは、いちばん時間のかかる直し方です。切り替わった日に、その日の記録から変えます。
  • 主治医が2人いると思ってしまう指示書を出す主治医は1人です。複数の医療機関にかかっていても、訪問看護の指示は1か所から出ます。誰が主治医かは、契約のときに確認されています。
  • 週の数え方を間違える「週3日」の週は日曜から土曜です。月をまたぐ週は、前の月の分と次の月の分を別に数えます。特別訪問看護指示書の14日間も、この数え方で見ます。
  • 別表第七と別表第八を混ぜる第七は保険が変わるリスト、第八は管理が変わるリスト。迷ったら図3に戻ってください。
  • 受給者証の更新を確認しない更新の時期は制度ごとに違います。月初に見る、を決めごとにしておくと、覚える必要がなくなります。
当ステーションの視点

制度は、断らないために覚えます。

新人のうちは、制度を「間違えたら怖いもの」として覚えます。請求が通らない、先輩に迷惑をかける、利用者に説明できない。 その気持ちはよくわかりますが、私たちが制度を覚えてほしい理由は、そこではありません。

訪問先で、ご家族が「これ以上は来てもらえないと思っていました」とおっしゃることがあります。 でも実際には、別表第七に当てはまっていて毎日でも伺える方だったり、 主治医に特別訪問看護指示書を相談すれば、いちばん大変な2週間だけ手厚くできる方だったりします。 制度を知らない看護師は、その場で「週3回までなので」と答えてしまいます。 知っている看護師は、「主治医に相談してみます」と答えられます。 同じ場面で、返せる言葉が変わります。

制度の知識は、できることを増やすためではなく、できるはずのことを見落とさないためにあります。 だから1年目のうちは、覚えた制度を条文のまま抱えるのではなく、 「この人には、まだ何が使えるだろう」という問いの形で持っておいてほしいのです。 その問いさえ持っていれば、答えは先輩が知っています。

そして、当ステーションには同じ法人にふくろう訪問クリニックがあります。 「相談してみます」と言ってから、実際に相談できるまでが短い。 新人にとってこれは、思っている以上に大きな違いです。

採用のご案内

ふくろう訪問看護リハビリステーションは、
訪問看護が未経験の方を歓迎しています。

この連載は、訪問看護の経験がないまま入職した看護師が、ひとりで訪問して、 観察して、判断して、報告できるようになるまでの道のりをそのまま書いたものです。 言いかえれば、当ステーションが新しく入った人と一緒にたどる順番そのものです。 経験がないことは、ここでは前提であって、条件ではありません。

1. いきなり一人にしません 見学から一部実施、メイン担当、見守り、単独訪問へ。段階を戻すことを失敗と呼びません。
2. 医師との距離が近い環境 同じ法人にふくろう訪問クリニックがあり、迷ったときに相談できる相手がすぐ近くにいます。
3. 「わかりません」と言える その日のうちに報告できることを、技術より先に身につけてほしいと考えています。
いちばん早いのは、当ステーションへ直接ご連絡いただくことです
  1. 日程が早く決まります。間に人が入らないぶん、お問い合わせから見学、面談までを最短の日程で組めます。
  2. 条件を、決める人と直接相談できます。勤務日数、1日の訪問件数、オンコールの有無といった働き方の話を、伝言でなくその場でやりとりできます。
  3. 入職祝い金20万円を進呈します。直接応募限定紹介手数料がかからないぶんを、求職者の方に還元します。
まずは見学だけでも歓迎します/お電話・メールどちらでも

ブランクのある方、病棟以外の経験しかない方、まず話だけ聞いてみたいという方も、お気軽にご連絡ください。

1年目チェックリスト(第2回ぶん)

  • 受け持ちの利用者について、どの指示書が出ていて、いつ切れるかを見ずに言える
  • 訪問に出る前に、指示期間を確認する習慣がついている
  • 目の前の利用者が医療保険か介護保険かを、理由とセットで説明できる
  • 要介護認定があっても医療保険になる3つの例外を、何も見ずに挙げられる
  • 別表第七と別表第八の役割の違いを、自分の言葉で説明できる
  • 保険が切り替わったとき、その日のうちにケアマネジャーへ連絡できる
  • 月の最初の訪問で、保険証・負担割合証・受給者証を確認している

Q&A よくある質問

Q指示書がまだ届いていないのに、退院当日から来てほしいと言われました。行ってもいいですか。
A訪問看護としては伺えません。退院前に主治医へ依頼して、退院日までに指示書を受け取っておくのが原則です。間に合わないと思ったら、自分で判断せずに管理者へ相談してください。退院前カンファレンスに出られるなら、その場で依頼と交付の日程まで確認しておくと確実です。
Q医療保険と介護保険では、どちらが利用者にとって得ですか。
A選べないので、得かどうかで決める場面はありません。自己負担の割合は年齢や所得によって違いますが、その違いを理由に保険を選ぶことはできない、と説明してください。「制度上こうなっています」と言い切れることも、ご家族の安心につながります。
Q特別訪問看護指示書は、月に何回まで出してもらえますか。
A原則は月1回、14日間です。気管カニューレを使用している状態の方と、真皮を越える褥瘡がある方だけ月2回まで交付できます。急性増悪などで一時的に頻回の訪問が必要なときのしくみなので、状態が落ち着いたら通常の枠に戻します。出し続けるための書類ではありません。
Q認知症の方に、精神科訪問看護指示書は出ますか。
A精神科訪問看護の対象は、認知症を除く精神疾患です。認知症が主たる傷病であれば、通常の訪問看護指示書で伺い、要介護認定があれば介護保険になります。認知症とその他の精神疾患を併せ持つ方もいるので、判断に迷うときは主治医に確認します。
Q保険や請求のことは事務が見てくれます。看護師も覚える必要がありますか。
A請求の作業は事務が担いますが、枠が変わるきっかけ——状態の変化、指示書の期限、退院、認定の更新——に最初に気づくのは、その家に行っている看護師です。気づいて伝える人がいなければ、事務は動けません。覚えるのは点数ではなく、「変わったかもしれない」と気づく感覚のほうです。

連載「ゼロから始める訪問看護」全10回

  1. 訪問看護という仕事の全体像——病棟と何が逆転するのか
  2. 制度の入口——使う保険と、指示書という1枚
  3. 訪問1回の組み立て方——玄関の前から次回の予約まで
  4. からだをみる——「その人の平常値からのズレ」で読む
  5. 暮らしをみる——情報は家の中に置いてある
  6. 「いつもと違う」に気づき、動く——予測と急変時の初動
  7. 報告・連絡・相談——SBARと「今すぐ/今日中/次回まで」
  8. 記録と書類——訪問看護記録書・計画書・報告書
  9. 多職種連携——誰が何を持っていて、何を待っているか
  10. 家族とともにいる——意思決定支援から看取りまで

REFERENCE 参考資料

  1. 厚生労働省「令和8年度診療報酬改定について」(訪問看護ステーション関係の告示・通知一覧)2026年(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html
  2. 厚生労働省「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部を改正する件」令和8年厚生労働省告示第74号、2026年3月5日(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665206.pdf
  3. 厚生労働省保険局「訪問看護療養費に係る指定訪問看護の費用の額の算定方法の一部改正に伴う実施上の留意事項について」令和8年3月5日保発0305第19号、2026年(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001686845.pdf
  4. 厚生労働省「特掲診療料の施設基準等の一部を改正する件」令和8年厚生労働省告示第71号、2026年3月5日 ※別表第七・別表第八(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001675855.pdf
  5. 厚生労働省保険局「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準について」令和8年3月5日保発0305第20号、2026年(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001666806.pdf
  6. 厚生労働省「保険医療機関及び保険医療養担当規則等の一部を改正する省令」令和8年厚生労働省令第21号、2026年 ※第3条が訪問看護基準省令(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001665209.pdf
  7. 厚生労働省「『医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について』の一部改正について」令和8年3月27日保医発0327第4号・老老発0327第2号、2026年(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001697767.pdf
  8. 厚生労働省「要介護被保険者等である患者について療養に要する費用の額を算定できる場合の一部を改正する件」令和8年厚生労働省告示第119号、2026年(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681999.pdf
  9. 厚生労働省「訪問看護計画書等の記載要領等について」令和8年3月27日保医発0327第10号、2026年(https://www.mhlw.go.jp/content/12400000/001681763.pdf
  10. 健康保険法(大正11年法律第70号)第55条第3項、介護保険法(平成9年法律第123号)第8条第4項・第20条
本記事は、公開されている法令・通知・ガイドライン等をもとに、訪問看護の実務に必要な範囲を整理したものです。 制度の取扱いは改定や個別の事情によって変わることがあります。実際の判断にあたっては、 主治医、所属事業所の管理者、審査支払機関、地方厚生局等の窓口にご確認ください。 個々の健康上の問題については、かかりつけ医にご相談ください。
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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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