CVポートの訪問看護での扱い方

明るい自宅の寝室で、訪問看護師が点滴スタンドのそばで準備をしながら、ベッドに腰かけた高齢の男性と穏やかに話している水彩画。窓辺にはふくろうが止まって見守っている。

結論:CVポート(皮下埋め込み型ポート)を訪問看護で扱うときの基本は、手指衛生とアルコール含有クロルヘキシジンでの皮膚消毒、ポート専用の針と、添付文書で指定された容量以上のシリンジの使用、逆血の確認と生理食塩液でのフラッシュです。注入時の抵抗、痛み、ポート周囲の腫れ、滴下不良は、閉塞やカテーテル損傷のサインのことがあります。押さずに中止し、主治医へつなぎます。

ロック液を生理食塩液にするかヘパリンにするかは、研究でもはっきりした差が示されていません。がん患者さんのポートを対象にした大規模な比較試験では、生理食塩液でも機能障害や感染は増えませんでした。実際の薬液・ロック液・針の交換間隔は、主治医の指示、ポートの添付文書、事業所の手順書に従います。

目次

SECTION 01 CVポートのしくみと、在宅で使われる場面

皮下用ポートは、針を刺しても自然に閉じる膜(セルフシールセプタム)をもつポートにカテーテルをつなぎ、薬液を血管内へ届けるために皮下に埋め込む医療機器です(厚生労働省 医薬品・医療機器等安全性情報No.281)。ポート本体は前胸部や上腕などの皮下に置かれ、カテーテルは静脈の中を通って中心静脈に留置されます。同じ資料には、肝動脈に留置する使い方も挙げられています。

CVポートのしくみ(断面のイメージ)中心静脈へ123451皮膚2セプタム:針を抜くと自然に閉じるゴム状の膜3リザーバ:薬液がいったんたまる部分4カテーテル:静脈の中を通り、先端は中心静脈に置かれる(肝動脈に留置するタイプもある)5ポート専用の針(ノンコアリングニードル)

図1 CVポートの断面のイメージ(筆者作図。形や大きさは製品によって異なります)

在宅では、在宅中心静脈栄養、抗がん剤の持続注入、補液や抗菌薬の点滴などで使われます。皮膚の上から針を刺せば使えるため、腕の血管に点滴の針が入りにくい人でも、くり返し点滴ができます。ESPEN(欧州臨床栄養代謝学会)の在宅中心静脈栄養ガイドラインも、長期の在宅中心静脈栄養には、皮下トンネル型のカテーテルか完全埋め込み型のポートを使うよう勧めています。

添付文書に書かれている「予見されるリスク」

2011年の厚生労働省の改訂指示により、ポートの添付文書には、経過観察で注意すべきリスクとして次のような項目が記載されています。

部位添付文書に挙げられているリスク
ポート本体ポートの移動・反転、ポート本体やセプタムの破損、埋め込み部の感染・血腫、針を刺す部分の皮膚障害
接続部とカテーテルポートとカテーテルの接続外れ、カテーテルの穿孔・断裂・血管などへの迷入・閉塞、フィブリンシース(カテーテルを覆う膜)
血管と全身カテーテルを留置した静脈の閉塞、薬液の皮下漏出、システムに関連する感染、肺血栓塞栓症

同じ資料によると、2004年4月〜2010年12月にポートの不具合が740件報告され、そのうち484件(65.4%)がカテーテルの断裂・破損でした。断裂したカテーテルが心臓や肺動脈に迷入していた事例は392件です。ほかに、ポート本体の破損が182件、ポートとカテーテルの接続外れが51件ありました。接続外れの要因の一つとして、10mL未満のシリンジで注入したことによる、ポート内部の圧の上昇が挙げられています。

SECTION 02 1回の訪問での流れ

以下は、SECTION 03の資料とガイドラインをもとに、訪問時の流れを整理したものです(筆者の整理です。実際の手順は、主治医の指示、ポートの添付文書、事業所の手順書が優先されます)。

1回の訪問の流れ(7ステップ)1観察してから触るポート周囲の腫れ・赤み・痛み、腕や首のむくみ2手指衛生と物品の確認薬液・ロック液・針・シリンジの容量を指示と照合3皮膚消毒アルコール含有クロルヘキシジンで消毒し、乾かす4専用針で穿刺ポートを指で固定し、セプタムに垂直に刺す5逆血の確認とフラッシュ生理食塩液で。抵抗・痛み・腫れがあれば中止6固定と投与中の観察腫れ・漏れ・滴下・ポンプの表示を確認7終了時のフラッシュと抜針生理食塩液で流し、指示のロック液で満たす

図2 訪問時のCVポートの扱い(CDC・ESPENのガイドライン、厚生労働省・PMDAの資料をもとに筆者作図)

1
観察してから触る前回の訪問からの経過(発熱、痛み、薬液の漏れなど)を聞き、ポート周囲の腫れ・赤み・痛み、同じ側の腕や首のむくみを確認します。CDC(米国疾病予防管理センター)のガイドラインは、刺入部を定期的に観察し、圧痛や原因のはっきりしない発熱などがあればドレッシングを外して確認するよう勧めています。
2
手指衛生と物品の確認カテーテルに触れる前後、針を刺す前後、ドレッシングを交換する前後に手指衛生を行います(CDC)。薬液、フラッシュ用の生理食塩液、ロック液が指示どおりか、シリンジの容量が添付文書の指定以上かを確かめます。
3
皮膚消毒は「乾くまで待つ」CDCは、中心静脈カテーテルの消毒とドレッシング交換時に、0.5%を超える濃度のアルコール含有クロルヘキシジンを勧めています(使えない場合はヨウ素系の消毒薬や70%アルコール)。ESPENも0.5〜2%のアルコール含有クロルヘキシジンを推奨しています。消毒薬は製品の説明どおり乾かしてから穿刺し、消毒後に刺入部を触る場合は無菌操作を保ちます。
4
ポート専用の針で穿刺するポートを指で固定し、セプタムを削らない形状の専用針(ノンコアリングニードル)を刺します。針の太さと長さは、指示とポートの深さで確認します。針が短いと針先がリザーバから外れ、薬液が皮下に漏れる原因になります。
5
逆血を確かめ、生理食塩液でフラッシュする血液が引けるかを確かめてから、生理食塩液でフラッシュします。抵抗・痛み・腫れがあれば押さずに中止します(PMDA医療安全情報No.57)。容量の小さいシリンジは強い圧がかかるため、添付文書で指定された容量以上のシリンジを使います(厚生労働省, 2011年)。
6
固定と、投与中の観察滅菌ガーゼか透明フィルムで覆い、針と回路を固定します(CDC・ESPEN)。投与中は、ポート周囲の腫れ・漏れ、滴下やポンプの表示、痛みを確認します。ドレッシングが湿った・はがれた・汚れたときは交換します。
7
終了時のフラッシュとロック、抜針投与が終わったら生理食塩液でフラッシュし、指示されたロック液で満たしてから抜針します。輸液ラインは、脂肪乳剤を含む輸液や血液製剤では投与開始から24時間以内に交換します(CDC)。ESPENは、在宅中心静脈栄養のラインも24時間以内の交換を勧めています。
関連記事:数か月使っていないポートを再び使うときの確認(凝血の吸引など)は、「数か月使っていないCVポート、そのまま点滴して大丈夫?」で詳しく扱っています。

SECTION 03 根拠の早見表:消毒・交換・シリンジ

訪問看護の手順書を見直すときに確認したい項目を、ガイドラインと公的資料の記載で並べます。CDCの推奨は病院を主な対象にしたもので、ESPENの推奨は在宅中心静脈栄養を対象にしたものです。

項目ガイドライン・公的資料の記載出典
手指衛生刺入部に触れる前後、アクセス・ドレッシング交換の前後に行う(石けんと流水、またはアルコール手指消毒薬)CDC 2011、ESPEN 2020
皮膚消毒0.5%を超える濃度のアルコール含有クロルヘキシジン(ESPENは0.5〜2%)。禁忌があればヨウ素系や70%アルコール。乾かしてから処置するCDC 2011(推奨度IA)、ESPEN 2020(推奨度A)
接続部の消毒ニードルレスコネクタなどは、使う前に消毒薬でこすって消毒し、滅菌の器具だけで接続するCDC 2011(IA)、ESPEN 2020(A)
ドレッシング滅菌ガーゼか透明フィルム。湿った・ゆるんだ・汚れたら交換。短期の中心静脈カテーテルでは、ガーゼは2日ごと、透明フィルムは少なくとも7日ごと。埋め込み型・トンネル型の刺入部の透明フィルムは、汚れやはがれがなければ週1回より頻回には替えないCDC 2011、ESPEN 2020
輸液ラインの交換血液・脂肪乳剤を使わない持続投与のラインは、96時間より頻回には替えず、少なくとも7日ごと。脂肪乳剤(3種混合を含む)・血液製剤は開始から24時間以内。在宅中心静脈栄養のラインは24時間以内CDC 2011、ESPEN 2020(推奨度B)
穿刺針の交換間隔CDCは「推奨なし(未解決の課題)」。ESPENは、在宅中心静脈栄養でポートを使う場合、少なくとも週1回の交換を提案(専門家の合意)CDC 2011、ESPEN 2020
シリンジの容量添付文書で指定された容量以上のシリンジを使う。指定未満ではポート内の圧が上がり、ポートやカテーテルの破損などのおそれ厚生労働省 2011年5月の改訂指示
入浴カテーテルや刺入部を水に浸けない。防水カバーで覆うなどすればシャワーは可CDC 2011(IB)、ESPEN 2020(B)
採血中心静脈の器具からの日常的な採血は、合併症が増えるため、できるだけ避けるESPEN 2020(B)

読み方:CDCの推奨度は、IAが最も強く、IB・IC・IIの順に弱くなります。ESPENは、A・B・0・GPP(専門家の合意)の順です。ドレッシングの交換間隔は、CDCでは「短期の中心静脈カテーテル」を対象にした記載で、針を刺したままのポートにそのまま当てはまるかは、はっきりしていません。

SECTION 04 ロックは生理食塩液か、ヘパリンか

ポートを使い終わったあとに管の中を満たしておく液(ロック液)は、長くヘパリンが使われてきました。近年は、生理食塩液でも閉塞が増えないとする試験やガイドラインが増えています。主な資料を並べます。

資料対象・方法結果・推奨
Goossens ら 2013(ベルギー、無作為化比較試験)新しくポートを留置したがん患者さん802例を、ヘパリン(300単位/3mL)と生理食塩液のロックに割り付け(解析765例)「注入はできるが吸引できない」機能障害は、穿刺1回あたり生理食塩液3.70%、ヘパリン3.92%(相対リスク0.94、95%信頼区間0.67〜1.32)で、生理食塩液は劣らなかった。カテーテル関連血流感染は1000カテーテル日あたり生理食塩液0.03件、ヘパリン0.10件
López-Briz ら 2022(コクランレビュー)成人の中心静脈カテーテル全般(ポートに限らない)。12試験・2,422人ヘパリンで閉塞がやや少ない可能性(相対リスク0.70、0.51〜0.95)があるが、確実性は低い。割り付けの隠し方が適切な試験に限ると差ははっきりせず(0.74、0.51〜1.05)、がん患者さんの試験でも差ははっきりしない(0.91、0.69〜1.19)。開通期間・感染・出血に明らかな差はない
ESPEN 2020(在宅中心静脈栄養ガイドライン)長期留置の中心静脈の器具ロックにはヘパリンではなく生理食塩液を使うことを推奨(推奨度B)
ASCO 2013(米国臨床腫瘍学会ガイドライン)がん患者さんの中心静脈カテーテル生理食塩液による定期的なフラッシュを推奨

数字の読み方:コクランレビューは、集中治療室の患者さんや透析用カテーテルなどを含む「中心静脈カテーテル全般」の結果で、ポートだけの結果ではありません。全体ではヘパリンがやや有利に見えても、試験の質を絞ると差が消え、がん患者さんの試験では差がはっきりしませんでした。ポートを対象にしたGoossensらの試験は、留置と管理の手順を厳密に決めたうえでの結果で、研究者らも、厳格な手順と組み合わせることを条件にしています。

ヘパリンには、まれにヘパリン起因性血小板減少症や出血の心配があり、コクランレビューは、ロックのために入れたヘパリンが、まとまって体内に入ってしまうおそれにも触れています。どちらを使うかは主治医の指示に従い、ヘパリンを使う場合は濃度(単位/mL)と量を必ず確認します。

SECTION 05 感染はどのくらい起こるか:数字の読み方

ポートの感染の起こりやすさは、資料によって大きく違って見えます。主な数値を並べます。

資料対象血流感染の頻度
Maki ら 2006(200件の前向き研究のシステマティックレビュー)成人。器具の種類別に集計ポート:器具100本あたり3.6本(3.6%)、1000日あたり0.1件。皮下トンネル型カテーテル:22.5%、1000日あたり1.6件
Goossens ら 2013がん患者さんのポート(厳密な管理手順のもと)1000カテーテル日あたり0.03件(生理食塩液)と0.10件(ヘパリン)
ESPEN 2020が引用したシステマティックレビュー在宅中心静脈栄養を受けている成人1000カテーテル日あたり0.38〜4.58件(中央値1.31件)

なぜ数字に幅があるのか:1つ目の理由は数え方です。ポートは何か月も留置されるため、「100本あたり」で数えると多く見え、「1000日あたり」で数えると少なく見えます(Makiらは、日数あたりで比べるほうが実態に近いと述べています)。2つ目は対象と使い方です。在宅中心静脈栄養では、栄養輸液を毎日長時間流し、ポートに触れる回数も多くなります。ESPENは、CDCが中心静脈栄養をカテーテル関連血流感染の独立した危険因子としていることに触れています。3つ目に、在宅中心静脈栄養の数値は器具の種類別に示されておらず、ポート以外のカテーテルの利用者も含まれると考えられます。

つまり、在宅中心静脈栄養でポートを毎日使う利用者さんは、がん治療の合間にときどき使う人より感染の機会が多いと考えて、観察と無菌操作を続けることが大切です。

SECTION 06 トラブルの見分け方

PMDAの医療安全情報No.57は、フラッシュや薬液投与のときの痛み・不快感、ポート埋め込み部の腫れ、点滴が落ちないときは、カテーテルの亀裂や詰まりの可能性があるため、X線撮影などで確認するよう求めています。日本医療機能評価機構の医療安全情報No.58(2011年9月)では、カテーテルが断裂した24件の事例で、注入開始時の閉塞(血液の逆流が確認できないなど)や痛み、注入中の滴下不良・点滴漏れ・腫れなどが兆候として報告されています。

こんなときは、押さずに連絡こんなとき対応注入時に抵抗がある・押せない中止→医師へ痛みや不快感を訴える中止→医師へポート周囲の腫れ・薬液の漏れ中止→医師へ点滴が落ちない・滴下が悪い中止→医師へ逆血がない(注入はできる)医師へ報告原因のはっきりしない発熱医師へ報告同じ側の腕・首・顔のむくみ医師へ報告ポート上の皮膚の赤み・膿医師へ報告連絡先と中止の基準は、指示書と事業所の手順書で前もって確認しておく

図3 CVポートのトラブル時の対応の目安(PMDA・日本医療機能評価機構・CDC・厚生労働省の資料をもとに筆者作図)

サイン考えられること対応の目安
注入時の抵抗、注入できない閉塞、カテーテルの折れ曲がり・断裂、針先の位置のずれ押さずに中止し、主治医へ。X線などでの確認が必要になることがある
痛み・不快感(ポート部、鎖骨の下、胸、肩)薬液の漏れ、カテーテルの損傷中止し、主治医へ
ポート周囲の腫れ、薬液の漏れ針の抜け、接続外れ、カテーテルの断裂中止し、主治医へ。抗がん剤の場合は、漏れたときの対応を事前に確認しておく
点滴が落ちない、滴下が悪い閉塞、回路やカテーテルの折れ曲がりクランプや回路の折れを確認し、解決しなければ中止して主治医へ
逆血がない(注入はできる)フィブリンシース、カテーテル先端の位置、損傷使い続けるかは主治医に確認。断裂の前の兆候として報告されている
原因のはっきりしない発熱カテーテル関連の血流感染刺入部とポート周囲を観察し、主治医へ報告
同じ側の腕・首・顔のむくみカテーテルを留置した静脈の閉塞(血栓など)主治医へ報告
ポート上の皮膚の赤み・膿埋め込み部の感染、皮膚障害主治医へ報告

SECTION 07 利用者さん・ご家族と共有したいこと

1
変化や違和感は、すぐに伝えてもらうCDCは、刺入部の変化や新しい不快感を医療者に伝えるよう、患者さんに促すことを勧めています。ポート周囲の腫れ・赤み・痛み、針のまわりが濡れている、腕や首のむくみ、発熱などは、次の訪問を待たずに連絡してもらいます。
2
針が入っている間は、水に浸けないカテーテルや刺入部を水に浸けないことは、CDCとESPENの共通の推奨です。防水カバーで覆うなどすればシャワーはできます。ESPENは、針を交換する日に、針を抜いている間に入浴やシャワーができる利点にも触れています。入浴の可否は主治医の指示で確認します。
3
チューブを引っぱらない、はがれたら連絡針が抜けかけると、薬液が皮下に漏れることがあります。着替えや寝返りのときにチューブを引っぱらないこと、ドレッシングがはがれたり濡れたりしたら連絡することを伝えます。
4
連絡先と目安を、紙で渡しておくESPENは、在宅中心静脈栄養の利用者さんとご家族に、合併症の見分け方と、24時間連絡できる窓口を書面で渡すよう勧めています。連絡先と「こんなときは連絡」の目安を、紙にまとめて手元に置いてもらいます。

SECTION 08 指示書と連携で確認しておくこと

医師または歯科医師の指示のもとで看護師が行う静脈注射は、診療の補助として扱われます(厚生労働省医政局長通知、2002年9月30日)。CVポートからの投与も、指示の内容を確かめたうえで行います。訪問前に確認しておきたい項目を挙げます(筆者の整理です)。

  • 投与する薬液、量、速度、時間、使うポンプ
  • フラッシュ液とロック液の種類と量(ヘパリンの場合は濃度も)
  • 穿刺針の太さ・長さ、交換の間隔、抜針する日と担当
  • ドレッシングの種類と交換の目安
  • ポートの製品名がわかる資料(添付文書で指定されたシリンジの容量を確認するため)、留置日、留置した医療機関
  • 抵抗・痛み・腫れ・逆血なし・発熱などのときの連絡先と、中止の基準

訪問での点滴の指示書の扱いは、関連記事「訪問点滴指示書はどういう時に必要?」で解説しています。

SECTION 09 Q&A

Q. ロック液は、生理食塩液とヘパリンのどちらがよいですか。

A. ポートを対象にした大規模な比較試験(Goossensら)では、生理食塩液でも機能障害や感染は増えませんでした。中心静脈カテーテル全般のコクランレビューでは、ヘパリンで閉塞がやや少ない可能性が示されたものの確実性は低く、がん患者さんの試験では差がはっきりしませんでした。ESPENは長期の在宅中心静脈栄養で生理食塩液を、ASCOは定期的な生理食塩液のフラッシュを勧めています。実際には主治医の指示に従い、ヘパリンを使う場合は濃度と量を確認します。

Q. 穿刺針は、何日まで刺したままにできますか。

A. CDCのガイドラインは、ポートの針の交換頻度と留置期間について「推奨なし(未解決の課題)」としています。ESPENは、在宅中心静脈栄養でポートを使う場合、少なくとも週1回の交換を提案しています(専門家の合意)。交換日は、指示と使う針の添付文書で確認します。

Q. 逆血がないけれど、抵抗なく注入できるときは使ってよいですか。

A. 自己判断で使い続けず、主治医に報告して指示を確認します。逆血がないことは、ポートの比較試験でも「機能障害」として数えられています。また、日本医療機能評価機構の医療安全情報では、カテーテル断裂の前に見られた兆候として報告されています。使い続ける場合も、腫れ・痛み・漏れに注意して観察します。

Q. 熱が出たら、ポートは抜くことになりますか。

A. CDCは、発熱だけを理由に中心静脈カテーテルを抜かないよう述べています。抜くかどうかは、ほかの感染源の有無などを含めて医師が判断します。看護師は、ポート周囲の赤み・腫れ・膿、刺入部の状態、熱の経過を観察して報告します。

Q. ポートの針は、どの針でも刺せますか。

A. 刺せません。ポートは、セプタムを削らない形状の専用針(ノンコアリングニードル)で穿刺します。シリンジも、添付文書で指定された容量以上のものを使います。小さいシリンジで強く押すと、ポート内の圧が上がり、破損や接続外れの原因になることがあります(厚生労働省, 2011年)。

関連する記事:数か月使っていないCVポート、そのまま点滴して大丈夫? セフトリアキソンとソルデム1は混ぜてよい? 訪問点滴指示書はどういう時に必要?

SECTION 10 ご利用・採用のご案内

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SECTION 11 参考にした資料

  1. 厚生労働省医薬食品局. 医薬品・医療機器等安全性情報 No.281「皮下用ポート及びカテーテルに係る添付文書の改訂指示等について」. 2011年7月. https://www.mhlw.go.jp/www1/kinkyu/iyaku_j/iyaku_j/anzenseijyouhou/281-1.pdf(2026年10月27日閲覧)
  2. 厚生労働省医薬食品局安全対策課長・審査管理課医療機器審査管理室長. 薬食安発0525第1号・薬食機発0525第1号「皮下用ポート及びカテーテルに係る添付文書の改訂指示等について」. 2011年5月25日. https://www.pmda.go.jp/files/000148739.pdf(2026年10月27日閲覧)
  3. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA). PMDA医療安全情報 No.57「皮下用ポート及びカテーテルの取扱い時の注意について」. 2019年2月. https://www.pmda.go.jp/files/000228198.pdf(2026年10月27日閲覧)
  4. 公益財団法人日本医療機能評価機構 医療事故情報収集等事業. 医療安全情報 No.58「皮下用ポート及びカテーテルの断裂」. 2011年9月. https://www.med-safe.jp/(2026年10月27日閲覧)
  5. O’Grady NP, Alexander M, Burns LA, Dellinger EP, Garland J, Heard SO, ほか. Guidelines for the prevention of intravascular catheter-related infections. Clin Infect Dis. 2011;52(9):e162-e193. doi:10.1093/cid/cir257. PMID: 21460264. 推奨の一覧(2017年の更新を含む):CDC. Summary of Recommendations. https://www.cdc.gov/infection-control/hcp/intravascular-catheter-related-infections/summary-recommendations.html(2026年10月27日閲覧)
  6. Pironi L, Boeykens K, Bozzetti F, Joly F, Klek S, Lal S, Lichota M, Mühlebach S, Van Gossum A, Wanten G, Wheatley C, Bischoff SC. ESPEN guideline on home parenteral nutrition. Clin Nutr. 2020;39(6):1645-1666. doi:10.1016/j.clnu.2020.03.005
  7. Goossens GA, Jérôme M, Janssens C, Peetermans WE, Fieuws S, Moons P, Verschakelen J, Peerlinck K, Jacquemin M, Stas M. Comparing normal saline versus diluted heparin to lock non-valved totally implantable venous access devices in cancer patients: a randomised, non-inferiority, open trial. Ann Oncol. 2013;24(7):1892-1899. doi:10.1093/annonc/mdt114
  8. López-Briz E, Ruiz Garcia V, Cabello JB, Bort-Martí S, Carbonell Sanchis R. Heparin versus 0.9% sodium chloride locking for prevention of occlusion in central venous catheters in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2022;7(7):CD008462. doi:10.1002/14651858.CD008462.pub4. PMID: 35849083
  9. Schiffer CA, Mangu PB, Wade JC, ほか. Central venous catheter care for the patient with cancer: American Society of Clinical Oncology clinical practice guideline. J Clin Oncol. 2013;31(10):1357-1370. doi:10.1200/JCO.2012.45.5733. PMID: 23460705(抄録のみ確認)
  10. Maki DG, Kluger DM, Crnich CJ. The risk of bloodstream infection in adults with different intravascular devices: a systematic review of 200 published prospective studies. Mayo Clin Proc. 2006;81(9):1159-1171. PMID: 16970212(抄録のみ確認)
  11. 厚生労働省医政局長通知「看護師等による静脈注射の実施について」(医政発第0930002号). 2002年9月30日. 通知の内容は厚生労働省の検討会資料に掲載:https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/08/dl/s0828-1c.pdf(2026年10月27日閲覧)
確認できなかった点:米国INS(Infusion Nurses Society)の標準手順書は本文が有料のため、直接確認していません。国内の学会による在宅でのポート管理の指針、穿刺針の交換間隔を比べた臨床試験、パルス状にフラッシュする方法の臨床的な効果については、今回の調査では確認できる資料が見つかりませんでした。図1と図2は理解のための模式図で、特定の製品の形を示すものではありません。

実際の取り扱いは、主治医の指示、使用するポートと針の添付文書、事業所の手順書に従ってください。この記事は一般的な情報です。(令和8年10月27日時点)

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この記事を書いた人

福岡生まれ、筑紫丘高校卒業、九州大学医学部卒業後、東北の地域中核病院で初期研修医・救急医として勤務し、その後東京の国立がん研究センター中央病院、東京大学病院に勤務。地元の福岡に帰ってきて2023年1月に:ふくろう訪問クリニック(旧:つくし訪問クリニック早良)を開院。2025年5月に医療法人「ふくろうの樹」設立。2025年11月「ふくろう訪問看護リハビリステーション」を開院。

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