生活期を伴走する:ゼロから始める訪問セラピスト

終わりを決める、そして看取りの場面のリハビリ
病院のリハビリテーションは、良くなって終わります。在宅のリハビリテーションは、良くならなくても続きます。 良くならない人に何をするのか。「維持」とは何をすることなのか。いつ、どうやって終わるのか。 進行していく病気の人と、最期が近い人に、セラピストは何ができるのか。 意思決定の支え方と看取りの手順は看護師版の最終回に本体があります。ここでは、その場にセラピストとしていることの中身を書きます。 最終回なので、最後に10回ぶんを1枚にまとめます。
この回の結論
- 良くならない人にも、リハビリテーションの仕事はあります。「維持」は何もしないことではなく、下り坂の傾きを変えることです。傾きを変えたことは、数字と本人の言葉でしか証明できません。だから維持の日にこそ測り、書きます。
- 終了は敗北ではなく、計画の一部です。終わり方は3つ。目標に届いて卒業する、別の場所に移る、看取る。どの終わり方でも、終了の目安は計画書の最初から書いてあり、決めるのは数字ではなく本人の言葉です。
- 看取りの場面にも、セラピストにしかできないことがあります。楽な姿勢、楽な呼吸、家族の手に介助を移すこと、最後にしたいことをひとつ叶えること。緩和期のリハビリテーションは生活の質を上げることが確かめられていて、目的が変わるだけで、仕事はなくなりません。
SECTION 01 4つの坂——その人がどの坂を下りているかを知る
在宅で出会う人のほとんどは、これから先、少しずつ動けなくなっていきます。それ自体は変えられません。変えられるのは、その下り方です。そして下り方には、型があります。米国の高齢者を対象にした追跡研究で、亡くなる前の1年間の身体機能の経過を4つの型に分けたものがあります(Lunney 2002、2003)。どの坂を下りているかがわかると、セラピストが何をすべきかが決まります。
図1 病院で見ていたのは、坂を上る人でした。在宅で見るのは、4種類の坂を下りる人です。上る人の技術のまま下りる人に向き合うと、「良くならない」ことだけが目に入ります。
坂の型を知ることは、あきらめるためではありません。目標の置き方を変えるためです。上る人には「どこまで上がるか」を目標にしました(第6回)。下りる人には「どのくらいの速さで下りるか」「下りたときに何が要るか」「下りきる前に何をしたいか」が目標になります。4部品(何を・どの支えで・どこまで・いつまでに)はそのまま使えます。「いつまでに」の中身が「3か月後も」に変わるだけです。
SECTION 02 「維持」は、何もしないことではない
新人がいちばん戸惑うのが、「維持目的」と書かれた指示です。何を目指せばよいのかわからない、と言います。病院では「維持」は治療の終わりを意味しました。在宅では違います。第4回で出したとおり、訪問リハビリテーションを6か月使った人のうち、日常生活動作が改善した人は34%、維持された人は46%です。維持は結果の半分近くを占める、いちばん普通の成果です。
維持を目標にするなら、書き方を決めておきます。第6回の達成度5段階で、「期待どおり」をいまの状態に置きます。「3か月後も、杖で200メートル歩いて公園まで行ける」。これが期待どおり。「300メートルに伸びた」が期待以上、「150メートルに落ちた」が期待を下回る。維持を目標にした瞬間、数字がないと達成度が判定できなくなります。維持の人ほど、月1回の測定日(第5回)を飛ばせません。
維持の人の記録に「著変なし。継続」と書き続けることが、いちばん危険です。第9回で書いたとおり、その24行からは何も読み取れず、3か月後の見直しで「なぜ続けるのか」を答えられなくなります。第4回で触れたとおり、医療保険側の基準は「漫然かつ画一的」なリハビリテーションを戒めています。維持は漫然の言い換えではありません。維持と漫然を分けるのは、数字と、目標と、継続する理由の3つです。この3つが計画書にあれば、それは維持です。なければ、外から見て区別がつきません。
国の調査に、気になる数字があります。介護予防訪問リハビリテーションを始めて24か月後に、利用を続けていて修了の予定がない人が76.4%いました。継続している理由の上位は「本人・家族の希望」と「運動機会や活動量の維持が必要」です(第259回介護給付費分科会 資料4)。本人が続けたいと言うこと自体は正当な理由です。ただ、それだけを理由にした継続は、次の改定で最初に問われるところでもあります。本人の希望を、測れる目標に翻訳して計画書に書く。第6回でやったことを、維持の人にもやるだけです。
訪問リハビリテーション事業所では、3か月以上続ける場合に終了の目安時期を計画に書くことが通知で求められています(第3回)。様式2-2-1の記載要領(第6回)も、3か月以上の継続が必要と医師が判断する場合には継続が必要な理由と、他の介護サービスの併用・移行の見通しを書くよう求めています。訪問看護ステーションからの訪問にはこの様式の義務はありませんが、看護師と一緒に作る計画書(第9回)に同じ3つを置いておくと、指示書の更新のたびに「なぜ続けるか」を主治医に説明できます。
SECTION 03 終わりを決める——終了は、最初から計画に書いてある
終わり方は3つです。目標に届いて卒業する。入院や入所で別の場所に移る。看取る。3つ目はSECTION 05で扱います。ここでは1つ目の「卒業」の話をします。卒業は、セラピストがいちばん苦手にしている終わり方です。やめる理由より、続ける理由のほうが、いつでも簡単に見つかるからです。
制度は、訪問リハビリテーションが通所介護などに移行することを、加算をつけて後押ししています。通知はさらに、終了した人のその後を「電話等での実施を含め」確認し、日常生活動作が維持または改善していることを確かめるよう求めています。終了は、訪問をやめることではなく、その人が次の場所で動き続けているのを確かめるところまでです。運営基準も、提供の終了に際して本人・家族への指導と、主治医・ケアマネジャーへの情報提供を求めています。
図2 いちばん飛ばされやすいのは段3です。家の外に動く場所がないまま終了すると、第4回の宿題の壁がそのまま効いて、数か月で戻ってきます。
終了を、本人と家族に「卒業」と言ってください。「もう来なくていいですか」と聞かれて「はい」と答えると、見捨てられたと受け取る人がいます。「目標に届いたので卒業です。ここから先は、ご自分の足で続けてください。落ちたときの戻り方は、この紙に書いてあります」。最後の訪問では、初回に測った数字と今日の数字を並べて見せます。第5回で初回評価を丁寧にやる理由は、ここにあります。初回の数字がなければ、卒業式で見せるものがありません。
移る終わり——入院・入所で終わるとき
2つ目の終わり方は、こちらが決めるものではありません。ある日、入院や入所で訪問が終わります。このときセラピストにできることは2つです。渡すことと、戻ってきたときに続きから始められるようにしておくこと。渡すのは、直前の数字と、できていた動作と、介助の工夫(第9回の表3)です。入院先のセラピストは、その人が家でどう動いていたかを知りません。「入院前は杖で屋外200メートル、浴槽は見守りでまたげていた」の1行があるかないかで、退院時の目標が変わります。運営基準は終了時に主治医とケアマネジャーへの情報提供を求めていますが(第64条第2項)、病院のリハビリ職に届く形にするのは、ケアマネジャーか看護師を通じた文書です。
戻ってきたときは、逆の流れです。訪問リハビリテーション事業所は、退院した人の計画を作るときに、その医療機関の実施計画書等で情報を把握することになっています(第81条第4項)。訪問看護ステーションからの訪問でも同じことをします。退院時の実施計画書に書かれた数字と、初回訪問で測った数字を並べれば、入院で何段下がったかが見えます。図1の3番目の坂は、この「入院のたびに一段下がる」を、どれだけ戻せるかの勝負です。退院直後の2週間が、もっとも戻りやすい時期です。第3回で触れた退院後の頻回訪問(3か月以内は週12回まで)は、このために使います。
リハビリが終了しても、看護師の訪問が続くことはよくあります。そのとき看護師が困るのは、「リハビリが終わったあと、自分は何を見ればよいのか」がわからないことです。セラピストからほしいのは、終了時の申し送り1枚です。維持してほしい数字(「屋外歩行200メートル、5回立ち上がり13秒台」)、続けてほしい宿題(「立ち上がり10回を毎日」)、そして再開の条件(「2回転んだら、5回立ち上がりが16秒を超えたら、こちらに連絡を」)。この3つがあれば、看護師は月1回、宿題の実施を聞き、年に数回は5回立ち上がりを測って、境界を越えたときにセラピストを呼び戻せます。第5回の「器具のいらない評価」は、こういう場面のために看護師と共有してあります。終了は、セラピストが看護師にバトンを渡す場面です。渡すものがないと、看護師は走れません。
SECTION 04 進行していく病気——目標は「上がる」ではなく「下がる速さ」
図1の2番目と3番目の坂を下りる人には、病気ごとに、リハビリテーションにできることと、根拠の確かさが違います。表にしておきます。新人がまず知っておくべきなのは、「進行性だからリハビリは意味がない」という考え方に根拠がないことと、「進行性だから頑張れば止められる」という考え方にも根拠がないことの両方です。
| 病気 | 確かめられていること | セラピストの持ち場 |
|---|---|---|
| 心不全 | 運動を中心とした心臓リハビリテーションは、死亡率には差がないが、入院を減らす(15.9%対23.8%)。生活の質も上がる。在宅で行う型でも効果は同じ方向(Molloy 2024、60試験8,728人) | 体重と息切れを毎回聞く(看護師版第6回の表)。心臓リハビリの入口は既存コラム「高齢者の心不全患者に向けた心臓リハビリテーション入門」へ |
| 慢性閉塞性肺疾患 | 呼吸リハビリテーションの効果は放っておくと薄れる。監督つきの維持プログラムは6〜12か月後の生活の質を保つ。増悪・入院・死亡は変わらない(Malaguti 2021、21試験1,799人) | 効果を「保つ」ための定期訪問そのものが根拠のある介入。息切れの自己管理と、動作の省エネの指導 |
| パーキンソン病 | 重症度の段階ごとに、できることと注意点が変わる。既存コラム「パーキンソン病のヤール分類でどう変わる?」に段階別に整理 | 薬の効いている時間帯に訪問を合わせる。すくみ足の家の中の場所を地図にする(第5回の家を測る) |
| 筋萎縮性側索硬化症 | 中等度の運動を検討した試験は2件43人だけ。機能評価尺度はわずかに良く、有害事象はなかったが、益も害も断定できない小ささ(Cochrane 2013) | 疲労を翌日に残さない負荷(第8回の段2)。できなくなる順番を先読みして、道具(第7回)と介助(第9回)を前倒しで準備する |
| 認知症 | 運動は認知機能を改善する根拠はないが、日常生活動作を保つ方向の結果(6試験289人、確実性はとても低い)。介護者の負担が減った試験が1件(Forbes 2015) | 目標を本人ではなく生活の中に置く。「トイレまで自分で行く」を守る。介助する家族の腰と時間を守る |
表1 進行していく病気で、リハビリテーションに確かめられていること。「効く」の中身が病気ごとに違います。心不全は入院、慢性閉塞性肺疾患は生活の質、認知症は日常生活動作。何を守るかを、病気に合わせて目標に書きます。
表を見てわかるのは、「効く」の中身が病気によって違うということです。心不全では入院が減る。慢性閉塞性肺疾患では生活の質が保たれる。認知症では日常生活動作が保たれる。どれも「治る」ではありません。だから目標も「治る」ではなく、「入院しない」「息切れせずに着替える」「トイレは自分で行く」になります。第6回の4部品で書けば、「トイレまでを、手すりを使って、ひとりで、3か月後も」です。
進行していく病気では、「次にできなくなること」を先に書いておきます。いまは階段を上がれるが、次は上がれなくなる。そのときに何が要るか(1階に寝る場所、手すり、ベッド)を、できなくなる前に本人と家族に話し、道具の申請(第7回)は着工前・貸与前の手続きに間に合うように進めます。できなくなってから慌てて申請すると、その間の数週間が、いちばん危ない時間になります。先読みは、悲観ではなく準備です。本人に伝えるときの言葉は、「もしも」ではなく「そのときのために」です。
家族も、同じ坂を下りている
進行していく病気では、本人の坂と並んで、家族の坂があります。本人が一段下がるたびに、介助の量が一段増え、家族の腰と睡眠と時間が削られます。認知症の運動プログラムを調べた総説では、家族が運動に付き添う形にした1つの試験で、介護者の負担が下がっていました(Forbes 2015)。1試験40人の小さな結果ですが、方向は現場の実感と合っています。家族が「見ている」だけの介護から、「一緒にやる」介護に変わると、家族の負担感は変わります。
だから、進行していく病気の人の計画には、家族の項目を1行入れます。「妻が、ベッドから車いすへの移乗を、腰を痛めずにできる」。これは本人の目標ではなく家族の目標ですが、様式2-2-1にも「本人・家族への生活指導の内容」の欄があり、第9回の表3にも本人・家族の行があります。家族が倒れると、本人の坂は一気に急になります。家族の腰を守ることは、本人の坂の傾きを守ることです。看護師版の第10回に、介護者はもう一人の対象だという節があります。セラピストの側からは、介助の技術を家族の身体に合わせて渡すことが、その節への応答になります。
SECTION 05 看取りの場面で、リハビリテーションができること
最期が近づくと、「もうリハビリはいいでしょう」と言われることがあります。家族から言われることも、看護師から言われることも、自分でそう思うこともあります。ここで確かめておきたいのは、緩和期のリハビリテーションには、効果を確かめた研究があり、学会の推奨があるということです。目的が変わるだけで、仕事はなくなりません。
- 多職種による緩和リハビリテーションは、生活の質を上げる命を限る病気を持つ人を対象にした27の試験(3,571人)をまとめた解析で、生活の質は小さいながら確かに改善しました(標準化平均差 0.40)。がんでも、心不全でも、呼吸器疾患でも方向は同じで、入院日数も減っています(Pryde 2026)。
- 進行がんの緩和期でも、運動は安全22の試験(1,840人)で、運動をした群としなかった群で重い有害事象の割合に差はありませんでした。生活の質、疲労、体力、下肢の筋力は運動した群のほうが良好でした(Toohey 2023)。
- 日本の学会も、緩和期のリハビリテーションを提案している日本リハビリテーション医学会の「がんのリハビリテーション診療ガイドライン 第2版」(2019年)は、緩和ケアを主体とする時期の進行がん患者に対して、病状の進行や苦痛症状に合わせた包括的リハビリテーション治療を行うことを提案しています(推奨の強さ「弱い」、エビデンスの確実性「中」)。痛みや呼吸困難の症状緩和を目的とした患者教育も同じ強さで提案され、マッサージも提案されています。ガイドラインは、緩和ケア主体の時期は終末期と同義ではないこと、訓練内容を調整すれば実施できる場合が多いことも述べています。
では、その場でセラピストは何をするのか。5つにまとめます。看取りに向かう数週間で身体に何が起きるかと、家族への説明、その時が来たときの手順は、看護師版の最終回「意思決定を支える、そして看取り」に本体があります。予後の見立てと苦痛の評価は既存のコラム「訪問看護師が「末期がん患者」を見たら」に譲ります。
図3 行4と行5は、セラピストがいなくなったあとも家に残ります。看取りの場面の目標は、「3か月後」ではなく「今日」と「今週」の単位で立てます。
第8回の中止基準(表1)を、看取りの場面にそのまま当てないでください。安静時の脈拍が120を超える日、酸素飽和度が90%を切る日が、続くようになります。数字で切ると、何もできない日ばかりになります。この時期の中止基準は本人の楽さです。「起きてみますか」と聞いて、本人が起きたいと言い、起きたあとの表情が楽なら、それは実施してよい日です。ただし、これは主治医と看護師と共有した方針の中で行うことです。「この時期の目標は楽さです」と計画書に書き、看護師と主治医がそれを知っている状態を先に作ってください。ひとりで決めない、という第8回の原則は、ここでも変わりません。
本人が「もういい」と言ったとき
家族ではなく、本人が「リハビリはもういい」と言うことがあります。ここでセラピストが試されます。「そうですか」と引くのも、「少しだけやりましょう」と押すのも、どちらも本人を見ていません。聞くのは「何がもういいのか」です。歩く練習がつらいのか、人が来ること自体が負担なのか、体を動かすと痛いのか、先が見えて気持ちが落ちているのか。答えによって、次にすることが変わります。歩く練習なら、図3の行2以降に切り替えて、練習はしません。人が来ることが負担なら、訪問の回数と時間を主治医・看護師・ケアマネジャーと減らします。痛みなら、その日は姿勢と痛みの場所だけを看護師に渡して帰ります。
気持ちが落ちているときの答えは、セラピストにはありません。それは看護師版の第10回が扱っている領域で、聞いた言葉をひとりで抱えず、その日のうちに看護師と主治医に渡します(第8回の「ひとりで決めない」)。「もういい」を記録に書くときは、本人の言葉のまま「」で残します。「もう歩かなくていい、座って庭を見ていたい」。この1行は、その人の最後の目標そのものになることがあります。
「風呂に入りたい」と言われたら、断る前に分解してください。脱衣所までの移動、脱ぐ、浴槽をまたぐ、湯の中で座る、出る、拭く、着る、戻る。8つのうち、本人ができるのはどれで、家族が支えられるのはどれで、道具(第7回のシャワーチェアや浴槽台)で埋まるのはどれか。看護師と一緒に入るなら、看護師が体を、セラピストが動作と道具を受け持ちます。「無理です」は、分解してから言う言葉です。分解すると、たいていは「明日の午後なら、看護師と2人で」になります。
SECTION 06 10回ぶんを、1枚にする
最終回なので、この連載で書いてきたことを1枚にまとめます。各回のいちばん大事な1行と、それを使う場面です。1年目の終わりに、この表を上から読んで、言えないところがあれば、その回に戻ってください。
| 回 | いちばん大事な1行 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 第1回 全体像 | 病院と在宅では、設備・時間・目標・家族の4つが逆転する | 病院のやり方が通じないと感じたとき |
| 第2回 3職種 | 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、法律上の業務も得意も違う。1人職場では「呼ぶ」が技術 | 自分の職種で足りない場面に出会ったとき |
| 第3回 制度 | 入口は2つ。1回は20分。医師の指示と計画の評価周期が土台 | 指示書と計画書を見るとき |
| 第4回 1回の組み立て | 40分は確かめる20分とつくる20分。宿題を毎日続けられる人は5人に1人 | 訪問の前日と、玄関を開けたあと |
| 第5回 評価 | 器具がなくても測れる。値と条件と前回との差で書く | 月1回の測定日と、毎回の記録 |
| 第6回 目標 | 何を・どの支えで・どこまで・いつまでに。「歩けるように」は目標ではない | 計画を作るときと、3か月ごとの見直し |
| 第7回 家と道具 | 手すりの位置は動きが決める。手を入れないという判断もある | 住宅改修と福祉用具の相談が出たとき |
| 第8回 リスク | やらない判断は、理由と代わりと伝えた相手が書けていれば判断。転ばせたら起こす前に見る | 運動を始める前の数分と、事故のとき |
| 第9回 記録と報告 | 記録は、あなたがいない6日間にあなたの見立てを働かせる道具 | 毎回の記録と、月末と、相手に渡すとき |
| 第10回 生活期 | 維持は傾きを変えること。終了は計画の一部。看取りにも仕事がある | 良くならない人と、終わりを決めるとき |
表2 連載10回の要約。1年目の終わりに、この表だけを見返しても意味が通るように書きました。
良くならない人のそばに、最後までいられるのが、この仕事です。
病院で働いていたころ、良くならない人は、いつのまにかリハビリ室から消えました。転院、退院、方針の変更。担当が外れるだけで、その人がそのあとどうなったかを、セラピストは知らないまま次の人を受け持ちました。在宅は違います。良くならない人のそばに、最後までいます。下り坂を一緒に下りて、終わりを一緒に決めて、看取りの場面にも同じ家にいます。
当ステーションは、それをこの仕事のいちばんの価値だと考えています。治すことに比べて地味に見えるかもしれません。けれども、坂を下りる人に「今日はここまで来られましたね」と言える人は、上る人に「もっと」と言える人より、ずっと少ないのです。そして家にいる人が本当に必要としているのは、後者より前者です。
10回かけて書いてきたのは、その準備でした。測って、目標を立てて、家を変えて、やらない日を決めて、記録して、渡す。全部、良くならない人のそばに最後までいるために要るものです。1年目の終わりに、担当している人の名前を一人ずつ思い浮かべて、その人がどの坂を下りていて、次に何が要るかを言えるようになっていれば、この連載の役目は済んでいます。ここまで読んでくださって、ありがとうございました。看護師の皆さんへ。セラピストが何をする人か、少しは見えたでしょうか。同じ家で、一緒に働きましょう。
ふくろう訪問看護リハビリステーションは、
訪問リハビリが未経験の方を歓迎しています。
この連載は、病院や施設からそのまま在宅に来た理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が、 ひとりで訪問して、その家で評価して、判断して、報告できるようになるまでの道のりを書いたものです。 言いかえれば、当ステーションが新しく入った人と一緒にたどる順番そのものです。 訪問の経験がないことは、ここでは前提であって、条件ではありません。
- 日程が早く決まります。間に人が入らないぶん、お問い合わせから見学、面談までを最短の日程で組めます。
- 条件を、決める人と直接相談できます。勤務日数、1日の訪問件数、オンコールの有無といった働き方の話を、伝言でなくその場でやりとりできます。
- 入職祝い金20万円を進呈します。直接応募限定紹介手数料がかからないぶんを、求職者の方に還元します。
- 看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士を募集しています(常勤・非常勤)
- お電話:092-834-8581(平日 9:00〜18:00)
- メール:nurse@fukurou.fukuoka.jp
- 採用の詳細:求人情報のページ
ブランクのある方、回復期や維持期の経験しかない方、まず話だけ聞いてみたいという方も、お気軽にご連絡ください。
1年目チェックリスト(第10回ぶん)
- 担当している人について、4つの坂(突然死・がん・臓器不全・虚弱)のどれを下りているかを言える
- 「維持」を目標にした人について、期待どおりの状態を数字で書いている
- 維持の人の記録に「著変なし」ではなく、数字と本人の言葉を書いている
- 3か月以上続ける人について、継続の理由と移行の見通しを計画書に書いている
- 終了までの段(週2回・週1回・隔週・終了・確認)を、担当する人ごとに言える
- 終了時の申し送り1枚(維持してほしい数字・宿題・再開の条件)を書ける
- 終了した人のその後を、1〜3か月後に電話か看護師経由で確かめている
- 進行していく病気の人について、「次にできなくなること」と、そのときに要る道具を先に書いている
- 心不全・慢性閉塞性肺疾患・認知症で、リハビリの「効く」の中身が何かを言える
- 看取りの場面でセラピストにできる5つ(動く場所・姿勢・呼吸・家族の手・したいこと)を言える
- 看取りの時期の中止基準を「本人の楽さ」に切り替えることを、看護師と主治医と共有している
- 「風呂に入りたい」を、断る前に動作に分解できる
Q&A よくある質問
連載「ゼロから始める訪問セラピスト」全10回
- 訪問セラピストという仕事の全体像——病院のリハ室と何が逆転するのか
- 3職種は何が違うのか——PT・OT・STの守備範囲と、重なるところ
- 制度の入口——リハビリはどの保険で、誰の指示で動くのか
- 訪問1回の組み立て方——40分か60分で何をするか
- その家で評価する——器具のない場所で、何をどう測るか
- 目標を立てる——「歩けるように」ではなく、どこまでを、いつまでに
- 家と道具を変える——住宅改修・福祉用具でできること、できないこと
- リスクと中止基準——その日やらない判断と、急変時の初動
- 記録と報告——リハビリテーション実施計画書と、看護師への渡し方
- 生活期を伴走する——終わりを決める、そして看取りの場面のリハビリ
REFERENCE 参考資料
- Lunney JR, Lynn J, Hogan C. Profiles of older Medicare decedents. J Am Geriatr Soc. 2002;50(6):1108-1112. doi:10.1046/j.1532-5415.2002.50268.x ※4つの型の割合(突然死7%、がん22%、臓器不全16%、虚弱47%)
- Lunney JR, Lynn J, Foley DJ, Lipson S, Guralnik JM. Patterns of functional decline at the end of life. JAMA. 2003;289(18):2387-2392. doi:10.1001/jama.289.18.2387 ※最期の1年の日常生活動作の経過
- 厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会(第259回)資料4「訪問リハビリテーション」令和8年6月29日(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716096.pdf)※利用開始6か月後のADLの変化、介護予防訪問リハビリテーションの24か月後の継続状況と継続理由
- 厚生省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」平成12年3月1日老企第36号 第二の5(1)(終了の目安時期)、第二の5(16)(移行支援加算)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年3月31日厚生省令第37号)第64条(居宅介護支援事業者等との連携)、第83条(準用)(https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100037)
- 厚生労働省老健局「リハビリテーション・個別機能訓練、栄養、口腔の実施及び一体的取組について」令和6年3月15日 老高発0315第2号・老認発0315第2号・老老発0315第2号(介護保険最新情報 Vol.1213 https://www.mhlw.go.jp/content/001227724.pdf)※別紙様式2-2-1 記載要領(5) リハビリテーションの見通し・継続理由、終了の目安・時期
- 公益社団法人日本リハビリテーション医学会 がんのリハビリテーション診療ガイドライン改訂委員会 編. がんのリハビリテーション診療ガイドライン 第2版. 金原出版; 2019. 第11章 進行がん・末期がん CQ01・CQ02・CQ03・CQ05(https://www.jarm.or.jp/document/cancer_guideline.pdf)
- Pryde K, Lakhani A, William L, Dennett A. Palliative rehabilitation and quality of life: systematic review and meta-analysis. BMJ Support Palliat Care. 2026;16(5):1043-1053. doi:10.1136/spcare-2024-004972
- Toohey K, Chapman M, Rushby AM, Urban K, Ingham G, Singh B. The effects of physical exercise in the palliative care phase for people with advanced cancer: a systematic review with meta-analysis. J Cancer Surviv. 2023;17(2):399-415. doi:10.1007/s11764-021-01153-0
- Molloy C, Long L, Mordi IR, Bridges C, Sagar VA, Davies EJ, Coats AJ, Dalal H, Rees K, Singh SJ, Taylor RS. Exercise-based cardiac rehabilitation for adults with heart failure. Cochrane Database Syst Rev. 2024;3(3):CD003331. doi:10.1002/14651858.CD003331.pub6
- Malaguti C, Dal Corso S, Janjua S, Holland AE. Supervised maintenance programmes following pulmonary rehabilitation compared to usual care for chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2021;8(8):CD013569. doi:10.1002/14651858.CD013569.pub2
- Dal Bello-Haas V, Florence JM. Therapeutic exercise for people with amyotrophic lateral sclerosis or motor neuron disease. Cochrane Database Syst Rev. 2013;(5):CD005229. doi:10.1002/14651858.CD005229.pub3
- Forbes D, Forbes SC, Blake CM, Thiessen EJ, Forbes S. Exercise programs for people with dementia. Cochrane Database Syst Rev. 2015;(4):CD006489. doi:10.1002/14651858.CD006489.pub4
- 日本神経学会 監修. 筋萎縮性側索硬化症(ALS)診療ガイドライン2023. 南江堂; 2023.

